「霧立」さんのページ

総レビュー数: 33レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年05月13日

今なお島本和彦の最高傑作と言っていい。ギャグの切れ味もさることながら、伊吹三郎を筆頭とする強烈な脇役陣(ちなみに主人公を含め殆どが卑怯者)。加えてその一人一人がボケもツッコミも出来るという「ビートルズ的効果」を呼び、更に一定の伏線も貼られて綺麗に回収されるという構成力まで合わせ持つ。極め付けは十分な人気があったにも関わらずすっぱり12巻でまとめ上げるという潔さ。ギャグ漫画の傑作に出会った感動はストーリー漫画のそれを凌ぐという好例。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2017-12-22 07:36:59] [修正:2017-12-22 07:36:59] [このレビューのURL]

評価は11巻までのもの。
10巻過ぎまでは8コマという風変わりな構成で「間」を駆使した独特のギャグを楽しませる単ページと、複数の場面がやがて収束する見事な構成力、そしてベースに流れる哲学的思考と、本来並立が困難な複数の魅力を内包した唯一無二と言える漫画だった。
11巻以降の評価は敢えて割愛するが、その理由は「才能を削りながらでなくては描けない」ギャグ漫画家の宿命だと思うから。10巻以上に渡ってギャグのジャンルを超えた漫画を作り上げた。それだけで十分評価されるべき作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2015-08-18 22:36:43] [修正:2015-08-18 22:36:43] [このレビューのURL]

結局のところ蝕までが「面白すぎた」のがこの漫画の不幸だったのかもしれない。蝕までの面白さの本質はガッツとグリフィスの関係が織りなす夢と絶望、友情と裏切り、人生とは何かという人が一度は思い悩む「人間の内面」にこそあったのだが、盛り上がり過ぎてしまった作品は新たな面白さを求めて「一大ファンタジー叙事詩」を目指してしまった。
結果としてその後の話は世界観も戦闘もスケールアップしてはいるが、作品の生み出す熱量は比較にならない。そして壮大になりすぎた展開は作者の筆の歩みを遅めるとともに、「おそらく完結しないだろう」という緩やかな絶望を読者に与えている。
ゴットハンド達と彼らが創造する世界全てに答えを出す事に囚われず、ガッツとグリフィスだけの決着を描ききっていればあるいは…などと詮無い事を考えてしまうほどに勿体無い作品になってしまった。名作として完結させるというのはこうも難しいのか。とはいえ蝕までで十二分に作品の価値はあるのでこの点数。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-05-23 18:46:02] [修正:2015-05-23 18:46:02] [このレビューのURL]

正直、近年これほど先が気になる作品には出会ったことがありません。
あえて詳細な紹介は避けますが、作品としては、時が巻き戻る設定と過去現在の事件が複雑に絡み合って進むSF的要素を含んだサスペンスものです。
タイムリープものというとどこか既視感を覚えてしまいますが、物語としては本格派の部類です。何よりこの漫画の最大の素晴らしさは、伏線のしたたかな張り方や先の読めないハラハラする展開といった「ストーリーテリング」と、登場人物たちの悩み・苦しみ・喜びといった心の機微を読者の心に刻み込む「熱量」を見事に両立させている所です。やや大袈裟かも知れませんが、まるで児童文学と推理小説が融合したような感覚を味わうことができます。
殺し合いだのサバイバルだの戦争だのと極限状態に無理やり持ってきてハラハラさせ、その死をもって安易に泣かせようとする作品が多い中、この作品の無理のなさ、無駄のなさは特筆に値します。
この手の作品は風呂敷の畳み方が大事なので最終的な評価はまだ早いのかも知れません。完結して評価が定まってから読む読まないの選択をするのもありでしょう。しかしそれでも自分はこの作品を「今」読むことを勧めます。「先が気になるもどかしさ」というものは連載中の今しか味わえませんから。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2015-01-23 13:51:16] [修正:2015-01-23 13:51:16] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

力こそ全てのヴァイキングの世界で本当の戦士とは何かを問い、力なき敗者たちの最後の理想郷としての「ヴィンランド」を探し求める物語。
全ての人が不幸にならない為にはどうすればいいのか。一見ありがちなテーマを奪う側(王、ヴァイキング)奪われる側(農民、奴隷)それぞれの視点から丹念に語る事で説得力を生み出し、大河的な話ながら場面場面での先の読めない展開に興奮できる構成力は見事。
何より殺戮と略奪に生きるヴァイキング達が生き生きと描かれているのが良いですね。また、主人公の理想論も多くの痛みと絶望の末に語られる物なのでさほど薄甘さを感じることもありません。
ただ、本当の戦士になったトールズもトルフィンも、数多の命を奪ったのちにようやくその境地へたどり着いたという事実。言い換えれば人々を救い守り育てる力とは、結局のところ同じほどの命を奪わなければ得られないのだという残酷な真実を突きつけているようでもあります。そう考えると救いが無さ過ぎますか。
突き抜けてはいないが全てにおいて本当に高いレベルでまとまっている作品。あとは無事に物語を畳んでくれれば名作確定です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2014-11-04 16:52:49] [修正:2014-11-04 16:52:49] [このレビューのURL]

第二次世界大戦前後を舞台とした
ヒトラーの出生の秘密をめぐる「アドルフ」の名を持つ
男たちの運命を描く作品。

手塚治虫らしい、正義の客観視をテーマにしつつ
ストーリーも読みごたえがあり
伏線の回収も見事。
物語としての完成度は非常に高い。
とりあえず盛り上げることだけに腐心して、一つの作品として
まとめ上げることを軽視しがちな今の漫画家は手塚のこういう
ところを見習ってほしい。

欲を言えば
最後の中東編をもう少し掘り下げて欲しかった、というより
カミルの暗黒面を詳らかにして欲しかった。
カウフマンが人生を通じてこの作品のテーマを存分に体現したのに
対し、カミルはどうしても「いい人」だけの役回りで
キャラクターを活かしきれなかったのがもったいなかった。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2012-05-25 02:08:52] [修正:2012-05-25 02:08:52] [このレビューのURL]

色々な面白さを持っているのでまとめるのが難しいのですが、
敢えて言うなら
漫画の持つあらゆる要素(ストーリー・絵柄・構図・セリフ・擬音etc…)にオンリーワンを追求し、
かつそれをエンターテイメントの域まで高めている作品です。

確かに好き嫌いは分かれます。基本グロですし絵はクセがあるし
難解すぎて「?」な展開などもあります。ですが
それを補って余りある魅力があるのもまた事実。
ハマった時の中毒性はどの作品よりも強いと思います。

生理的に受け付けなかったら申し訳ないけど、それでも薦めずには
いられない、そんな作品。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-12 23:40:12] [修正:2010-11-12 23:40:12] [このレビューのURL]