「ヨノナカ」さんのページ

[ネタバレあり]

あえて説明するのがバカらしいほどの怪作。
なんだけど読んだことがないので全巻揃えてみた。

しかし・・・・

なかなかこの作品の評価は難しい。

確かに、

個性的過ぎるほどの強烈なキャラクター。残酷ながらも神秘的なストーリー。そして痛々しいほどのテーゼ・・・

そのどれもが今までのマンガには無く、そしてひょっとしたら後生この作品に匹敵するものは現れないのではないか?というほどこのマンガは他の作品と比べて際立っています。


ただ、残念なのは・・・

あまりにも作品の中に作家の主義主張を詰め込みすぎたために、読者を置き去りにした感が否めません。
トシがかろうじて読者が感情移入できるキャラクターであるものの、それも中盤あたりまで。

別に読者におもねって作品を作れっていうわけじゃなくて、これは純粋に面白さのためにそうしたほうがいいのです。
読者ががんばって作品の解読をしなきゃいけない作品はどうしても「心」じゃなくて「頭」で読んでしまって素直に作品に入り込めません。おそらくこの作品を読んで本当に涙した人は少ないのではないかと思います。「感動」の一点であれば西原理恵子の「ぼくんち」に一歩譲らざるを得ないと私は考えます。

だからといって、この作品の価値が下がるわけではありません。むしろ、あがります。

特にジャンプに代表される少年誌では読者におもねりすぎだと感じます。売れるためには読者サービス(エロじゃないよ)に徹するのがそりゃあ得策でしょうけど、それじゃあ作品として薄っぺらいものしかできません。マックのハンバーガーみたいに余れば捨てられ食い散らかされのジャンクな末路を辿るだけです。

その点この作品の独善的なほどの作風はどうか。

確かに読者を選ぶでしょう、万人受けする平均的な作品ではないでしょう。それゆえに企業(出版社)としては積極的に売り出そうとは思わない作品でしょう。
そんな逆境の中、この作品が世に出され、打ち切りという噂あれど14巻まで描き続けることができたのは作家の強靭な意志と編集者・出版社の理解あってこそだと思います。

数多くの人に支えられて出版された、
数多くの人が虫ケラのように死んでいく、
数少ない人間ドラマの最高傑作。

是非、是非読むべきだと思います。
新説ザ・ワールド・イズ・マインも含めて。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-09-21 22:00:12] [修正:2006-09-21 22:00:12]