「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

4点 男坂

[ネタバレあり]

車田ファンの自分としても、この作品はさすがにフォローし辛い。

通説では「登場人物が多くなりすぎて収拾が付かなくなった」事が原因と言われているが、そんな事より最大の問題点は、主人公たちの「言っている事とやっている事」にあまりにもギャップがあり過ぎて、さすがに読者が呆れたという事が原因だろう。

と言うか、チ○毛も生え揃ってない、自分で働いて金を稼いでもいない中学生のガキ共に「オレはいずれ日本のドンになる」とか、「人の上に立つ人間のタイプを知っているか」とか言われたところで、「はいはい」としか言い様が無いだろう。しかも、やっている事がひたすら「ケンカ」ときた日には、もう笑うしかない。たぶん大半の読者の突っ込みも「ケンカも良いけど、まず義務教育を卒業しようね」だったはずだ(笑)。実際、作中での「ドン」は明らかに「番長」レベルの話ではなく、将来を見越したもっと大きい意味での「権力者」的なニュアンスで使われていたから滑稽感はなおさらだ。

純粋に格闘漫画として見ても、本来、出し惜しみすべき「ボスキャラ」であるはずの各国の「ドン」を、最初から全員顔出ししてしまったというのも大きなマイナス要因(しかも全員ショボイやっつけデザイン)。

また主人公にケンカの秘訣を教えるためだけに出てきた「喧嘩鬼」もご都合主義以前に意味不明な存在。教えてる事も「相手から目をそらすな」とか「敵の攻撃は紙一重でよけろ」とか、当たり前な心得ばかり。おまけに特訓期間はわずか十日間だけ(笑)。それで一気に仁義が強くなり、人間的にもデカくなるというのはあまりにも杜撰だろう。戦闘力なんてよほど実戦経験を積まなくては身につかないものだし、まして人間的な成長はそれ以上に長い人生経験を必要とするもののはずだ。そしてそんな仁義を一目見ただけで各地の硬派(笑)が会ったその日に軍門に下るという展開のご都合主義。この辺のいい加減な展開のせいでより人物像が薄っぺらくなっていったのだろう。

終了間際の怒涛のやっつけ展開と、ラストの「未完」の文字はもはや伝説。違う意味で楽しめる漫画ではあるが…。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-03 16:54:21] [修正:2008-02-03 16:54:21] [このレビューのURL]

<二巻目で挫折>

この作品もどこでも割りと高評価だけど、個人的にはいまいち。つまらなくはないけど、緊張感に欠ける作品。

最大の難点は、やはり基本的にシリアスな内容なのに、下ネタ絡みのギャグがあまりにも多すぎるからだろう。その配分バランスが悪い。ギャグ:シリアスの割合で言えば3:7でギャグが入るので、どうしても緊張感が持続しないのだ。ギャグを入れるのも良いが、「息抜き」というには余りにもTPOを考えていない下ネタが多すぎる。そのせいで作品全体の印象まで真剣味に欠けた中途半端なものになってしまっている。

その辺がこの作者の個性というか魅力でもあるのだろうが、クセのある濃い目の絵柄共々、合わない人にはかなり拒絶反応が出る作品と思われる。どうせなら一切ギャグを入れずに、とことん真面目にやった作品が見たかった。

また「不老不死の吸血鬼とその謎を追う組織」という基本設定もありがちで目新しい部分が無く、ストーリー展開もいまいち盛り上がり所が無い。そのため読んでいて先が気にならなかった。結果、二巻目で挫折。

この作者の絵柄やギャグに抵抗が無い人にならお奨め出来るかも。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 20:33:07] [修正:2008-02-02 20:33:07] [このレビューのURL]

4点 PLUTO

[ネタバレあり]

鉄腕アトムの「地上最大のロボット」のリメイク。

基本的なテーマはそのままに、ロボットのデザインや演出全般を徹底的にリアルにアレンジしてある。と言うか、この世界のロボットは、見た目や言動、思考形態が完全に人間で、さすがにちょっとやり過ぎ。

また、アトムをどう出すのかと思ったら、やっぱり見た目は完全に人間の子供(笑)。七大ロボットだから性能バツグンというのも分かるけど、人間の「感情」を理解できるところまでいっちゃってる。ここまで来るとほとんど「ロボットとして描いている必然性」すら失っている。ある意味、リアルである事の弊害が出ている。

ロボットが感情を持ってしまったらとか、感情を持たない人間と感情を持ったロボットとではどちらがより人間なのかとか、自分は何者なのか、みたいな「アイデンティティを問うテーマ」は、この手のSFに限らず、今や漫画では基本中の基本であり、さすがに今さら感は否めない。

また、この作者の他の漫画を見てもそうだが、全体的なプロットや演出の仕方が完全に「パターン化」していて(よくあるのが「無感情だった人間が家族愛や友情に目覚めた途端に殺される」パターン)、非常に商業的かつテクニック的でそこが鼻につく時がある。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 16:59:30] [修正:2008-02-02 16:59:30] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

<全巻読了>

少年時代のノスタルジーをテーマに直結させた着眼点は良かったけど、やはり広げ過ぎた風呂敷を畳めずに終わった感じ。最終的に何が一番言いたかったのかすらぼやけてしまっている。

序盤は色々な伏線の張り方と、情報の小出しのバランスが良く、読んでいて先が気になる怒涛の展開だったが、後半は伏線の回収と先延ばしに必死で、どうしてもストーリー展開に無理が出てしまった感がある。後半などは同じような展開の連続で「こいつら何やってるんだっけ?」と分からなくなることもしばしば(笑)。そのせいでグダグダ感が出まくっている。

それと、「モンスター」もそうだが、もともとこの作者の漫画の描き方は、良くも悪くも非常に「商業的」と言うか、「テクニック的」と言うか、「ここで新たな謎を出せば読者の興味を持続させられる」とか、「ここで家族愛を強調させてからこのキャラを殺せば泣ける」といったように、ある意味パターン化されたプロットの切り張りで作品を描いている印象が強くあり、その小器用なやり方が鼻に付く時がある。そのやり方がプロとして上手いので作家視点で見ていないと気付かないかも知れないが、今作はちょっと「読者の興味牽引のための二転三転」をやり過ぎた感は否めない。所謂「意外性のための意外性」に陥ってしまったと換言しても良いだろう。

一度読めば十分。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-31 15:42:46] [修正:2007-12-31 15:42:46] [このレビューのURL]

<1巻のみの評価>

どこでも高評価なので試しに買ってみたが、個人的にはイマイチ。

基本的に前半はギャグやコメディで笑わせて、その後ちょっとした事件や事故といったシリアスなイベントを挟み、それを乗り越えて感動させる、という物語構成。

その構成やキャラ設定、絵柄などは、全体的に丁寧な仕事ではあるものの、良くも悪くも古典的というか、パターン化され過ぎていて、「ここで感動させよう」とか「ここで笑わせよう」という作者の計算が露骨に見えてしまうので、正直読んでいて興ざめしてしまった。その作者の計算のようなものが、本来ほのぼのとした脱力系であるべき今作から感じる「力み」でもあるように思う。無理して感動させようとし過ぎと言うか…。

また、やたらオーバーアクションが多いだけのギャグシーンもはっきり言ってセンスが古く、感覚的にはふた昔前くらいに感じるほど。そのせいで、一見、生き生きしているように見えるキャラも、実際は作者に「動かされている」という印象を受ける。

南の島という舞台自体は良く描けているが、やはりどうしても漫画の舞台としては狭さを感じ、登場人物も少ないので、起こるイベントに「広がり」や「意外性」が出ていない。

今後、どういう風に話を広げていくつもりなのかは分からないが、はっきり言って先が気にならないので、続巻を買おうとは思えなかった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-12-31 14:11:53] [修正:2007-12-31 14:11:53] [このレビューのURL]