「ガクちゃん」さんのページ

総レビュー数: 47レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年01月24日

6点 童夢

著者は映画監督志望で、撮りたかった映画を漫画に置き換えたのだろう。だから題材は実写向きである。大友克洋以前、以降とも表現され、また海外での評価も非常に高いグローバルな大家でありながら、彼の本質は非常にアンダーグラウンド的である。世間が求めるメジャー性を裏切り続け、彼の映画は興行的に成功しているとは言い難い。

本作はそういう世間とのずれがなかった頃の作品。絵のち密さは言うまでもない。この頃の漫画家、アニメーターは中毒になったようにみんな影響を受けた。だから氏のキャラクターから徹底的に距離を置く作風までが奔流になってしまって漫画自体の面白さが半減してしまった罪もある。
あんまりかわいくない少女と中途半端に不気味な老人。リアルに走るとこうなってしまう。白け世代の到達点。絵の凄さで圧倒させるしか表現手法が残されていないのか。読んだ時分、そういう虚しさがあった。
異様な完成度。アニメ映画の「AKIRA」の冒頭シーンを思い出す。完成度を求めて間延びしてしまった。

一度、読み直して再評価したいが、今私の手元にはない。昔友達だった男に貸したままである。その男はアニメ界でカルトな一部ファンに知られる男となった。ますなりこうじという。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-01-17 15:15:42] [修正:2010-01-17 15:15:42] [このレビューのURL]

6点 PLUTO

ゲジヒトの視点からのストーリー展開がいい。
もし、手塚治虫自身がこの作品をリメイクしたら、意外とこの作品に似た肌触りのものを描いたのかもしれない。著者の原作に対するリスペクトが感じられ、よく出来ている。
アトムのキャラクターは本作では主役というわけではないが、魅力を損ねていない。
「ああ、そういう解釈ありだな」
と納得できる。

ロボットの人権にまで踏み込んだ世界を描いていた原作の先見性に今更ながら驚かされる。それゆえ原作は歴史に残るのだろう。残念ながら、焼き増しでは残らない。再読意欲もいまひとつといったところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-17 00:16:30] [修正:2010-01-17 00:16:30] [このレビューのURL]

『硬派銀次郎』の山崎銀次郎が、もしサラリーマンになってしまったら、と作者が妄想して始まった作品だと想像する。だから、サラリーマン漫画じゃなくて、キャラクター漫画のカテゴリーに入れるべき。読むほうもそう心得れば、「ああなるほど」となるのでは。

この漫画の一番熱いメッセージは、「サラリーマンの未来に悲観することなかれ、自分が変わればみんな変わっていくんだぜ」っていうことだと思うけど、いかんせんこれが、どうしてもサラリーマンでないとだめか、というパラドクスに陥ってしまう。

サラリーマンに限らず、人脈、人間関係は重要だけど、読み解けば、人間性の魅力が描き切れていないのに財界の大物が主人公をちやほやし過ぎる感もある。一番の魅力は主人公がその力をまったくあてにしていないところ。再読させる気にならないのは、最終的にそういう力に守られてしまっているという構図から脱却できないところ。

作者の政治や社会への姿勢が、作品世界へ必要以上に踏み込んでいく事が作品を失速させた原因のような気がしてならない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-16 09:43:14] [修正:2010-01-16 09:43:14] [このレビューのURL]

万二郎より手塚良庵だな。
万二郎はどうしてもフィクションのキャラクター造詣って感じがしてしまう。良庵は、だめだめなのに不思議と魅力がある。
良庵に限らず、歴史上の実在の人物が多数登場しているが、本作ではそのキャラクター達が生々しく立ちあがっている。
作者も必然、実在キャラ側に思い入れ強いと勘繰る。
そのうち、実写ドラマ化されるのではと勝手に予想。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-01-15 22:28:09] [修正:2010-01-15 22:28:09] [このレビューのURL]

あまりの絵の巧さに当時、アニメーター志望だった私はすごく刺激された。著者の絵はそういう魔力がある。
躍動感とカッコよさと色気。
ただ、巧過ぎてなにかが足らないと思ってしまうのは私だけか。
ものの表現がステレオタイプな部分が若干鼻につくからか。
ストーリーの展開はやけにドロドロとしていて人間の業が作者の哲学をフィルターに展開されていく。作者の漫画デビュー作だが、いきなりの長編でストーリーテラーとしての資質もなかなか。この作品の直前に書かれた「シアトル喧嘩エレジー」という著者の小説も読んだ。著者の本質は若々しい熱さなのだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-04-19 21:56:53] [修正:2009-04-19 21:56:53] [このレビューのURL]

良作ゆえにここまで続いた、いわゆる大人のおとぎ話。
酒を描こうとすれば、人生を描かにゃならんのよ。という漫画界のど演歌ですな。球慢の第一人者らしく同ジャンルであれやこれと仕掛けていった作者の一つの到達点であり、ライフワーク。南海編しか読んでないけど、まあ、いいんじゃない。ゴルゴ13だって全巻読破してるなんて少数派でしょ。
私の読み方はBOOK OFFなんかで購入した本作をサウナに持ち込んで読むというパターン。作者にゃ申し訳ないんだが。
でもあぶさんがプロポーズした時にゃびっくりしたわい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-04-15 23:39:45] [修正:2009-04-15 23:39:45] [このレビューのURL]

ばかばかしく真面目に面白い。
作者のヘンにリアルな作風は、漫画界にミョーなリアルギャグというジャンルを生み出しのたのではないか。ヘタウマ的な画が個性を際立たせている。しかし、個性的過ぎるがゆえにメジャーには決してなれない運命に。
プロレスという題材、世間様からは日陰者扱いの親父のキャラクターが哀しいくらいに作者の方向性とマッチしている。
リアル×リアルはシュールなのだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-04-14 22:25:59] [修正:2009-04-14 22:25:59] [このレビューのURL]

サルマタ、ラーメンライス、四畳半…。1時期を表現するアイテムって実はとても少ない。なぜだか、それらがとてつもなく懐かしく思い出される日が来る。若いと苦いって字が似ているよなぁなんてそういう味わいの作品。
作者は、おとぎ話の語り部のように戦争を語り、宇宙を語り、そして男を語る。
当時としては、ブ男が主人公の作品はとても珍しく新鮮だった。いや、かっこいいんだけど。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-04-02 22:56:14] [修正:2009-04-02 22:56:14] [このレビューのURL]

この作品が連載された当時、B級ホラー洋画のテイスト、デザイン的な線、丁寧なマジックの種明かし、といったさまざまなこだわりに作者の個性を強く感じた。作り手がいかにも楽しんで作り上げている味わいが好きだった。
ファンだったんだけど…。
ウケ、売れ線狙いの路線を突っ走ると何かを置き去りにする事になる。
いつから著者の作品を読まなくなったんだっけ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2009-03-27 23:01:59] [修正:2009-03-27 23:01:59] [このレビューのURL]

町道場の師範を道場破りの流れ者があっけなく破る。
「しょせん道場剣法……実戦の役にたちもうさぬわ」
流れ者もその後、鎖鎌の尾行者にこれまたあっけなく敗れる。
とかげを山鳥が喰らい、山鳥をいたちが狩り、
しかし獲物はテンに横取りされる自然の摂理になぞらえる
こういった丁寧な映画的描写は最近の漫画ではほとんど見られなくなってしまった。
作者は壮大なテーマのまだ一断片しか描いていないという。
ならばそのテーマとは何か?
差別の本質とか、生きる厳しさという事ならすでに描ききっている。
それでは???
自分が思うに人が生きていくうえでの営みそれぞれの曼荼羅図を描ききろうとしているように思える。
すごい作品というのは認めるが、それを読むほうはつらい。カムイ伝と言いながら、内容は正助伝だったり、他の人物だったり。
曼荼羅故に飛躍がなく、息苦しい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-03-22 10:46:24] [修正:2009-03-22 10:46:24] [このレビューのURL]

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