「punpee」さんのページ

総レビュー数: 104レビュー(全て表示) 最終投稿: 2016年02月06日

9点 RIN

抜群に面白いです。
前作「SUGAR」から引き続き、主人公の「天才」っぷりの描写、表現力は健在のまま、
本作では、「天才の孤独」というテーマがメインになっています。

確信犯的に人を傷付ける人格破綻っぷりに拍車が掛かっており、リング以外に自分の居場所が無い主人公は、
「ピークを過ぎて見る影も無いのにリングにしがみ付く世界王者」、「元極道という、余計な肩書をリングに持ち込む世界王者」等をボクシングへの冒涜と捉え、無差別に切り掛かり、暴走します。

その暴走っぷりに周囲の人間が離れていく中、「俺を止めてくれよ」とすがった、想いを寄せる同級生にすら見捨てられた時は、流石に私も絶望を感じましたね。笑

そこから自虐的になり、堕ちる所まで自分を堕とそうという心理と、漫画史上最低と銘打たれた童貞喪失シーンは圧巻でした。
相手女性のだらしなさの描写の完成度が高すぎて、感心させられましたね。。。


軽量級の試合のスピード感をこれでもかと線描写で表現したボクシングシーンや、テレビ中継の放送事故のシーンといい、漫画読んでてここまでハラハラワクワクする作品は久々だったので、たった4冊で終わってしまったのはショックでした。
(やはり打ち切りだったのでしょうか。。。)

最後のラスベガス進出シーンも、絶対に面白いのに、無念です。
もし一作品だけ、完結済み作品を復活させる権利を有していたら、この作品を選びますね。

ただ、万人にお薦め出来ません。
最近ボクシングや格闘技をあまり見ていないのでいい例えが出てきませんが、
才能に溢れていても、態度や発言が生意気で傲慢な人っているじゃないですか。
柔道時代の小川直也や総合の全盛期の山本KIDや青木真也とか。
そういう選手に対して嫌悪感を持つ様な人は同じ様にこの作品が合わないと思います。

天才の孤独、哀愁、精神性を多少なりとも理解しようと寄れる方にとっては、最高にスリリングでエキサイティングな作品になると思われます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-07-31 20:10:35] [修正:2017-07-31 20:10:35] [このレビューのURL]

9点 capeta

1巻から最終巻まで、一気に惹き込まれた名作。
F1への知識や興味はほぼゼロからのスタートでしたが、読むに際し、何の障害にもならなかったです。

もうとにかく熱い作品。
これだけ漫画を読んでいても、本当に感動できる作品がなんと少ない事か、、、
という私の不安を久々にぶっ飛ばしてくれた作品。

逆境の連続でのし上がり続ける「ミラクル」は一つのテーマでありますが、
ハングリーさやエネルギーだけではない、「勝つ為の鉄則」を描いているので、ご都合主義感は無く、納得させられます。
勝利への飢えが半端無さ過ぎます。
最終到達点であるF1編を描かなかった作者の想いにも納得させられ、痺れる余韻を残してくれました。

出てくる登場人物全員が魅力的ですが、
惜しむべくはキャラクターの使い捨て感を感じました。笑
あいつはどうなったんだろうとか、あれ?あの恋の行方は??とか。

曽田先生の作品では一番好きです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-07-31 20:04:53] [修正:2017-07-31 20:04:53] [このレビューのURL]

最近の新井英樹はぶっ飛びすぎて付いていけなくなったのですが、このキーチは全盛期の作品の一つだと個人的に思ってます。
この人はカリスマを描かせたら本当に巧い。

ただ、この作者はスロースターターなので、そこの我慢は必要なんですよね。
この作品も前半のホームレス編は衝撃的な展開ではありましたが、真骨頂は小学生編。
甲斐と出会ってからの展開がめちゃくちゃ面白い。

小学生である事の無力感からの挫折もあり、
小学生である事を武器にした反撃や演出。
キャラクターの躍動感が流石です。

「こんな小学生いる訳ない」とは思うし、
相変わらず我が強く、民衆を馬鹿に描き過ぎる作者の癖も鼻に付きますが、それでも夢中にさせるエネルギーがある作品。

カリスマの一挙一動に、漫画ながら目が離せない。

続編の「キーチvs」は全然入り込めなかったので、レビューはやめておこうと思います。笑

ナイスレビュー: 1

[投稿:2017-02-27 17:46:21] [修正:2017-02-27 17:46:21] [このレビューのURL]

最凶最悪の道徳の教科書。
これでもかというリアリティ溢れる痛みの表現に、読み手も想像力を働かさずにはいられない(はず…)。

おそらく、まともな方はこの作品に多少なりとも嫌悪感を抱くのではないでしょうか。
残酷性だけでなく、ゴチャゴチャして情報量が多く、癖がありスロースターターな作風も相まって、作品に入り込む敷居はかなり高めになっていると思います。

しかし、これは例えば「殺し屋1」の様な、娯楽暴力漫画等とは性質そのものが違います。
作者のメッセージや問題提起は、キャラクターによってきっちり代弁されています。

めちゃくちゃ当たり前の事を言いますが、読み手がまず敷居を跨げるか、
そしてこの物語やメッセージをどの様に想像、解釈出来るかで評価が分かれてくると思います。
「そんなに小難しく漫画を読みたくない」という方はスルーしていい作品です。

また、低評価を付けられている方を軽んじている訳では決してありません。
(私も、世間的に評価されている「風の谷のナウシカ」を、前述のゴチャゴチャした読みにくさという点で、思考停止してしまったクチなので。)


色々書きましたが、作品そのものの性質としては、「寄生獣」とも変わらない気もする、崇高なテーマの作品だと思っています。
そして特筆すべきは、この作者は時代の先見性に優れ、キャラクターやセリフが洗練されています。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2016-06-28 21:49:46] [修正:2016-06-28 21:49:46] [このレビューのURL]

こんなに面白い漫画、今の今まで見逃してたんだ…ってくらい、出会えて良かった作品。


バレエがテーマではあるけど、心理描写やキャラの成長の過程が非常に丁寧。
初っ端からドロドロしてたのが、良い掴みになっている様に思います。

所見こそ、淡白な絵や、セリフやリアクションから古臭さを感じたのが正直なところですが、
主人公の魅力やストーリーに夢中にさせられたので、2巻くらいからはまったく気にならずに読めました。
キャリアが長いだけあって、本当に実力のある作家さんだと感じました。(偉そうにすいません。)

色々衝撃的な展開だという前情報だけあったのも影響してか、最後まで緊張感持ちながら見れました。

この作者を一気に信頼しちゃって、日出処の天子やアラベスク、テレプシコーラ2部等、主要作品を買い揃えちゃったのですが、
絶版されているものも多く、ネット以外での入手難易度が高かったです。。笑

じっくり読んでレビューを増やしていきたいと思います。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2016-06-21 22:43:51] [修正:2016-06-21 22:43:51] [このレビューのURL]

9点 Sunny

近年で完結した作品の中では一番の名作だと思います。

「鉄コン筋クリート」のシロとクロ、「ピンポン」のペコとスマイル―
あの眩しい少年たちの最進化系、且つルーツがここに在る!!

というキャッチコピーに恥じない、現在進行形で進化している松本大洋先生に最大級のリスペクトを贈りたいです。
特に最終話の手前の回の春男と静の姿に、ペコとスマイルの関係性に似た空気を感じ、感極まってしまいました。

それぞれ理由があって、親元で暮らせなくなり、施設に預けられた少年少女の物語。
施設の少年だけでなく、施設側の「何ともやりきれない」感の描写もあり、胸を打たれます。
安達の「・・・」の三点リーダーに込められた心情に、何度思いを馳せた事だろうか。

他のレビュワーの方も仰られている様に、作者自身がそういった施設で育った事もあるせいか、
悪戯に理想のハッピーエンドには仕上がってないと個人的には感じます。
というか、最終話手前の回で、このペースではどうしても自分が望む終わり方にはならないな、と感じ、最終話を読むのが怖かったです。

松本大洋先生の作品には難解なものがあったり、センスに身を任せているだけのものもあったりするのですが、
この作品はピンポン、花男の様な読みやすい作品に仕上がっていると思います。


個人的に、最終巻で急に出てきた務が、思ったより良キャラだったので、彼ももう少し見たかったです。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-02-20 22:19:52] [修正:2016-02-20 22:19:52] [このレビューのURL]

9点 からん

本当に硬派な女子柔道漫画だと思います。

女子柔道と、部員内や京都という排他的なエリアでの人間関係を並行して描く、深みのある作品だと個人的には思うのですが。
作品を通して、それぞれの心理的成長も見て取れて、面白いです。
この作者は緊張と緩和の表現が抜群で、作中のピリピリとした緊張感も伝わってきます。

それだけに打ち切られたのが本当に残念です。

我の強い主人公のキャラ設定が、人によったら鼻に付いたのでしょうか。。。

読む人を選ぶと思いますが、柔道漫画の中では一番面白いと思っています。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-02-20 22:02:44] [修正:2016-02-20 22:02:44] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

この作品からは尋常じゃないエネルギーを感じる。
完全に「負」のエネルギーの方だけど。
ただ、作者が出し惜しみ無く全力を注いでいるのが伝わってくる。

単行本の帯にもある、
「恋愛ゲームにも参加できず、学歴コースからも脱落し、現状打破をねらった漫画コンクールでは相手にされない。
このままじゃダメになる…すべてがダメになる大いなる予感」感はひしひしと伝わってくる。

まんが道やバクマン。も読んでますが、この作品の主人公は、あくまでも一人。
孤独、絶望、自己嫌悪と闘う鬱々とした日々が痛々しいです。

地に足が付いてない日々の中で、何度も諦めながらも、衝動的に湧き上がる漫画への情熱。

「意識を遮断して描くんだ…どこでも描くんだ…とにかく描くんだ…
原稿に何かされたら、刺し違えてでも殺す…殺すぞ?」と、定時制高校の授業中に漫画を描くシーン。

漫画からしばらく離れ、好きな女性と一緒に過ごす日々の中、
前触れも無く急激に沸いた「漫画が描きたい」という衝動に駆られ、喫茶店で彼女を前に原稿を取り出し、漫画を描き始めるシーン。

とにかく、熱いです。

なんとも言えない終わり方を迎えますが、
この後に細々とメジャー誌で連載したり、陽の当たる場所にいけたと考えると、結果ハッピーエンドなのだと嬉しくなりますね。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-02-13 18:37:40] [修正:2016-02-13 18:37:40] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

独特の世界観で綴られる4話の短編集。

表題になっている「虫と歌」は非常に秀逸。
ラストに後悔の念と葛藤を感じさせる心理ネーム、コマ割り、表情はお見事。

個人的には「日下兄妹」も、この作者の作品では比較的分かりやすくて面白い。

優しいタッチと構成力、魅せ方が特に優れた作家さんです。
単行本の装丁も美しく、これは手放せない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2016-02-13 18:30:17] [修正:2016-02-13 18:30:17] [このレビューのURL]

打ち切りだったんですね。
このサイトで知りました。
キリ悪い終わり方ではないと思ったけど、もっともっと続けられるし、見たかったなーと非常に残念でした。

この作品は新城直衛の人間性の魅力に尽きますね。
あとこの作者、この後の作品「シュトヘル」でも言えますが、セリフのセンスが秀逸です。
非常にパンチラインが多い。

一話一話の密度が濃く、一切の無駄無く5冊でまとまっているという点でも評価に値します。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2016-02-06 15:51:25] [修正:2016-02-06 15:51:25] [このレビューのURL]