「FSS」さんのページ

総レビュー数: 50レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年12月31日

[ネタバレあり]

前作「バキ」で完成した、「予想は裏切り、期待も裏切る」板垣流は新シリーズでも全開。

相変わらず無駄な時間稼ぎや肩透かしな結末が多すぎる。

特にゲバル編はひどい。勇次郎、オリバに並び、各国に動向を監視されるほどのアンチェインなのに、結局、こいつもオリバの単純パワーの前に敗れるオチ。これまで同様、オリバはどんなに攻撃されてもダメージが無く、そのまま力で相手を捻じ伏せるというパターン。花山もジャックも同じタイプなのでさすがにこういう戦い方は見飽きた。一方、ゲバルもラストでモノ凄い「地球パンチ」を出しておきながらあっさり顔面潰されて終了。と言うか、あのシーン自体、幻覚なのか実際にあったのかも不明なまま。撃ったのなら空中のオリバがどうやってパンチをかわしたのか説明されていない。明らかな手抜き。

さらにメインである「バキvsオリバ戦」も輪を掛けてひどい肩透かし。「勇次郎を倒すためには小細工なしでオリバを倒さなくてはならない」という理屈は分かるが、入所当時、顔面を殴ってもまるっきりダメージを与えられなかったバキが、どうして何の修行もせずに、わずか数日後に勝てるのか説得力が皆無。結局、いつもの「範馬の血」という反則技のおかげで勝てたというだけ。そんな事では読者は納得できないし、何より格闘漫画としての醍醐味が無い。修行をしてない分、スーパーサイヤ人よりも戦闘力アップに説得力が無い。死刑囚編同様、バキがパワーアップしたんじゃなくて、オリバが弱体化したようにしか見えないのが問題。

さらに現在のピクル編に至ってはほぼ暴走と言っても過言ではない。確かに意外な展開にインパクトはある。出てくるキャラも魅力的だ。だから文句を言いつつも見てしまうのだが、その場のインパクト以上にキャラの魅力を引き出した中身のある戦いになっているかは甚だ疑問と言わざるを得ない。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-02-14 17:15:48] [修正:2008-06-10 00:11:06] [このレビューのURL]

これだけ精神的に病んでいる主人公というのも珍しい。それだけに拒否反応が出る人も多いだろうが、こんな作品は多様で柔軟な感性を必要とする漫画文化を持つ日本でしか作られないだろうし、日本の漫画の中でも類例が無い。少し前の漫画とは言え、このご時勢によく出ていると思うし、それゆえに薄甘い事なかれ主義に対するカウンターウェイトとしての意味も持っていると思う。

たしかに強烈な残酷表現が多く、その怒涛の展開に終始圧倒されるが、「のぞき屋」の頃から常に人間の持つ精神の「暗部」に光を当てる作者の人間描写には一貫性があり、今作も始まりから終わるべくして終わる物語としての「必然性」を内包している。

異常と正常は常に表裏の関係。誰の中にも異常性は潜んでいるし、その定義すら相対的である事に自覚的でないとちょっと危険。それだけに表面的な残酷表現にばかり気を取られてしまい、その異常性の持つ「普遍性」を理解しないと、現実世界でもちょっとした事でバランスを崩してしまう事になるかも知れない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-06-06 22:45:05] [修正:2008-06-06 22:45:05] [このレビューのURL]