「玄米茶」さんのページ

総レビュー数: 17レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年09月28日

9点 男樹

北陸の村田京介少年が、血で血を洗う抗争を通じて日本のヤクザのトップに登りつめていく物語。全6巻という巻数らしくストーリーが締まっていて、本宮ひろ志のイイところが詰め込まれています。

「男樹」というタイトルが示す通り、男の人生を「樹」に例えたようなマンガです。「樹」が大きく育つ為には、その為に死ぬ、他人という「こやし」が必要になります。自分が大きくなる為に他人を殺すことを正当化できるのか…。本宮マンガの主人公達は必ず此処で躊躇し、悩みます。

このマンガの主人公村田京介も、この問いに悩み、最後に彼らしい結論を出します。ある意味「筋が通ってない」その姿を魅力的に描くのも、本宮マンガの懐の深さにつながっているのだと思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-09-30 00:29:49] [修正:2011-10-09 00:26:23] [このレビューのURL]

白内障が発病して、進行してゆき、手術をして、回復していく一連の視覚イメージをマンガで表現した、画期的な作品。小林よしのりといえば「ゴー宣」のイデオロギッシュなイメージが強いが、これは無思想の純エンターテイメントだ。

エッセイというかルポというか、実体験系のマンガではかなり面白い部類のモノだと思う。独特な日常の切り取りかた、テンポ良くときには大胆なコマ割り、頻繁に入るギャグ、そして眼病への怖いもの見たさ的な興味などの要素が相まって、面白く読める佳作となっている。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-02-28 14:25:23] [修正:2011-10-02 22:29:11] [このレビューのURL]

ベルセルクの主人公ガッツはタフで強いが、本質的にはシャイな男だ。必然的に彼の戦いは、欲望と意志、他人と自分との間で揺れ動く思春期的なものとなる。

暗く煮えたぎる想いを黒い甲冑で覆い隠し、「欲望」という怪物と対峙するガッツの姿に、読者は、自分の人生を生きるために「戦いたい」自身の姿を重ね合わせる。深く傷つきながらも壮絶な戦いを続けるガッツの生きざまは、思春期という戦場を通過した(と思い込んでいる)人間が持つ挫折感を、内側から突き動かすのである。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-28 00:40:59] [修正:2011-05-02 00:05:30] [このレビューのURL]

山岸涼子のマンガでは、不幸になるべき人間は不幸になる。マンガ的なドンデン返しはほとんど起こらず、非情な現実は哀れな登場人物たちを押し潰していく。「ここでこいつはこうならなきゃウソだ!」と言わんばかりの展開を読んだ読者は、「ああ…でも山岸涼子分かってるじゃん!!」という面白がりかたをする。「分かってるじゃん」と思うのは、もちろん自分の過去を鑑みてのことだろう。上質な「悲劇」は、読み手の人生の反省会みたいなモンかもしれない。


「悲劇」を描くのがとても上手い作者だが、このマンガはそのなかでも筆頭。もちろん「テレプシコーラ」や、短編では「天人唐草」などもチェックして欲しい。


ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-15 23:50:42] [修正:2011-04-15 23:50:42] [このレビューのURL]

夢ではなく現実を描いている。

思想ではなく人間を描いている。

少女マンガでこれをやる人は、くらもちふさこ位だと思う(よくは知らないけどたぶん)。だって少女マンガ自体の否定になっちゃうし。

けどまあ、そんな話はどうでもよく、このマンガは面白い。本屋で見かけたらぜひ手にとって欲しい。色々な仕掛けが効果的に働いて、単調であるはずの日常をとても刺激的に読むことができる。





ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-12-01 11:17:20] [修正:2010-12-01 11:17:20] [このレビューのURL]

暴力、バイオレンスを描くのが上手いと思う。格闘のシーンも、一つ一つの動きをしつこく描き、具体性のある取っ組み合いになっている。変な言い回しだが、ケンカのリアリズム表現を、生理的に身に付けているように感じる。こういうマンガ家は少ないように思う。凝った構図や絵は、描いた作者の意識が透けて見えてしまうが、別に作者の意識が見たくてマンガを読んでるわけではないのだ。

太平洋戦争のさなか、主人公達不良少年は部隊となり、激戦のコレヒドール島、ガダルカナル島へ送り込まれ、米軍と戦闘をするというパートがある。ここでの戦争の描写は、リアルさと荒唐無稽が絶妙に混じり合い、少年マンガとしては最高に面白いものになっていると思う。

入手は難しいが、ぜひ一度読んで欲しい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-29 09:54:27] [修正:2010-09-29 09:54:27] [このレビューのURL]

「懸命に、真摯に、自分の存在を懸けて…闘ってないから、オレは…行き詰まっていたんだ…!」

44才にして人生の真実に気づいてしまった男の、社会の最底辺を這いずり廻るような闘いを、寄って寄って描く。

シンプルなストーリーながら読ませる力はとても強く、登場人物のモノローグと粘っこい描写を読んでいくと、なんだか演劇を観ているような臨場感(?)が感じられる。映画にできるかな…などと考えていたら、「生きる」がまさにこうだったなと思った。

借り物の話ではなく、作者が本当に描きたい物語であることがよく分かる。中断のような最終巻だが泣かされてしまうし、あれ以上続けるべきではないと思う。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-28 00:49:09] [修正:2010-09-28 00:49:09] [このレビューのURL]

12
次の10件>>

点数別のレビュー表示