「佐々木裕健」さんのページ

総レビュー数: 58レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年06月12日

一歩間違えればオナニー漫画といわれてもおかしくないほど、作者の趣味が丸出しにされている。

受け付けない人には受け付けられない世界観だろうけど、楽しませるところは楽しませてくれるという点で、現代版「悲劇」として十分に成り立っている作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-21 23:46:42] [修正:2007-06-21 23:46:42] [このレビューのURL]

『寄生獣』との比較して評価の低い意見が目立つが、決してそんなことは無い。

『寄生獣』も含めた岩木作品の特徴は、型にはまらないが計算されつくした丁寧なストーリー展開にあるわけであり、そういう意味ではこの作品も、他の作品に全く劣ることの無い、名作と言える。

『寄生獣』はそもそも100万部単位でヒットしたこと自体がイレギュラーなのである。少なくとも作者本人は、『風子〜』の時と同じように、自分のペースで書きたい物語を書いただけであり、こんなに大ヒットするなんて本人にとっても意外だったことであろう。
たまたま一般受けする要素(感動とか泣きとか息詰まるバトルとか)がちりばめられていたために、あのようなビッグタイトルになったわけであり、本来ならば「知る人ぞ知る、個性的な名作」だったのである。

『七夕の国』は『寄生獣』と似たテーマを扱っておきながら、メジャーになる路線からずれたストーリー展開をしており、そういうのを期待していた読者にとっては肩透かしを喰らったかもしれない。しかし、それをもって評価を下げるのは、実は筋違いなのである。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-13 06:05:45] [修正:2007-06-13 06:05:45] [このレビューのURL]

少女漫画(厳密には違うが)の最も良質な部分が表れた作品。

多少ホラーめいた結末もあるが、大半はハッピーエンド。にも関わらずチープな話になっていないところが良い。

また、この作品において、登場人物全てに名前が存在せず、そのことが現実からの適度な離脱感と普遍性を与えている結果となっている。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-12 21:41:25] [修正:2007-06-12 21:41:25] [このレビューのURL]

この作品が『寄生獣』の前に書かれた作品であることに驚く人が多いみたいだが、私は逆に、ものすごく納得いった。

可愛い女子高生が喫茶店でウエイトレスのバイトをしており、そこでおこる日常のあれこれ、というあらすじだが、これだけ聞くとものすごくゆるくお軽い、萌え漫画のような気さえしてくる。しかし全然違うことは、実際読んで見れば一発でわかる。

登場人物一人一人が現実で生きているかのように意思を持って動き、その結果何かちょっとした(時には犯罪沙汰の話も出てくるが)出来事をまとめていく、ストーリーの定型パターンにキャラを載せるということは極力しないという誠実さをもって描かれている。

『寄生獣』でも、作品内で起こる出来事のスケールが大きくなっただけで、こういった地に足のついた誠実さという点では共通である。入れ物が変わっただけで、中身が変わったわけではないのである。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 21:26:22] [修正:2007-06-12 21:26:22] [このレビューのURL]

9点 蟲師

「蟲」の存在は単なるファンタジーではなく、現実に存在する「理性や科学だけでは理解しきれない何か」を象徴しており、それゆえに、この作品の持つ空気自体が、現実と非現実の挟間のような、独特のものをかもし出している。

これと似た世界観に『もののけ姫』があるが、これは大変動きの大きい話であるが『蟲師』はこれほど動きは無い。にも関わらず面白く退屈しない。静かなのに退屈しない物語。これは狙ってできるものではない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 21:00:40] [修正:2007-06-12 21:00:40] [このレビューのURL]

『天』で勝ちパターンを発見し、『カイジ』でメジャー系にのし上がったが、その後しばらく停滞、そして『最強伝説黒沢』で更なる飛躍を成し遂げた、と私は解釈している。

そもそも、『天』のヒットの前は主に人情ものばかり書いていた福本にとって、本当に描きたかったのは「弱者」であったのだろう。だから「強者が勝つ」物語以上に描きたかったのは「弱者が非情な現実をいかにして生きるか」であったのだろうと思われる。

その思いを達成したこの作品によって、シリアスだけではなく、ギャグ、コメディーまでも福本節にのせることに成功した。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-12 19:37:08] [修正:2007-06-12 19:37:08] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

『うしおととら』が少年漫画の正統派の道を進みきっているのであれば、『覚悟のススメ』は道ならぬ道を強引にかき分けている感じがする。不器用な人がのた打ち回りながら前進し続けていったら、誰にも真似できない独特の王道を獲得してしまったという点では、福本伸行にも通じるものがある。

最終回のまるで劇団のカーテンコールのような演出は感動の涙と笑いの涙が同時に出てくるような、異様なテンションがある。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2007-06-12 18:58:16] [修正:2007-06-12 18:58:16] [このレビューのURL]

単純にヴィジュアル面で、源氏の愛人たちの描きわけがきっちりできていないのはマイナス。ただでさえややこしく、それでいて重大な物語の核である人間関係が余計に分かりづらくなってしまい、「解読」に手間取ってしまう。

その点さえ除けば、複雑で難解な源氏物語の世界を、質を落とさず明確に漫画に翻訳できている。この作品を読むのと読まないのとでは、原作の難解さに対する抵抗が全く違うほどである。

現代とは全くかけ離れた平安時代特有の常識とか規則とか貴族社会とかが自然と伝わるように描かれており、その中で幸福も不幸もかみしめて生きていく人間模様を素直に楽しむことができる。


ちなみに、光源氏は現代で言えば木村拓哉のようなものであり、かっこいいことは認めざるをえないが、人間的に好きか嫌いかでいえば、判断が分かれるところである。(例えば谷崎潤一郎は嫌いだったらしい。)

この作者は光源氏の人間性に対してとても肯定的な見方をしており(要するにキムタクを「いけ好かないかっこつけ野郎」とは微塵にも感じていないファンのようなもの)、それゆえに、光源氏が不幸に陥っても「あんなにたくさんの女に手を出したんだから自業自得だ」というような突き放した表現があまりされておらず、終始同情的なまなざしを送り続けており、そこが受け入れられない人にはきついかもしれない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-06-12 16:41:17] [修正:2007-06-12 16:41:17] [このレビューのURL]

露骨な性描写が気持ち悪い。(無ければよい、と言うのではなく、描き方が生理的に合わなかった。あんなにモロでなくても、表現はできるだろうに。作者の趣味だから仕方は無いけど。)

それさえなければ本当に非の打ち所の無い作品である。

登場人物全てが理性的なところ、狂っているところをもっており、しかもその「狂っているところ」こそが、単なる個性を越えて、今の日本社会の「豊かなんだけどどこか壊れている」といった感じを上手に反映させている。

この作品全体からは、どこにでもいる「善人」に対する強烈な怒りを感じる。もちろんこの場合の「善人」は、

表面は問題の無いように取り繕い、肝心の臭いものにはふたをし、他人に対しても自分自身に対しても嘘をつきながらだましだまし生きていて、しかもそのことさえも認めようとしない「善人」である。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-12 15:49:17] [修正:2007-06-12 15:49:17] [このレビューのURL]

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