「ほげ」さんのページ

[ネタバレあり]

僕は、学園ドラマとか青春モノとかいう世界観が余り好きでなく、なじめないものが多いのだが、『今日から俺は』のように、あっけらかんとして、ギャグで疾走してくれると読んでいて凄く楽しい。学園ドラマにありがちな純粋な友情もあるにはあるが、高校生の友情という限定された範囲の中では、深刻なものは受け入れ難い。読んでいる一部の同世代の読者にはそれでもいいのかもしれないが、成人を迎えてしまうと、なんだかなーと思ってしまう。

その点、『今日から俺は』は、友情といっても、隣町の高校生とバトルする時にグッとあつくなる程度で、普段は空気のような関係を保っている。いざとなる時は熱いが、その熱さも限定的なもので、すぐほんわかしたギャグで帳消しにするので、青臭さが少ない。『今日から俺は』と同時期に連載していたジャンプの『ボーイ』は、逆にギャグが構造にあるわけじゃなく、根本がシリアスで、なおかつキャラクターがその世界観にのっとって格好をつけているので、読んでいて醒めてしまった。

『今日から俺は』は、『うる星やつら』と同じで、ずっと同じ時間の中で物語が進んでいる。誰も成長しないままである。漫画の中で、ヒロイン(?)・理子が、主人公の三橋がどういう大人になるのかを想像して右往左往するシーンがあるが、現実が考えたら、三橋みたいにバカをやっていたら、右往左往したくもなろう。だが時間が停まっている世界の中だから、そんなことは気にしない。気にせず楽しむまでである。ケンカにあけくれ、遊ぶ毎日である。

理子と三橋、今井と涼子の恋愛も結局は成就しないが、それも時間の停まった物語だから許容されることだ。成就したら物語の終わり。『めぞん一刻』も最終回になってしまった。ギャグで通りぬけられるほど、楽しい『今日から俺は』の世界は、ずっと過ごしていたいけど終わらなくちゃいけない高校時代をフィクションゆえに「終わらないもの」として描く、青春漫画の定石として評価したいと思う。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2005-09-21 00:20:25] [修正:2005-09-21 00:20:25]