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5点 彼岸島

[ネタバレあり]

<22巻までの評価>

ご多分に漏れず、長期連載の弊害で凡作に成り下がってしまった典型。10巻辺りまでは面白いが、それ以降の巻を買ってまで読む価値があるかは微妙なところ。

同じ「吸血鬼」を題材にした漫画としても「ジョジョの奇妙な冒険」の二部までと比較すると、明らかにオリジナリティや展開の意外性などで負けてしまっている。

よくある吸血鬼ホラーを和風テイストに仕上げた序盤は、独特な世界観といくつかの伏線や謎解き要素が上手く絡み合っていて、先が気になる展開だったが、ここ最近は、ほとんどアクション映画のようになってしまっている。特に「姫」との戦いなどはインディ・ジョーンズの映画かと思うようなリアリティの無いアクションシーンの連続で、見ていてシラけてしまった。絶望的な状況や強大な敵が現れるほど、主人公サイドの「ご都合主義度」もアップしていくという展開が多すぎるので、もう真面目にハラハラする事は出来なくなっている。逆に普通のザコ吸血鬼は弱すぎて、最近では障害物レベルの扱いで、これまた緊張感が薄い。それに加え、長期連載でダラダラと引き延ばされているせいで、一回毎の戦闘シーンも長くなっていて、余計に間延びした印象になっている(蜘蛛ババアとの戦いなど二巻近く費やしている)。

また、基本的に「島」という閉鎖空間が舞台という事もあって、ビジュアル的な変化に乏しいというのも難点。本来、閉鎖空間という舞台はアクションにしろ謎解きにしろ「短期決戦」というシチュエーションがあってこそ魅力が出せるもののはず。展開がダラダラし出すと閉鎖空間というシチュエーションが大きくマイナスに働く。これも長期連載ゆえの弊害。

あれだけ引っ張ってきた雅に関わる謎も、結局「日本軍の生物兵器の研究」オチというのも陳腐。同じく「ジョジョ」のDIOと比べるとボスキャラとしての魅力やカリスマ性にも欠けている。要するにそこまで凄そうに見えないのだ。

また、この作者の描く画にも好き嫌いが別れるだろう。何年も描いている割にほとんど上達が見られない。特に女性キャラの魅力の無さと横顔のデッサンがひどい。全体的に黒目をはっきり描かないので目にも表情が無い。

その他にも色々と突っ込みどころはあるが、何よりもこれ以上引き延ばしてしまうと、それこそ凡作から駄作に成り下がって終わってしまう可能性がある。

もうすでにやるべき事はやっているのだから、今後、ダラダラとした引き延ばしは止めて早期に終了すべき。

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[投稿:2008-02-17 20:08:47] [修正:2008-02-17 20:08:47]