「columbo87」さんのページ

モリソンがなんか昔のネタからいろいろと持ってきて好き勝手に広げたバットマンサーガ第一弾。モリソンは聖書の独自解釈を許されているのだ!!
脚本のグラント・モリソンも最近よく見るが、作画のキューバートは一家で活躍しているアーティストだ。特に本作のアンディ・キューバートのアートは良い。ダミアンのバットマンスーツとかモロに好みだ。リクテンステインのポップアートを逆輸入してオノマトペに使ってたりと、漫画的にも結構面白いことをやっていたりする。

さて、本書には「バットマン・アンド・サン」の他に、ネタ元になった「サン・オブ・デーモン」も収録されている。アメコミ邦訳はいつもなら附属している冊子であらましの説明をするだけなので、まるごと載せているのは珍しい。この後もラーズ・アル・グールやタリアとの因縁は続くので、キャラクター同士の関係性を知る上では興味深いエピソードだと思う。 ついでに、これは漫画じゃないけど、作中冒頭で退場しちゃったジョーカーの再生と狂気を描いた短編も収録されている。モリソンのジョーカー観はいつも面白いので、読んでおいて損はない。

さてさて、「バットマン・アンド・サン」では、今まで黒歴史にされていたバットマンの息子、ダミアンが成長して登場する。で、正当な後継者に認められようとヤンチャしてバッツに怒られる。子育てはしたいが、ゴッサムに偽バットマンの警官が出没してたりして忙しいなぁ、というのがだいたいのストーリー。
ダミアンはまあわかるんだが、この警官てのがよくわからない。警官には見えないし、どういう経緯でバットマンコスになったのかとか教えてくんないし。
そんな謎の敵の他にも、タリアに更なる企みがあったり、ティムとダミアンがブルースを取り合って気持ち悪かったり、ブルースが「俺がスーパーアルファ雄だ!」とか言い出したり・・・見所は盛り沢山である。
が、基本的に謎は解決されないのだ、待て次巻。

最終章には未来の話が収録されている。バットマンは何か死んでダミアンがバットマンをやっている世界。これはぶっちゃけ独立したオマケエピソードみたいなもんなので、意味不明といえば意味不明だが、逆に一番分かりや易い話かもしれない。
僕ぁこんな世紀末でオカルトぉな雰囲気が好きだ。ダミアンの言に従うとバットマンが死んで数年しか経過してないらしいが、やっぱゴッサムはヤベエなとか思う。この世界のダミアンはなかなか良い感じなので、それに繋がるようなバットマンとの親子の絆が描かれることを期待すればいいのかな?


うーん,さて。マーベルとかのシリーズモノとかを読んでいても思ったんだが,こういうのは全体で評価しなきゃいけないのが辛い。特に今回は伏線ばらまくだけばらまいてる段階なのでいつにも増して「?」って感じになってしまった。邦訳バットマンは一冊で完結しているのが多いので、余計違和感を覚えるのかもしれない。
で,今続編の「ブラック・グローブ」を読んでるのだが凄く面白くなってきていると思う。伏線回収の仕方が独特で,いつもの「新たな陰謀」登場パターンに飽きていると新鮮さを感じたりもする。
そういえば「グリーンランタン:リバース」には「途中経過知ってたらもっと楽しめたのに」という思いがあったけどその辺の不満を埋めてくれる構成になっているんだよね(正直これに関しては小プロの中の人の言葉を疑ってた)。
何事も仕込みの段階が重要だ。
「バットマン・アンド・サン」「ラーズ・アル・グールの復活」を堪えた先に(は,言い過ぎか)クライマックスのカタルシスがあることを期待しましょう。


それと連続ものはナンバリングしろと言いたい。これに関しては日本の漫画の感覚に近いんだからさあ。過去にナンバリングした邦訳が軒並み途中でポシャったからってビビってんのかいヘイヘイ。

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[投稿:2012-04-25 04:13:28] [修正:2012-05-20 17:19:04]