「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

[ネタバレあり]

五十六億七千万年に及ぶ、騎士とファティマとモーターヘッドと人間と神々の壮大な群像SFファンタジー。

一見すると普通のロボットものにも思えるけど、さにあらず。もはやこの作品は、それこそ本物の神話やおとぎ話の域に達してる。なんといっても主人公が「神」で、その子供たち(やっぱり神々)が未来の世界から干渉して親を助けたり、さらに他にも全能神がいたり、作中のおとぎ話が物語の伏線になっていたり、主人公の城の封印から悪魔が出てきたり、次元回廊から千手観音(?)が出てきたり、時間が何千年も飛んだりと、もう良い意味で何でもアリなところが魅力。

そして、この作品の凄さは、その「何でもアリ」な世界観でありながら、マニアックなまでに考え込まれた設定の細かさと、それゆえに多様な伏線の数々が矛盾無く機能し、作品に血肉を与えているという事。

ファティマや騎士の細かなスペック、モーターヘッドの外観や内部構造、各国家の成り立ちと関係性、前世紀の星団史の謎、果ては多次元宇宙や神々の世界に至るまで、よくアイデアが尽きないなと感心させられるほど(もちろん後付け設定も多いけど、それがマイナスにならず、むしろ作品の奥深さを加速させている)。

その設定や伏線の多様さ、細かさはファンとの共同幻想を成立させるに足るだけの情報量を有している。こんな作品はちょっと他に無い。まさか一巻で完全なる「やられ役」として出ているデコースが、後々、重要なキャラとして物語に関わってくるとは思ってなかったし(笑)。めちゃくちゃ多くのキャラが出てきては消えていく作品なのに、印象に残るキャラの使い方や動かし方が上手い(特に十年越しの<パルセット>のエピソードにはこちらも号泣)。

はっきり言って単行本を漫然と読んでいるだけでは、この作品の一割も面白さを理解できないと思う。巻末の「年表」を頭に入れておくのは基本として、色々と出ている設定資料を読んだり、ネットの用語解説サイトなどを参考にして、色々と自分なりに謎を解釈したりして物語に血肉を与えるのが楽しい。それが出来るのも、この作品に付与された設定や伏線といった情報が膨大なものだからだ。

ただ「エヴァンゲリオン」などもそうだが、多様な情報から物語の補完をするのが苦手な人や、積極的に作品の解釈をしたりする知的好奇心の無い人には、残念ながらお奨め出来ない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-03-16 23:31:31] [修正:2008-03-16 23:31:31] [このレビューのURL]

私が影響を受けた漫画のひとつ。

とにかく凄いのは、もう三十年近くも前から続いている漫画でありながら、初期の頃からセンスがほとんど変わっていない事。今、一巻辺りを読んでも、物語やギャグに古さを感じない。当時の漫才やドリフのコントなどが現代では通用しなくなっているのと比較すると、「パタリロ!」の持つギャグセンスがいかに普遍的かつ不変的であるかが分かる。

最近でこそ当初のようなストーリー性や耽美性は影を潜めたが、基本にあるギャグ漫画としての一貫性は保っている。魔夜氏のギャグセンスの高さを示す例のひとつに、パタリロが「誰にも分からないモノマネ」をして、「それが誰なのか分からなくても、そういう人がいるんだなあと想像する事で笑いになるんだ」というような解説をするシーンがあるが、これなどは最近の「細かすぎて伝わらないモノマネ」の笑いそのもの。他にも「ボケの放置」や「意図的なギャグの繰り返し」、「ノリツッコミ」、掛け合いの絶妙な間やテンポの良さなど、どれも当時から現代でも通用するレベルに達している。

つまりそれだけ最初から漫画としてのギャグやオリジナリティが高いレベルで完成されている事の証左であり、だからこそこれだけ続いているのだろう。

それでいて作中に登場するメインキャラに至っては、パタリロ、バンコラン、マライヒ、タマネギ(部隊)の、事実上4キャラのみ。そこにゲストやサブキャラが入る程度なのに、これだけ長期に亘って飽きさせずに話を作れるというのが凄い。もはや「永遠のマンネリズム」を追求しても良い立場にある。

とにかく漫画として、笑いあり、涙あり、耽美あり、ミステリーあり、オカルトあり、SFあり、冒険ありと、良い意味で何でもありの稀代の傑作。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2008-03-12 23:13:49] [修正:2008-03-12 23:13:49] [このレビューのURL]