「kamekame」さんのページ

総レビュー数: 21レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年07月28日

5点 海皇紀

文明が衰退した時代に、天才的な船乗りで武道の達人でもある主人公が
帆船を巧みに操り世界のうねりに身を投じていく・・・。
海皇紀の名に恥じないスケール感のある物語。
特に帆船による海戦は、本当かどうかは別にして
大変リアリティを感じさせ読むものを一瞬で虜にする。
素晴らしい作品・・・になるはずだったが、個人的には失敗してしまったと思う。

プロットは完璧だったと思う。
古の文明が残した魔道と言う名の科学、魅力的な海の一族、若き大陸の霸王と天才軍使、
大陸一の兵法者、闇の魔神衆、主人公の母、魅力的?なヒロイン達等々、
ライバルから味方まで主要なキャラクターを早い段階から配置する巧みさ、
なによりも帆船の操船というほとんどの人間が知り得なかった世界の真新しさ。
事実、王海走という次代の海王を決める大型帆船レースの直後までは10点満点の出来映え。
しかし、最終的な敵(もしくは敵勢力)に魅力がなかったこと、
序盤から暖めてきたキャラを生かし切れなかったこと、
満足のいく伏線の回収が出来ぬまま尻すぼみにエンディングをむかえてしまう…。

決してひど過ぎる作品と言うことはない。
序盤の出来に過度に期待し過ぎて、私が勝手に裏切られた思いになっているだけかもしれない。
でも45巻と言う長さを考えてもいまひとつやり切れない。
そんな気持ちを言葉にすると「ヘメロペカペカ」…。文字通り言葉にならない。

作品の完成度が低い訳ではないので、5点の評価です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-10-30 21:50:08] [修正:2010-10-30 22:14:33] [このレビューのURL]

もっと1つ1つのエピソードを丁寧に描いて欲しかった。
各時代のシーンが唐突に織り込まれるので、状況をつかむのに時間が掛かる。
膨大な時を過ごしていく主人公達にもかかわらずキャラクターに厚みが増していかないので、
感情移入がほとんど出来ないシーンが続く。

いきなりネガティブなことを書いてしまったが、この作品がつまらないということではない。
不老不死の吸血鬼伝説と義経、弁慶の主従を絡ませた原作のプロットは本当に新しい。
能の黒塚とも違う、ひとつのSF作品として見事に成立していて
野口賢の絵とのマッチングも素晴らしい。

コンパクトに10巻にまとめられているので、気軽に一気読みが出来るのもポイント。
オススメできる良作漫画だ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-10-19 15:14:46] [修正:2010-10-20 11:36:07] [このレビューのURL]

名作。考えられた構成でフィナーレまで一気に突っ走る。
物語を形作る上で余計なものがなく、引き延ばしの気配も微塵も感じられない。
ファンが多いのもの頷ける。

大きくとらえて以下の物語の軸となるものがあると思う。

まず第一に潜水艦と言う特殊な兵器を扱ったこと。
それが引き起こす様々なシチュエーションが新鮮でならない。
戦闘シーンは深海という、これまた光もレーダー届かない世界の特殊性も手伝って
見たことがないバトルシーンをリアルな描写で見せてくれる。

第二に核兵器という題材を取り扱ったこと。
抑止力と言うものを考えさせられるのだが、これによって心理戦の面白みに厚みが出ている。

第三に外交を含む安全保障の問題を取り扱ったこと。
日米関係、政党再編、自衛隊問題、国連、付け加えてロイズ保険…。
すべてのことに答えを出していく訳ではないが、エンターテイメントとして
扱い辛いこれらの要素が生き生きと描写される。

以上の三つの要素が海江田艦長とその理念を中心とした渦の中で
ストリートして紡がれていく様は圧巻。

たしかに情報量が多く32巻と言う長さはかなりのボリュームで、
読むのは大変だが、まだの方は是非読んで欲しい。

蛇足だが、昨今の日本を取り巻く情勢(対米、中、ロ、朝)の中で改めて読み直してみると
連載当時とはまた違った味がある。参考になるとかいうバカな話ではなく、
色々な判断をする上での自分お立ち位置の確認や、
しっかりした情報の取捨選択の必要性など、改めて考えさせられた。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-10-01 17:43:26] [修正:2010-10-01 17:43:26] [このレビューのURL]