「佐々木裕健」さんのページ

単純にヴィジュアル面で、源氏の愛人たちの描きわけがきっちりできていないのはマイナス。ただでさえややこしく、それでいて重大な物語の核である人間関係が余計に分かりづらくなってしまい、「解読」に手間取ってしまう。

その点さえ除けば、複雑で難解な源氏物語の世界を、質を落とさず明確に漫画に翻訳できている。この作品を読むのと読まないのとでは、原作の難解さに対する抵抗が全く違うほどである。

現代とは全くかけ離れた平安時代特有の常識とか規則とか貴族社会とかが自然と伝わるように描かれており、その中で幸福も不幸もかみしめて生きていく人間模様を素直に楽しむことができる。


ちなみに、光源氏は現代で言えば木村拓哉のようなものであり、かっこいいことは認めざるをえないが、人間的に好きか嫌いかでいえば、判断が分かれるところである。(例えば谷崎潤一郎は嫌いだったらしい。)

この作者は光源氏の人間性に対してとても肯定的な見方をしており(要するにキムタクを「いけ好かないかっこつけ野郎」とは微塵にも感じていないファンのようなもの)、それゆえに、光源氏が不幸に陥っても「あんなにたくさんの女に手を出したんだから自業自得だ」というような突き放した表現があまりされておらず、終始同情的なまなざしを送り続けており、そこが受け入れられない人にはきついかもしれない。

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[投稿:2007-06-12 16:41:17] [修正:2007-06-12 16:41:17]

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