「shinpe-」さんのページ

総レビュー数: 22レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年02月15日

8点

続編の「MOON」と併せたレビューです。

今このレビューを書いている最中にボレロが頭で鳴り響いています(笑)読んだ方はお分かりになりますが、あの演出は先に似たような例があるのでしょうか?もし無いならば、それを体験するだけでも読む価値あります、たぶん。

バレエという(ほとんどの読者にとって)馴染みが薄い芸術をエンターテイメントに仕上げるためには、いい意味での荒っぽい演出が必要だったんだと思います。囚人たちが号泣したり、聴こえない音楽が聴こえたり。そういった昴やライバルたちの天才を表現する技法が半端じゃありません。

僕はバレエのような高尚な芸術はもちろん門外漢なのですが、このマンガのあとにyoutubeでボレロと白鳥の湖を最後まで見てしまいました。稀にそういった知らない世界の入り口になってくれる作品に出会えることは、マンガを読む僕のひとつの動機たりえているんだろうと思います。

作中に出てくる天文学者の一言が素晴らしい。「もし将来、人類が宇宙人と接触したときに、最初に彼らと通じ合えるのはバレリーナではないだろうか」昴を読んだあとだとそうかもしれないと思ってしまうところが怖い(笑)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-26 21:26:56] [修正:2010-11-26 21:52:42] [このレビューのURL]

続編(そう言っても問題無いですよね?)の「愛知りしりそめし頃に」と併せてのレビューをを書かせていただきます。

僕らの大好きなマンガというメディアを創り上げてきた先人たちへの尊敬と感謝の念を新たにする作品です。敗戦後の富山における二人の少年の出会いが物語の始まりです。それが後の藤子不二雄である事は、皆さん御存じの通りです。

切磋琢磨、という言葉がこれほど似合う作品はマンガのみならず、小説や映画までを視野に入れてもそうそう無いんじゃないでしょうか。満賀と才野の関係はもちろんの事、トキワ荘の仲間たちと紡ぎあげて行く成長譚は、読んでいて羨ましくなること請け合いです。たぶんA先生がこの作品に込めた思いは、自分を支えてくれた人への感謝の気持ちだったんだろうな、と自然に思ってしまう作品です。

上記の気持ちと少しベクトルは違いますが、「才」野という名前それ自体がF先生への畏敬の念であるような気がします(下記レビューでとろっちさんがかかれていらっしゃるような気持ちの)。

現在のような市場規模もなく、社会的な地位なんてあろうはずもない。「まんが道」がまだけもの道だったころ、主人公たちは皆、本当に手塚先生を北極星として道を進んでいたんだなと実感させられます。宝塚での出会いのシーンをはじめ手塚先生の登場シーンは読んでいるこちらの背筋も伸びてしまいました。マンガを愛する人なら一読の価値以上の物があるマンガです。

余談:他のマンガ(BECKなど)におけるオマージュの元ネタをいくつか見ることが出来ます。宝塚での手塚先生との出会いが、コユキと千葉がマーシー(マーちゃんさん)に出会うシーンまんまだったのは笑った。そういう楽しみ方もありだと思います。あと「愛しりそめし」の手塚先生の初登場が自分と同い年だったことに驚愕…と同時にもっと頑張らねば、との思いを新たにしました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-14 09:48:11] [修正:2010-11-24 19:34:07] [このレビューのURL]

スピリッツの「このS」が面白すぎて読んでしまいました。久しくラブコメなんか読んで無いにも関わらず、一気に全巻読破です。なんというか、褒める時に使う言葉じゃ無いのはわかってますけど、設定がムチャクチャです(笑)そしてそのムチャクチャな設定にちゃんとキャラクターを向き合わせて、成長させているところが面白いを通り越して感動的ですらあります。

最初は自分のことしか考えていなかった三人がそれぞれの人生を見据えて覚悟を決めるシーン(いくつかあります)がこのマンガのキモだと思います。人間の愛はちっぽけじゃないんですねー。あとゴーヤーチャンプルーさんも書かれてますが、とにかく感情が伝わってくる表情の筆致は凄いです。

エロが多めなので苦手な方は控えた方がよろしいかと。でもこの人の描くエロは病的な脚色が一切なく、ストーリー上も自然で、どこまでも健康的だと個人的には思うので、それだけで敬遠するは、少しもったい無いかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-24 19:17:28] [修正:2010-11-24 19:32:05] [このレビューのURL]

10点 奈緒子

走ることによって辿り着く事の出来る高みとは何か、それを故郷や家族、友情や師弟愛、そして奈緒子の雄介に対する思慕を軸に描き切った作品です。奈緒子はどちらかといえば狂言師としての役割を担います。あくまで主人公は、走ることに祝福されたとしか言い用のない才能の持ち主である壱岐雄介です。

序盤は陸上や短距離、続編での展開となる後半はマラソンをテーマとして扱いますが、この漫画の白眉は中盤を彩る中学駅伝編、高校駅伝編、都道府県対抗駅伝編にあります。特に高校駅伝編はもうなんと言ったらいいのか、夏合宿は山道しか走らないし、よく転ぶし、監督は末期癌だし、各校のエースの標準タイムが当たり前のように10km27分台だしで突っ込みどころ満載なわけですが、それでも涙腺を根こそぎもっていくだけのパワーを誇っています。

走る(しかもほとんどの場合長距離)というかなり単調な、漫画には不向きであろう絵柄をこれだけの巻数描き切れたのは、初期設定の秀逸さも特筆されるべきながら、それ以上に走っている人間の思考をうまく描いた成功例といって差し支えないと思うのです。レースの合間のモノローグや回想シーンで浮かび上がる友情や家族愛は本当に理屈抜きでいい物です。各キャラクターの一人称による回想が「波切島」という架空の島とその島の陸上部の青春を構成しているような気にもさせられます。

残念な映画化でケチがつきましたが、この漫画の価値は微塵も揺るぎません。これも未読の方が心底羨ましいと思える作品のひとつです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-11-09 04:52:48] [修正:2010-11-09 04:52:48] [このレビューのURL]