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総レビュー数: 52レビュー(全て表示) 最終投稿: 2008年10月09日

7点 ONE PIECE

[ネタバレあり]


この漫画はまさに王道漫画そのものである。

常に前だけを見つめて苦しみながらも敵と戦い、勝利して、仲間と共に成長していく。逆境の中でも決してあきらめない。掲載されている週刊少年ジャンプの「勝利、友情、努力」の三大テーマを盛り込んだ秀作である。いや、だったと言うべきか。

なぜ過去形か。

もちろんその三大テーマはブレていない。特に、前半部(偉大なる航路に出るところ辺り)までであれば、歴代の週刊少年ジャンプの作品群の中でも1,2を争うほど、ジャンプの求める理想像を追求し、かつ面白さを兼ね備えた漫画であったであろう。私自身とても熱く読むことができ、毎週欠かさず楽しみに読んでいた。登場人物の背景描写が丁寧で、戦闘での能力の応用もなかなかに秀逸であったからだ。特にサンジの話は魅力的だった。

だが、途中からテンポが著しく悪くなりはじめた。ひとつの節というか章というか、の戦闘が長くなる余り、登場人物の描写や主人公たちの住む世界の奇妙で興味深い世界観の描写がいい加減になった。そのため、冒険をしているという感覚がなくなってきたのである。偉大なる航路を旅する主人公たちの面白い冒険が読みたかった。

また、戦闘も能力の二段化(このあたりから読まなくなったので詳しくはないが。)や、七武海がゴロゴロ出てくるようになってから、巻数が増えていくにつれて不可避的に生じてくる問題ではあるが、能力のインフレ化、それに伴う戦闘の大味化で、戦闘の持つ緊張感が薄れてきた。

ゆえに、序盤の爆発的エネルギーは最近では鳴りをひそめ、看板漫画として、編集部の給油抜きには走れないような漫画となってしまった。よって前半は9点、後半は4点で、全体的に見て7点、という評価とした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 22:33:05] [修正:2008-10-09 22:33:05] [このレビューのURL]


この漫画の最大の魅力は、敵キャラクターの描写、戦闘における敵との駆け引きや細やかな能力の設定にあるだろう。

敵を一方的な悪役にするのではなく、大義を与えて話を奥深いものへと深化させている。それによって、魅力的な敵キャラクターが描写され、駆け引きにおいても登場人物の微妙な感情の機微が表現されている。特に、NGL編は作者のこだわりが感じられた。

また、念能力の設定が絶妙である。念を系統別に分けて、相関関係を築き、絶対的に強いものがないようにしているため、戦闘における能力者の相性や、能力を制約を課すことで強めるなど、能力暴走型漫画(最近の少年誌には特に顕著である。)に歯止めがかかるような配慮が感じられた。それでも最近はその傾向があるのは残念だが。

しかし、多くの人が述べているように、週刊誌での掲載時に、絵がラフのような状態で出されたのは、残念であった。

もちろん、単行本では絵が修正されてはいる。しかし、いくら内容が良くても、週刊誌に連載すると決めた以上は、最後まで作品として形をなした状態で発行するべきだし、そうするのは当然である。内容がいいなら週刊連載でなくても問題ないという人もいる。しかし、多かれ少なかれ、他の作者もファンはいるであろうし、殺人的なスケジュールの中漫画を描いているのである。読者あっての作品であるのだから、例えば隔週掲載にするなり、月刊誌に移行するなりして定期連載をしたほうが、作者のためにもなるであろう。

以上のような欠点もあるため、7点の評価としたものの、単行本で読む限り、非常に面白く読める漫画であることは間違いない。

作品自体への評価という点で連載自体への問題ということを扱うことに多少抵抗もあったが、今後の展開への期待をこめて、作品自体への評価ではなく週刊誌に連載された状態での評価とさせてもらった。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 21:32:29] [修正:2008-10-09 21:32:29] [このレビューのURL]


ジョジョの真の魅力にたどり着くことは難しい、とあらためて実感させられた漫画。

作品のバランス感覚は、さすがはベテランの荒木比呂彦だなと感じさせられた。敵、味方を問わない魅力的なキャラクターとうまい伏線の張り方。そして現実っぽくてどこか現実ではないパラレルワールドの作り方。他の作者にも見習ってほしい点はたくさん備わっている作品だ。絵もSBRに関して言えば、他の漫画と比較してとりわけ見づらいということもなかった。

だが、ここまで高評価の漫画なのか、と問われるとそうでもないかなというのが率直な感想。1部から6部までのジョジョ作品群を読んでいない私が、この作品の真の魅力に到達できないのはわかっていた。だが素人目から見させてもらうと、特に熱いわけでもなく、人物の心理描写が特に緻密なわけでもない。全体のバランスで評価を下しているわけであるが、いい意味でまとまっている作品は他にも多数ある。そうなると答えは「信者」の存在ではないだろうか。ジョジョファンの皆さんには申し訳ないが、作品や作者自体を盲目的に崇拝し、作品の内容を読む前から好意的に見ている傾向がないだろうか。もちろん、そのことは他の上位の作品にも当てはまることではあると思っているが。

全体的に見て良質な作品であることは間違いない。だが、皆が皆、8点クラスの点数を付ける作品かと問われれば、私は「NO」と答えずにはいられない。受ける人にはこの作品の世界観がぴったりくるのだろう。だが、あえて言わせてもらえれば、他にもいい作品はたくさんありますよ。といいたい。良質な漫画、6点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-16 09:24:42] [修正:2008-11-02 17:46:25] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]


古本屋で全巻で500円という超破格の値段で手に入れたので、あまり期待はしていなかった。だが、思いのほかお値打ち品であった。

私はこの漫画を主人公である秋の成長の物語として読んだ。

作品のほぼ全ての場面で三角関係であり、モテモテで美形、恋愛テクも抜群のコテコテの主人公は、何と実は童貞のカメオタクだった、というわけわからん設定に戸惑いつつも読み進めた。主人公の整形でもしたのかというほどの変わりっぷりに、まずは突っ込まずに読み進もう。彼は1年半の修行で変わったのだ。

序盤のアリサとユイの間で主人公が揺れ動くときは、確かに他のレビュアーの述べるように普通の恋愛漫画っぽい。普通にかっこつけたがりで、弱みを見せず、完全人間(何だそりゃ)な秋。序盤はヒデを代表とする脇役のナイスなキャラもあって、話が面白い方向に進んでいく。

中盤、モトミと秋がユイをめぐって死闘を繰り広げる。PK勝負あたりから終盤への布石が敷かれ始めたと思う。ヘルスケがちょっと無茶な設定だったとは思ったが。とりあえず、ここまでは普通の恋愛漫画として読んでいた。

終盤、秋が水族館でバイトを始めた頃から本格的に漫画の路線変更というか山田玲司の本当に訴えたいものが出てきた。10巻ぐらいでまとまった作品になっていたとしたら、趣の異なる、単なる普通の恋愛漫画で終わっていたのではないか。作者の山田玲司は15巻の巻末で、この漫画の真のテーマは「生きてるのってまんざらでもないよ」であると語っている。上記のテーマに沿いつつ、この漫画を、恋愛やその他諸々の事案に対する中での秋の成長の物語としてとらえるならば、この展開はアリではないだろうか。ラストもすっきりとまとまっていたし、そんなに悪い展開でもないように思われた。彼こそ真の男として成長した。応援したくなる主人公像である。最後までBバージンを貫いた秋は格好よかった。自分のすべてをさらけ出して、相手といいところだけでなく、苦しいこと、いやなこともわかちあう。そういった恋愛の理想像が、説教臭くない程度に作者から語りかけられた気持ちになった。

全体的に見て面白い漫画だと思う。序盤、中盤、終盤とそれぞれ趣を変えつつも、根幹のテーマはぶれていない。山田玲司の訴えたかったものは、上記のテーマとともに、恋愛を通じた秋の人間的な成長に尽きると思う。人によっては、生活に影響が出てしまうほど読みふけってしまう漫画。8点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-26 22:07:16] [修正:2008-10-26 22:07:16] [このレビューのURL]


いじめられっ子が、かわいい女の子に出会う。彼女としてつきあっていくうちに人生が変わっていく。そういった境遇が本当に現実のものなのか、自分がこんなに幸福でいいのか、と悩む。そして、人としても、大人に成長していく。あらすじはこんな感じ。

うーん、ありえない。はじめは誰しもがそう思うだろう。だが、読んでいくうちに、徐々にだが話に入り込める。それは、南雲や高井、谷脇などの登場人物が充実しているためである。現実的ではないストーリーの中に、彼ら登場人物の現実的なストーリーが挟み込まれているからこそ、徐々にだが、こういった話に入り込んでいけるように設計されていると感じた。また、恵まれた環境の中でも悩み続ける主人公に、はじめはグジグジする男だなぁ、とイライラしながら読んでいたが、最終巻まで読み進めていくと何となく主人公の考えが理解できるようになっていった。

しかし、あくまでそこそこ面白いという程度であった。何と言うか、徐々に話に入り込めるんだけど、それでもどこかで突き放して話を眺めている自分がいた。こんなのありえないよ、と。それに加えて、ラストが微妙だった。あれだけ話を展開、進展させておいて、最後にあれはないだろう、と感じられた。また、他のレビュアーも述べるように、レゲエの同級生や胃がんの男の話は邪魔。話に関係してこないので、話の腰が折られている。

ダメ出しをすれば色々と出てくるが、全体的にみればそれなりにまとまっている漫画だ。エンターテイメントとしても、考えさえられる漫画としても、中途半端な印象だが、よく言えば軽く流しながら楽しむことができる。立ち読みが最適か。ちょっと微妙だが暇つぶし程度にはなる漫画。4点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-23 16:30:43] [修正:2008-10-23 16:30:43] [このレビューのURL]


2巻まで読了により改訂。足繁く古本屋に通い続けてようやく2巻を発見。2巻まで読んで思ったのだが、この作品はある程度まとまった分量がたまってから読んだ方が面白いかもしれない。

2時間の怪奇物のドラマを見ているような作品。京極夏彦のベストセラー小説が原作。原作は読んでいない。

安定した原作を背景として、心や、生い立ち、性格に問題をかかえた登場人物たちが、ある事件を中心として、心理描写を中心に、丹念に描かれている。事件はようやく動き出した。バラバラのピースが徐々に収束していっている感じ。事件の概要がわかっているだけの段階。まだ序盤の印象。

終戦間もない昭和という時代設定が、現在の読者にとってやや想像のしにくい設定であるかもしれない。また、時折出てくる匣の話が読み進めていく上で障害となっている感がある。だが、話が進んでいくうちに、徐々に匣の描写が、犯人の心理の描写だということがわかってくる。まだ2巻しか出ていない上に、3か月に一話というゆっくりとしたペースで掲載されていることから、本当に徐々にわかっていくものと思われる。

京極堂が独特の味を出していてよかった。オカルトの話も深く掘り下げられていて、さらっと一読する限りでは分かりづらいが、ゆっくりと読めばわかるように、配慮されていた。基本的に、小説でのわかりづらい描写は、漫画の読者にわかりやすいように漫画という媒体の特徴を生かした説明がなされている。

何にせよまだ序盤と思われる。この段階では評価を下しづらいが、良質な漫画であることは間違いない。暫定的に6点としておく。

続刊が発行され次第、また加筆修正させていただきたい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-12 12:28:08] [修正:2008-10-22 18:15:49] [このレビューのURL]

4点 LUNO


1巻しか出てないし、完結もしてないので書こうかどうか迷ったが、長期休載中ってなわけで書くことにした。

冬目作品は読んだことがなかったので、短いし、てっとり早く読めるから読んでみようと。だが結果は・・・

西洋風の絵とかキャラの絵などは結構うまいんだけども、話が陳腐というか。ぐっと来るものがなかった。もともと淡々としたストーリーの中で哀愁漂う作風らしいのだが。とにかく、どっかで見たような話であるが、1巻だけだから深みがないのが問題。現時点では小さな欠片の物語。これから描かれるストーリー次第ではあるが。

1巻で投げ出してるのも、作者自身がこの作品を微妙だと考えているからではないか、と疑ってしまうような出来だった。恐らくこの先の話は無いと思うが、1巻で話自体は一応、一区切りはついているので、微妙だけども時間つぶしぐらいにはなる。ただ、冬目景のとっかかりとしてこの作品を読むことは、やめたほうがいいかと思われる。4点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-22 12:10:19] [修正:2008-10-22 12:10:19] [このレビューのURL]

2点 Waqwaq


難しい漫画。藤崎竜には原作者がいたほうがいいと思った。

独特の世界観はいつ見ても好きなんだけども。何と言うか、煮詰めすぎて苦くなったというか。つまりは、エッセンスだけを提示しているから難しいし、とっつきにくいんだと思う。その観念に至る過程がない。だから共感しづらいし、分かりにくい。何が伝えたかったのかがわからない、という致命的な欠陥を抱えている。

残念な漫画。世界観は好き。だけど内容がわからないので、内容の説明もできない。ただ世界観に浸るだけしかない漫画。しかも神様とシオのやりとりも微妙。

つまらない漫画。2点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-21 20:01:09] [修正:2008-10-21 20:01:09] [このレビューのURL]


何だかんだで最後まで読んでしまった作品。

キャラクターの個性が光る漫画。またその活かし方がいい。戦闘や日常などのコミカルなやりとりが面白い。後半になるにつれて主人公の存在感が希薄になったのが残念ではあるが、それは他の登場人物が充実していることの裏返しでもある。登場人物の充実度は見事であった。

インフレは仕方ないとしても、ひどいマンネリ化によって途中から読むことがしんどくなった。

10巻程度でまとめておけば、もっと評価は高かったと思われる。絵で受け付けない人も多くいるとは思うが、キャラクターの個性をどう考えるかという深さも案外あったりする。基本的には軽く読み流してしまうのだろうけど。評価が低いのが気になった。低年齢向けのギャグ漫画としては、エンターテイメント性を備えた可もなく不可もない漫画だと思う。5点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-21 19:44:27] [修正:2008-10-21 19:44:27] [このレビューのURL]


他のレビュアーが、大体のことをすでに書ききっている感がある。だけども、小中学校で必ずといっていいほど置いてある本であり、私自身かなり読んだ。もっとも今となっては、印象的なシーンのみが残っているわけであるが。ゆえに、思想的な面から考えてみたいと思う。

私はこの本が必ずと言っていいほど小中学校の図書室におかれている背後に、日教組の関与があるのではないかと思っている。なぜ左翼的な本ばかりが図書室に置かれているのだろうか。もし、左翼的な本を図書室に置くのであれば、右翼的な本も置かれてしかるべきであるはずだ。決して中山元国交相のように日教組のすべてが悪だと断言するつもりはない。しかし、幼少の頃にこの漫画を何度も読むことは、いい面もあると思うが、負の側面も大きいと思われる。

本題に戻る。

この本の感想を端的に述べると、左翼的思想の中でも暴論的なものの助長の一翼を担っているのではないかと思われた。もちろん、米国による原爆投下を受け、まさに生き地獄を味わった張本人である方々が、平和を切に願い、戦争に反対するのは当然の感情と言える。

だが、その実、この漫画で訴えられている反米的な思想を持った登場人物たちの言動や、廃墟と化した広島の町並み、時に犯罪行為ですら厭わない登場人物。被害者の側にたつ作者が描くこのような現実には、そもそもの戦争の事実認識自体に由来する偏向がみられるのではないか。当然ながら、歴史関連の本で真に中道であることは難しい。また、当時の悲惨な状況の中で、そのような行為に走らざろうえなかったという事実もあるだろう。作者にも、できうる限り現実に即して描こうという気概はあっただろうが、当時の惨状を目にして、被害者側の偏向が加わることは避けられなかったことと思われた。そのことを読者である、小中学生が判断しながら読み進められるかどうか。

被害者側からの(米国から見れば被害者は自分自身だと言いたくもなるだろうが)、一面的なアプローチだということを認識しつつ読めるようになるまで、この本は読むべきではないだろう。そういった戦争への思想の根源に関わる本を、小中学校の図書室に置くことは悪影響も大きいのではないか。そう感じた。また、もしこのような本を図書室に置くのであれば、戦争の相手国からの視点や、右翼的な思想を含んだ書籍も置くべきだ。

作品として点数をつけることもおかしい部類の漫画だとは思うが、楽しく読めるように配慮はされていた。歴史認識の本としては欠陥を抱えている。しかしながら、歴史認識についての議論の喚起を促したという点で、可もなく不可もなく。右翼、左翼を問わずに自己の判断を持って読むという前提の上で、一読はおすすめしたい。原爆の悲惨さだけはまぎれもない事実なのであるから。5点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-21 13:39:41] [修正:2008-10-21 19:24:38] [このレビューのURL]