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<原作は二十年来のファン>

つい表紙の美しさに惹かれて中身を確認せずに衝動買いしてしまったが、はっきり言って大失敗。たぶんこの作者は依頼があるまで原作を読んだ事が無いのだろう。

と言うよりも、何故かは知らないが、作画に抜擢された作家の本業が漫画家ではなくイラストレーターらしく、そのせいで漫画としての体を成していない、素人の同人誌レベルになってしまっている。

漫画とイラストは似て非なるものとは言え、全体的な描画や演出センスを見る限りとてもプロとは思えない。

もともと天野喜孝氏の美麗なイラストによりキャライメージが出来上がってしまっている作品でありながら、鷹木骰子氏の技量が未熟すぎる事と、原作に対するリスペクトが無いから、とてもじゃないが原作の魅力を漫画として昇華できていない。

とにかく「この人の個性」と評価するには、あまりにも線描が雑すぎる。さらにベタやスクリーントーンの使い方が下手なせいで画面全体の白黒のバランスが悪くなっていて、非常に画面が見づらい。

基本的なコマ割りとキャラの配置の仕方、それに伴うカメラ(視点)の動かし方、背景とキャラの明度のバランス、セリフや効果音の書き方に至るまで、漫画としての「魅せ方」というものが分かっていない。

また編集と相談したのか独断なのかも知らないが、D以外のメインキャラのデザインもイマイチ。

特に、小説の表紙や挿絵で描かれる事の多いDの姿形はそのままの流用だから良いとしても、新規デザインとして任されたであろうドリスのキャラデザは最低。最初に読んだ時、街道でドリスと出会うシーンでは、「え?誰これ?いきなりラミーカが出てきた?」と思ったほどw。いくら鞭を使うとは言え、ドリスは「美人だけど純朴な田舎娘」であって、SMの女王様じゃないんだからさあ(この点に関しては原作の挿絵もイマイチw)。麗銀星もただの「ロン毛の美青年」というだけのデザインで、原作にあった、つかみ所の無い飄々とした不気味さがまったく出ていない。

とにかく「吸血鬼ハンターD」シリーズは長く続いていて、すでにキャライメージや世界観が完成されている作品。それだけに濃い原作ファンも多い。そんなファンの期待を裏切らないように、最低でも「妖殺行」を原作に製作されたアニメ版くらいはがんばって欲しかった。

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[投稿:2008-01-05 19:25:25] [修正:2008-01-05 19:25:25]