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9点 刑務所の中
刑務所の中における生活を描いた芸術作品。
こう聞くと,あなたは何を思い浮かべるでしょうか?
刑務官による受刑者への暴行,それに対する抗議。
いわば,芸術を通じて刑務所を左翼的に社会化する発想。
あるいは,刑務所の中において通読することが可能な文書類によって得た知識を元にして,文盲の人間が文学作品を昇華していく。
読者にしろ,批評家にしろ,彼をとりまく「読む者」は,一人の受刑者を作家たらしめていく。
しかし,そうした芸術作品は,我々の心に響いてくるかもしれないが,既にありふれてはいないか。
刑務所と芸術。
そうしたインパクトのある対象を芸術家するという発想は,既にありふれてしまっている。
僕なども,リストカットや売春,麻薬,覚せい剤,バイオレンス,殺人などのモチーフがある芸術作品を,衝撃を求めて摂取してきましたが,もう飽きてしまいました。
なんというか,主人公をダークな方向へと引き寄せ,特殊化していくという芸術表現にうんざりとまではいかないまでも,うざったくなっちゃったんですね。
「ナニナニ?そんなに共感してもらいたいのあなたは?」などと悪態めいた戯言をうそぶいてしまいたくなるほど,主人公の特殊化はありふれてきた。
結局,特殊化することが目立ちたがり屋へと転換するように受け手の僕は感じちゃうわけですね。
でもやっぱり対象としてダークなものはみたくなる・・・
そんな矛盾した状態の中で悶々としていた中,ふと手に取った漫画が,この『刑務所の中』なんですよ。
刑務所に受刑者として拘置された漫画家の手になる漫画作品。
一見,上記の例に通じるような気がします。
でも百聞は一見に如かずのことわざ通りなんだけど,刑務官の暴力はでてこないし,そもそも作者の国家への反抗的精神がまるででてこない。
自殺しちゃった小説家・見沢知廉がそうなんだけど,自分で人を殺しておきながら受刑者になってみれば行政がうざいと思う精神がでてくるのが普通でしょう(彼の場合拘置されていたのが12年とわりと長い期間だったからというのもあるし,元々が資本主義的無政府主義者だから)。
行政と個人という対照的関係ではなく,まさに漫画のタイトル通りの刑務所の中における個人の生活というのが,この漫画のスタンス。
朝何食ったとか,刑務所での風呂はこうして入るとか,身辺雑記的な描写が羅列されている。
花輪独特の緻密な描写で刑務所の生活を描いているから,過激なイベントがまるでないにもかかわらず,なんだかすごくドキドキしちゃう漫画なんです。
描き方は極めて静謐で何が起こる訳でもない。
三年間の拘置生活が楽だったはずはないが,のんびりとした,いかにも勤め人にはできない根無し草の芸術家らしい創造へと転化させようとする引力によって漫画が描かれている。
だから,物語も起こらないのだけど興味深く読めるし,こういう表現で刑務所を舞台にした芸術もありだなーと思っちゃう。
この作者・花輪和一という漫画家は,モデルガン集めが高じて,銃刀法違反で逮捕されることになった訳なんですが,基本的に趣味に生きる人なんだなあと感じますね。
僕は趣味より経済ってタイプなんで,とても花輪のようには生きられませんが,カネはなくとも被扶養者はいないし,好きな芸術で食っていけるという人生は,「if」的な世界として憧憬したい部分はありますよね。
もし人生を何回かやれるんなら,花輪的な生き方っていいなーと思っちゃう。
そもそも黒田硫黄とかつげ義春の漫画が好きっていう僕の嗜好自体が,そっちへ憧れだけはあるってことなんですがね。
みなさんも,結構固いお仕事されてたり良い学校通ってたりするんだと思うんです。
でもねー,たまにはコッチ系にこない?って,刑務所というダークなものが手招きしてることをお忘れなく。
こっちもどっぷりつかって,疲れない程度には表現も物語もゆるゆるですから何も心配なしです。
一度刑務所に入ってみるのも悪くねえなあと読後に思わせるほどの,花輪和一の世界を楽しもうとする姿勢を感じられるいい漫画です。
余談ですが,この漫画,無能な映画監督によって映像化されているけれど,漫画の味が全然分かってないので観ないほうがいいです。
この人,最近も高名な娯楽小説を映画化して,個人的には噴飯の作品にしました(こんなのを,日本の映画界も批評家も賞賛しちゃうんだよね)。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-10-09 15:44:00] [修正:2006-10-09 15:44:00] [このレビューのURL]
1点 ドラゴンヘッド
読み終わったあと損した気分になります。
そんな終わりでした。
なんの謎も明かされず、ラストは精神論って・・
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-10-08 16:10:44] [修正:2006-10-08 16:10:44] [このレビューのURL]
9点 敷居の住人
熱いメッセージや目の覚めるような成長も別になく、緑の髪した少年を一歩引いた目線から観察しているだけの思春期マンガ。
なんて言うんだろう、この感覚は。志村貴子さんの作品を読むといつも感じるこの心に染みるおもしろさ。
独白が多くて、セリフが極力削がれた静かな心理描写。空白を多く残した白くて引き込まれる絵柄。妙にリアリティ漂う空気。
ああそうか、これはあれだ。『シンクロ』だ。
他人事じゃないからこんなに染みるんだな。
つまり私は「本田くんモード」だったり「キクチさんモード」だったり、「敷居の住人」をズブズブ読んでいる時、すっかり彼彼女らと同調して(させられて)いるのである。
夜の歩道橋で主役二人がなんとなくぐちり合うシーン。私の居場所はきっと現実ではなく、マンガの中のキャラの中なのだ。
うーん、こんなマンガはなかなかお目にかかれない。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-10-04 04:50:52] [修正:2006-10-04 04:50:52] [このレビューのURL]
8点 クッキングパパ
料理漫画はやはり料理が美味しそうに見えてなんぼだと思うんですが、その点についてこの作品はかなり優秀。
食欲を刺激するのはもちろん、料理をつくりたくなってくる。
作品全体を包む雰囲気はザ・アットホームといった感じ。
ありがちな料理対決なんかは一切無く、ただひたすら人情物に料理をからめてエピソードを作っているのが良いです。
(この作品の料理バトル路線なんて想像も出来ないなぁ。全国のクッキングパパたちと戦っていくとかか?)
日常マンガですが作品内で時間がまったく進まないタイプでは無く、徐々にキャラクターたちも年をとっており、連載当初は小学生だった息子もいまや大学生。
かなりの大長編となっています、というか連載開始から20年か…
料理というしばりの中でよく続きますね。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-10-03 17:30:49] [修正:2006-10-03 17:30:49] [このレビューのURL]
10点 よつばと!
ノスタルジーなんて一切なし!
あの頃はよかったな…
若い頃に戻りたいな…
なぁんてことはまったく思わない。自分もまだまだ最高の日常の中に居るんだ!と気付かされる漫画。
だって、登場人物みんな、すっげぇ楽しそうに、すっげぇ普通の日常を送ってんだもん。これならできる。
人生がちょっと明るくなりました。10点満点。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-10-03 00:09:42] [修正:2006-10-03 00:09:42] [このレビューのURL]
7点 べしゃり暮らし
修羅場の場面や、ピリピリした空気など
この絵柄、この画力だからこそ表現できているリアリティと言うものがあります。
ストーリーも先が気になる展開で、文句なしに面白い漫画です。
イマイチ腑に落ちない点もありますが、本誌で切られた理由がわからない…。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-09-28 08:55:56] [修正:2006-09-28 08:55:56] [このレビューのURL]
10点 寄生獣
見所は本筋のサイドにあり。
シンイチがくらわした有毒物質は人間が産んだもの。それに助けられ、生き延びた。
巻を増すごとに深くなるミギーとシンイチの会話。人間とは?寄生生物とは?
まだまだ他にもあるけど、こういうのまで読み取れるからこの漫画は名作と呼べるのだ。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-09-28 00:40:33] [修正:2006-09-28 00:40:33] [このレビューのURL]
8点 めぞん一刻
キャラの配置やリアルさ、あと展開の良さにおいては、めぞん一刻と寄生獣は理想的な長編だと思っている。
ちょっと時代を感じるが、ラブコメと括るのにはもったいない、恋愛ものの傑作。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-09-28 00:18:03] [修正:2006-09-28 00:18:03] [このレビューのURL]
3点 いちご100%
とにかく主人公の男がなんか人間的にむかつくんですよね。
だから異常にモテる意味が理解できず、感情移入も出来ませんでした。
主人公の性格さえ違えばもっといい漫画だったと思います。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2006-09-27 06:51:26] [修正:2006-09-27 06:51:38] [このレビューのURL]
5点 涼風
何故か1巻の帯ではハーレムラブコメであることを
やたらと強調していたのに、どういう風の吹き回しかその後「高校生陸上純愛ラブストーリー」になっていたのに編集部側のご都合主義さを思い知らされた・・・。
ここまで様変わりするとは。
絵は上手い。非常に上手。ご都合的な感じがする話を
カバーしている感じ。(嫌いな人は嫌いだと思うけれど)
陸上のパートはあまり無い。とくに、最近は
その傾向がかなりある気がする。
主人公が「何こいつ、痛すぎなんじゃないのか?」と思ったけど、そのヘタレっぽさが高校生らしいというか。でもちょっとは成長しろよ・・・。 情けないぞ!
でも、やっぱり行動的には全く褒められないよなあ、うん。
真中と変わらないぞお前。
同系の「なぎさMe公認」と比べて青臭さというか
精神的な恥ずかしさが無いぶんとっつきやすい感じが
すると思います。
ただ、ストーリーの展開が下手すぎ。
いや、もう本当下手。
大島司から何を学んだんだ、瀬尾!
絵は10点でストーリーが0点なわけで、
結果的には5点になったわけです。
次からは原作つきで連載してくださいと
切実に願うのでした。
以上、13巻&公式ガイドブックまで所持してしまっている
ものからの一言でした。
ナイスレビュー: 1 票
[投稿:2005-05-31 06:37:18] [修正:2006-09-27 05:48:33] [このレビューのURL]