「columbo87」さんのページ

総レビュー数: 284レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月28日

 バットマンやスーパーマンのDC社から出ているが,本作はホラー漫画。それゆえ他のヒーローコミックスとはかなり文法が違うが,これはこれで高度に洗練されていて面白い。日本における少女漫画のスリラーやホラー系の表現方法に近しい所が見受けられるのが興味深い点だと思う。そういえば帯のコメントが楳図かずおというのも,何かしら通ずる所があるからではないだろうか。
 前半は沼の怪物スワンプシングのアイデンティティを巡るエピソードで,地球が危機に陥る場面もあり,スーパーマンやグリーンランタンなどジャスティスリーグの面々が登場する。海外漫画は作品をまたいで世界観を共有しているのが特徴なのだが,ホラー漫画であるスワンプシングの世界でスーパーヒーローの存在を効果的に使っているのは作者アラン・ムーアの凄い所だ。下手をすれば世界観を一気に壊しかねないが,ここではヒーローを活躍させないことで作品の中にとても巧く取り込んでいる。人気のあるキャラクターを他の作品に出演させることについてムーアがポジティブな意見を述べていたのを意外に思ったが「ああ,こういう使い方なのか」と,唸らされた。
 後半は異界から召還された化け物の話で,かなりホラー色が強くなる。特に化け物の描写が生々しく恐ろしい。ラヴクラフトやキングを引き合いに出していたが,なるほどそれらと遜色ない程の恐怖を演出できている。
 とはいえムーアの上手さが真に光っているのはクライマックスで少年が勇気を見せる場面だろう。それまでの不気味さ,陰鬱さを払拭する重要なシーンであり,いちいち心理描写や説明をせずとも心の動きが読み取れるのが見事である。難点をあげるとすれば話がそれ自体で纏まっているので,スワンプシングが入り込む余地が無かったところだろうか。最後の少年との会話は良い味が出ているが,もう少し段階を踏んでいれば尚良かった。

 ヒーローものじゃないと知っていたら買わなかっただろうが,邦訳ホラーはあまり無いので興味深く読んだ。フロム・ヘルでムーアを知った方なら手を出してみる価値はあるかも。

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[投稿:2012-03-31 01:59:34] [修正:2012-03-31 02:45:42] [このレビューのURL]

 やっと読んだ。邦訳ニューアベンジャーズシリーズの出発点だのでこれを読まないと流れがわからないどころか「なんだよこのチームは・・・」状態になるのだが・・・表紙が気に入らなかったから放置してた。
 まーしかしブレイクアウトが一番面白いんじゃないかしら?最初これを飛ばしてハウス・オブ・エムから読んだので,スパイダーマンとかの居る意味がわからなかったが,こういう流れだったのね,とスッキリする(同時にこのチームに愛着が湧くとシビルウォーに納得が行かなくなるが)。

 あらすじ
 大勢のスーパービランが収容されている「ラフト」が襲撃され,大脱走が始まる。その場に居合わせたヒーローはキャプテンアメリカ,スパイダーマン,ルーク・ケイジ,デアデビル,アイアンマン,スパイダーウーマンに,謎のヒーローセントリー。みんなで共闘した後は,何かの縁ということで,アベンジャーズの再結成。デアデビルさんことマット・マードックは正体が世間にバレかけて大忙しなので(またかよ)断られるけど,サベッジランドでピクニック中のウルヴァリンを捕獲してASSEMBLE!脱獄を先導した黒ずくめの正体は一体?その真の目的は…?あとセントリーっていったい誰なのよ?

 という感じで,伏線展開しまくって解決しない毎度のパターンなんだけど,前半はやたらと面白い。脱獄の時の大合戦からして迫力あって,知ってるヴィランも結構居て楽しいし,簡単な紹介もあるからいつもよりかはわかりやすい。
 後半はビミョー,大したヴィランや大したピンチって感じがなく,シールドのオバハンにむかつきっぱなし。このころからシールド挟んでの衝突が予定されとったんだね,と少し感心はするが。
 個人的にはもっとデアデビルさんに出張ってほしかったかな。コレクティブでもちょこっと顔見せてたけど,スパイダーマンと仲の良いところとか見れて和むし,シビルウォーでも(これは別人だったらしいが)やたらとキャラが立ってた。
 
 
 今更だが,実際邦訳シリーズどう買い進めればいいのかというのを書いておく。やたらめったら高いけど内容を確かめられんから買わんとわかんねーんだよ。税込みで価格も書いたので参考になれば。

X-MEN:ギフテッド(2940)新結成X-MENチーム!
X-MEN:デンジャラス(2940)これは読んでないがHOMに入る前に読んでおいた方が良いらしい。
ニューアベ:ブレイクアウト(2940)新結成アベンジャーズ!
ニューアベ:セントリー(3045)謎のアベンジャーを勧誘,後半はニンジャとのバトル
ニューアベ&Xメン:ハウス・オブ・エム(3465)上の4巻の総決算,イカれた魔女に世界が翻弄される

X-MEN:デッドリージェネシス(3150)HOM以降のX-MENの活動とプロフェッサーの黒歴史。宇宙を舞台にして続くけど未邦訳
ニューアベ:コレクティブ(3045)消えたミュータントパワーはどこへ?シールドとの緊張感が高まる
シビル・ウォー(3360)超人登録法のおかげで内ゲバが始まる

ウィンターソルジャー(2730)時系列的にはもうちょい前だが,キャプテンアメリカについて知りたければこの辺から始めておくと良いか。
デスオブドリーム(3465)キャップが唐突に死ぬ。
バーデンオブドリーム(3465)2代目キャプテンアメリカの重荷を背負うのは・・・

 邦訳はいまんとこここで一段落。最近新刊の予定を見ませんが,アベンジャーズシリーズは続いていくらしい。
 流れで見ていくとすると買わなくてもあまり問題がないのはデッドリージェネシスとかかなあ。まあX-MENメインで見たいとかアベンジャーズがいいとかで組み合わせて遊ぼう(謎)!

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[投稿:2012-03-31 01:58:10] [修正:2012-03-31 02:40:19] [このレビューのURL]

 ファーストクラスってことで,X-MEN初期メンバーの頃の活動を現代版にしたもの。みんな大好きウルヴァリンは出てこないので悪しからず。あと映画とも完全別物ということも一応。
 1話完結型で,メンバーそれぞれが主役の話があるという邦訳では珍しいタイプのアメコミ。で,どの話も結構面白いという希有な存在。
 新規読者に向けたわかりやすいストーリー構成で,尚かつメンバーの魅力を再発掘しているので昔からのファンにも嬉しいのではないか。
 日本では映画でのダメっぷりしか印象に残らないスコットもここでは主人公っぽいキャラを存分に発揮しているし,ティーネイジャーな若々しさもあって新鮮。今まではスコットにリーダーの資質があると言われてもピンと来なかったが,こういう下地があると納得できるし好きになれる。
 あと,デザインのせいか良い子ちゃんなキャラのせいか,さっぱり人気の無い(と個人的に思っている)ジーンもここでは紅一点,姐さん的な感じが出ていてグッド。最近の邦訳でちゃんと動いてる(?)ジーンが見られるのってこれくらいじゃないかしら。ロジャークルーズの画が結構日本のものに近いので,女性キャラはわりと可愛いです。
 邦訳アメコミは暗い話が多いですが,これは明るくてほっこりするエピソードばかり収録されているのでかなりオススメ。巻末に収録されている章扉が相関図のような物になっていてチームメイトがお互いをどう思っているかを読めるのがとても良い。ゴリラも出ます。

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[投稿:2012-03-31 01:36:50] [修正:2012-03-31 01:39:37] [このレビューのURL]

 ハウス・オブ・エムで能力を失った多くのミュータントたち,その消失したエネルギーはいったいどこへ?
 「ニューアベンジャーズ:コレクティブ」で一応決着がついた様な感じになっているけど,その間なりを潜めていたX-MENチームは一体何をやっとったのだろうか,という話。
 突如現れた謎のミュータント「キッド・バルカン」。圧倒的な力でX-MENを蹴散らし,サイクロプスとマーベルガールを拉致した彼は,自分は歴史から消されたX-MENの一人で,サイクロプスの弟だと名乗る・・・
 HOMで残っていた謎の一つ,プロフェッサーXの消息がこの章で明らかになるが,今度はスコットのもう一人の弟の存在という謎が・・・付け足される。他にも,「デッドリー・ジェネシス」は,いかにも後付けーな内容てんこ盛り!昔からのファンを敵に回しかねない,まさに「命取りの創世」という自虐タイトル!まぁ,だけどぼかあそんなに気にならない。だって後付けされる前のエピソード知らないし。

 ちょっと帯には書いてないネタバレだが,X-MENがクラコアという生きたミュータントの島に乗り込んで捕らえられてしまう75年のエピソード,この時救出チームに加わったのがウルヴァリンとかの新顔だった(つまりテコ入れ)。このエピソードに大々的な後付け処理を行ったのがデッドリー・ジェネシスで,実はもう一つのX-MENチームがこの時救助に向かっていたのだという事実が明かされる。ではなぜ彼らが歴史から消されたのか!そこには大いなる陰謀があった・・・マーベル社の。
 か,どうかは知らないけれど,こういうのはアメコミに特に多いね。セントリーもそうだった。歴史のながーいシリーズだからまぁ仕方ないんだろう。
 後付けといえば「グリーンランタン:リバース」のパララックスの正体とか、「バットマン・アンド・サン」のダミアンなんてのを思い出すけど,あれよりも力技って感じで(だって伏線にできそうな要素がないところに持ってきてるんですよ),話自体は知らなくても,消されたX-MENの話を無理矢理過去のエピソードに詰め込んでいるのがわかる。とは言っても流石のブルベイカー,一巻丸々通してそれっぽく演出しているのでなかなかに説得力は有る。教授は数日間でどうやって新生X-MENを鍛え上げたのか?とか。それでいて今後に関わる重要な話にも繋がるから面白い。
 ブルベイカーは「ウィンター・ソルジャー」もうまかった。それ単体で面白いし,後のデスオブキャプテンアメリカへとどんどん広げられるようになっていた。アメコミってこういう所の技術が進んでるんじゃないのかしらと思う。

 閑話休題。もちろんデッドリー・ジェネシスに関しても,コミック的なおもしろさが大いにある。
 かつてクラコアからサイクロプスたちを助け出したバルカンが,今度は監禁する側になっている構図。75年のテコ入れが新たなヒーローの投入だったのが,今度は消された過去からの来訪者になっているのも興味深い。子供向けのヒーロー物から大人も楽しめる作品に転向したのが75年だとすると,今回はさしずめ子供時代の反抗?
 で,消されたX-MENの話が物語の合間に挿入されるんだけど,これがどれも面白い。オリジンを巧く描けるのってすごいと思う,キャラクターの魅力の原点だし。そんでもってそれぞれが本筋に絡んでくる所の盛り上がり方,これだけ後付けてんこもりなのに初見でもなんとなく理解できるのは話の筋がちゃんとしているから,偉い! いや,そんなことで褒めるなとか言われそうだけど意味不明なのもあるんだよ。HOMという大型クロスオーバーから始まって,次の話へとスムーズに移行できるのは凄いことじゃないかしら。


 と,個人的には気に入ったエピソードだったが,全体的にくらーいお話ではある。被害者で,まだ話し合いの余地があっただろうバルカンに対する仕打ちとか,やっぱこの辺の脳筋っぷりはアメコミ的といわざるを得ない。仲間を殺されてるってのはでかいけどね。
バルカンにしても終始情緒不安定で,最後はヤケになって宇宙に行っちゃって,結局仲違いしたまんまだし、何がしたかったの?とならなくもない。子供時代の反抗なんて言ったけど,大人の象徴プロフェッサーXは堕ちたが,バルカンだって成長する必要がある。


その他の見所:ダンサー時代のエマ嬢。邦訳シリーズきってのセクシーシーンだ!
ショックな所:久々に見たあの人が即死したこと。マーヴルクロスで見た活躍が嘘みたいにあっけなく死んでガーン。
 X-MEN勢は背景を在る程度知っているから面白いのかなぁ,アベンジャーズも後々面白く読めるようになってくるのかもしれないとか思う。あとガンビットがサイクの弟だとかいう噂を流したのは誰なんだ・・・

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[投稿:2012-03-15 17:06:25] [修正:2012-03-31 01:39:06] [このレビューのURL]

 冒頭でフランク・ミラーはこう述べる。「私にとって,バットマンは決して面白おかしく扱える存在ではない」と。
 彼が語っているように「イヤーワン」のバットマンは,テレビシリーズのアダム・ウェストが演じるような明るいバットマン,昼間に堂々と活躍して市民の声援を受ける彼とは全く異なる。ミラーは恐ろしき「闇の騎士」としてバットマンを作り直し確立させたのだ。
 散発的に修正が加えられていたバットマンのオリジンを,よりダークで大人向けな内容に描き直したのが今作「イヤーワン」であり,この名作は以降の世界観に多大な影響を与えることになった。

 舞台はゴッサム,近代化と共に政治の腐敗とスラム化の進む都市である。今まさにこの都市へと向かう男が二人。一人はゴードン警部補,左遷された先は汚職に染まりきったゴッサム市警。夫であり父親でもある彼は,悪に染まった都市でこれから生まれる子供を育てたいとは思わない。
 もう一人は若き富豪ブルース・ウェイン。長き旅を経て両親を失った場所へと戻り,己が振るうべき力の形を探し始める。
 家族を支える為とはいえ,汚職に目をつぶることのできないゴードンは組織内で孤立し,同僚から制裁を受ける。しかし彼も黙ってはない,彼は夫である前に男なのだ・・・
 一方でバットマンという形を見つける前のブルースは自警活動の下見で大失敗をおかす。悪を裁くには正道から逸脱しなくてはならない。恐怖を悪に植え付ける存在へと進化しなくては・・・
 やがて二人の物語は絡み合う。数々の事件を解決し市民からの支持を受けつつあるゴードン。バットマンとしての活動が軌道に乗り始め,ゴッサムを貪る悪を震え上がらせるブルース。偶然,二人は協力して事故に会いかけた老人を救う事になる。
 そして、次第に互いが信頼に値する人物だと認識し始める。互いがその活動を支えるために必要な力を持っていることも・・・。
 これは私に今まで無かった認識だった。二人が表裏の関係であるとは,意識したことが無かった。ゴードンという人物像を細かく描いた理由はここにあったのか。単にシグナルを出して危険な仕事を依頼するだけだったゴードンは,その裏で重荷を背負いながら奮闘する立役者だったのである。
 活動1年目における人物関係,ミラーはその要素を過不足無く,見事に抽出している。街に巣くうマフィア,力は無くとも正義の為に戦うハービーデント,全く別のポリシーを持つセリーナ/キャットウーマン・・・そして口の端に上る「メトロポリスのお友達」。読者の想像力をかき立て,それでいて鬱陶しい程には主張してこない。伏線とはこう用意するものなのかと感じ入る。
 どこを見ても、「イヤーワン」は,ゴードンとバットマンの再出発を飾るストーリーに相応しい傑作であると感服させられる。

 ミラーの作品を知っていると感じる面白さにも触れたい。活動初期の力任せでどこか未熟なバットマンは,「ダークナイトリターンズ」において肉体的には衰えたが技術と戦略で切り抜ける老バットマンとの対比として面白い。そしてゴードンの不倫,これはお得意のハードボイルドで「夫である前に男なんだ」なんてかっこつけられない部分だ(下世話だが,他人の痴話話は面白い)。
 また,バットマンに空を滑空させるシーンは,ミラーが完全に子供っぽいバットマンを否定しているわけではないことの現れだろう。アルフレッドの軽口を真に受けるブルースの顔はどこか微笑ましい。
 子供っぽさといえば,マフィアと通じている本部長が,スヌーピーやミッキーのグッズを収集しているのも何だか笑える。アラン・ムーアの「V・フォー・ヴェンデッタ」に登場する人形収集癖のある権力者を思い出した。支配欲求はどこかしら幼稚な面を伴うのだろうか。

 最後に,この作品の最も秀でているところは,ミラーの洗練された脚本とデビット・マッツケーリのスタイリッシュで柔らかみのあるアートが相まって,非常に読み進めやすい点にあると思う。優れたアメリカンコミックスを読んでいると,まるで映画を見ているような感覚に陥る(映画の方が表現物として上と言う意味ではない)。これはクリストファー・ノーランが「バットマンビギンズ」にかなりの量の要素をイヤーワンから借用していることからも伺い知れるだろう。今作はとにかくオリジン,始まりの物語として考え得る最良の要素に満ちているのだ。
 
 悲しいのはその優秀さが,併録されている「イヤーツー」によって尚更引き立てられていることだろうか。

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[投稿:2011-09-02 20:16:59] [修正:2012-03-31 01:37:33] [このレビューのURL]

ロバート・カークマンはコミックスの脚本家!
イメージ社でゾンビコミックを書いて大当たり!今じゃマーベル社でヒーローコミックを書いてる!
そして今回,彼はヒーローゾンビコミックを書く!
本編丸々スーパーゾンビだらけ!ロバート・カークマンの「マーベルゾンビーズ!」

とか

スパイダーマンが!アイアンマンが!キャプテンアメリカが!全員ゾンビに!!
守るべき人類60億は・・・みんなで食べました!でもこれから何を食べればいいんだろ!?
やがて彼らは実感する,ゾンビでいるのもなかなか楽じゃない!!
ロバート・カークマンの「マーベルゾンビーズ!」

 とか,そんな感じのノリで行くゾンビ漫画。
 ゾンビなのに知性が残っているってのが悲惨な設定に思えるんだけど,みんな普通にゾンビしてるのが滑稽。飢えが満たされると一時的に理性を取り戻すらしく,その度にMJとおばさんを食べたことを思い出して悲しみに暮れるスパイディがウザかったり,ゾンビ化する前は結構ナイーブなイメージがあったジャイアントマンは未感染の親友ブラックパンサーを監禁して少しずつ食べてたり・・・とにかく悪趣味。でも笑える。
 同作者の「ウォーキングデッド」は,ゾンビだらけの世界に残された人間達が互いに協力し合いながら,争いながら、という人間ドラマが主軸だった。でも今作にはそういったテーマなんてものは無い。残された世界で生きる意味だとか,どうやって対応するかとか。あるいはおきまりの衝突,不和,嫉妬に裏切り,愛憎劇に権力闘争・・・そんなものは一切放棄!ここでは恋人も親友も親兄弟も夫婦も子供も関係ない!みな等しくゾンビーなのだ!みんな狂ってればみんな正常なのだ!

生き残りを探してみんなでリンチ&ランチ,食後は頭が冴えるから食糧問題について語り合う。
そうだ,腹を突き破って漏れてきた肉片をまた食べよう。スカトロの一線は超えてないでしょ?
星を喰らう宇宙魔神もこれにはドン引き!部下も食べられちゃってご立腹!汚物は消毒だ!
だけどこっちは腐っても地球一の天才ゾンビ,星をも砕く超兵器をあっという間に作り出す・・・!

アナーキーなゾンビ達の進撃を止められる者は存在しない!平和呆けで腐った社会に鉄槌を下す,痛快バイオレンスコメディ第一弾!ロバート・カークマンの「マーベルゾンビーズ!」

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[投稿:2012-03-23 21:48:44] [修正:2012-03-24 00:13:41] [このレビューのURL]

 宇宙をまたにかけて戦う意志の力の使者,グリーンランタン。億万長者転じて一文無しのクライムファイター,グリーンアロー。二人のヒーローが相手取るのは一瞬で地球を滅ぼす巨大災害でも,世界制服をもくろむ悪人でもない。だがそれよりも尚手強い相手,社会問題というヤツだ。

 今でこそアメリカンコミックスには大人でも楽しめるもの,時にグラフィック・ノベルと呼ばれるような,上質なストーリとテーマ性を持った作品が増えている。だがヒーロー物はどうか?もちろん文学性,叙情性,芸術性を兼ね備えた傑作は存在する。
 しかし,悪役がいて,ヒーローがそいつらをやっつけて,話の途中で新しい敵の予感が・・・という典型的な「アメコミ」の印象は未だにぬぐえない(無理にぬぐう必要も無いとは思うが)。漫画大国の日本において殆どの人がアメリカンコミックスに見向きもしない理由にはそういった偏見や「日本の漫画が世界一」といった自尊心があるのではないかと思う。
 実際,私がひやかしにアメコミを読み始めたのは,そういった典型的な「アメコミ」を期待したからであった。しかし,蓋を開けてみれば,そこには想像を遙かに超える作品があふれていたのである。「日本の漫画が世界一」という考えはここで脆くも崩れ去ったのだった。

「グリーンランタン/グリーンアロー」もそんな一作だ。70年から数年に渡ってデニス・オニールとニール・アダムスのコンビが世に送った傑作集である。その大きな特徴は,当時アメリカ社会に渦巻いていた問題-人種問題,性差別,環境問題,ドラッグ−に,二人のヒーローを立ち向かわせたことだ。一人は宇宙の守護者,法に忠実な正義を振るうグリーンランタン/ハル・ジョーダン。もう一人は,悪を裁くためには法さえ破る,現代のロビンフッドことグリーンアロー/オリバー・クインだ。
 「社会問題にヒーローが立ち向かう」最初にこの煽り文句を見て,内容にあまり期待が持てなかった。それまでもヒーローにイデオロギーを背負わせる場面を目にしたことはあった。バットマンは国債を買おうと毎回表紙で宣伝していたし,キャプテンアメリカはアカ狩りをやっていた。結局それらと変わらないのでは?今度はカウンターカルチャーらしさを出して体制に立ち向かわせようってハラなんだろ?白人のヒーローにイイかっこさせて,まるで自分たちは加害者じゃないみたいな顔をするんだ・・・
 当初のアメコミへの評価の低さと,社会問題なんていうテーマに対するアレルギー反応とが相まって,そんなネガティブな思いがよぎったのだ。
 しかし,その予想は大きく外れた。子供向けの作品でありながら,デニス・オニールの脚本は驚くほどバランス感覚に優れ,なおかつメッセージ性に富んでいる。

「宇宙警察」グリーンランタン。法を尊び秩序の力を振るってきた彼は,権力を持った者が法を振りかざし,力無き者が虐げられる様を目の当たりにする。それでも法の正しさを信じたいと願いながら続ける旅の中で,次第に喪失していた人間性を取り戻し始める...
 今作でのグリーンランタンは酷く弱い。忠誠を誓ったガーディアンズの法に逆らった事で,力を制限されてしまうからだ。おそれを知らず力を奔放に振るっていた頃とは違う,今の彼にはあらゆる問題が困難なものになったのだ。
 旅の相棒となるのはグリーンアロー。彼は億万長者から転げ落ち,市井の問題を深く知ることになった。
 構図としては,グリーンランタンとは逆の信条を持つ彼が,物語を別の視点から捕らえる役割を果たすことになる。しかし,権威に立ち向かっていたはずのグリーンアローも,自身の権威主義的な面,アメリカ性によって打ちのめされてしまうのだ。
 麻薬依存をただ本人の弱さのせいだと断じる彼は,自分にある強さを誇示するだけの無責任な「大人」だと看破される。また,環境保護を謳うアイザックの思想に賛同するが,目的達成のために環境を傷つける武器を用いたことから拒絶されてしまう。
 性格の真逆な二人を登場させておきながら,どちらによっても勝利はもたらされない,解決も見出されない。そこにはただ問題提起があるだけなのだ。

 物語ははっきり言うとステロタイプにすぎる。当然子供に向けた物であるからしてわかりやすい対立構造にする必要があったのだろうし,70年代のコミックスの立ち位置を鑑みてもその事によってこの作品を貶めることはフェアでは無い。
 だが,そういったものを差し引いたとしても,私が真にこの作品を評価したいのは,当時の社会にあったあらゆる問題への疑いの眼差しに満ちていながら,絶対的正義を喪失したヒーロー達を描いていながら,戦いをやめないその姿が,まさしくヒーローそのものとして浮かび上がっているからなのだ。この物語がなおも子供心を離さないのは,その人間らしい弱さと強さが,新しいヒーロー像として成立しているからに違いないのである。

 デニス・オニールはこの作品によって,子供達に社会のジレンマについて考える機会を与えたいと願っていた。そして,所詮子供向けと軽視されていたヒーロー達にそれが可能だと確信していたのだ。
 然り,ヒーローが担うべき役割は夢と希望を与える事だけではない。どうしようもない現実に立ち向かう勇気を,現実を打開する力さえも時に彼らは与えてくれるのではないだろうか。

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[投稿:2011-09-09 12:34:56] [修正:2012-03-21 22:33:46] [このレビューのURL]

バットマンでクリスマス・キャロル。クリスマスに間に合うように超高速で邦訳された(であろう)作品。
バットマンをドケチで冷徹漢のスクルージになぞらえ,過去,現在,未来の精霊にはキャットウーマン,スーパーマン,ジョーカーを採用。
物語としてはそのまんまクリスマス・キャロルなのだが,作者コメントにあったようにバットマンに対するベルメホの視線を感じながら読むとかなり面白い。
よく最近のアメコミの傾向はグリムアンドグリッティなんていわれるが,バットマンもかなりダークな感じになっていて,映画ダークナイトもそういった部分がウケた。しかし昔の快活なヒーローだったバットマンにも魅力があったじゃあないかと,本来子供の為にあるコミックスが,暗いお話ばかりでどーすんのよという想いが込められているわけです。キャットウーマンが言う「昔のあんたは違った!」という台詞には,ラストエピソードにあったようなメタ視点からの想いがこもっている,これだけでも感じいる部分が大いにある。
僕がリアルタイムで遭遇したのは映画バットマン&ロビンのバットマンだったので,最低と評されるあの作品が,僕の中のバットマン像だったわけです。だから僕は結構バットマン&ロビンが好きで,逆にダークナイトは最初あんまり好きじゃなかった。その気持ちを思い出すことができたのは良い収穫だったように思います。いろんなバットマンがいて良いよね,というね。
邦訳で久々にスーパーマンが見れたのもよかったかな。ベルメホのスープスカッコイイ!
タイツとパンツなのに格好良く見えるのは本当に不思議だ。

ただ,クリスマスキャロルが好きで,バットマンも好きだという層が日本にどれだけいるのだろうかという疑問も・・・1800円くらいで大変おやすいですが,入門編に読んでもいまいちピンとこないかもしれない。
あとこういう裏テーマにしちゃベルメホのアートは怖いしダークだよとか思う。

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[投稿:2012-03-08 13:35:43] [修正:2012-03-08 13:39:59] [このレビューのURL]

購入したのは小プロの壱巻と弐巻。他のアメコミヒーロー物とは違ったオリジナリティがあって非常に良い作品だと思う。ミニョーラのアートもかなり独特で評価が高い。
私は映画から入った口ですが(特にゴールデンアーミーはクリーチャークリーチャーしてて好き),原作はかなり感じが違う。妖怪探偵たる鬼太郎的なノリの物語で,表現がかなりあっさりとしていて読みやすいのが特徴。
ヘルボーイというキャラクターは熟練のプロという感じと,何処か子どもっぽいアンバランスさもあって魅力的だし,全体的に暗い色調の中で彼の赤が冴えていてカッコイイ。
エピソード全体としては,丁度良い程度の伏線を残しつつ進んでいく感じで,淡泊だが気持ちの良い余韻を与えてくれる終わり方が多いという印象。特に気に入ったのは弐巻に収録されている「チェインド・コフィン」という短編集。ヘルボーイのオカルト捜査官としての活動が描かれるのだが,各地の様々な民話がモチーフになったエピソードが読んでいて楽しい。幼いヘルボーイがパンケーキを食べるだけのエピソードに始まり,取り替え子(チェンジリング)や,日本の妖怪も出てきたりと飽きさせない。
一方ストーリーの根幹に関わる部分はやや難解か。ヘルボーイって一体何者なの?というのが,弐巻(滅びの右手)でようやくわかってきたかなぁという感じ。宿敵ラスプーチンの台詞も仰々しくて読みにくい。クトゥルフ神話的な要素が結構多いのでそういうのが好きな人にはハマるのかも。
チェンインド・コフィンだけなら小プロが昔出してたのもあるのでそちらがいい。

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[投稿:2012-03-08 13:26:28] [修正:2012-03-08 13:26:28] [このレビューのURL]