「アメ」さんのページ

総レビュー数: 22レビュー(全て表示) 最終投稿: 2013年02月05日

6点 COPPELION

 個人的には面白くて楽しめる。

最大のネックは、東日本大震災以後、我々が原発や放射能について、ある程度の知識を身に着けてしまったことか。被害の悲惨さを見聞きしているなか、バトルばかり続くこの漫画に、違和感を抱いてしまう可能性はあると思う。

リアリティーという面で、コミカル過ぎる各国首脳の描かれ方、天才科学者というだけで何でも作れてしまうような安易さも、難点と言える。科学的なつっこみも、入れようとすればいくらでも入れられると思う。

 ただ、廃虚としての東京に制服姿の女子高生を据えた、という設定自体は秀逸だと思う。基本的には倒した敵が味方になっていくようなバトル漫画で、放射能、原発という言葉から連想される社会的・政治的問題はあまり前面に出てこない。それぞれの少女の魅力を楽しむ気で読めば、楽しく読める作品だと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 21:09:47] [修正:2013-02-06 21:09:47] [このレビューのURL]

 ゾンビものとしても、最近っぽい鬱系漫画としても、冒険活劇としても中途半端な印象。

 ゾンビものとしては、ゾンビの怖さが足りず、追いつめられるパニック感が薄い。鬱系漫画としては、あんまり鬱じゃない。冒険活劇(作者はそんな気で描いていないかもしれないが)としては、爽快感が薄い。

 リアルに描かれた背景、半ゾンビ化した少女の見るシュールな風景、草食系男子が戦っていく構図など、今っぽい要素が盛りだくさんだが、なぜか全て作為的に見えてしまう。主人公や少女がいまいちリアルに感じられないからではないか。

もう少し内面に踏み込んで人間性を際立たせて欲しい。ただ逃げながらゾンビを倒していくというストーリーに鬱っぽい要素を足しただけでは、物語をドライブしていく力に欠けるように思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 21:05:57] [修正:2013-02-06 21:05:57] [このレビューのURL]

 戦闘機好きにはたまらない漫画。

登場する機体は多少古いが、東西(という言い方も古いが)陣営の様々な戦闘機が登場し、ドッグファイトを繰り広げてくれる。

機銃ばかりでミサイルをほとんど使わない点や、傭兵パイロットの雇用形態、モグラマシンのような奇天烈な兵器の登場など非現実的な点もあるが、そんなことは気にならないくらいワクワクさせられる。

エースコンバットのようなゲームが好きな人は、絶対に読んで損はないと思う。絵柄が少女漫画チックだが、内容は完全に戦場漫画なので問題ない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 21:01:47] [修正:2013-02-06 21:01:47] [このレビューのURL]

 朗読がこんなに面白いとは、と思わせる力を持った作品。

最初に朗読されるのは、誰もが知っている宮沢賢治の「やまなし」(クラムボンは笑ったよ、というやつ)で、これを読み解いていく過程で朗読とはどういうものかが説明される。朗読する作品内の登場人物の立場を読み解き、セリフに情感を込める、という過程が、やまなしに出てくる二匹のカニの立場を考える形で説明される。私はこの作品を読んで、初めて「やまなし」の内容を理解できた。

また、「ぼろぼろな駝鳥」(高村光太郎)という作品では、最後の一文だけ話者が「作品の筆者」から「ダチョウ」に変わる(という解釈を主人公が行っている)。その朗読の場面では、話者の変換による衝撃的な効果が臨場感に満ちて表現されており、声が聞こえない漫画であるにも関わらず、朗読の面白さを十分に伝えている。

 題材は異色だが、朗読に対する説明も十分で、主人公の成長・親友とのライバル関係といった要素もあり、今後に期待ができる作品。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-02-06 21:00:04] [修正:2013-02-06 21:00:04] [このレビューのURL]

 海保ものとしては、海猿より面白いと思った。海猿の主人公の変な正義感が鼻についた分、こちらの方がさわやかで楽しかった。

 作中で最も面白かったのは、海猿でも同様だったが、やはり訓練過程の部分だった。見たことがない器具や練習方法、少しずつ力がつき、仲間同士の信頼感も増していく様子など、訓練ものはやはり少年漫画の王道なのだと感じた。潜水士ものではないが、「宇宙兄弟」でも、やはりJAXAでの訓練(というか選抜過程)が面白かった。

 主人公は少年漫画らしく熱い男だが、脇を固めるキャラクターたちもクセがありつつ魅力的で、訓練終了後、そうしたメンツとチームを組んで海難救助を行っていく場面も胸が躍った。

 人命救助のために時に非情になる必要性も、主人公のライバルに言寄せて描かれており、単なる熱血と情緒に流れすぎない点にも好感を持った。

 ただ、最終盤にかけては徐々に失速していったイメージ。ある種のバッドエンドとも言える終幕なのではないか。主人公の根本的な問題(問題と言えるかは別として)は、解決されずに終わった形で、その点に少し不満が残ったが、基本的には笑いあり涙ありの王道少年漫画で、自信を持って勧められる。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-02-06 20:53:10] [修正:2013-02-06 20:53:10] [このレビューのURL]

 最愛の妻を亡くしたことを題材にした作家魂には素直に頭が下がる。

ただ、残念だがあまり感情移入ができなかった。作者がモチーフと距離を取り切れていないというより、取り上げたエピソードの力が少し弱いと思う。

漫画ではないが、同様の状況で書かれた城山三郎の小説「そうか、もう君はいないのか」に比べると、胸に迫る切なさの面で差を感じた。好みの問題かもしれないが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 20:49:58] [修正:2013-02-06 20:49:58] [このレビューのURL]

 無職の父親、酒と男にだらしない母親、新興宗教にかぶれた両親を持つ境界例っぽい女の子、常識人のようだが意志が弱く欲望に流されて人を傷つけてしまう叔父など、シリアスな問題を抱える人たちが目白押しで出てくる。

好みの問題だが、この容赦ない鬱々とした雰囲気はとても良くできていて引き込まれる。

 作品の最大の特徴は、主人公とその親族が可愛らしい鳥の姿で描かれていること。この仕掛けによって、内容が陰惨で泥臭くなりすぎず、作品が透明感のあるものになっている。主人公が記号的な分、ゆがんだ世界を素通しで見られる感覚。

 ただ、お話の行き着く先が見えない、展開が遅い点が気にかかる。悲惨な話が続くだけでマンネリ化してしまわないか心配だ。

個人的にとても好きな作品なので、どこかで突き抜けて、うまく着地(どんな形でも)させてほしい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-02-06 20:47:30] [修正:2013-02-06 20:47:30] [このレビューのURL]

6点 惡の華

 ヒロインの仲村さんのSっぷりが、とても小気味よい作品。言葉遣い、表情、態度などがとにかく魅力的。

 反面、それに引きずられる主人公の春日は、ややステレオタイプで魅力が薄い。「中学生の自分」「ボードレールを読む自分」「世間から理解されない自分」「世の中は生きづらいと感じる自分」といういわゆる中二病設定は、もはや形式化していて逆にあざとさを感じさせてしまうのではないか。

 さえないはずの主人公が、簡単にクラスのヒロイン(仲村さんではない)に好意を持たれる点もリアリティーに欠け、もてない男のルサンチマンが裏返った選民意識という「若さゆえの恥ずかしさ、ほろ苦さ」みたいなものがうまく伝わってこない気がする。

 ただ、仲村さんの造形はやはり秀逸で、その魅力だけでも読み続けたい気になる。

 空疎になる気がするので、今後は変に文学的にならないことを期待したい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 20:28:23] [修正:2013-02-06 20:28:23] [このレビューのURL]

 全国民は小学校入学時、ある液体を注射される。液体には、0.1%の確率で時限的に効果を発揮する微少カプセルが入っており、「当たった人」は18?24歳までの間に突然死する。

 国民に死の恐怖を植え付け、生命の大切さを知らしめることで日々の生産性を向上させ、国家繁栄につなげる狙い。該当者には死亡24時間前にその事実が知らされ、それを伝える文書が「イキガミ」、主人公はその配達人だ。

 イキガミという設定自体がまず秀逸で、その点だけでも高く評価できると思う。

 死を目前にした人間ドラマが展開され、命とは何か、制度とはどうあるべきか、などを描くことにある程度成功している。

 ただ、残念なことに、途中からは、イキガミをもらった人間が残りの時間をどう過ごすか、といったバリエーションを見せられる展開が続くことになり、マンネリ化してしまった。

 主人公がイキガミ制度自体に疑問を感じたり、反体制派にはスパイが目を光らせていたりといった要素もあるので、その辺をさらにふくらませて、行き過ぎた管理社会によるディストピア像を詳しく構築できれば、重厚な作品になっていたのではないか。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 20:18:43] [修正:2013-02-06 20:18:43] [このレビューのURL]

 頭が金魚鉢の男に噛まれて血を吸われると、人間が金魚になってしまう。救う手だては、傷口からその人の血の中に入り、金魚の形をした「金魚毒」を退治すること。その「血潜り」ができる女の子はなぜかスクール水着でドジっ娘で、という設定。

 キャラクターは萌え風味の絵柄だが、背景や金魚鉢男はホラーチックなタッチで、味わい深い世界を描き出している。人間がどんどん金魚にされているという世界観も異様で面白い。

 ただ、作品の雰囲気はほのぼの日常漫画系。血潜りが下手な女の子と、それを助ける男の子が、金魚毒退治を続けていくというプロットが繰り返される。ホラー路線にもシュール路線にも舵が切りきれていないとも言え、その点に物足りなさが残る。

 ホラー要素、シュール要素のどこかで、無意識に突き刺さってく
るようなモチーフやアイデアが出てくれば、ほのぼの漫画から一歩抜け出せると思うのだが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-02-06 20:08:31] [修正:2013-02-06 20:08:31] [このレビューのURL]

月別のレビュー表示