「霧立」さんのページ

総レビュー数: 33レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年05月13日

4点 87CLOCKERS

こうした「オタクな業界作品」では鉄板とも言える「マニアな美人に惹かれて気がついたらのめり込み」というベタベタなファンタジー展開をのだめの作者がやるとは思わなかった。
マイナー故に知られざるその分野の魅力を伝えるのがこの手の作品のテーマのはずなのに、「女でもぶら下げねーとこんな世界片足どころか足指一本突っ込まねーよ」と自ら白旗を揚げているようで、安易な話作りをしているなと残念な気持ちになってしまう。
オーバークロックにしても自作全盛期の2000年前後ならともかく、今となっては現実的な価値が見出せない中で「世界が変わる」「世界平和のため」という作中のセリフをどこまで読者に実感させられるか。今の所「マニアの自己満足」の域を出ていないのだが風呂敷を畳まれるまで我慢できる自信が正直ない。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-05-16 10:04:26] [修正:2015-05-16 10:04:26] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

森永あいの作品ということで楽しく笑えるかと思ったがちょっと風合いが違った。
想い人の異性と身体が入れ替わる話なのだが肝心の想い人とは一向に恋愛が進展せず、お互い異性の体のまま自分達の親友(つまり同性)と関係を深めていってしまう。
つまり見かけ上は男女のつきあいでも本質的にはBLであり、それが許容できる読者でないと基本受け付けない作品なのだ(当然他方では百合も発生するがそちらはヒロインが元来粗暴なので全然期待できない)。
森永あいの笑いは、基本的に無垢な善人が不運や人格破綻者に翻弄される悲劇を同情しつつ笑い飛ばす事にある。しかしこの作品では主人公の想いがブレる事が原因で話が拗れるため正直あまり同情できない。それはすなわち笑えないという事になるのだ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-23 15:36:31] [修正:2015-02-23 15:36:31] [このレビューのURL]

古代ローマと現代日本を温泉というキーワードで繋げた発想は面白いし、こうした作品を描くには相応の造詣というか作者自身のバックボーンが必要なのでそこは素直に感服します。
ただ全巻読み終えて感じるのは何か「足りない」という事。印象に残るエピソードも、もう一度読みたいシーンも、思い出し笑いしてしまうようなギャグも、おっと思わせるような台詞も、あーこいつ好きだわと思えるようなキャラクターも見つからない。じゃあ破滅的につまらなかったのかと言えばそうでも無い。
ただ間違いないことはもう一度作品を読み直そうという気にはならないということ。厳しい言い方かも知れないが作者の「熱量」をあまり感じられない作品に思えた。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-02-05 22:01:18] [修正:2015-02-05 22:01:18] [このレビューのURL]

作者は以前、「何を描いてもジョジョになってしまう」と言ったらしいが、この作品を読む限りジョジョというより「スタンドバトルしか描けなくなっている」と言った方が正解ではないだろうか。
未知の能力が襲ってくる→訳もわからず逃げたり防御したりで恐怖を印象づける→攻撃の特性などからミステリーの謎解き的に攻略の手がかりを掴む→華麗に逆転勝利
こういったフォーマットはそれは盛り上がる事は間違いないし能力のパターンさえ変えれば延々と物語が作れる訳だが、現状は能力バトルのパイオニアである作者が自らのスタイルに甘んじてしまっているようにしか見えない。
この作品に関して言えば謎や設定がまずありきで人物はそれに沿って動いている感じがしてどうにも生き生きとしていない、要はキャラ立ちが弱すぎる。肝心の謎もそれ程強烈な関心を呼ぶものでは無いので、8巻までいってもただ何となく話が進んでいる、起伏のないまま「読まされている」感覚に陥ってしまう。今後に期待したいが正直期待薄。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-01-08 08:18:59] [修正:2015-01-08 08:18:59] [このレビューのURL]

もやしもんの作者の描く平和を愛しその為には手段を選ばない処女で少女な魔女の物語。
どんなに不条理な行いがあっても人の営みに一切干渉せずに結果平等を図る神様と、不平等上等で目に映る戦争を片っ端から止めていく魔女とのイデオロギー対決といった所でしょうか。
正直テーマは青臭いしキャラのやり取りも説教臭い。というのも彼等が各々の主義主張を獲得する経緯(痛みと言うべきか)の描写が十分でなく、結論ありきのディベートになっているため、只の言葉遊びの応酬に写ってしまうのです。
また、こうした歴史物を描く際にありがちなのですが、どうしても書き手(読み手も)が現代の感性で当時の人のありようを語ってしまい、その「基準」で戦争=悪、平和=善と単純に切り分けられてしまっているのも少々残念なところ。
画力は高いものがあるし(人物描き分けは下手だけど)話としては三巻でさっくり纏まっていますしつまらなくは無いのですが、人に勧めるにはやや物足りないというところ。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-27 17:59:51] [修正:2014-11-27 17:59:51] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

昭和の薫り漂う工場跡地にある少年たちの秘密基地で繰り広げられる殺戮劇。実際のアングラ舞台の演目を漫画化したものだそうです。帝一の國でもそうですが、この作者は昭和的な舞台設定が好きなようですね。
最初は「少年たちの純粋な仲良しクラブがその閉鎖性から徐々に理性のタガが外れ、些細な仲間割れから遂に一線を超えてしまう…」的なお話を想像していたのですが、いざ読んで見ると少年たちは冒頭から人を手にかけており、「最初からイカれた少年たちがその暴力性を仲間に向けて殺しあう内ゲバ物(う〜ん昭和な言葉!)」だったので一線を踏み越える背徳感や罪悪感はさほど無く、淡々と崩壊していく様を眺めるようでした。
(前日譚的な外伝も有るようですが、それはあくまで別作品なのでここでは除外)
物語は最後に種明かし的なものもあり、一気に読めてしまう迫力もあるので決して悪い作品とは思いません。しかしこの手の話はある程度レビューに頼らないと手にする機会が非常に少なく、かといってレビューを読んで過度な期待をもって臨むとやや肩透かしを食ってしまう、難しい作品だなと感じました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-01 13:59:15] [修正:2014-11-01 13:59:15] [このレビューのURL]