「やじウマ」さんのページ

総レビュー数: 63レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月20日

 5巻までは最高におもしろい。
 現実が子供時代の馬鹿げた妄想(ロボット、秘密基地、ハットリくんのお面)に浸食されていく様子が、奇跡的なバランスを持って描かれていく。

 だが未来の話になってからそのバランスが少しづつ崩れていく。
 刑務所を脱獄するところなど瞬間瞬間では最高におもしろいのだがどうにも乗れない。
 この原因はなんだろうと考えたが、やはりケンヂの不在が原因だろう。
 五巻までは、作品の裏テーマとして「バンドをやめてアイデンティティをなくしたケンヂが子供時代の自分が生み出した妄想とケリをつけるために立ち上がり、段々と生きる気力を見つけ直す」みたいなものが一応あり、だからおもしろかったとも言えた。
 胡散臭い設定にリアリティを持たせることに成功していたのだ。
 だがそれが未来の話になるとケンヂが退場するわけでそれがなくなる。
 後任のカンナは不思議な能力があったり不幸な生い立ちがあるのだけれど、キャラとしてはいまいち何してたか思い出せないくらいに薄い。(書いてて気づいたけどモンスターのニナと一緒だ。)
 この辺りから伏線の過剰な盛り込みが始まって次第に収拾つかなくなるが、それには主人公の魅力で話を引っ張れなくなったということへの苦肉の策もあったんじゃないだろうか。
 通してみると「1970年の嘘」も「カツマタくん」も大して意味がなかったし。
 リアルタイムで読んでたときはまるで漫画界のトップに輝いていたようなこの作品が実はそういうことで頭を悩ませていたと考えると少し微笑ましい。
 まあ、あまり自信はない。

 結局終盤でケンヂは帰ってくるんだけれどもその頃にはもう話の核は「ともだち当てゲーム」になり、失われたアイデンティティなんてものはどこか遠くへ消えてしまっていた。
結局、最後に漫画は「オトナ帝国の逆襲」のパクリみたいな世界設定の中、死んだ人間が辻褄合わせのために何の説明もなく生き返るという男塾のような展開を見せ、最初の緊迫感などどこにもないゆるい道徳観のエピローグを展開させて終わる。
 
 でもさ、今じゃこういうそれっぽい分析してるけど中学生の頃リアルで読んでた時は本当にすごかったんですよ・・・ 
 新刊がでると朝日新聞のテレビ欄の下全部使った広告出たり、帯に「応募者に浦沢直樹のプライベートライブご招待!」なんていうふざけた事載ってても「すげええ」とか思った。
 15巻のラストなんて初め読んだときは死ぬかと思うくらい興奮したし(ここから地獄だったのに)次巻が3ヶ月後の発売なんて知ってまた「くそおおおお」とか思って・・・
 だから低評価つけるのは当然だけどさすがに1点、2点とかついてるのとか「クソだ」「騙された」とか見ると少し凹む。
 まるで昔好きだった野球選手がボロボロになってるのを見て「昔すごかったとか言うけど昔もたいしたことなかったんじゃないの」とかしたり顔で言ってるガキを見てむなしくなるかのような・・・はぁ・・・

ナイスレビュー: 3

[投稿:2012-10-21 20:51:05] [修正:2016-09-27 22:45:17] [このレビューのURL]

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-08-28 12:35:27] [修正:2016-09-23 19:22:24] [このレビューのURL]

最近ジャンプのマンガ、というか少年マンガに盛り上げ所でくどいばかりにナレーションとかモノローグを多用するという演出をやるものが多くなった気がする。

そういうの読む度に、「うぜぇなあ」、「絵を見りゃ分かるんだから黙ってろよ」、とか思っちゃう。マンガの描き方の教科書とかに「何でも文字で説明するのはやめましょう」とか書かれてた気がするんだけどなあ、とか思っちゃう。マンガ描かないけど。
でもある時ふと、これってもしかして富樫のマネしてるのかなあと気づいた。そういえばハンターにはやたらとナレーションとか多い。キメラアント編からやたらと多くなった気がする。

ハンターハンターは超絶おもしろいマンガだから、みんな影響を受けて、富樫のカッコよくて一番マネしやすい部分をマネしたのかなあ。
だとしたらみんな面白いモノが描きたくてこの演出を取り入れて、結果的にサムイことになってんのかなあ。だとしたら呪われてるな。とかなんとか思ってしまう。

なんか、この人の文章が持ってる特殊さって、普通の人が目指してるものと違う気がする。なんというか詩的なんだよな、ポエム的というか。
(ポエムって言ったら昨今バカにされるけどさ、あれは間違ってると思う。)

少ない言葉でこちらの想像力を引き立てることが出来る言葉の使い方というか、そういう才能があるからあの演出も許される、様になってるのであって、普通の人がやってもダメだよなあ、なんて思った。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2016-09-15 16:30:02] [修正:2016-09-15 16:30:02] [このレビューのURL]

 とても大切な漫画。
「そういうことはガンダムかロックマンにたのめよ・・・」助けを求めにきた宇宙人に平然とそんなことを言ってしまう主人公。
「神様、クロちゃんが地獄に落ちますよーに・・・ !」「すまないよー、崖から落ちて鼻血じゃすまないよー!」「タジマヨーコが聞いたら怒りそうなフレーズだな」「ヤバい!ライオンに免疫のない地区に入った!」「スモールライター!」ギャグっていうものには制約なんてないこと、漫画でやっちゃいけないことなんて何一つないことを教えてくれた素晴らしい読み物。
 ギャグをやりながらも常に自分達のやってることに対して一歩引いた目で見ている登場人物達。ひねくれることがどんなに大切か、小学生の時教わりました。当時の子供向け漫画とかアニメに出てくる正義一徹、優しくて強いキラキラした主人公は信じられなかった。だって周りにいねーじゃん。
 いま読むと作者は少し人格に問題ある気がするんだけど、でも読者、子どもをバカにする事だけはしてなかった。小学生が残酷で暴力的で大人なんて簡単に騙してしまうずる賢いヤツらで、でも実は移ろいやすくてちゃんと悲しいっていう感情を持ってて自分が思ってるほど強くなくて大人の理不尽な暴力に逆らえない生きものだってことをわかっていたはずだ。だから今読んでも全然陳腐じゃない。あれだけブッとんだギャグ書いてるのにシリアスな話でも全く違和感なく楽しめるのはなぜなんだろう。
 ボンボンに連載してたからいいのだ。コロコロに連載してたら去勢されてた。そうしなかったから子供の目に止まったんだ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-08-29 14:58:03] [修正:2012-10-21 19:41:15] [このレビューのURL]

8点 寄生獣

面白い漫画、なのかな?うん、たぶんそうなんだろう。なんか頭いいこと言ってるし・・・とりあえず8点以下はつけちゃダメ、な雰囲気だなぁ。なんかたいした根拠もなく批判したら恥ずかしいしなぁ。て感じで点数をつけてしまうのは昔も今も変わらない。とりあえず漫画好きの踏み絵、みたいなこと言うのはちょっと勘弁してほしい。
中学生の時周りの評判に洗脳されて本当は「面白かったなぁ。お母ちゃんがあんな殺され方するのは嫌だなぁ」くらいの感想しかなかったのに頭いいふりしたいから「これは傑作だ!人類必読書の1冊である!」みたいなテンションで古くからの友達に貸したら「面白かったけど最後、環境問題と結びつけたのちょっと強引かなあ」っていう感想。ああなんて素直なんだろう、こういうことがさらっと言えちゃうヤツになりたいなあ、って思ったことは自分の人格形成にちょっと影響を与えた。そういう意味では重要かも。

っていうか皆さん本当に「俺の好きな漫画永遠の1位!いや、全ての漫画の頂点に立つ!」「人類がどんなに愚かしいか、そしてどんなに偉大かを教えてくれました」なんてこと考えました?いやもちろん本当に心からそういう感想を抱いた人もいるでしょう。でも絶対に読む前にこのサイトの評判とか読んで「これは偉大な漫画なんだ、これを読んで僕は人類について考えなければならない」みたいに身構えて読んだ人とか紛れてるはずだよ。「人類云々」ってのは結果的に出ただけであって作者は最初からそんなこと狙って書いてないと思うんだけどな。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-11-13 18:58:12] [修正:2010-10-03 21:45:13] [このレビューのURL]

この人の描く女性キャラの「瞳」がすごく好きで、これを見たいがために読んでいた。
話はツマラン、というか編集部かなんかのテコ入れにそのまま流されていった感じがアリアリで読んでいて気の毒になる。
「編集王」に描かれてたいい絵を描く新人漫画家が、上の人の意見に流されていった結果自分の描きたいものが描けず打ち切られる、って現実だとこういう感じなのかな、と思った。

でもこの作品のあとにそこそこ売れる作品に当たったようでホッとした。
特徴のあるいい絵描くもんな。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-09-25 21:02:27] [修正:2016-09-25 21:02:27] [このレビューのURL]

 お世辞じゃなく日本漫画界の傑作のひとつ。
 
 大の大人が(これ書き始めたときたしかF先生は40代だった)子供、だいたい幼稚園から小学生、少し伸びて中学生ぐらい、までの対象のマンガで自分の人生観、親への愛、子供への無限の期待、失われゆく自然や動物たちへの哀愁、未来の無限の可能性、行き過ぎた、または間違った力への警鐘、その他諸々をデフォルメが絶妙に利いた老若男女誰でもが読める絵に乗せて語りまくっていくんだから。
 それも押しつけがましさを感じさせずエンターテイメント前提にさりげなく様々なところに加えていくから泣きを狙ってないくせにへたな少年漫画より十分胸を打つ。
 
 最近読み返してみてこんな簡単なことがやっとわかった。正直気づく前までドラえもんに高得点つけてる人はみんな過去の思い出のみでつけてるんだと思ってた。地味だからって物事の本質に気づけていなかった自分がホント恥ずかしかったです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-06-19 20:59:07] [修正:2008-06-19 20:59:07] [このレビューのURL]

8点 編集王

 仙台さんが好塚の原稿を描き直すシーンや明治君が幼馴染に髪を切ってもらうシーン、編集長の過去話で仙台と最後に話すシーンなど、とても心が熱くなるような素晴らしい場面がある一方で、過去話と現在でキャラクターの性格が一致しなかったり、よくわからない場面で見開きを使うところ、創作という本来であれば様々な価値感があってそれぞれの正義が現れるはずのものを「善・悪」「おもしろい・つまらない」「エロ・非エロ」などの2元論で語ってしまう乱暴さなど、これはあんまりだろと思うような部分が入り乱れている。
 なのにこのマンガを好きな人の中には「マンガ業界で働く人は必ず読んでバイブルにすべき」「リアリズムに溢れてる」なんていう人が多くてそれが堪えらんなくて一時期嫌いになってた。

 でもBSマンガ夜話の編集王の回を観たら同じような違和感を抱いている人がいて、だけどちゃんと評価すべき点はあるという読まれ方をしていたので、そこからふっと今まで抱いていたフラストレーションが解消されて素直に読めるようになった。
 同じような気持ちを抱いている人は一回観た方がいい、スッキリする。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-10-17 17:22:22] [修正:2016-10-17 17:22:22] [このレビューのURL]

10点 RIN

少年マンガのスポーツもので、天才キャラと凡人キャラが出てきて「才能」と「努力」をテーマに話が進んでいく展開をたまに見るが、自分は死ぬほど嫌いだ。

なぜならだいたいのマンガはそういうテーマで重々しく話を始めながら、結局は凡人がそのスポーツを「好き」であることを再確認し、「楽しめばいいんや!」とか訳のわからん開き直り方をして天才を追い抜いて終わるという話に着地するからだ。
今までにそういう展開何度見てきたことか。
いい加減に食傷気味だし、なにより陳腐だ。
ああいう展開は天才対凡人というテーマの表面的な部分だけ救って、本当に深刻な部分に向き合うことに対する「逃げ」だと思う

そしてそういう展開に嫌悪感を抱くのは、この「RIN」を読んでいるためだろう。

「RIN」の3・4巻において描かれる立石譲二対石川凛が自分は本当に好きだ。
凡人である譲二がいままで培ってきたもの(恋人、人望、ファン)全てを捨て、バッティングやひじ打ちという反則をしてまでリンに勝とうとする。
周囲の人々やメディアはそれを見て失望するが、対戦相手のリンだけはその譲二の姿勢に感動を覚える。
あまりに圧倒的な才能を持つために周囲の人間と分かり合えなくなり、かつて両想いだった恋人にも見捨てられたリンが、死にモノ狂いで自分にブツかってくる人間を初めて見つけ友情のようなものを感じ、幸福感を憶える。
その物語の構成がとても美しい。

しかしこの幸福感も長くは続かない。
譲二はやはり凡人であるので、リンに木端微塵に倒される。
試合後に完全に腑抜けになったリンは再びあの幸福感と快感を得るために譲二に会おうとするが、再開を望むリンに譲二は吐き捨てる。

「『哀れ』ってのはお前さんが孤高ってことだ」
「遠くて近寄りがたくてまぶしいってことだ」
「人並みに自分の人生とリングが地続きの譲司に」
「お前さんの傍に身を置く場所なんざ ある訳ねえだろ」
「帰れ」

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-11-10 18:56:59] [修正:2016-09-28 15:46:33] [このレビューのURL]

10年以上のブランクの後に描かれたこともあり、内容はちゃんと面白いのにノリや新キャラのデザインが最近の流行に影響を受けている様子が見られ、そこが若干悲しい。
4巻がかなり面白いものになっていて作者がノッテきているのかなと思ったらそこから続巻が出なくなってしまった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-09-28 15:42:08] [修正:2016-09-28 15:42:08] [このレビューのURL]

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