「shinpe-」さんのページ
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レビューの数が10を超えたあたりで、平均点が異常に高いことに気がつきました。きっと腐すことが好きではなく、褒めるレビューを書くのが好きだからだと思います。
一服の清涼剤のような漫画、強い酒を飲んだ時のように腹の底が熱くなる漫画、読んだ後に現実が輝いて見える漫画が好きです。つれづれ暇つぶしのように書いていきますが、見てあげて下さい。

10点 奈緒子
走ることによって辿り着く事の出来る高みとは何か、それを故郷や家族、友情や師弟愛、そして奈緒子の雄介に対する思慕を軸に描き切った作品です。奈緒子はどちらかといえば狂言師としての役割を担います。あくまで主人公は、走ることに祝福されたとしか言い用のない才能の持ち主である壱岐雄介です。
序盤は陸上や短距離、続編での展開となる後半はマラソンをテーマとして扱いますが、この漫画の白眉は中盤を彩る中学駅伝編、高校駅伝編、都道府県対抗駅伝編にあります。特に高校駅伝編はもうなんと言ったらいいのか、夏合宿は山道しか走らないし、よく転ぶし、監督は末期癌だし、各校のエースの標準タイムが当たり前のように10km27分台だしで突っ込みどころ満載なわけですが、それでも涙腺を根こそぎもっていくだけのパワーを誇っています。
走る(しかもほとんどの場合長距離)というかなり単調な、漫画には不向きであろう絵柄をこれだけの巻数描き切れたのは、初期設定の秀逸さも特筆されるべきながら、それ以上に走っている人間の思考をうまく描いた成功例といって差し支えないと思うのです。レースの合間のモノローグや回想シーンで浮かび上がる友情や家族愛は本当に理屈抜きでいい物です。各キャラクターの一人称による回想が「波切島」という架空の島とその島の陸上部の青春を構成しているような気にもさせられます。
残念な映画化でケチがつきましたが、この漫画の価値は微塵も揺るぎません。これも未読の方が心底羨ましいと思える作品のひとつです。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-11-09 04:52:48] [修正:2010-11-09 04:52:48] [このレビューのURL]
10点 グラップラー刃牙
後続の「バキ」、「範馬刃牙」とあわせてのレビューを描きます。
まぁとにかくバイオレンス満載です。ただただ強さを求める主人公と脇役たちがぶつかり合い、殴り合い、まれに殺し合い、たまに友情を育んだりする漫画です。この「まれに」と「たまに」が自分の中で刃牙という漫画を10点に位置づける理由となっています。
彼らが闘うのはほとんどの場合相手を屈服させ、自分の目的を達成する為ではなくただ単に「自分自身が相手よりも上かどうか」を試すため。だから殴り合いはするもののその後に胸襟を開いて互いのことを認め合うシーンが多々あります。なんか古典的ですが、僕はこの漫画のそういうところが好きなんですよ。
ひたすらに「強さ」とは何かを求めるだけ、その基準において展開していくストーリー。魅力的な数々のキャラクター別の方法論の違いが戦い方、つまりは強さの追い求め方に現れます。ある者は本当の拳に出会うために日々自らの正拳を疑いつづけ、ある者は「1日に48時間のトレーニング」と死をも厭わぬ薬物の摂取を行い、あるものは危険に出会うことの無い―出会えない境地を目指し、ある者は最強を盾に自分自身の我侭を貫き通す。そして主人公はその我侭を止め、母の敵をとるためだけに強くなろうとする。
めちゃくちゃ古典的かつわっかりやすい漫画です。まさにエンターテイメントの本質だと僕は思っています。最近は回り道と冗長が過ぎるのではないかと思われている方も多いと思いますが、いいじゃないですか。この偉大な漫画のクライマックスは、俺はどれだけ遠回りしてもいいと思います。
あ、そうそう。個人的ベストバウトは
刃牙vs.ガイア
独歩vs.渋川
です。ベストの癖に2つですいません。すいませんついでにもうひとつ、刃牙好きな人何人かにベストバウトを訊いてみてください。たぶん滅多に被りません。それってこの漫画の懐の深さだと思いませんか?
ナイスレビュー: 0 票
[投稿:2010-05-20 01:11:55] [修正:2010-05-20 01:21:48] [このレビューのURL]
10点 バガボンド
10点をつけるのに迷いました。なぜなら吉川英治の原作を未読の自分(原作よりも漫画を手に取ったのが早かったので、読まないようにしているんです)が、果たしてこの作品の価値を本当に計る事が出来るのか、と。でも10点つけました。どれだけ魅力的な原作の助けを得ていたとしても、絵と言葉によって表現される漫画というメディアの最先端にいる、という評価は他のどの漫画の追随も許していないと思うので。
宮本武蔵という歴史上の人物の価値は、彼が剣豪として強かったということに現れているのではなく、深淵極まりない肉体と精神の結合を体現したことにあるのだと思います。単に人に勝ち、その結果人を殺めてしまう道具としての剣ではなく、「天地とひとつ」となるための道としての剣。その葛藤の中で生きる武蔵の姿を、書いている井上さんの苦悩までも伝わってくるような息づかいで記しています。
絵はみなさんの述べている通り、素晴らしいの一言。BRUTUSの特集で美術評論家(だったと思います)の方が「現在活躍されているどの日本画家よりも画力が高い」と述べていました。個人的には、スラムダンクよりも秀逸かつ唯一無二(この作品に関しては、「天下無双」と呼ぶべきでしょうか笑)の作品だと思います。未読の方が心底羨ましいと思えるほど、素晴らしい作品です。
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2010-03-01 12:47:03] [修正:2010-03-01 12:47:47] [このレビューのURL]