「まれら」さんのページ

総レビュー数: 112レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年02月12日

とにかく笑える。思想性を抜きにしたギャグ四コマに限れば最高の作品の一つだと思う。
どことなくアナクロな絵や少々変わった視点でのギャグなど、好き嫌いが分かれそうな作風ではあるが、模倣や追随ではない世界を創り上げ嘲笑や揶揄に頼らない笑いを生み出そうという努力は尊重に値する。
内容は、起承転結と言うよりもボケとツッコミのような展開が多い。キャラを生かした手の込んだネタもあり、コントを見ているような雰囲気がある。
意図してなのか偶然かわからないが、キャラの立場がドリフターズの役柄に近いようにも感じる。課長=いかりや、うずら谷=加藤(もしくは志村)、左右=荒井(もしくは加藤)、苦島=中本、半場=高木といったところで、やはりコント的構成なのかと納得。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-13 01:28:58] [修正:2008-02-13 01:28:58] [このレビューのURL]

8点 YAWARA!

[ネタバレあり]

実に爽快な傑作。スポーツ漫画としてもラブコメとしても相当の出来だと思うが、作者に対する期待が大きすぎるのか、意外と点数が伸びていないようにも感じる。
確かに柔が強すぎて試合展開が単調になるきらいはあるが、メンタル面の脆さと併せて描かれるためそう飽きずに読めた。また花園夫妻やライバルたちが思い切りスポ根しており、一種の群像劇として捉えればなかなか良いバランスだと思う。
難点を言えば中盤以降の恋愛関係の描写がしつこく、やや雑味として感じられる点が挙げられる。柔や富士子がモチベーションを取り戻し、せっかくテンポ良く進んでいたあたりで三角関係の話が挟まると、何か話がぶつ切りになったようで、せっかく生まれていたドライブ感がそがれるように思う。青年誌なのでやむを得ない部分もあったのだろうが、バルセロナ前あたりで人間関係を一旦精算しておいた方がクライマックスに向けて集中できたかも知れない。
もしこれが昭和40〜50年代に完全なスポ根ものとして描かれていたら、凄いことになっていたのではないかと思ってしまう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-11 01:01:36] [修正:2008-02-11 01:01:36] [このレビューのURL]

タイトルからして暴走気味。いまさら三木のり平でもあるまいに、若い読者のどの辺をくすぐろうというのか。そんな非常に困惑させる味わいが本編でも繰り広げられる。
時代劇パロディの需要がどのくらいあるのかわからないが、それでも水戸黄門や遠山の金さん程度なら万人受けする可能性もある。しかし「新五」や「人形佐七」を前振りなくネタにする勇気はなかなか見上げたものではないか。「花の生涯」のパロディなんて、元を知らなければ何のことやらさっぱりだろう。時代劇を見ない方にはお世辞にも薦められない。
しかし元ネタさえわかれば楽しめることは請け合いだし、深すぎるギャグが爆笑を誘う。作者のテレビに対する造詣や愛情を存分に味わえる作品。代表作と言えるだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-05 00:56:25] [修正:2008-02-05 00:56:25] [このレビューのURL]

8点 壁男

[ネタバレあり]

表題作は「壁男」だが、雑多な作を詰め合わせた短編集になっている。前半部は表題作を中心とする現代社会もの、後半部(第二部)は幻想SFが収録されている。傾向も時期もバラバラで、統一的な評価はできない。以下各話寸評。
「壁男」現代社会を舞台とするホラー的作品だが、宗教や伝奇などの背景を持たずに展開する作風が却って異質。隣接するのに見えないという実に地味な恐怖をうまく描いているが、描写は漫画ならではのもののように感じる。何故映画化(未見)されたのかわからないが、あまり目立つ作品にはならないように思う。(6点)
「ブラック・マジック・ウーマン」随分古い作品で、コミカルなホラーという不思議な世界。(5点)
「鰯の埋葬」会社(組織)の持つ狂気は、繰り返し描かれるテーマ。本作では宗教を絡めてやや猟奇的に描写されている。(6点)
「会社の幽霊」これも組織の狂気ぶりを描くシリーズ。(5点)
「夢の木の下で」モボクが登場する話の一つであり、「遠い国から」のシリーズの原点となるエピソード。幻想的なストーリーの最後で一縷の希望を示して終わっており、第四信で壁越えが成功したことが暗示されている表現に繋がっていく。(7点)
「遠い国から第一信」既評(8点)
「遠い国から追伸カオカオ様が通る」前作の続きとして位置づけられており、旅情と虚無に溢れる展開が引き継がれる。ただ前作から15年以上の制作間隔があり、絵柄やストーリーは随分異なっている。カオカオ様の意味が最後まで語られないところが不安感を煽る。(7点)
「第三信ナルム山紀行」ナルム馬の解説のシュールさが凄い。(6点)
「第四信荒れ地にて」連作の最終作になると共に、主人公の旅の終着点になるのだろう。モボクや壁の現在が語られるが、「夢の木の下で」で示された希望とは裏腹に、絶望や虚無で終わっている。荘厳なラストは圧巻。(8点)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-12 10:34:11] [修正:2008-01-12 10:34:11] [このレビューのURL]

子供の頃読んで、窒息するほど笑っていた。復刻版が出たのを機に再読してみて、20数年ぶりに窒息した。
意味のない展開と非常識なギャグの連発。比喩でも嘲笑でも風刺でもなく、誰も傷つけず何に役にも立たない、ひたすらに純粋な笑いがそこにある。
綺麗なデッサンとゆるい笑いで作られるギャグ漫画が大勢を占める昨今の世代にとっては、お世辞にも上手いとは言えない絵とプリミティブな笑いは古くさく感じるかも知れないが、試しに一読してみて欲しい。
「ちゅどーん」「みゅいん」「しびびび」などという妙な擬音と、「しり」「こしまき」など、なぜか対象物にそのまま書いてある下品な書き文字の可笑しさは、とにかく読まないと理解できないだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-15 16:04:04] [修正:2007-12-15 16:04:04] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

料理漫画の元祖だと称されているようだが、今読んでも非常に面白い。この手の漫画の王道としては主役に蘊蓄を語らせるものが多いが、味平はきわめて無知な駆け出しのコックとして描かれ、観客やライバルに説明をさせているところが却って新鮮に映る。またその分、根性やカンにまかせた勝負が多くなり、スポ根さながらの熱さがある。
大きく分けて5回(一の瀬とのキャベツ切りも含めると6回)の対決が描かれるが、それぞれの敵がまた個性的かつ天才肌で、主役を食うほどキャラが立っている。個人的にはカレー勝負が一番面白く、また鼻田など秀逸なキャラだと思う。(事実上味平が勝てなかった唯一の料理人ではないか。)
カレー、ラーメン、チャーハンなど、きわめて庶民的な料理を取り上げ、美味さがストレートに伝わってくるのもポイントが高い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-14 20:54:31] [修正:2007-12-14 20:54:31] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

実に壮大でロマンチックな話である。明治期の北海道という、野望と絶望と喧噪に満ちた舞台で、なぜもこんなに爽快で甘美な読後感の得られるストーリーが存在できるのか驚くほかない。
手塚作品においてブラックジャックや七色いんこなど、アウトローじみた人物を主役に据えることはままあるが、シュマリという男は本物のアウトローとして登場する。殺人犯であり、脱獄囚であり、反体制である。女性感情にはとんと興味がないようだし、酒癖も悪い。しかし嫌悪感を感じさせるわけでなく、ピカロとして描かれるわけでもない。窮屈な時代の枠には収まりきらないほどまっすぐで大きな人間として奔放に描かれるシュマリには、心底憧れる。
野火の場面、雪解けの場面、最終話でシュマリが遠ざかって俯瞰になっていくあたりなど、描写も映像的で非常に美しい。
子供向けではないためか知名度は今一つかもしれないが、手塚作品の中では一押し。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-08 23:37:30] [修正:2007-12-08 23:37:30] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

作品全体が3期に分かれると思うが、それぞれが随分違った印象を受ける。トータルで考えても、スポーツ漫画の名作にしてギャグ漫画の傑作である。
<ラグビー編>
正直なところ普通のギャグ漫画。面白くはあるが、もしここで終わっていれば、月並みな漫画で終わっていた。
<柔道編>
格闘団体戦ものの元祖ではないかと思う。しかし「団体戦に出られない程の弱小チーム」「別の競技の経験者」「なぜか混じっている素人」など、王道のパターンはほとんど出揃っているように思う。YAWARAも五所瓦も、すべてのルーツはここにある。
反則も含めた数々の技はきわめてアグレッシブで、プロレス編への伏線は十分だった。
<プロレス編>
ストーリーと試合場面の緩急が絶妙なので、筋だけ追って行っても十分面白いとは思うが、何と言っても素晴らしいのは作者のプロレス(また格闘技全般)への思い入れである。試合場面は丹念に描かれていて、恐らく目の肥えたプロレスファンでも納得の出来だろう。三四郎がスーパーマンではなく、根性の人として描かれるあたりも「闘魂」に忠実でひたすら熱い。
ギャグの合間に放り込まれるプロレスネタも小気味よい。作中に実名で登場する猪木をはじめ、シンやブッチャーやハンセンのエピソードがちりばめられ、プロレスが熱かった往年の雰囲気が蘇る。
ラグビー編から比較したら、キャラやストーリーなど別の漫画のようであるが、「闘魂」という一貫した主題が花開くのは、まさにこのプロレス編だと言って良い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-12-01 00:20:38] [修正:2007-12-01 00:20:38] [このレビューのURL]

既に数多の批評がなされており、批評するような余地があまり残されていないような気がする。映画より深くて面白いのは確かだが、その映画版自体を宮崎氏が監督して相当の高評価を得ているのだから、今一つ位置づけが理解しづらい。(私としては、「原作」だとは思っていない。)
そもそも、同じ絵を描く仕事といいながら全く別ジャンルの漫画を手がけ、なぜこんな凄い作品が創れるのか?
ひたすら評価を拒否するような作品。どうしても点数をつけざるを得ないなら、8点未満ではないと思うのでとりあえず8点をつけておく。
余談ではあるが、映画制作期間は休載が多くなるのが非常にもどかしかった。(本サイトは若い方が多く、リアルタイムで読んでいる者の方が珍しいかも知れない。)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-11-26 00:12:38] [修正:2007-11-26 00:12:38] [このレビューのURL]

ネタとしてはねじ式やゲンセンカンの方が有名かも知れない。映画化された点を除けば実に地味な作品。
作品終盤で語られる井月は、安政年間から明治半ばまで伊那谷を漂泊し、芭蕉や西行にあこがれたまま野垂れ死んだ。やがて昭和の世には、山頭火もまた伊那谷を訪れる。漂泊の人は漂泊の人にあこがれ、彷徨い続けるのが宿命なのだろう。つげ氏もまた同じなのかも知れない。
井月の話が淡々と語られ、それまでの作中の喧噪が浄化されてゆく。陰鬱な話の筈なのに、なぜか清々しい結末。井月の辞世の句で締めくくられた後は、自分もまた無能の人にあこがれる穏やかな読後感。
つげ作品の頂点と感じた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-11-20 00:40:31] [修正:2007-11-20 00:40:31] [このレビューのURL]

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