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7点 ガラスの仮面
演劇に賭ける少女、北島マヤの物語。大人買いでどっぷり浸ってきました。
少女マンガというジャンルの広がり方は少年マンガに比べるとかなりちいさく感じる。
その大きな要因は「恋愛要素」にあるのではないかと思われる。
多くの少女達にとって恋愛こそ現在最大の関心事であり他のテーマを寄せ付けないほど突出している。
それゆえ少年マンガのように多くのテーマに分かれる事無くコメディにせよシリアスにせよ内容の中心部分は恋愛でかためられている。
恋愛は「醤油」のようだ。
多くの料理にあう万能調味料醤油があったがゆえに日本では他国のようにバラエティある調味料が発達しなかった。少女マンガもそんな日本と似ているのではないか。
そんな中、醤油(恋愛)をかくし味程度に抑えた少女マンガもいくつか存在する。
そしてそんな(少女マンガ的には)邪道な作品の中にこそ名作は多く生まれている気がする。
本作「ガラスの仮面」もそうだ。
これは完全にスポ根(スポーツ根性モノ)である。演劇を見事な手腕で屋内競技として描き出している。
(恋愛は脇役に徹していて私の好きな桜小路君などヒドい扱いになっている。その分最終章は濃い醤油味かもしれないが。)
近年少女マンガでスポ根を取り入れて成功した屋内競技作品と言えば「ちはやふる」が挙げられるか。
本作はそんなスポ根モノの大先輩にあたるのではなだろうか。
しかしだからと言って誰かれに勧められるという訳でもない。
「ちはやふる」は現在のスポ根系少年マンガの洗練された最先端作(スラムダンク等)をベースに創られている。(トレスっちゃうくらい好きみたいだ)
しかし「ガラスの仮面」は魔球渦巻く古典的スポ根がベースとなっている。(事実「大リーグ養成ギプス」的なものまで作中に登場する。舞台あらし編)
つまりスポ根マンガであると同時に超人マンガ的内容にもなっているのだ。
私などは全然オッケーでうひゃうひゃ言いながら楽しめたのだが古い画風と合わせてこの辺は賛否両論かもしれない。(それにしても月影先生のパワハラはヒドい)
それでも昭和を越え平成までも生き続けたこの大作は多くの少女達に多大な影響を与え続けている。
以前テレビに美内先生が出演された時ファンから「お願いですから私が死ぬまでに完結して下さい。」というファックスが届いていた。
これはいろんな意味でマジである。いまだ未完の恐るべき大作なのである。
彼女達はこのマンガの結末を見届けない訳にはいかないのだ。
それは少年期にドラゴンボールに出会ってしまった男の人などにまま起こる事と同じで、もはや愛読書の一つではすまされずその人の「青春そのもの」と化しているのである。
北島マヤの青春こそ自分の青春。
読了後、本作を少女期に読めた人たちがとてもうらやましく思えたのだった。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-08-04 20:09:29] [修正:2010-08-08 13:45:44] [このレビューのURL]
漫画界においては、今も昔も最激戦区といえば週刊少年漫画の世界である。漫画の主要な読者層である少年達の移ろいやすい興味をとらえ続けるために漫画家も編集部もしのぎを削り、他誌はおろか同じ雑誌内でも人気投票というの名の激しいサバイバルが週刊単位で繰り広げられるという苛酷な世界。
中でも発行部数1位を誇る週刊少年ジャンプは、特に「人気投票至上主義」に基づく非情な競争を作家達に強いることで様々な話題作を生み出し続けてきた。いったん人気に火が付き、作品のクオリティを長期にわたって安定させることに成功すれば『ONEPIECE』などのように10年を超える長期連載も出るには出るが、多くの作品が半年、一年弱、もしくは10週程度で終了の憂き目にあうため、とにかく作品の入れ替わりが激しいのが特徴なのである。良い意味でも悪い意味でも、常にニーズに合わせて“変化し続けること”を宿命づけられる人気商売の世界の顕著な例が、週刊少年ジャンプという雑誌の有り様なのだった。
そんなジャンプにおいて特異な存在なのがみなさんご存じ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』である。連載開始は何と1976年。東京の下町葛飾亀有の小さな派出所と舞台に、ガキ大将がそのまま制服着たようなトンデモ警官「両津勘吉」が暴れまわるギャグ漫画。こういう基本設定だけを見ると非情に古臭く、とてもかのジャンプで30年以上人気を博す作品には思えないのだが、『こち亀』が連載を維持し続ける事が出来たのは、下町コメディという基本は残しつつも“変化し続けること”を課し続けた作品姿勢によっている。
初期のこち亀は人情風味を加えつつも比較的ストレートなバイオレンスギャグだった。『がきデカ』に倣ったのか劇画調の濃い絵柄で主人公の警官が銃を撃ちまくるという作風が当時は過激なギャグとしてウケたようだが、作品は次第に「情報漫画」「教養漫画」としての側面が目立ち始める。作者の秋本治が非情に好奇心旺盛かつ他分野に渡るマニアックな知識の持ち主だったため、作品内でも両津を語り部に、おもちゃやミリタリー、車にゲームといった「男の子の趣味」全般の深いうんちくが次々に開陳され始めた。作品自体が「遊びの戦後史」とも言える存在となったのだ。
さらに連載の長期化に伴い、絶えず変貌を続ける東京の世相を作品は的確にとらえ続けた。首都の過密化、地価の乱高下、バブルの狂騒、失われた十年、再開発、スカイツリー…、こち亀を通読すればそれだけでここ三十数年の東京の世相史が一目瞭然となるのである。これはやはり特筆するべき事だろう。
こうしてジャンプ内において特別な地位を得たこち亀は作者の驚異的な筆力も手伝い順調に巻数を重ね続け、96年には連載20周年&単行本100巻という空前の快挙を達成した。しかしここから他のレビュワーのみなさんも指摘されるように作品の迷走&質的低下が見られ始めたのも事実である。ジャンプ編集部も「長期連載」がウリのこち亀だけは人気投票レースにおける治外法権にしている節があり、他の漫画が人気獲得にしのぎをけずるのを尻目にこち亀だけが安全圏でダラダラ連載を続けている…と最近の読者には感じられるようになった部分があるのは否定できないだろう。実際一時期見られたやっつけ感漂うビミョーな新キャラの乱発や展開が容易に読める話の落ち方、女性キャラの極端な巨乳化(まさかオタク受けを狙っていたのか?)などなど目に余る部分がここ10年ほどのこち亀には多く見られるようになってきた。特に両津が警察の独身寮を出て「超神田寿司」と疑似家族的な関係を結んだ近年の展開なども、古参のファンには賛否両論あったことだろう。
なるほど、長期連載は確かに凄いし情報漫画としても重宝する。しかし、それが漫画作品として、とりわけ週刊少年ジャンプ作品の在り方として適切なのか?という疑問が連載20年を超えたころから芽生え始めたワケだが、作品が落ち着きを取り戻したこともあり、自分でも意外なことに、最近またこち亀を楽しく読めるようになってきたのだ。
うんちくをウリとした長期連載といえば『美味しんぼ』が代表格だが、あちらは原作者自信も認めるように近年は物語としての質の低下から漫画作品としての必然性を失いつつあるのに対し、こち亀の方は(元々がギャグ漫画である事もあり)依然として漫画としての必然性は保たれている。秋本治は一見ワンパターンに見える連載の中でも絶えず実験的な演出に挑戦し続けており、時々「これは」と息をのむような素晴らしいシーンを目にすることもある。(昨年の深夜ラジオを扱った回は素晴らしかった。)
このように新しい話題に常に挑戦し続ける一方で、作品の根幹をなすのはあくまでも昭和30年代的な下町人情の世界である部分は変えていないのも良い。昭和30年代というのは実際にその時代を経験したことのない80年代生まれの自分にすら「なんか懐かしい」と思わせる魔力を持った現代日本の原風景であり、こち亀はその豊かな土壌を実に巧みに現代に活かしているのである。かといって「昔は良かった」的な過度なノスタルジーには陥っていない点も注目に値する。両津はメンコやベーゴマの達人である一方で、最新鋭の情報端末やゲーム機をも自在に遊び倒す現代性を持っているのである。
そして、そんなこち亀が今でもジャンプを開けば毎週必ず(必ず!)会えるというこの奇跡。最近はそれが何よりもありがたく感じるようになってきたのだ。
東京の街並みと同じように、漫画界は常に変化し続ける。ジャンプの誌面も変わり続ける。こち亀もまた変わる。良くも悪くも変わる。しかし、こち亀が毎週必ず読めるという事実だけは三十数年来変わらない。「派出所」という呼び名も、(一度「交番」に書き換えられた事はあったが)変わらない。
そういう作品がジャンプにあってもいいじゃないか。次の10年20年も、こち亀と共に見届けていきたいと切に思う。
あと、久しぶりに戸塚と寺井とダメ太郎あたりをまた見たい。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-08-04 23:39:27] [修正:2010-08-05 21:36:07] [このレビューのURL]
10点 ONE PIECE
人気の分だけアンチがいるというのを見事に証明しきった奇跡の漫画
ただ存在しているだけで良し
だれの声も聞かず、ただドン!と存在している最強漫画だ
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-08-04 16:55:00] [修正:2010-08-04 16:55:00] [このレビューのURL]
6点 モテキ
各所で話題になっています。
私も連載中楽しみでした。しかし、その終わりかたに肩透かしをくらった。
あれ?こんなんで終了?みたいな。
そんな漫画が、なんでブログやら著名人の間で読み語られるかというと、出てくるキャラがいままでの漫画の型にはまっていない、自分や知り合いに思い当たる要素があるからでしょう。
美人で男に困っていないような土井亜紀も、美人ゆえに男性が勝手に『美人フィルター』をかけて近寄ってきては勝手に幻滅されて去っていくという苦い経験をかさねている。
逆に自分の女らしさに自信がなく、男が恋愛対象としてよってこないいつかちゃん。実は彼女は彼女で趣味の合う男友達にそれなりにモテている。(本人は気づいてないけど)
恋愛強者の友人島田すらも、もてない高校時代の反動で遊びまくるが、女に流される自分に嫌悪して苦しむ。
そして主人公フジは「自分は他人と比べ、すべてにおいて負けている」。その劣等感で苦しんでいる。
しかし、先に書いたように、周囲の勝っていると思われる人々も、実は必ず負けを背負っているのだ。
それに気がつかず「お前らは勝ち組だろ、いいよな」と不貞腐れるフジ。(不貞腐れるのって実は周囲をけっこう傷つけてるんですけど…)
その中で最強にして最凶のモンスターが小宮山夏樹だ。
フジは彼女を理解できない。あたりまえだ。
彼女は勝ち負けすらどーでもいいのだ。
やがてフジは小宮山夏樹を通して他者と比べて負けていたではなく、自分の作り出した自分に負けていたと気がつく。
そして他者は冷たく暖かく自分と関わっていてくれたことを悟り、「今の俺に」たどりつく。
モテキ(完)
勝利を勝ち取る物語ではなく始めの一歩の物語。それがこのモテキだった。
後にネットの対談で作者が「これは仕事で言うならニートが会社に行って僕を雇ってください、というまでの話でサラリーマン金太郎みたいになる話じゃない」といっていたので納得しました。(そのことをネットの対談ではなく作品で明確に描いてほしかったが)
物語にはカタルシスがあってすっきりと終わると読了感がいいものだから、作品としてはこの点数が妥当ではないかと。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-08-04 11:44:56] [修正:2010-08-04 11:44:56] [このレビューのURL]
8点 ラストイニング
星の数ほどある野球漫画の中でも数少ない「野球」という
スポーツを描いてる漫画だと思います。
ジャイアントキリング等と同じく、この漫画が同ジャンルの
他作品より優れている点は多くの視点からスポーツ(ここでは高校野球)を描いている事です。
選手や監督はもちろん、父母たちやOB会、学校経営者等の様々な思いが交錯する様が、面白さにつながっているんじゃないでしょうか。
肝心の試合にしても戦術が多彩で現実でありえる範囲でのスーパープレイ等、一野球ファンとして非常に胸を揺さぶられます!
あとこの漫画の面白いところは嬉しい誤算も作中でたまに出してくる事。
例えば、普通スポーツ漫画なんかでは戦術を無視し独り歩きする選手は失敗する事が多いと思うのですが難なく結果を出してしまったり、相手が試合のクライマックス、重要な局面で伏線もなくまさかのポカミスをし出したり。
そこがまた、作品をリアルに見せている。
なおかつ野球漫画の王道展開も盛り込んでいるので、幅広い層にオススメな漫画です。
77点。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2009-07-28 18:07:23] [修正:2010-07-26 17:08:04] [このレビューのURL]
5点 蒼天航路
正史が正統であり、演義はフィクションである。
演義に基づく横山三国志がそのまま蜀よりの視点、
蒼天航路では、魏視点による演義なみの脚色が行われている。
が、どちらも読者が楽しめさえすれば、何の問題もないだろう。
しかし個人的には、
歴史を取り扱うフィクションにおいては、どのジャンルの創作物であっても、重要なのは説得力ではないかと思う。
その点で、この漫画に高い点数はつけられない。
一例を挙げれば、劉備・関羽・張飛の異様なまでの絆が、何からもたらされたものであるかを、侠によるものとすら、言及していないあたりである。
(キリスト教的性倫理に縛られた我々は、立ち入らない方が無難か?)
三国志。ひいては歴史浪漫への入門書としては、演義程度に評価できるが、読み直すことはない。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-07-18 21:32:47] [修正:2010-07-18 21:32:47] [このレビューのURL]
6点 巴がゆく!
田村先生3作目。
あまり楽しめなかったというのが正直なところ。
舞台が現代なのが悪いのでしょうか。
80年代全開なのがとても古くさく感じてしまいます。
主人公の得意技がローラースケートだったり、ディスコいったり、フロッピーディスクが噂にきくレベルの貴重なものだったり、東京ドームができたばっかりだったり。
日本の財政界とかそういう世界観もなんだか話が急に大きくなってついていけませんでした。
良いな、って思えたのは「無自覚な悪」という月子のキャラと、終盤の展開くらいでしょうか。
二面性を持つキャラクターというのがこの作品でも中盤までの軸であり、この設定をさらに発展させた結果が「BASARA」なのでしょう。
絵的にもまだまだ発展途上。
アクションストーリーなのにアクション自体はあまり魅せられないのが残念。
この作品あっての「BASARA」や「7SEEDS」なのだ、と作者の成長を知るのには良いかもしれません。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-06-28 23:31:11] [修正:2010-06-28 23:31:11] [このレビューのURL]
6点 青空にとおく酒浸り
小動物的な可愛さを持つ元気な女の子。
年中だらしない格好をして家でゴロゴロしている「とうちゃん」。
ひょんな事から主人公の女の子と友達になった女子高生のお姉さん。
安永航一郎が久しぶりに商業誌に復活という事でこの『青空にとおく酒浸り』の1巻を手にしたとき、メインのキャラ配置に妙な既視感を覚えた。なんか、そこはかとなく世評も高い某癒し系ほのぼの女の子漫画と似ているなぁと。
2巻を買い、巻末コメントを読んだ。
「貧乏くさい『よ〇ばと!』を描いてみようとゆーことで大ヒットを狙って景気よくスタートした本作ですが(中略)非人道的『じゃ〇ん子チエ』になってしまったのはなんでなんだぜ?」
数年に及ぶ雌伏のときを経てもなお、安永航一郎はこれっぽっちも変わっていなかったのである。臆面の無いパロディ、無駄なハイテンション、変態の狂い咲きサンダーロード、脚線美の眩しい美少女達、”どうってことのない日常”なんかくそ食らえ、息が詰まるほどの濃さに眩暈を覚え、同時に安堵と歓喜の涙も流しそうになる。けれどもそんな濃い目でハイテンションの安永テイストをどばっと盛り込む一方で、作品の空気感そのものとしてはネタ元である『よつばと!』に代表されるような日常ほのぼの系にも通じる肩の力の抜け具合が感じられるのが凄い。
変態達の織り成すしょうもない事件の数々が描かれながらもそれらすらが作品世界の持つ「日常」と化しており、その結果本作もまた日常ほのぼの女の子漫画と化してしまったワケである。(ただしスネ毛か汗とかよくわからん汁とかにまみれた…)
もう50近いおっちゃんが昔と変わらずこんな漫画を描いてくれている事に驚愕し、また心からありがたいと思う。
「わははははははははははははははははははは」
そんな安永航一郎の高らかな嬌声すら聞こえてきそうな作品である。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-06-08 23:50:55] [修正:2010-06-10 23:33:06] [このレビューのURL]
2点 ちさ×ポン
はっきり言うと駄作、読みきりまでの3作なら8点をあげれる作品だったのに只々残念。
ストーリーは童貞を捨てたい高校二年生の男ポンタが、一目惚れ?したちさとの出会いから結婚までのお話なのだが。
いやもう、レディースコミックで書けよという展開と内容。
まず最初の読みきり3話「だけ」でいうならちさの心情やポンタの苦悩なんかが青春時代の心を代弁しているかのようですばらしかった。
ここで連載へと踏み切られたのは「ちさがあの鉄壁の貞操をどうやってポンタにささげるか」という期待感からだろう。特にヤンジャンという雑誌連載を考えれば、男性読者の期待は間にあるエロシーンとともに最大の期待であっただろう。
それだけに、ちさの処女喪失がアホすぎる。なぜ編集者も作者もちさがレイプによってポンタ以外の人間で処女を喪失などという内容を止めなかったのが謎。
これは「女性は処女をささげるのが当然」といっているわけではない。男性読者が最も期待していたシーンを無くしたばかりか、レディースコミックでありきたりな「女たらしの金持ちボンボンがヒロインをレイプ」という方法をとったことだ。もうこれだけで作品への評価が0になる。まだどこかで喧嘩別れして、お互い別々の異性と付き合うようになったというほうがマシ。
男性目線からいわせると1年も『わたしはあなたに処女があげたいけど怖いの』といっていた女が、レイプされそうになってあっさりもういいやとあきらめて、レイプされた後後悔して讒言とか結構ですといいたい。
それで許してもらえるとか、結局女性側の願望だよね?
2人がギクシャクする理由までは非常に繊細に描かれていたけど、ここから作品が読むのも失せる展開。
最大の見せ場をアホなシーンで終わらせてしまったこの作品は、ポンタに新しい女と寝させてそっちでハッピーエンドになるかエロシーンを連続させて終わらせるかしかないわけです。実際には後者になったわけですが、その展開もどこかで読んだようなシーンばかり。それまでの男女間の心の機微を表現していたのが嘘のようにペラペラの展開。
レイプした男が過去に母親と寝てたトラウマが原因でした?そんな理由で許されるなら世の中の男の半分は好きな女をレイプしますよ。
ポンタも何故か自分を裏切り続けた女に一途に尽くす。こんな男実際にはいません。女心は描けても男の心情というものを結局は描けなくなった。
そもそもレイプのシーンを作品として正当化しよう頑張ってもまったくできていない展開やせりふが痛々しすぎる。
レイプシーン前からあった受験とセックスのフラグ解消も荒っぽい展開。
初エッチの後セックスのしすぎでポンタの成績がおち、さらにちさをレイプした男がK都大学(おそらく東大)の医学部を受験。それを見返そうとがんばるという展開なんですが。
普通の18歳の男なら1年以上尽くしていた女をレイプした男がそんなやつなら、女の顔もみる気がなくなります。そこで女に「あなたがいいの」とかいわれて納得するような18歳がいるわけがない。(30歳くらいの男ならあるかもね)
10代の男はそんなコンプレックスしか抱けない女なんて嫌いにしかなりません、八つ当たりだろうが普通は別れます。
レイプを正当化しようとするのがすべて女性視線(願望)で展開されていくこの時点でこの作品の破綻がもろもろと見える。クライマックスでは、第一志望に合格しなかったら別れるとまで宣言したポンタが必死にがんばって、応援するちさという状況。受験日当日に女の子を助けて交通事故にあうポンタ。もう、どこまでも「ありきたりな」展開を使うのでしょう。
事故にあったポンタの無事を祈りつつ後悔するちさなんて、どうやってみても女が自己弁護しているようにしか見えません。ここでの後悔も結局作品としてレイプシーンを補完しようとしているわけです。こんな長々と言い訳シーンばかりを展開させるなら最初からやるなよ、と。
最後ポンタがそんなちさにプロポーズするところなんて「トレンディドラマでも無いよ」と突っ込みたくなります。
ポンタは作中でちさが後悔していたように、本当ちさに出会わなければもっと普通の恋愛をして幸せになれたんじゃないかなと思います。男目線から言わせてもらえると、こんなサゲマン女の話を読ませて何が受けると思ってるの?と作者に聞きたいです。
この作品の破綻の原因は、作中でもっとも読者が期待したシーンをがっかりどころではない形で裏切ったことと。その後のフォローがまったくでずありきたりなお話でしかまとめれなかった事でしょう。
最初のよみきり3話が超がつくくらいいい作品だっただけに、構成力のない展開に残念です。レイプなんて劇薬をつかうのなら、その後のフォローもしっかり考えておいてほしかったですね。
あと、レイプした男が結局起訴もされないわけですが、その理由もあいまい。レイプした男が起訴されるだけでも物語としての様々な展開に「重み」が出たと思うんですが。
レディースコミックとしてなら6点くらいじゃないかな?普通の作品としてみれば2点で十分でしょう。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-06-09 04:42:15] [修正:2010-06-09 04:53:09] [このレビューのURL]
10点 BASARA
10点を久しぶりにつけたいと思います。
文明崩壊後の日本全域を舞台とした架空戦記ものです。
まさに「大河ロマン」!
ドラマチックな内容ながらも、リアリティもあるので読み応え抜群。
最初から最後まで感動させられっぱなしでした。
・広大なスケール
日本全域を渡って旅をし、戦い、徐々に仲間が増えていくという王道な展開をしています。
各地それぞれに人がいて家があって自然があって、皆違っているので世界を股にかけた作品でもないなのにスケールは非常に広大に感じられます。
・巧みなストーリー構成
更紗と朱理のこの古典的ともいえるがドラマチックな関係を巧みに描き切っています。
二人のすれ違い、交錯。うますぎる!
最後の終わらせ方にも無理なく、綺麗にまとまっているのがまた素晴らしい。
女性作家の本領といわんばかりの恋愛模様も流石と言わざるをえません。
・魅力あるキャラクター
主人公をとりまく仲間たちがとても魅力的。
更紗を見守る予言者ナギ、身内の敵として読んでいて最後までやきもきさせられた浅葱、主人公一行からは一歩離れたところで活躍する揚羽、ムードメーカーな那智&聖、それに巻き込まれる群竹さんなどなど・・・
キャラの立ち位置も皆はっきりしているし、心理描写もしっかりしている。
一時期ハヤトの扱いが若干不憫に感じたけど・・w最後はまたかっこよくなっていて嬉しかったです。
朱理側の今帰仁、サカキ、四道、錵山将軍なども皆良かった。
皆それぞれの信念を持って生きています。
「新しい国とは」23巻の朱理の一連のくだりが特に印象的でした。
・画風
顔の書き方などは結構癖があるものかもしれません。
ですがこれで敬遠するのは確実にもったいないです。
表情の書き方は上手だと思います。感情が溢れかえった時の表情は、怒りも泣き顔も笑顔もどれも印象的だし読んでいてひきこまれました。
また、見開きの使い方も上手でよりドラマチックさを演出してくれています。
戦記ものであり、決してバトル漫画ではありません。
大河ロマンなんです。必殺技なんて一つもでてきません。
この作品の一番の魅力は?スケール?キャラ?ストーリー?
答えになっていないかもしれませんが、自分は「全部優劣付けられないくらい素晴らしい」と思いました。だから10点です。
今まで読んできた長編ストーリーものが少し霞むくらいのインパクトがありました。
いやぁ、にしてもあとがきの漫画の内容には流石に時代を感じましたw(FF4がでましたー、とか。何年前だw)
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2010-05-31 01:17:25] [修正:2010-05-31 07:08:56] [このレビューのURL]