「橙木犀」さんのページ

総レビュー数: 63レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年05月29日

様々な悲劇と祖国を覆う戦乱の中、自らの未熟さと世界の厳しさをまっすぐに見据えて進む少年将軍の物語。
弱冠17才で国を動かす力を持つ将軍に任じられたという設定から、完全無敵な天才タイプかと思いきや、深謀遠慮の域にはまだ到達しておらず、主人公のマフムートは確かに聡明で武術に優れているものの、自分の感情にまかせて単独行動に走ったり、矜恃から来る過信でミスをしたりしています(既読3巻までの中で)。
ですが、清廉で思いやり深く、自分の間違いを振り返る冷静さを併せ持ち、時に甘いとさえ言える優しさをふと見せる。なので、彼の成長を自然と応援したくなります。
ただ、大陸全土を巻き込む戦乱期を舞台としているため、相次ぐ戦乱と戦闘描写にちょっと疲れてしまうかも。時折でいいので、ほのぼのとしたり心温まるような話も織り込んで欲しいです。
登場する国や民族はモデルとなったであろうそれらが推測でき、「あ、この国はあそこがモデルだな」「この民族はあの2つの民族が組み合わさって作られてるのかな?」と考えたりするのが、とても楽しいです。
敵方や嫌悪したくなるような人間にも、そこに至る事情や信念、政治哲学があるので、単純な勧善懲悪ものに止まらない物語に興味を抱かずにいられません。
あと、タイトルの「アルタイル」の意味が分からず調べてみた時、物語と相まって元々の言葉の意味に思わず胸打たれてしまいました。若き鷲が飛翔するさまを手に汗握り、見届けたいと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-06-16 00:56:05] [修正:2011-06-16 00:56:05] [このレビューのURL]