七夕の国のレビュー
8点 shutaroさん
「寄生獣」を期待すれば拍子抜けするであろう地味なSF物語。
核となる謎やそれを追う展開はあるものの、エンターテイメント性はあまり
なく、主人公も「活躍しない」ことで活躍する能天気な大学生だが、
それを補って余りあるほど想像以上に深く哲学的な作品でもある。
主たるテーマは「主体性」だが、そこから広がる死生観や宗教観を物語に
絡ませていく手法は素晴らしい。特に「窓の外」と言う言葉は、いわゆる
神の領域である不可知なるものを感覚的直感的に捉えた見事な表現である。
また、登場人物たちの行動がそれぞれ示唆に富んでいて興味深い。
立ち止まって考え、力を使う者は死して再生する事を選択し、
立ち止まって考え、力を使わない者はその人生を切り開かんとし、
立ち止まって考え、他に力と自らを委ねた者はあっけなく排除され、
考える事をやめ、流される者たちは畏怖と盲信の檻の中である。
これらの行動を見事にSFと伝奇的な物語とに融合させている。
忙しく生き急ぐ方々にぜひ一度立ち止まって読んでもらいたい。
現代の主体性を欠く風潮に喝を入れるばかりか人生訓から哲学までもが
入った、4巻と短いながらも考えされられる名作。
ナイスレビュー: 4 票
[投稿:2005-10-26 14:15:15] [修正:2005-10-26 14:15:15] [このレビューのURL]
7点 noriさん
骨組みが非常にしっかりしている作品。
最初の段階からかなり細かい設定を考えていたんだろうなぁ。
独自のミステリアスな雰囲気と謎だらけのストーリーでぐいぐい読ませる。
ささいな事件から物語は始まるが
最終的には壮大なスケールのSF漫画になっている。
この漫画のもうひとつのみどころは丸神頼之の存在力。
物語の最終段階まで彼の真の目的がわからなかったけど、4巻での
「つまりこれは『窓』ではなく、『玄関』ではなかったのか、とね」
このくだりだけで自分の中の丸神頼之の印象が一変した。
何百年にもわたる常識や悪夢に縛られず、自らの仮説を信じ命を賭ける。
思考停止をし歴史に従うよりは命を賭けてでも真実に近づこうとする頼之は魅力的だ。
はてして頼之は異星人の住む星へと行くことができたのだろうか。
もし会ったとしたら彼は異星人に何を話すだろうか?
あるいは彼がしたことはただの自殺だったのだろうか
読み終わってもいろいろと想像させてくれ余韻を残す名作
ナイスレビュー: 2 票
[投稿:2005-04-07 17:17:16] [修正:2005-04-07 17:17:16] [このレビューのURL]
8点 アメさん
面白いです。
寄生獣より地味という方もいますが、私はこちらの方が好み。
どこかの田舎の山里の集落(?)に、古くから守られてきた因習があり、里の民たちは外の世界にばれないようにその秘密を守っている、という設定だけで、都市伝説好きな人や秘境マニアなんかは絶対引き込まれると思います。
守られている秘密も、奇抜で面白いし、よそ者を排除し、逆に仲間(正確にはお殿様?)とみなした人にはガラッと態度を変える描写も、リアルに描かれていて説得力がある。
4巻と短いですが、きちんとまとまっていて、作品の完成度は高いです。
派手さはないけど、輝いている秀作。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2013-02-08 21:42:50] [修正:2013-02-08 21:42:50] [このレビューのURL]
9点 asd5さん
この作者の作品の中では、人気が薄い方だと思います。
但し、この作者の独特かつ強力な漫画力はここでも健在。
全4巻ということもあり、寄生獣とかに比べたらあっさり終わってしまいますが、しかしやはり面白い。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2013-01-14 23:50:46] [修正:2013-01-14 23:50:46] [このレビューのURL]
8点 ITSUKIさん
同作者の「寄生獣」などと比較してしまうとどうしても地味な印象を持ってしまいますが、とても綺麗にまとまっている良作です。
序盤からの謎・伏線がしっかり解き明かされていく様は読んでいて爽快でした。
改めて読んでみるとキャラクターのインパクトが主人公やその周りのキャラに若干足りないですが、ストーリー構成が良いのでそこまで気にする程でもありません。
SF漫画好きな方には寄生獣をまず薦めますが、そこから「もっとSFの漫画が読みたい」あるいは「岩明先生の漫画が読みたい」と思った方に薦めます。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2010-03-14 23:28:34] [修正:2010-03-14 23:28:34] [このレビューのURL]
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