「shinpe-」さんのページ

総レビュー数: 22レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年02月15日

全編通じて素晴らしい作品です。全4巻、密度のみっちり詰まった起承転結です。しかし、個人的にはその転の部分、3巻の価値の比類なさに奮い立つばかりです。

自我と宇宙との間に佇むハチが見つけた白い猫との出会い。無限の荒野を彷徨うことができるほど人間は強くない。惑星のように惑う人であったハチが自らを地上に縛り付ける重力を見つける。それは結局のところホシノという愛に溢れた女性だったということ。

宇宙に行った人間は多かれ少なかれ宗教的な色彩を持つ考え方をするようになるそうです。それはきっと、自らの卑小さとこの宇宙を構成するものの言葉にはできないほどの偉大さを発見するからだと思うのです。

宇宙が日常の延長線上にある未来の世界においても、「夢って何?」「愛って何?」と惑うハチの姿はいつの時代にも通じる問いを投げかけているところが素晴らしいですよね。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-03-14 10:52:31] [修正:2010-03-14 11:05:49] [このレビューのURL]

10点をつけるのに迷いました。なぜなら吉川英治の原作を未読の自分(原作よりも漫画を手に取ったのが早かったので、読まないようにしているんです)が、果たしてこの作品の価値を本当に計る事が出来るのか、と。でも10点つけました。どれだけ魅力的な原作の助けを得ていたとしても、絵と言葉によって表現される漫画というメディアの最先端にいる、という評価は他のどの漫画の追随も許していないと思うので。

宮本武蔵という歴史上の人物の価値は、彼が剣豪として強かったということに現れているのではなく、深淵極まりない肉体と精神の結合を体現したことにあるのだと思います。単に人に勝ち、その結果人を殺めてしまう道具としての剣ではなく、「天地とひとつ」となるための道としての剣。その葛藤の中で生きる武蔵の姿を、書いている井上さんの苦悩までも伝わってくるような息づかいで記しています。

絵はみなさんの述べている通り、素晴らしいの一言。BRUTUSの特集で美術評論家(だったと思います)の方が「現在活躍されているどの日本画家よりも画力が高い」と述べていました。個人的には、スラムダンクよりも秀逸かつ唯一無二(この作品に関しては、「天下無双」と呼ぶべきでしょうか笑)の作品だと思います。未読の方が心底羨ましいと思えるほど、素晴らしい作品です。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-03-01 12:47:03] [修正:2010-03-01 12:47:47] [このレビューのURL]