「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

[ネタバレあり]

今では当たり前にあるが、剣と魔法を扱ったファンタジー漫画の先達という点では評価すべき部分も多い作品。作者の漫画家としての技量は非常に高いし、戦闘シーンにおける演出センスなども良い。

実際、破壊神の復活→箱舟攻防戦の辺りまでは非常に盛り上がった。だが残念な事に、それ以降の引き延ばしのせいで、それまでは辛うじて守られていた設定や伏線も完全に破綻してしまった。地獄に落とされた地点でポルノ・ディアノに手も足も出なかったD.Sが、どうやって6人の悪魔王から「ユダの痛み」を抜き取ったのかとか、「竜戦士」は箱舟で破壊されたんじゃなかったかとか、いくらなんでも人類が作ったものにしては強すぎるだろとか、数え上げるとキリが無い。

また、天使と悪魔を出した事による戦闘力のエスカレートは、ジャンプ連載作品の中でもダントツでトップw。ある意味ではドラゴンボールをも軽く凌いでいる。特に単行本23〜24巻現在での戦闘シーンでは、すでに旧キャラのガラやネイどころか、四大天使や七人の悪魔王たちすら蚊帳の外w。もはや漫画における戦闘シーンの演出表現でも限界に達している(そういう点では見るべき部分はあるが)。

ただ、物語の行き詰まり感は誰の目にも明らかながら、それでも「竜戦士」を何とか使おうとしたり、人類側の救世主アダムという新キャラ(?)を出したりと、出来るだけまとめようとする努力の後も見られる。ここまで破綻しつつある物語を続けられる事を、逆に応援してしまいたくなるほど(まあ、今さらエルフやドワーフ、人類を含めた「汎人類連合」なんかを出されてもなあ、というのもあるがw)。

何にしても、ここまでリアルタイムで読んできた作品だけに、どんな形であれ最後まで付き合うつもり。その日がいつになるかは分からないけどw。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-24 21:54:47] [修正:2008-02-24 21:54:47] [このレビューのURL]

7点 バキ

[ネタバレあり]

このシリーズも前半までは「予想は裏切り、期待は裏切らない」だったが、後半からは「予想は裏切り、期待も裏切る」という、単なるサプライズ漫画に成り果てた。

「グラップラー刃牙」は真っ当な格闘漫画として完成されていたし、この「バキ」も序盤の死刑囚登場のインパクトは凄まじいものがあった。実際、独歩の手首をワイヤーで切断したり、爆薬を使ったりするのを見ると、「そこまでやるか!」と戦慄したほどだった。しかも、その死刑囚たちを狩る怪物、オリバの登場など、先が読めない展開にワクワクしたものだ。

しかし中盤辺りから勇次郎レベルの戦闘力の持ち主かと思われていた死刑囚たちがだんだんと劣化していくようになる。戦闘も花山vsスペック戦が頂点で、それ以降はちょっと小競り合いをしたらどちらかが逃亡、もしくは邪魔が入るというパターンが増え、無駄な時間稼ぎ(つまりページ稼ぎ)のせいでグダグダな展開になっていく。

特にドリアンと柳の結末はひどい。意外性はあっても、その展開は到底納得の行くものとは言い難かった。ドリアンは逃亡がしつこ過ぎてグダグダで意味不明な終わり方に。また、もともと暗器使いの柳が、「武器に頼っているからダメ」という理屈で、同じく武器を使っている本部ごときに何故あそこまで遅れを取るのか?。さらにそこへ勇次郎が乱入して滅茶苦茶な幕引きに。せめて因縁のライバル、渋川と戦わせて欲しかった。あげくドイルもシコルもヘタレ化し、はっきりとした結末が無いままに何故か中国の武術大会「擂台賽」へと話が進む。

オリバvs書文、勇次郎vs郭は多少なりとも盛り上がったが、結局、強大なパワーの前に技術は負けるというオチ。おまけに「血統シリーズ」への伏線として出したはずのキャラ、範海王がその名前から早々に読者に予想され、あっさりとアライjr.に瞬殺→退場w。

しかも擂台賽後、今度は鳴り物入りで登場した(恐らく当初の予定では範海王同様、バキのライバルとなるはずであった)そのアライjr.が金的でバキに瞬殺→退場w。範、春成に続き「いったい何だったんだキャラ」の三巨頭w。

ここに「予想は裏切り、期待も裏切る」板垣流が完成した。

確かにその場のインパクトは強いし、先の読めない展開や強烈なキャラクターたちには期待してしまうだけの魅力が備わっていると思う。しかし全体を通して読むと、その場しのぎをしているがゆえの整合性の無さや、無駄な先延ばしが際立ってしまうのが痛い。

死刑囚編前半10点、死刑囚編後半5点、擂台賽編8点、アライjr編からラスト2点で、平均6.5点。おまけで7点辺りが妥当な評価。


☆☆☆勝手に死刑囚レビュー☆☆☆

1位・ドリアン

海王の称号を持つだけの事はあり、拳法の技術体系は完璧。それに加え超人的な肉体、卑怯な手段を平気で使う精神性、強力な催眠術など、死刑囚の中でも群を抜いて凶悪キャラ。小細工を弄さずともメインキャラを圧倒するだけの戦闘力を持っていた。ゆえに後半、「武に対する心構え」という精神論だけで独歩に一方的にボコられる展開には納得がいかなかった。その後、烈との絡みで完全に着地点を失いグダグダな展開に。遊園地のシーンで終わっておけば…。

2位・スペック

本人の望み通りすべてを出し切って敗北した唯一の幸せな死刑囚(笑)。今見れば戦い方に卑怯なところはなく、武器を使う時もその場にあるものだけを使うという潔さ。相手が花山で良かった。

3位・柳

天才ゆえの器用貧乏?何にしても本部に遅れを取ってしまった地点で株価大崩落。いまだに「武器に頼っているからダメ理論」はよく分からない。あげく勇次郎の乱入で無理やり退場させられた。

4位・シコル

勇次郎、オリバ、ジャック、バキ、ガイア、と悉く戦った相手が悪かった。指の力が凄いというのも売りとしては地味すぎ。他に特化した部分が無いのが痛かった。にしても猪狩に拘束された時に頭を撃たれてたら終わってたんじゃないの(笑)。

5位・ドイル

肉体的資質は他の死刑囚に劣らないだろうが、身体に仕込んだ刃や爆薬に頼り過ぎていたためか、真っ当な空手家や拳法家を相手にすると手も足も出ない弱さ。あと負けそうになると逃げすぎ。また一番どうしたいのか分からないキャラ。

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[投稿:2008-02-13 22:56:23] [修正:2008-02-13 22:56:23] [このレビューのURL]

7点 CLAYMORE

[ネタバレあり]

3巻まではキャラや世界観の構築のためか、いまいち盛り上がりに欠ける印象だったが、4巻から加速度的に面白くなっている。

迫力やインパクトが足りないと思っていた敵キャラに、「覚醒者」という強大で魅力的な怪物を出したことで、それを狩るクレイモア側にも魅力が出てきて、相乗効果的にキャラに深みが増している。

戦闘シーンはジャンプ特有のインフレバトルに近いが、クレイモアの設定上、「一対複数」というバトルも多いため、あまり不条理な勝ち方や負け方は少ない(あくまで私見だけど、今後、インフレで長引かせる事はないはず。あの世界設定で、さすがに「深淵の者」以上の存在が出てくるような無節操な展開になる可能性は低いし、あっても組織の内部抗争や秘密に関したラスボス的な存在の場合だけだろう)。

ただ、基本的に女性キャラばかりで、デザインも似通っているので見分けがつきにくい事や、「異常食欲者」と言われるように、欲望に負けたから覚醒したのに、妙に覚醒者が人間的で冷静だったりと(イースレイやリガルドなど)、突っ込みどころや不安定要素はあるものの、今後も先が気になる作品である事は間違いない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-11 21:31:51] [修正:2008-02-11 21:31:51] [このレビューのURL]

月刊コミックビームに連載されていた、作者が「おさんぽ」と称して出かけていった先の出来事を体験談として漫画にする、ゆるゆるエッセイ漫画。この作者の暖か味のある絵柄が、何とも言えないゆったりとした独特な空気感を醸し出している。

海外旅行に行く時もあるが、基本的に出かける先は都内が多く、作者の住宅近辺という近場ばかり(笑)。

でも、そんな何の変哲もない近所でも、ちょっと視点を変えて観察すれば色々な出会いや発見があり面白い。

自分もおさんぽがてら近所をのんびり散歩してみたくなる。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-04 17:20:58] [修正:2008-02-04 17:20:58] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

<8巻までのレビュー>

トレパネーションという設定や幻覚の視覚的演出は非常に斬新なんだけど、結局、それ以外の事を考えないまま連載を始めちゃった感じ。

序盤、頭蓋骨に穴を開けて幻覚が見えるようになり、ヤクザの親分の心の闇を払う件までは、時間を忘れて読みふけってしまうくらい面白かったが、女子高生の話あたりから展開が行き当たりばったりで、ダラダラと続けているだけになってしまっている。多分、主人公が出会った人々の「心の闇」の象徴であるホムンクルスを取り除いていく、という話をやりたかったのだと思うけど、その辺が上手く描けていない。

これは(意図的かどうかは微妙なところだが)、主人公のキャラ付けを中途半端なままにしてある事に起因している。まさに作中で主人公自身が自分の人生の進退について迷っているがゆえに、作品自体も迷走しているのだと思われる。

最近の展開も、どう決着をつけたら良いか方向の見当が付かず、明らかに作者が迷走しているのが丸分かり。下手したら「作者急病のため休載します」とか言って、未完のまま終わる可能性すらある。

それでもまだ今後に期待したい気持ちはあるだけに、何とか盛り返して欲しいところ。

とは言え、現代人の病理を表象するホムンクルスと、それを取り払うというアイデアは評価できるので、まあ、6〜7点前後が妥当なところだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-03 16:35:57] [修正:2008-02-03 16:35:57] [このレビューのURL]

かわいい絵柄に似合っているのか似合ってないのか。それはともかく、実にアホらしく、バカバカしい下ネタ満載のほのぼのエロバカ漫画。主人公たちの「おっぱい」と「ぱんつ」への執着は、ある意味、清々しさすら感じてしまう。と言っても、成年指定ではなく、あくまでギャグ漫画。戦闘力ならぬ「エロ数値」が出てくるのも面白い。

基本的には同人誌のようなノリであるが、エロいことに命を掛けるランジェリータウンの人々の日常は、良い意味でアホなことに徹底している作者の真剣な創作姿勢そのもの。

ダウンタウンの松本も言うように、「バカな事をやるにも真剣にやらないといけない」というギャグの基本が理解できていないと、この漫画の「計算されたバカさ」ゆえに醸し出される魅力には気付かないだろう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-03 11:27:13] [修正:2008-02-03 11:27:13] [このレビューのURL]

一巻を読んだだけでは伝わらないかも知れないが、メイン以外にも登場キャラの描写が丁寧なので、その地道な造形の積み重ねのおかげで、巻を重ねる毎に確実に物語に血が通ってきている。

歴史上の実在の人物の絡め方など、虚実入り混じった物語構築も上手い。そして、彼らとセスタスの邂逅がより物語を重厚なものにしている。

戦いに派手さは無いが、各キャラに個性があり、彼らの生き様や考え方が、そのまま戦いの勝敗にも影響するというシビアな描写がリアル。まさに人生とは戦いって感じで、誰にでも等しく感情移入が出来る。

ただ、残念なのは、基本的に戦闘シーンが売りの格闘漫画としては、ちょっと地味という事。原因は作者の絵柄が丁寧すぎる事と、カメラワークに工夫が無い点。いつもほとんど同じ位置(目線)や距離であるため、画面にメリハリが無く、迫力も感じられない。こういうのを見ると、やはり「バキ」の戦闘シーンの迫力の凄さが分かる(物語はともかくw)。

まあそれでも十分面白いので読んで損は無い作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-02 19:04:54] [修正:2008-02-02 19:04:54] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

80年代ジャンプ黄金期を支えた作品の一つ。

それまでありそうで無かった「美少年+鎧装着」というジャンルの元祖。すでに連載開始から数えると二十年以上も前の作品という事を考えれば、この着眼点は非常に斬新。いまだに人気があるというのも頷ける。

やはり国内のみならず、海外でも人気が沸騰するようなキャラを作れる車田氏の才能は並ではない(特に今作は「風魔の小次郎」や「男坂」での失敗以降、「離れたファンを取り戻すのはいつでも出来る」とメジャー路線として描き、実際にヒットさせたという背景がある)。

ただ残念なのは、それまでは順当に展開していたストーリーが、編集部に引き伸ばしを強制されたからか、最大の戦いの山場であるはずのハーデス編の後半から無意味なイベントや無理のある展開が多くなった事だ(瞬がハーデスの肉体だったとか、その瞬を殺したシーンが幻覚だったとか)。他にも、ハーデスの結界により力を失うという理屈で、やっと活躍するだろうと期待されていた黄金聖闘士たちがコキュートスに強制退場させられたりw、さらにアテナの無謀な単独先行のせいで、嘆きの門を破壊するためだけに黄金聖闘士が全員死ぬハメになったり、あげく「アテナの血を付ければゴッドクロスに変わって次元もひとっ飛び!神とも戦えるぜ!」という超ご都合主義的設定が出てきたりと(それならハーデス戦の始めから全ての聖衣に血を付けとけっつーのw。それまでにも付けた血によって聖衣に変化が出るのは分かってる事なんだから。そうすればハーデスの結界で黄金聖闘士がやられる事もなかった、等々)、看過できない突っ込みどころが頻出し、明らかに車田氏が迷走しまった事だ。そのせいでファンの期待との乖離が起こり、結果人気は急落した。ハーデス編の前半の盛り上がりがウソのような落ちぶれっぷりだった。「男坂」ほどではないにしても、中途半端な形で終了してしまったのも当然の迷走と言える。

ただ、それでも一大ブームを作った功績や漫画業界に与えた影響の大きさは評価すべきだし、実際、終盤での迷走までは十分に面白のも確か。

十二宮編9点、ポセイドン編6点、ハーデス編(前半9点〜後半3点)で、平均すると7点辺りが妥当なところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-01-28 12:00:44] [修正:2008-01-28 12:00:44] [このレビューのURL]