「columbo87」さんのページ

総レビュー数: 284レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月28日

7点 ボーン

アメコミってムキムキマッチョのヒーローが戦うだけでしょう?
んなこたーありません!「ボーン」は可愛らしいキャラクターが大冒険を繰り広げるファンタジーですよ!

邦訳では珍しいオルタナ系(主流のヒーローモノとかじゃない方のこと)なワケですが、これが本当に傑作。アメコミは綺麗に彩色されたアートが魅力なので、白黒作品のこれはスルーしていましたが、大間違い、大ポカ。
とにかくアートが素晴らしい!曲線が本当に綺麗で、ボーンという非常にシンプルな造型のキャラクターが躍動感を持っていきいきと動き出す。無駄な要素が一切無く、ふきだしまでもが美しいのだ。ジェフ・スミスは元アニメーターということで、動きの見せ方、間の取り方がとても秀逸。ブルース・ティムもそうだったが、動きが無いとしばしば揶揄されるアメコミに対する偏見を払拭してくれるアーティストだ。

 町から追放されたボーンたち、強欲なフォニー・ボーン、能天気なスマイリー・ボーン、純粋で勇敢なフォン・ボーン。それぞれ個性的で魅力的なキャラクターが、人間の町で巻き起こすドタバタコメディ。次第に物語は奇妙な怪物ラットモンスターと人間との戦いを予感させていく。
 ほのぼのとしたファンタジー世界の風景から、少女ソーンとドラゴンの謎を巡る壮大なストーリーへと展開して行く過程が心地よく、ぐいぐいとボーン達の世界に没入してしまう。
 フォン・ボーンのほほえましい恋愛からド派手なカウ・レース、「イナゴの王」とソーンたちを巡る大いなる謎。実に多彩で飽きさせない物語は、老若男女問わず受け入れられること間違いなし!
僕のお気に入りのキャラはソーンの謎多きおばあちゃん。ポパイみたいなアゴで、ポパイみたいにパワフル!カウ・レースでの勇姿には思わず爆笑w

ホント、なんでこんなに知名度が無いんだろうか。
3冊500円で買って申し訳ありませんでしたという気持ちです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-01-15 23:06:38] [修正:2012-01-15 23:09:30] [このレビューのURL]

最も偉大なヒーローの死。余りにも突然に訪れたそれは、先の内乱で彼が犯した過ちの清算としては余りにも重すぎた。
一体誰が、何のために。彼の死を悼むヒーローは多かれど内乱の爪痕は深く、協力して犯人を探すことさえも出来ない。アメリカが理想とする精神の体現者だったキャプテン・アメリカ、彼が失われたことはヒーロー全体の凋落をも意味したのか。彼の精神を受け継げる人物は、希望はどこにあるのか。

かつてのキャプテン・アメリカの相棒であり、洗脳されテロリスト「ウィンターソルジャー」として暗躍していたバッキー。暗い過去の為に孤立していた彼だけが、キャプテンの死に際して行動を起こすことができた。
政府機関シールドからキャプテンの象徴である盾を奪還した彼は、更には暗殺犯と目されるレッドスカル一味とシールドが関係していることを突き止める。
一方でキャプテンの恋人シャロンは、ファルコンと共にバッキーの後を追っていた。仇敵ドクターファウスタスの洗脳を受け、罪の記憶に精神の安定を失いつつある彼女がレッドスカルの陰謀を知った時、もはや事態は取り返しのつかない段階に突入していた。


本書はその名の通り、キャプテン・アメリカの死がテーマとなったエピソードである。キャプテンの死の謎を探りつつ、彼の過去が回想される。その高潔な生き様から、そしてヒーロー達の感傷を通じて、人々の言葉を通じて、キャプテン・アメリカという人物の偉大さと喪失の痛みを読者は分かち合うことができる。
アメリカンドリームは死んだ、ではその理想を受け継ぐのは一体?
落ちた英雄の復活から繋がる新生キャプテンの誕生という一種ご都合主義的な展開ではあるが、丁寧で説得力のある心理描写と多くの試練が用意されており、アメコミなぞ子供向けという思いを払拭する、ハードかつ胸の躍る内容になっている。
メインキャラクターの死というのも余りお目にかからない話だが、その引き継ぎをするのがメインの話、というのは更に珍しいように思う。しかも主役のバッキーはテロリストだった過去を持つ嫌われ者というから、これはちょっとした挑戦ではないだろうか。
そして、この挑戦は成功したと思う。ダーティーな要素を持ち味として活かし、かつてはサイドキック(バットマンでいうところのロビン)にすぎなかった少年を、野性的で魅力溢れるキャラクターに成長させているのだから。流石話題のエド・ブルベイカーといったところだ。
エピソード自体は続巻の「バーデン・オブ・ドリーム」が一応の完結篇であるが、所詮導入部分と侮るなかれ。広げられた風呂敷に辟易する暇もなく繰り広げられるスパイ・アクションは圧巻の一言であるし、先のシビルウォーで一躍嫌われ者になったトニーがバッキーに叩きのめされたりと、読者のフラストレーションを解消してくれる場面もある。


読者はきっと、今はまだ復讐の怒りに燃えるバッキーがこれからどう成長するのかを見てみたくなるだろう。つまりバーデン・オブ・ドリームも買わなきゃということである。

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[投稿:2012-01-05 04:00:09] [修正:2012-01-05 04:16:08] [このレビューのURL]