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7.35点(レビュー数:73人)

作者井上雄彦

巻数37巻 (休載中)

連載誌モーニング:1998年~ / 講談社

更新時刻 2012-10-08 12:32:16

あらすじ 吉川英治の『宮本武蔵』を井上雄彦がアレンジ。

備考 「バガボンド(vagabond)」とは英語で“放浪者”という意味。小次郎編終了後、「キャラの気持ちが分からなくなった」との理由で1年間の休載を挟んだ。作者は2010年に正式に年内終了を宣言したものの実現せず、2015年を最後に続きを描いていない。

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バガボンドのレビュー

点数別:
26件~ 30件を表示/全73 件

9点 B・Aさん


『弱点は残されつつも、その長所が限りなく伸ばされた作品』


この作品を読んだ時、微妙に違和感を感じます。
それは主人公や他の登場人物に共感出来ないからです。

剣の道をひたすら追求する武蔵、剣を交えることで相手と交流する小次郎、その他又八や胤瞬や伝七郎など様々な人物が出てくるのですが、どうにも入り込めない。

なぜ『スラムダンク』のようにはいかないのか?

それはある意味で、作者井上雄彦の弱点を露呈していて、今までやっていた少年誌の文法をそのまま青年誌へ持ってきたことによる違和感を解消できなかったことが原因だと思います。

ただ、じゃあ出来上がったものをみてどうかと言われると
さすがに他の凡百のマンガとは比べられない抜きん出た作品であると思います。
事あるごとに読み返すし、読むたびに惚れぼれしてしまいます。


では(僕が感じる)弱点とは何か?そしてどこに惚れたのかを語らせて頂ければと思います。


●短所、少年誌の文法とは

少年誌の文法とは、特にジャンプ系で顕著なのですが、まず魅力的な主人公をつくり、それをどれだけ際立たせられるかにほぼ全ての力を降り注ぐというやり方です。

『ドラゴンボール』の後期などが顕著ですが、目の前の戦いにすべてのエネルギーを注ぎ込むために、その後の展開という広い視野で語ることが出来ない作り方を(ほぼ意識的に)しています。

もっと簡潔に言うならば『魅力的な主人公に共感できる』のが少年誌の特徴であり、『人物だけにスポットを当てるのではなく、ちゃんとお話として楽しめる』ことに注力しているのが青年誌であるとも言えるのです。

ただ、ひとつだけ言いたいのは、『だから少年誌系がダメ』という訳ではないということです。僕個人もそういうジャンプ世代で育ちましたし、その魅力は青年誌にはないものだとも思っています。


●では『バガボンド』の短所とは

『スラムダンク』という誰もが認める名作を世に出した後に、作者井上雄彦はモーニング誌上にて『バガボンド』を発表して皆を驚かせました。

それはあの吉川英司の『宮本武蔵』かという驚きと、井上雄彦が青年誌に来たのかという驚きでした。あの絵のうまい人が宮本武蔵を描く。まるで王道中の王道のような作品です。面白くない訳がない。

ただ読み続けるうちに、妙な違和感を感じました。なんとなく感じる居心地の悪さ。

それは後になって気づくのです。これは共感するマンガではないんだって。

武蔵はひたすら剣の道を追求していきます。それこそ流川楓のように、桜木花道のように。
けれどそれは『どうやれば人を殺せるか』という手段の追求であり、途中から武蔵が一生懸命悩んでいるのは、簡単に言えば『人を殺していい理由』を求めているからです。

それが少年誌で連載されるバトル物であれば問題なかったと思います。

けれどここは青年誌で死という概念がもっとリアリティをもって描かれている舞台なのです。斬れば腕はちょんぎれますし、やられた人間は実は生きていたなんてことも出来ません。
一生懸命悩んだとして、その結果相手と殺しあうという構図は一体どれほどの共感を得られるのでしょうか。

もし青年誌として描くのであれば、そこに持ってくるのは共感ではなく、何を考えているのか分からない(むやみに心の中を覗かせない)人物を描くべきだったんじゃないかと思うのです。

例えば伊藤一刀斎のような常人にはなかなか理解しがたい人物を描く方がうまくいった気がするのですが、それはまぁ後だしジャンケンみたいなものでただの難くせなのかもしれません。


●では『バガボンド』はどうだったのか

ではバガボンドはどうだったのか。

僕はとても好きです。これだけグダグダと文句をつけてもやっぱり絵の素晴らしさというのはかけがえのない魅力です。

特に後半にかけての凄みが尋常ではありません。

青年誌ということもあり(ここではこれがいい方向に効いています)、実際自分の目では見たことのない斬り合いをリアリティたっぷりに感じることが出来ます。

特に斬り損ないの描写がいいんですよね。
ちゃんと振らないと斬れなかったり、斬り過ぎて刀が曲がってしまって鞘に収められなかったりと今まで小説では読んでいたけども、マンガでは見ることの出来なかった描写をふんだんに取り入れ、それが余計に命のやり取りをしているんだという切迫感を増してくれます。

とくに吉岡一門との対決は、あの長い分量を使ってひたすら切り結ぶという
『スラムダンク』のラストを彷彿とさせる、いやそれを越えたといっても過言ではなくくらいすごい描写でした。

あの徐々に疲弊していく武蔵に、次々と殺されていく吉岡十剣たち。あの迫力は他のどんなメディア(小説、アニメ、映画等々)にも優るとも劣らない素晴らしい出来だったと思います。

それだけでも青年誌で描いた意義はあると思います。前半と矛盾しますけど。


これからバガボンドは小次郎との対決に向けて終局へと近づいていくわけですが、それがどんなラストになろうとも、ここまでですでに語るべき作品になっていると思います。


もし少年誌でバガボンドを連載してたらどうなっていたかな、ってちょっと思いますけど(笑)。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-08-10 05:36:06] [修正:2010-08-10 06:03:20] [このレビューのURL]

8点 トトさん

絵と演出は本当にすばらしい。
もう言葉に表現できないほど。

でも展開が遅い上、小次郎編までだしてしまったのでもう途中からなにがなんだか・・・。

完結してから単行本で一気に読んだらたぶんもっと点数は高くなると思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-01-12 15:52:12] [修正:2010-07-23 12:29:00] [このレビューのURL]

8点 あんりさん

絵がうまい
人の動きとか背景とかがすごい

読みごたえ十分
石舟斎との邂逅がいい
 
感覚的で芸術的
がんばれ


ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-04-21 20:59:43] [修正:2010-06-03 18:05:55] [このレビューのURL]

3点 いーらびさん

志の高い最初は凄く良かった。

最近は分厚さの割りに内容ペラペラ。
斬り合いの描写にページ使いすぎ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-04-16 11:12:30] [修正:2010-04-16 11:12:30] [このレビューのURL]

10点 shinpe-さん

10点をつけるのに迷いました。なぜなら吉川英治の原作を未読の自分(原作よりも漫画を手に取ったのが早かったので、読まないようにしているんです)が、果たしてこの作品の価値を本当に計る事が出来るのか、と。でも10点つけました。どれだけ魅力的な原作の助けを得ていたとしても、絵と言葉によって表現される漫画というメディアの最先端にいる、という評価は他のどの漫画の追随も許していないと思うので。

宮本武蔵という歴史上の人物の価値は、彼が剣豪として強かったということに現れているのではなく、深淵極まりない肉体と精神の結合を体現したことにあるのだと思います。単に人に勝ち、その結果人を殺めてしまう道具としての剣ではなく、「天地とひとつ」となるための道としての剣。その葛藤の中で生きる武蔵の姿を、書いている井上さんの苦悩までも伝わってくるような息づかいで記しています。

絵はみなさんの述べている通り、素晴らしいの一言。BRUTUSの特集で美術評論家(だったと思います)の方が「現在活躍されているどの日本画家よりも画力が高い」と述べていました。個人的には、スラムダンクよりも秀逸かつ唯一無二(この作品に関しては、「天下無双」と呼ぶべきでしょうか笑)の作品だと思います。未読の方が心底羨ましいと思えるほど、素晴らしい作品です。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-03-01 12:47:03] [修正:2010-03-01 12:47:47] [このレビューのURL]

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