「佐々木裕健」さんのページ

総レビュー数: 58レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月12日

10点 ぼくんち

人間のクズ、社会の最底辺をリアリティを持ったまま笑い飛ばし、しかもその根底に愛のようなものが感じられる。愛があるから、個性的なクズをたくさん表現できる。(心の底からさげずんでいる人は、クズを自分の視界に入れないから、正確な表現は不可能。ステレオタイプになってしまう)

冗談や皮肉抜きで、まるで聖書のような漫画。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-17 00:21:45] [修正:2007-06-17 00:21:45] [このレビューのURL]

「天才と基地外は紙一重」という言葉の象徴みたいな作品である。

楳図以外ならば決して許されないのではないかというくらいの、論理的な飛躍がありまくる展開で、楳図に思い入れの無い人が読むと、その点を持ってして「失敗作」と断じられてしまう危険性もある。それはあながち間違いではなく、それほどギリギリのところで成立している作品である。

満点をつけた私自身も、この作品に対する一般的な評価、批評を見ること無しに、「名作!」と言い切れたかどうかは、自信が無い。

そういった、ある種の「偏見」「色眼鏡」がついているかも知れないと思いつつ、満点をつけたのは、
「この作品の良さは、ちっぽけな自分ひとりの力で発見できるような種類ではない」でも「良さは確かに存在する」と感じたからである。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-16 18:04:54] [修正:2007-06-16 18:04:54] [このレビューのURL]

連載当時の業界を冷静に分析、批判した結果がそのままギャグとして、作品として昇華している。

漫画業界に携わるものとして、色々理不尽な目にも不条理な目にもあってきただろうに、それをただ怒りで表すのではなく、ネタにして笑い飛ばすその姿勢は、個人的に見習いたいものがある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-16 17:48:07] [修正:2007-06-16 17:48:07] [このレビューのURL]

じっくり読むと結構アラが見えはするが、そういったレベルを完全に超越している。

あのジャンプ体制の中で、トーナメント方式の戦いを避け(戦闘力のインフレの防止)、「スタンド」という概念を生み出し(「戦闘力」のような一次元的、偏差値的な単純さを否定、戦闘能力を立体的に考えられる)、どれだけ長く続けようとも破綻することの無いストーリーの継続方法を編み出したことは奇跡的でさえある。

イタリアの美術に代表される、伝統の厚み、重みを取り入れた世界観も、他に類を見ないほど個性的かつ魅力的。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-16 17:38:42] [修正:2007-06-16 17:38:42] [このレビューのURL]

20年以上にわたって極上の作品を創作し続けていた作者が、その経験全てを集積、なおかつそれを深めていったものがこの作品である。

極めてリアルな社会問題を扱いつつも、漫画としての娯楽性を失わず、ストーリー展開、キャラクター、絵、細部にわたって非の打ち所が無く、それらが重層的に折り重なって、「漫画」としての世界を強固に確立している。感動を越えて、萩尾望都という人物に畏敬の念さえも感じてしまうほどである。

レビュー不可能。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-13 07:37:18] [修正:2007-06-13 07:37:18] [このレビューのURL]

10点 MONSTER

この作品に限らず浦沢作品は、バランス感覚が絶妙である。

意表をついても、奇を衒うことはしない。個性的であっても、メジャーなところは外さない。

手塚治虫がその無尽蔵のエネルギーを全力で放出し続けたのに対し、浦沢直樹は限られたエネルギーを計算、コントロールし、戦略を考え、有効な集中することによって、天才と渡り合おうとしているように感じる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 21:08:50] [修正:2007-06-12 21:08:50] [このレビューのURL]

10点 石の花

第二次世界大戦中のユーゴスラビアという、マニアックかつ複雑な国を舞台にすることは、面白い漫画を描く描かない以前の段階での苦労が山積みであったことであろう。

それでもなお、そのテーマに真正面から取り組んだ結果、単なる反戦という次元を大きく超越した、人間や社会に根源的に潜む悪を描写し、格闘する段階にまで達した、極めて普遍性の高い物語に仕上がっている。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 18:35:04] [修正:2007-06-12 18:35:04] [このレビューのURL]

某オタキングの言うように私も、この作品を「少年漫画の王道の限界に到達した作品」と位置づける。

元気いっぱいの男の子が絶対に曲がらない正義の心を持って、悪をやっつけていく。

この単純な絵空事を、リアルに感動できるまでギリギリに突き詰めていけばこうなるのだろう。これ以上は、「正義とは何か、悪とは何か?」という域に入ってしまい、勧善懲悪が成り立たなくなってしまい、青年漫画の域に入ってしまうからである。


私にとって、多分これを越える王道の少年漫画は二度と出てこないと感じている。

たとえば《ワンピース》は今一番勢いがあるが、それでも「戦闘が冗長」といった批判がある。《うしおととら》には戦闘も含めて冗長が一切無く、これ以上短くても長くても良くないというバランスが取れている。
また、数多くのレビュアーが指摘している通りに、最後の決戦の際に、それまでに出会った仲間たちが全員加勢する、死んでしまったものはあの世からかけつける。これを超える展開が過去にも未来にも存在するだろうか?

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 17:54:34] [修正:2007-06-12 17:54:34] [このレビューのURL]

10点 青い花

[ネタバレあり]

レズ、百合というジャンルは閉鎖的な作品が多い。

「同性愛者がマイノリティに属している」「まだまだ社会に受け入れられる価値観になっていない」という事実、現実的な問題をバッサリ切り落とし、背徳的な快楽、二人だけの閉じた幸福というおいしいところだけを表現する、現実逃避的な作品ばかりである。

したがって、そういう世界観を無条件で楽しめる人、好きな人、はまり込んでいる人以外の人にもお勧めできる作品はほとんど存在しない。



『青い花』はその唯一(に近い)の例外である。

友達に同性愛を告白する際「気持ち悪いと思わないで。」と泣き崩れるシーンは、ただの百合もので終わらないという作者の姿勢の象徴とも言える。

もちろん、ただ厳しい現実を描いたからすばらしいというのではない。

登場人物一人一人の丁寧かつリアルな描写、幸福も不幸も全てをやさしく包み込む世界は、極めて上質なエンターテイメントである。美化しているところも含めて。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 15:15:29] [修正:2007-06-12 15:15:29] [このレビューのURL]

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