「kamekame」さんのページ

総レビュー数: 21レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年07月28日

「その答えを求め続けると気のふれる問がある」
「自分は何故ここにいるのか」
「何処より来たりて何処へ向かうのか…」
「実に人はこの問を忘れる為に人を愛し
    この問から逃れる為に神を求める」

このモノローグから始まる物語は、真実このことを作中で求め続けていく。
間違いなく漫画という枠を超えた希有のSF作品。
ひとつの宗教作品のようでもあり、哲学書のようでもあり、
日本人として魂の根底にある何かを揺さぶる民族学の本のようでもある。
実に気持ち良く読み手の心を、イメージの感応力を広げてゆく。

だが小難しいと言うことではない。
少女漫画らしいが完成された絵柄に無駄のない背景。
厳選されたセリフで導かれる物語は簡潔明瞭であっという間に読み切れるだろう。

個人的に気に入っているのは、
世界観を構築するうえでの一助となっている名詞の響きの良さ。
「亜神(あしん」「威神(いしん)」「真言告(まことのり)」「神名(かむな)」etc.
「言霊」という言葉がぴったりなほど美しく、染込むように体に入ってくる。

10点をつける作品というのは、呆れるほどの読んでいるにもかかわらず
思い余って魅力を上手く伝えることができず、もどかしい。
なんとかより多くの人に手に取ってもらって、是非読んでもらいたい作品です。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-11-02 21:01:32] [修正:2010-11-02 21:09:09] [このレビューのURL]

名作。考えられた構成でフィナーレまで一気に突っ走る。
物語を形作る上で余計なものがなく、引き延ばしの気配も微塵も感じられない。
ファンが多いのもの頷ける。

大きくとらえて以下の物語の軸となるものがあると思う。

まず第一に潜水艦と言う特殊な兵器を扱ったこと。
それが引き起こす様々なシチュエーションが新鮮でならない。
戦闘シーンは深海という、これまた光もレーダー届かない世界の特殊性も手伝って
見たことがないバトルシーンをリアルな描写で見せてくれる。

第二に核兵器という題材を取り扱ったこと。
抑止力と言うものを考えさせられるのだが、これによって心理戦の面白みに厚みが出ている。

第三に外交を含む安全保障の問題を取り扱ったこと。
日米関係、政党再編、自衛隊問題、国連、付け加えてロイズ保険…。
すべてのことに答えを出していく訳ではないが、エンターテイメントとして
扱い辛いこれらの要素が生き生きと描写される。

以上の三つの要素が海江田艦長とその理念を中心とした渦の中で
ストリートして紡がれていく様は圧巻。

たしかに情報量が多く32巻と言う長さはかなりのボリュームで、
読むのは大変だが、まだの方は是非読んで欲しい。

蛇足だが、昨今の日本を取り巻く情勢(対米、中、ロ、朝)の中で改めて読み直してみると
連載当時とはまた違った味がある。参考になるとかいうバカな話ではなく、
色々な判断をする上での自分お立ち位置の確認や、
しっかりした情報の取捨選択の必要性など、改めて考えさせられた。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-10-01 17:43:26] [修正:2010-10-01 17:43:26] [このレビューのURL]

9点 寄生獣

散々語られてきた作品に新たなレビューもなんのなので、
オッサンの感傷文を一筆お目汚しに。

この作品との出会いは単行本の5巻が発売になった15年ほど前。
当時住んでいた東京は千歳船橋駅近くの書店に平積みされていて、
今思えばそれほど強烈な表紙でもないのに、
魅入られるように手に取りそのままハマってしまった。

少年ジャンプではスラムダンクが佳境に入った頃、
ネットもない時代で漫画の評判は口コミが頼りだったが、
新刊が発売になると大学のゼミの長机に
専門書と共に違和感なく複数置かれていた光景を覚えている。
あっという間に浸透してカルトな人気になっていった。
バブルがはじけ、阪神の震災、オウム関連の事件が起き
転げ落ちるように暗くなっていく世相に
ほの暗い作風が合っていたのかもしれない。

その後も事あるごとに読み返してきたが、いまだに色あせない。
私なんかに言われるまでもなく、語りづかれる名作になるだろう。
満点にしなかった(気持ち的には9.5点をつけたかった)のは、
作者の現行作品「ヒストリエ」に期待しているため。
大作になるのが必至のテーマなので、早く進んでくれることを切に願ってます。
「アッララララ−−−−−−−−−イ!!」(違っ)

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-17 11:23:40] [修正:2010-08-17 11:23:40] [このレビューのURL]

とてもおすすめです!
描かれているのは、酪農の新しいあり方など文章にするとお堅い感じのものですが、
1巻読み終わる頃には何故か癒されていること請け合いです。
それはこの作品が、視野を広げて本質みることが
心を豊にしてくれることを教えてくれるからかも。
せかせかした気分を落ち着かせたい時にもうってつけ。
レビューになっていませんが、機会がありましたら是非読んで下さい。
いやー、本当に不思議な作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-07 13:26:10] [修正:2010-08-07 18:42:55] [このレビューのURL]

これぞ少年漫画。

こんなに気持ちの良い性格の主人公は希有だ。有る意味、嫉妬を覚えるほど。
当時としては妖怪モノを明るく描くスタイルが斬新だったし、
物語の後半で明らかにになる、相方「とら」の出自がより物語に深さを出している。
また画風も誰にも似ていないタッチでありながら上質。
「うしお」の元気な眉毛にマッチしていて、
本当に世界観の安定に大きな役割を果たしている。
9点をつけたい作品だ。

だが、改めて一気に読み返すと、週刊連載の弊害が見て取れなくもない。
本当に33巻も必要だったか? 25巻ぐらいで収まったのではないか?
途中で出てきたキャラは最終決戦にてもちろん再登場するし、
サイドキャラのパーソナリティに深みを出すためだから無駄とは言い切れない。
しかしながら、それによって物語の本筋がぼやけてしまっているのは否めない。
コンパクトにすれば、もっと熱くビビットに展開できたのでは?と思ってしまう。
この問題は書き下ろしではなく連載形式が主流であるかぎり、
どんな作品にもついて回るものなので根が深いとは思うが…。

グダグダ書いたが、間違いなく自分の子供にも「読めっ!」と強制する良作。
オススメです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-09-26 04:26:33] [修正:2010-09-26 04:26:33] [このレビューのURL]

8点 BIOMEGA

これぞSF。物語と共に広がっていく世界にぶっ飛ばされた。
地球上でのバイオハザードな展開だけでも十分楽しめたのに
紐状の48億キロメートルの構造物って…。

私見を述べれば、この作者の現時点の最高傑作は「BLAME!」だと思う。
真にエポックメイキングな作品である。
だが、それゆえに敷居が高いと感じる人もいるかもしれない。
もし、どちらもまだ読まれていない方がいるのなら
「バイオメガ」で肩慣らしをしてから「BLAME!」を読むことをオススメする。

本作自体は6巻構成のシンプルな作品だ。
しかし、そこに展開される世界はスピーディーで濃密。
エンディングの切なさも良い。(連載時に読んだ時は、一瞬頭が?マークになったけど)
作中で使われる「東亜重工」「CEU」などロゴデザインも
ロゴデザイナーもびっくりな繊細な感覚が反映されている。
とにかく見るべき点が多い。

センスがあってスタイリッシュってこういう作品のことを言うのだと思います。
某死神漫画の作者の方、聞いていますか?

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-14 23:34:51] [修正:2010-09-14 23:42:25] [このレビューのURL]

・初めて読んだ後の感想→「良く分からんが、パワーを感じる漫画だな…」
・設定集やweb上のまとめページを傍らに読んだ2度目→
 「うぉー、設定細けー、登場人物多すぎー、でも面白ぇー」
・さらに整理して読んだ3度目以降→「深ぇー」

初回はまるで塩野七生の文芸大作、『ローマ人の物語』を
古代ローマ史の予備知識無しに読んでいるようなもの。
「ハンニバル、カモーン」「カエサル、カモーン」「トライアヌス、カモーン」な、
展開を予測してワクワクするためのバックボーンがないままに、
歴史小説とか叙事詩を読むのに似ている。有る意味無謀な漫画である(笑)。

なので、2回目以降は巻末の年表などを学習しながら読み進めることになる。
しかし、年表の設定期間は56億7千万年。
その上、出来事はすべて作者の作り出した架空のモノ。無茶な漫画である(笑)。
以後はその世界を読み解いていくのだが、
設定が細かく、今のところ大きな破綻がないので、どんどん引き込まれていく…。
そうなればしめたもの(?)。幸か不幸か作品に嵌まれたとを喜ぶべきだ。

絵に癖があり、すらすらと頁をめくってあっという間に読み終えるような作品ではない。
個人的には出来るだけ多くの人にオススメしたいが、
受け付けない人がいるのも納得できる。少なくとも定食屋で暇つぶしにとか、
疲れた心をリフレッシュしてくれるようなことは期待出来ない。
他の方も書かれているが、これは漫画とは別のものなのかもしれないし…。

休載しっぱなしで(再開の予定はあるようだが)、
完結の見込みがあるのか微妙なので、今のところ8点。
完結したら10点もあり得る作品だと思います。

[追記(蛇足)]
備考のところに挙がっているお二人の作品も読んでいることに気がつき、
レビューとは無関係に少し鬱になりました。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-09-01 17:52:26] [修正:2010-09-01 18:10:41] [このレビューのURL]

凄いなぁ、この作品。
個人的には苦手なテーマなのに一気に読んだ。
連載中の作品のレビューは控えていたのに、どうでも良くなってしまった。

性の不一致に対する悩みが主題のような気もするが、
思春期(その一歩手前?)特有の一般的な悩みがテーマであるような気もする。
苦手なテーマにもかかわらず妙に共感したのは、
自分の中にもきっとそういう部分があるのだろう。
二鳥君の女成分は9:1らしいが、
自分の自己分析は4:6…。程度の差だと感じた。
小学生の頃、年上の女性にカワイイといわれると嬉しかったし、
手や髪がキレイといわれるのも嬉しかったもの。

あー、それがすっかり加齢臭のする子持ちのオッサンになってしまった。
それでも読んでいて懐かしく思えるから、
きっと誰にでもある(ありえる)テーマの作品なのだと思う。

こういう繊細なことを作者は記憶しているのか?
新たに創作するのか?
その点も凄いと思った次第です。 

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-08-15 03:14:42] [修正:2010-08-15 03:24:38] [このレビューのURL]

アトランティスの伝説を真直ぐに掘り下げていく様に好感が持てる作品。
史実以外にも、巧みにオリジナル創作の出展などを絡め
考古学的な気分を存分に盛り上げてくれるので、そういった作品が好きな方にはオススメ。

東周斎雅楽原作、魚戸おさむ作画というコンビは安心感があって良いのだが、
このベテラン二人の作品にしては後半のまとまり感は薄い。
原作の長崎尚志(東周斎雅楽)は本気でライフワークとして
アトランティスを追っているのではないかと邪推してしまうほど作者の思いが強く
読み手への配慮が緩い(緩いとは言っても稚拙と言うことはない)エンディングだ。
ある意味、20世紀少年のプロット共同制作者とは思えない。
己の中に溜込んだアトランティスへの思いを、吐き出しているようでもあるが、
決して不快でなく熱さを感じるだろう。

あえて欠点を書けば
人物、さらに言うならば人物同士の関係が作中でもっとダイナミックに動いていけば
誰が呼んでも楽しめる作品になったのではなかろうか。


余談だが、
2007年の連載完了時に作中でアトランティスのあった場所として結論づけられた場所が
2011年3月にコネチカット州ハートフォード大学のリチャード・フルンド教授が率いる
国際調査チームが発表した比定地と同じだった。
真偽の程はともかく、ロイターの和訳記事があるので興味ある方は
作品を読んだ後に『海底に沈んだとされる古代都市「アトランティス」を発見か』で
検索してみて下さい。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-12 01:18:21] [修正:2011-05-12 01:20:26] [このレビューのURL]

最近の世に出ている一般的な作品は、
どれも読みやすいし良く考えられている。
こなれていると言えば良いだろうか。
この作品は後期の手塚作品ではあるが、
そういった意味ではやはり時代を感じてしまう。

だが、そんなことはどうでも良いと思わせる
強いメッセージがこの物語には込められている。
機会があれば四の五の言わず読むべき作品だ。

今の漫画出版界にもこう言った
「大切なことを伝える作品」を生み出す土壌が
僅かでも残っていると良いのだが。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-08-04 16:59:46] [修正:2010-08-04 18:11:27] [このレビューのURL]

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