「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

自宅のごく近隣を中心に、極めてありふれた日常を描いているだけのはずなのに、何故か読んでいる方まで楽しくなってくる。作者の童心のような興奮が伝わって来るような、そんな暖かい作風。街に対する好奇心と愛着がしっかり感じられるのも好感度が高い。
ただ暖かいだけでなく、ギャグ漫画としてもレベルが高いのもよい。飾らない本音のコメントと作者特有の含蓄ある言い回しが、絵柄に似合わないスパイシーな笑いを誘う。
これは散歩に行きたくなる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-04 19:25:20] [修正:2008-02-04 19:25:20] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

スキージャンプに目をつけたのはいい。現実世界においては近年は低迷が続くジャンプだが、札幌世界選手権では奇跡的な表彰台を見ることができ、少しは上り調子に思えてきた中で、ジャンプ漫画という新しい存在が出てきた点は素直に嬉しい。
また女子選手に目をつけたのも鋭い。女子の世界選手権が現実味を帯び、また伊藤という幼きヒロインが登場した現実がある中で、実に旬の素材を見つけたものだ。
だが誉められる点はここまで。旬の素材を手に入れたのに、見事に料理に失敗している。
まず肝心のジャンプの飛翔感や緊張感が描けていない。本来ならスタートの緊張やアプローチのスピード、そして踏み切りのタイミングといった息詰まる要素の積み重ねがあるからこそ、その後の開放感が引き立つのだと思う。いくら時間的に短いからといって、ほとんど描写や説明を放棄していきなり宙を飛ばすのはひどい。ジャンプに興味がない人に説明するとすれば、例えば野球漫画で「バッターボックスに立った後、ピッチングのシーンやスイングのシーンを省略して、次のコマでホームラン。」とでも言えばわかってもらえるだろうか。スポーツの面白さが伝わらないスポーツ漫画は成り立たないだろう。
まだおかしい点はある。いきなり安易にヒルサイズ越えを描いて、後は何を描くつもりなのかわからないし、飛距離の話ばかりしていてゲート設定の説明がないのも変だし、そもそもかなり競技人口が少ない筈なのに無名の選手がいるというのも不自然である。長野五輪の少し後という設定のようだが、ジャンプのフォームがいかにも今風のフォームなのも気になる。
ストーリーも変に奇を衒い、スケート選手やホモや兄弟など、目眩ましのように雑多なネタを放り込んであって咀嚼し切れていない。軸が定まらないのをごまかすためにあちこちに伏線を張っているだけのように感じる。既にスキージャンプ漫画という一大ジャンルが存在し、後進の若手が隙間を狙っているとでもいうのならわかるが、ほとんどエポックメイキングな作品なのにいきなり奇襲攻撃に出る必要はないだろう。
まっとうな競技の面白さと健全な競技者では漫画を描く自信がないのだろうか。
(得点は素材を見つけた点への評価。)

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-02-04 01:32:38] [修正:2008-02-04 01:32:38] [このレビューのURL]

洗練されたタッチは現在でも古びていないのが凄い。また、女装癖・下ネタ・ヤクザなど、少年誌では勝負しづらいネタで堂々と勝負しており、当時の勢いと自信の程を感じさせる。
ギャグそのものは意外と堅実であり、ボケ(ひばりや政二)に対してツッコミ(耕作やいばり)がベタなツッコミを繰り広げる新喜劇のような展開で、言葉より動きや間で笑いを取る要素が強いように感じた。
ベタなギャグを描きたいのなら、必ずしも垢抜けた風景や美少女は必須ではない。しかしあえて両者を取り合わせたところに独特な味が生まれた。未完ではあるが、そこもまた型破りな作品らしくていい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-04 00:14:37] [修正:2008-02-04 00:14:37] [このレビューのURL]

6点 鬼市

一応オムニバスの形式をとってはいるが、燕光(燕見鬼)の活躍を描く連作になっている。怪異譚の味わいを残しながらも特に後半は冒険に比重がかけられ、また謎解きの要素もあって面白い。以下各話寸評。
「鬼市」民話調の怪談だが、どこかとぼけた味わい。落語の首提灯を彷彿とさせるあたりが要因か。(6点)
「羽化庵の来訪者」阿鬼の成長後の登場を語る話。これもまた民話的味わい。(5点)
「石の中の女」作者には珍しく、官能要素を取り込んだ怪談。「厄介なやつだった」で済ませる淡泊さが味わい深い。(5点)
「チョウ鬼」何故か挿入される阿鬼の幼少時の話。さらにスターシステムに似た二重虚構が仕掛けられており、気の利いた娯楽作品になっている。(7点)
「空園の戦い」1回だけの脇役と思われた長命さんの再登場。その後の冒険談の幕開けになっている。(5点)
「艮嶽の龍」時代や政治背景が語られ、前作に続いて冒険談のプロローグ。(6点)
「推背図」人物の見立てが非常に面白い。これをさらりと漫画にした作者の知識と力量に圧倒される。(7点)
「小玉」謎の呂氏の登場。サスペンス仕立てで、珍しく燕見鬼が戸惑ったりしている。(6点)
「天后」とりあえず推背図の謎解き。だが武則天を知らなければ面白さ半減。何か作者が暴走気味な感じがしないでもない。(7点)
「鬼弾」エピローグではなく、明らかに次巻への繋ぎ。(5点)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-04 00:07:09] [修正:2008-02-04 00:07:09] [このレビューのURL]

利己主義むき出しの人間模様を、美化することも卑下することもなく描いている。読んでいて辛くて息苦しい展開が多く、いつかは明るい展開が待っているかと思って読み進めたが、辛いままで終わってしまった。
誰一人救われないままの終わり方も陰鬱で残酷であり、むしろ悲惨さがこれで終わってくれるという安心感さえ与えるほどだった。
しかし忘れられない漫画であることは確かである。人の心を揺り動かすのが名作であるなら、やはりこの作品も名作と言えるだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-03 00:58:13] [修正:2008-02-03 00:58:13] [このレビューのURL]

不条理漫画のパイオニア作品の如く言われているが、さほど取っつきにくくはない。確かに起承転結を意図的に壊してはいるものの、朝倉世界一や高野聖ーナのようにどこで笑ったらよいか戸惑うような作品は少ないように思う。
非常に多くのキャラクターが登場したはずだが、やはり記憶に残るキャラクターと言えばかわうそだろう。初登場から数回の「かわうそだから」の台詞には、暴力的ともいえるほどの可笑しさと、それまでに見たこともないギャグに接した興奮があった。
やがてかわうそ自身が意図的にギャグを仕掛けるようになり、かえってシュールさが半減したのはやや残念に感じたが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-03 00:56:44] [修正:2008-02-03 00:56:44] [このレビューのURL]

絵の上手い下手で漫画を評価したくはないが、いわゆる上手い絵から意図的に遠ざかろうとしている作者は稀少だと思う。しかし野太い線と大胆なコマ割りで描写される世界は、いかにも熱い話に似つかわしい。
もともとストーリーを読ませる作風でもないが、それにしても読者がついて行けないほどの突飛な展開が続く。将棋漫画でありながら将棋の醍醐味を描くつもりでもないようで、現時点では方向性を見いだしにくい。ただ作者が巨大な何かを描こうとしている情念だけは伝わってくる。今後が楽しみな作品である。得点は暫定。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-03 00:55:56] [修正:2008-02-03 00:55:56] [このレビューのURL]

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