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総レビュー数: 52レビュー(全て表示) 最終投稿: 2008年10月09日


熱くて、青臭くて、読むと疲れる漫画。こういった作品を描くことのできる女性漫画家は稀だ。いや描こうとする、といったほうが正しいか。いずれにせよ、最近の漫画には希薄な傾向を持った漫画である。

刃の切っ先を突き付けられるような感覚を抱きながら読んだ。そう、無意識のうちに恐れを抱きながら。

自分の心を無意識のうちに包んでいるオブラートを、読んでいくうちに、一枚ずつ剥がされていく感じだ。作者は問いかけてくる。夢とは何か、自分とは何か、友情とは何か。自分で言葉にうまくまとめることもできないし、口に出すのも恥ずかしいテーマである。また、成人となり、そういった類の事柄を幼少の頃よりも抑圧しながら生きている身としては、直視することが難しいテーマである。いや、直視したくないといったほうが正しいか。

しかし、それらのテーマを正面から、荒削りながらもしっかりと描いている。私はこの漫画を読んでハッとしたのである。小中学生の頃は誰もが兼ね備えていたであろう夢を、大人になっても持ち続けることの大変さ、それに伴う自己責任の大きさが伝わってきたからだ。このテーマを、3巻という限られた巻数の中でまとめた作者の技量を称賛したい。

絵も荒削りであるため、好き嫌いは分かれるだろう。だが、私はこういった作風に、絵が見事に一致していると感じられた。青臭さが際立つため、食わず嫌いしてしまう人が多いかもしれないことは事実であるが。

全体的に見れば、エンターテイメント性を備えつつ、考えさせられる漫画として確立していることは事実である。だが好みは分かれるだろう。上記のような現実、事実を直視できるか。また絵であきらめずに読みとおすことができるか。その二点でこの漫画の評価ははっきりとわかれるだろうし、分かれた方が議論の余地も残される。私としては、3巻の中でこれほど完結している漫画とは出会ったことがないし、多くの巻をかけてもこういったテーマに深い意味を与え、ある種の解ともいうべきものを提示できた漫画にあまり出会えたことがない。私の中では、歴代の漫画の中でも頂点に君臨する漫画である。文句なしの10点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-13 20:07:29] [修正:2008-10-23 11:36:52] [このレビューのURL]


歳をとれば、誰しも現実生活が少し窮屈に感じられてくる。そんなときに、童心に戻りたいなぁ、と感じた時におすすめしたい漫画。

主人公が敵と戦い、成長する王道漫画ばかり読んでいると疲れる。同様に、このような淡々とした日常描写を中心とする漫画ばかり読んでいても退屈だ。バランスの取れた読み方をすることが大切なのだと思う。以上は低評価レビューを読んで感じたこと。

本題に戻ると。

疲れた時によつばの破天荒な行動を読むと癒される。猫好きな人の心理とはこんな感じなのだろうか。私は犬も猫も嫌いだが。子供の心理を描くのは難しい作業だと思うのだが、あずまきよひこは描くのがうまい。そういえば、自分も昔はこんな手のかかる子供だったなぁ、と親から聞かされた苦労話を思い出す。そして今の窮屈な日常を顧みるのだ。あぁ、こんなふうに素直に、純情に生きたい。などと叶わない夢をよつばに託して、私は今日も窮屈に生きる。

全体的にみると、そこまで絶賛する類の漫画ではないように思う。ただ、もはや戻れない日常を思い出して、今の自分を見つめなおすときに読みたい漫画。エンターテイメント性も、笑いを臭くない程度に挟み込んでおり、さくっと読むことができる。夢中になって読むことのできる漫画。7点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-21 15:39:00] [修正:2008-10-21 15:39:00] [このレビューのURL]


仇敵が魅力的な漫画。原作は読んでいない。

原作があるから、難解な哲学っぽくならなくてよかった気がする。もっとも、原作をかなりアレンジしたようではあるが。藤崎竜の漫画はある程度歯止めがないと、分かりづらくなって少年漫画に向かなくなるだけでなく、一般の読者にも読むのがつらくなる。ここらで話を戻すと。

何より妲己が最後まで魅力的な悪役を演じられたということが、この漫画を面白くさせた。紂王を操り、国を乱す悪女という初めの設定は、いかにもな悪役像である。だが、その真意が、話を進めていくごとに徐々に明らかとなっていく。その大筋の流れが決定していたからこそ、様々な伏線が回収でき、壮大なスケールの話となっても話が破綻せずに、持ちこたえることができた原因であると思う。

また、読者と等身大の主人公に好感が持てた。常に精一杯、力一杯、限界まで頑張る、既存の少年漫画の主人公像のイメージが、私の中ではこの作品で変えられた。ダルいダルい、と普段はサボっているが、やらなければならないときには力を入れて頑張る。そういうメリハリのよさが見てて好感が持てた。この後に続くだるだる系主人公にも影響を与えたのではないだろうか。

全体的に、少年漫画としては伏線を何とか回収しつつ、ラストまでうまくまとめた感のある漫画である。さらに、脇役にも恵まれて、華のある漫画となった。夢中になって読むことのできる、良作の少年漫画。ぜひ一読していただきたい。7点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-19 16:06:46] [修正:2008-10-19 16:06:46] [このレビューのURL]


ちゃちな人間ドラマを見せられた後のような読後感。

エウレカもそうだけど、こういう漫画を描かせるとうまい作者。だけど、登場人物に深みがない。不条理を前にした人間の動揺を描こうとしてるんだけど、薄っぺらい。現実感が乏しすぎるというか。生きるってもっと大変なことだと思う。

設定で現実を描いていなくても、読者に訴えるものに、現実にある何かが描かれてほしいのだが、それがまるでない。ただの空想小説で終わっている。

絵は奇麗だ、だけど登場人物の薄さに拍車をかけているような気がしてならない。訴えかけてくるものがないのだ。

エンターテイメントとして考えるとどうだろうか。設定は結構あるほうかな。でもさくっと、何も考えずに楽しむ分には楽しめるかもしれない。暗い雰囲気にならないように配慮されてはいる。ヒロインが極度に明るいし。

結局のところ時間つぶし程度の娯楽漫画。4点。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-14 18:50:18] [修正:2008-10-14 18:50:18] [このレビューのURL]


カルト的な人気を博したアニメが原作。原作の流れを踏襲しながらも、若干ストーリーに差異が見受けられる。アニメ版のエッセンスを詰め込みながらも、わかりやすくストーリーを描こうとしている姿勢が感じられた。アニメも全話視聴済み。

主人公の、父親や境遇との葛藤、友人との学校生活、登場人物の過去、使徒と呼ばれる敵との戦闘など、描かれているテーマは、他のレビュアーの述べているように、王道漫画ということができる。

しかし、アニメ版もそうであるのだが、年月を経て読み返してみると(たしかアニメ版をはじめて見たのは中学生の頃)、そこまで面白く感じることができなかった。もう少しさらっと描けそうなものをドロっと、暗い雰囲気で描いているせいか、読んでいて鬱のようになってしまうからだ。全体として鬱へ鬱へと引きずり込んでいくような展開となっている。

もちろん、その描き方が評価を得ているのであろうし、思春期の少年少女が誰しも持っているであろう、微妙で複雑な感情を描くには、もってこいの手法ということもできるだろう。読者に考えさせるようなものがあることも事実である。

だが、この意図的とも言える暗い雰囲気の漫画を、思春期を越えて、青年や壮年となる人たちが読んで面白いと感じられるかは疑問である。さらに、敵である使徒の位置づけが中途半端な感じも受けた。原作であるアニメを見た際は特撮映画を見ているような気分になり、戦闘だけで楽しめたのだが、漫画版では戦闘があまり見ていて面白くなかった。また、使徒がなぜ襲ってくるかわからないのも、話の醍醐味でもあるはずなのだが、あまりに謎が謎を呼ぶ展開となっているため、読者の私は取り残された感があった。

総じて見れば、戦闘、心理描写メインのこの漫画。王道漫画の要素を備えており、読めるには読める。だが、意図して暗い雰囲気で描かれるストーリーに、最後まで没入することができなかった。また、雰囲気はわかるものの、これまた意図して難解なセリフや用語によってわかりづらいストーリー。思春期の頃に見た頃と評価もだいぶ変わったであろうが、20歳の今読んだ評価として、可もなく不可もない漫画、5点とした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-11 12:45:28] [修正:2008-10-11 12:45:28] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]


同名のPC用ノベルゲームが原作。原作はプレイしていない。

辺鄙な場所にある村(恐らく過疎化もかなり進んでいるであろう場所)で繰り広げられる、戦慄の連続殺人事件の模様を扱った作品。表紙を見てかなり萌え要素の入った絵であったから、どのような形で話が進むのか心配になりながら読み進めたが、なかなかに面白い作品であった。

序盤はこのような田舎村に似つかわしくない美少女たちと、主人公の和気あいあいとした日常が描かれる。ここまでで、挫折してしまう人もいるかもしれない。

しかし、後になれば気付くのだが、これらの日常は演じられたものである。ここでは後に続く面白い話への序章として、我慢、我慢で耐えてもらいたい。

中盤、話はがらりと様相を変える。豹変する登場人物や、この村の持つ不気味な雰囲気が、序盤とのコントラストによる相乗効果もあって、ぎらりと押し寄せてくる。

そしてついに発生する殺人事件。主人公は周囲の人物に疑念を抱き始める。このあたりの心理描写はよく描けていると思った。誰がどういう魂胆を持っているか分からず、仲良くしていた周りの人物が豹変してしまい、すべての人物に対して警戒感を持つ主人公の狼狽ぶりが、よく伝わってきたからである。

終盤、物語は佳境を迎える。未読の読者のために詳細は書かないが、この作品の持つ不気味さは頂点を迎える。

このように、萌え系の登場人物が登場するが、内容は途中からシリアスそのものである。もちろん、苦手な人も多そうな絵柄だ。また、ちょっとありえない設定も多く見受けられる。

しかし、元々がPC用ノベルゲーム一般(やったことは残念ながらない)として作られたストーリーであるから、このような設定も仕方ないであろうし、上述のようなキャラクターであるからこそ、明暗の差から不気味さが際立つように設定されていると感じた。

総じて見ると好みが分かれる漫画であることは間違いない。純粋なサスペンスものと考えて読むよりは、エンターテイメントとして割り切って読んだほうが面白く読める。そうした読み方をすることで過剰な演出も読み進めることができるであろう。私は序盤には苦労したものの、途中からは一気に読み終わった。以上より、好みは分かれるが、エンターテイメントとしては楽しめる漫画として、良質な漫画、6点とした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-11 10:37:16] [修正:2008-10-11 10:37:16] [このレビューのURL]

7点 MONSTER


MONSTERという題名を初めて見た時は、怪物が出てきてそれを撃破していく戦闘漫画かと思った。

読み進めていくうちに、異形の怪物や超能力を持った敵は出てこないが、この漫画は主人公が目に見えない怪物と戦っている漫画だということに気がついた。

各話がそれぞれまとまりのある内容となっており、その都度出てくる登場人物と主人公のやり取りで完結するが、そのピースを集めるとモザイク画のように一枚の絵画として見事に浮き上がってくる。

そのような浦沢直樹の得意とする手法によって、主人公の医者としての葛藤や、周りの登場人物との日常、冷戦という社会情勢のもたらした闇までが繊細に、かつ緻密に描かれている。

しかし、話が壮大なわりに、ラストが淡白になりすぎている印象を受けた。冷戦という状況が生み出した闇の部分を、急がずじっくりと、最後まで描いてほしかった。

ヨハンという魅力的な敵キャラクターのもつ雰囲気を途中まで見事に描けていたので残念である。ラストが性急になったせいか、多少難解な要素が残ったことも惜しいことであった。(作者としては同種の漫画に起こりがちなマンネリ化を懸念したのであろう。)

絵は丁寧であるが、好き嫌いは分かれそうである。慣れれば気にならない程度ではあるが。

難解な要素は残ったが、緻密な登場人物描写や、浦沢直樹の得意な数話完結型のモザイク画的な構成は見事であった。以上より、良質で夢中になってしまう漫画という、7点の評価とした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-10 23:02:04] [修正:2008-10-10 23:02:04] [このレビューのURL]

4点 BLEACH


話が学園ものの体裁をしていた頃は面白かった。
この手の漫画にはよくある性格の登場人物が多いことに加えて、ありきたりの容姿や設定ではあるが、軽く読み流して楽しむには最適の漫画であった。適度なギャグや、戦闘漫画としては比較的さくっとした長さの戦闘のために、話がテンポよく進んでいたからだ。

しかし、ソウルソサエティ編から、話が壮大になり始めた。以前のようにストーリー自体に深みがないままに、である。

そのため、このような展開になる漫画の必然的帰着とも言えるであろうが、能力の爆発的上昇や、敵の登場人物の安直ともいえるであろう、過去の説明的な延々とした羅列に終始してしまっている。また、お決まりのように容姿や、着ている衣裳がどんどん派手になり、読者にこびへつらうかのようなサービスが始まった。

さらに、他のレビュアーも述べているが、この作品の各話の題名や扉絵に象徴されるように、作者による、自身のセンスを誇示するかのような雰囲気がとても鼻につくのである。

この雰囲気が好きで読んでいる人がいるのかもしれないが、私から見ると、「俺ってさぁ、英語もわかるしぃ、洋楽も結構詳しいんだよね、どうよ、すごいっしょ?」と暗にナルシズムに浸っている感じがするのである。このことは最近の漫画家によく見られる現象ではあるが、根底にある「漫画=オタク的」という社会に見られる偏見(江戸時代には浮世絵として社会的に広く読まれ、認知されていた。)に対する、引け目が背景にあるのではないだろうか。

多少話が脱線してしまったが、総じてみると読めない漫画では決してない。しかし、熱中して読める漫画でもない。週刊少年ジャンプを読むときにさらっと読む。それが、この漫画を読むスタイルではないだろうか。まさに4点の評価の基準である、ちょっと微妙だけど時間つぶしぐらいにはなる漫画、という評価を体現するかのような漫画である。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-10 17:22:54] [修正:2008-10-10 17:22:54] [このレビューのURL]

6点 ONE OUTS

[ネタバレあり]


このサイトでの、空前の高評価野球漫画であったため、手に取ってみた。

なるほど、既存の野球漫画へのアンチテーゼとして描いたと帯コメントで作者が述べるように、他の根性もの野球漫画への違和感を集積したような漫画であった。

まず、第一に他のレビュアーの書くように、絶対的強者である主人公がいる。主人公は言葉や独特の理論で打者を翻弄する。これを面白いと思うかどうかは、この作者の持つクセのあるセリフ回しや、構図をどう受け止めるかであろう。

たしかに主人公が小賢しいという意見があり、最もな意見であると思う。しかし、それではこの漫画の表層を読んだにすぎない。作者は意図的にそう描いたのではないだろうか。小賢しい主人公をあえて描くことで、既存の野球漫画が備えている、努力と根性だけで何とか勝利を重ねていくという姿を「分かりやすく」批判しようとしたのではないだろうか。

ではなぜ6点としたか。

それは後半に進むにつれて、序盤の勢いがなくなっていったように思われたからだ。上記のように小賢しい主人公は問題ではないと私は考えるが、後半からあまりに話がぶっ飛びはじめる。特に主人公がボコボコに打たれた後の展開は強引さを感じた。作品自体強引と言われればそれまでだが・・・個人的に彩川オーナーとやりあうところまでが一番面白かった。

また、セリフ回しや構図がパターンの似ているものが多く、それに対して単調さを感じた。

以上より、たしかに斬新な漫画であることは認めるが、佳作にとどまる漫画ではないだろうか。もちろん、この漫画は好みの分かれる漫画であることは間違いない。嫌いな人も多そうだ。だが、エンターテイメントとしてさくっと楽しむ。それがこの漫画を楽しく読むスタイルではないだろうか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 23:43:40] [修正:2008-10-09 23:43:40] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]


少し前に、図書館から母が借りて放置されていたこの漫画を発見し、読み始めた。はじめはコマ割りが昔風で読みづらそうだなと思ったが、一気に読破してしまった。

この作品の何が一番良いのかといえば、巻末にある対談にも書いてあったと記憶するが、本来悲壮感たっぷり、涙なくしては語り得ないような、波乱万丈の実話を、笑いありでギャグ風にさらっと書いてしまっていることである。

たしかに、コマ割りは昔風に正方形に区切られ小さく、吹き出しも多くテンポが悪いことは否めない。

だが、ネタが面白すぎる。最近のギャグ漫画は主人公がめちゃくちゃなことをするばかりで、ついていけない漫画が多い。しかし、この人はのっけから山の斜面で首つりをしようとして、そのまま寝てしまい、死ぬのをためらいホームレスになるという、トンデモ話をクールに、かつ事実報告的に描くので面白い。本当に面白い話というのは、筆者が笑いながら描いてはいけないのだ。(この話も、本来涙ながらには語りえないであろう・・・)

欠点はあるものの、今のギャグ漫画が忘れてしまった精神が、この漫画にはある。一巻完結で図書館にあることも多いこの漫画、お手頃な本であると思うのでぜひ一度手に取ってほしい。

続刊もあるようなのだが、残念ながらまだ手に取っていない。あくまで、「失踪日記」だけの評価として読んでいただきたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 23:10:39] [修正:2008-10-09 23:10:39] [このレビューのURL]