「Dr.Strangelove」さんのページ

総レビュー数: 365レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月07日

客観的に評価するのが難しいぐらい好きな作品だ。
非常に長いレビューで恐縮だがこの作品にはそうせざるを得ない魅力がある。
私が唯一認めるラブコメであり今までに読んだ漫画ベスト10に間違いなく入る作品。

ストーリーは大まかに分けて下記のようになっている。
1〜2巻:準備稿篇
不思議な少年・松笛と、彼を好きになってしまった普通の少女・戸川が、
「どうして私は松笛君を好きになったんだろう」という問いの答えを模索する。
インド・神道・土着宗教的なモチーフに加えて、
「涙を飲む」などといった独特のシチュエーションが注目を集めた。

恐らく全篇中で最もまともなエピソードだろう。絵柄の方も一昔前の
少女漫画のような絵でこなれているとは言い難い。
しかし、この絵柄が話の幻想的な雰囲気に合っており
一種のリリシズムともいうべきものが生まれている。

3巻〜8巻:冥界篇
松笛の「仲間」だという謎の男女二人組の手によって、 戸川と松笛は、
ユング的に言えば深層意識と同義であるという「冥界」へと落ちてゆく。
同時並行的に、可能世界に存在する大学生の戸川・松笛も登場し、
重厚な物語が展開された。鳥と蛇など象徴的なモチーフも多用されている。

一度目の絵柄の変化。それとともにギャグが一切なくなりとても哲学的な内容になっている。

8〜10巻:学園篇(前期)
松笛と戸川が学校で会う個性的な人々の悩みを解決していく。

二度目の絵柄の変化。重厚だった冥界篇の反動からか
別の作品かと思うぐらいギャグ色が強い。
とにかくお気楽・ギャグ・キワモノネタに走っているw
この手のマンガでは多分最高峰の出来だろう。
偏執的な書き込みはこの頃から顕著になる。

11巻:学園篇(後期)
男と女。子供と大人。ここに登場する少年たち・少女たちは
皆、その境界に悩み苦しんでいる。松笛と戸川の手によって
不思議な体験に誘われ、彼らはそれぞれの答えを見つけ出す。
ちょっとオカルティックで、ちょっと切ないエピソード群。

またしても絵柄は変遷し、書き込みの量ももはやマンガ業界一に。
前期と比べ話の内容が深みを増し、より考えさせられる。
収録されている「天使が朝来る」「夢の扉」「光るゴミ」はどれも独創的な名作で、
個人的にはこの巻が一番お薦め。
特に「天使が朝来る」はその完成度、独創性から見てマンガ史上に残る珠玉の名編。

12巻〜13巻+単行本未収録作:内宇宙篇
二人が過ごす日常。だけど時折、普段は見えないモノが顔を覗かせる。
松笛が戸川に垣間見せる、そんな非日常の片鱗。
世界や心理の根元的なモノを、鮮やかに描き出している。

話の深さと鬼のような書き込みの量、変態性といいディスコミの頂点かも。
奥が深い話ばかりで実に面白いがこのエピソードの特徴はとにかくエロいこと。
直接的なエロさはないがこれはもう、本当に凄いエロさ。特に12巻は半端ない。
そこらへんの美少女漫画が裸足で逃げ出しそうだ。
同作者の「夢使い」と共に隠喩だけでエロ漫画は描けるという見本にすべき。

「どうして人は他人を好きになるのか」がこの漫画の大命題であり
作者は非常に真摯にそれを描こうとしている。
その途轍もない書き込み量といい、独創性といいこれほど個性的な漫画は見たことがない。

確かに変な漫画ではある。しかし、「変だから」という理由で切り捨てるには
余りにも勿体無い名作なのでぜひとも読んでほしい。
たとえ好きではなくとも「凄い」漫画だと感じられることは保証する。
ある意味漫画の極北に到達したと言っても過言ではない。

ある程度漫画を読んできた人にこそお薦めする。はっきり言って評価不能だが
点数をつけるならば10点以外に有り得ない。
客観的に見ればとても10点はつけられないが、作者が13巻のあとがきに書いたような
「押入れのマッドサイエンティスト」である私にとってこの作品は
ただの漫画を越えた、精神安定剤、心の支えである。それ故に満点とする。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2007-07-13 23:51:44] [修正:2007-12-17 16:08:45] [このレビューのURL]

10点 SF全短篇

「劇画オバQ」
「ミノタウロスの皿」
「カンビュセスの籤」
「分岐点」
「イヤなイヤなイヤな奴」
「間引き」
「流血鬼」
「ひとりぼっちの宇宙戦争」
「絶滅の島」
「老年期の終わり」
「みどりの守り神」
「未来ドロボウ」
「大予言」
「ある日、、、」
「あのバカは荒野をめざす」
「タイムマシーンを作ろう」など珠玉の名編がぎっしり。

もはや古典であり歴史的価値も含めて
10点をつけさせていただきます。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-06-15 19:03:27] [修正:2007-06-15 19:03:27] [このレビューのURL]

ごくまれだが「芸術」にまで昇華されている漫画に
出会う事がある。

この「リバーズ・エッジ」は間違いなくそれだ。
私はこういう作品に出会うことがあるから漫画を読んでいる。
良い意味でも悪い意味でも多くの人にとって一生忘れられない作品になるだろう。
実は嫌いな作品でもある。ただ、あまりにも完成度が高く、ケチの付け所が見つからないため満点とする。

作者岡崎京子氏が復帰することを祈る。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-04-03 13:24:21] [修正:2007-04-03 13:24:21] [このレビューのURL]

1巻の途中までは糞です。
2巻まで頑張って読み通してください。
多分もうその頃には荒木ワールドの虜になってると思います。

この漫画は印象に残る台詞が多く、
更に擬音が独特で面白いです。
加えて、非常に魅力のある悪役が次々と出てきて飽きません。
文句なしに10点。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2007-01-07 13:30:49] [修正:2007-01-07 13:30:49] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

他の人も書いていますが
これはただのグロ漫画ではありません。
環境問題や存在について深く考えさせられる内容です。
勿論、ホラー漫画としても一級の出来で、
最後まで緊張感があり一気に読めました。
終わり方も秀逸で素晴らしかったです。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2007-01-07 13:23:18] [修正:2007-01-07 13:23:18] [このレビューのURL]

馬鹿話を過剰な緊張感と格調高い画面で大真面目に語る、という平野耕太の方法論が誰の目にも明らかになった作。
わざわざ実在の偉人・有名人まで招いてくるのだからその「格調高さ」へのこだわりは並ではない。

通常では裏目に出ることも少なくないヒラコーの特異な美的感覚も、本作ではことごとく面白さにつながっている。
また、登場人物の造形においても、キャラがどのような表情、所作をすれば面白いかをよく把握している。

ただの幼稚な誇大妄想狂には絶対に書くことのできない傑作だ。大いに期待したい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-08-15 18:24:58] [修正:2010-08-15 18:24:58] [このレビューのURL]

話は弱いかもしれないが、キャラが良いのでそんなことは微塵も感じさせない。
二鳥君、千葉さん、高槻さん、佐々さん、有賀君などのキャラの「和」が生み出す魔法的幸福感は漫画史において特筆に値する。
いわゆる「厭な奴」ポジションの二宮君や土肥君でさえ好ましい。

また、ミニマリズムの傑作でもある。形を変えて繰り返される「学校行事」「学校へ行く・行かない」「少年少女たちのすれちがい」。しかしそれは決して深刻なものとしては描かれず、むしろ寂寥感と笑いをかき立てる。

登場人物の年齢が上がるにつれて描くのが難しくなっていく題材なため、どの時期にどう〆るか興味深い。
志村貴子は(基本的には)聡明な演出家なのできっと良い最終回にしてくれるでしょう。


<追記>10巻まで読み、点数を一点上げました。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2007-05-16 18:37:02] [修正:2010-03-31 06:35:38] [このレビューのURL]

考えうる限り最高のギャグ漫画の一つ。
アフタヌーンの漫画というのはとかく「濃い」漫画が多いが、本作なんてその最たるものだろう。

他の追随を許さない圧倒的な画力で、徹底して下らない話を描く。
「才能の無駄遣い」という言葉はトニーたけざき氏にこそふさわしい。
好き嫌いがはっきりと分かれる作品だと思うが私は大好きだ。
常に読者の予想の斜め上を行く、クレイジーな漫画。
このような作品を10巻以上連載させるアフタヌーン編集部の懐の深さに乾杯。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-04-13 15:29:28] [修正:2008-04-13 15:29:28] [このレビューのURL]

9点 YOUNG&FINE

漫画界屈指のテクニシャン、山本直樹があえてその技巧を抑えて
真正面からの正攻法で描いた青春漫画の名作。

ストレートなだけに著者の作品では逆に異質である。
4月、美人の彼女がいる灰野という高校生のもとに、兄の同級生だった女教師、
伊沢学が下宿することになるところから物語は始まる。あらすじだけ見れば
なんてことはない話だがこの人にしか出せない作中の情緒(日本映画的、ともいえる)
が実に味わい深く、数年毎に読み返したくなる。

最も印象に残ったセリフはラスト、灰野の「自分が誰かに影響するなんて思いもしなかった」。
それまでの淡々とした日常描写の積み重ね(それこそ人によっては退屈と思えるほど)は、
このセリフのためだけにあったのではないだろうか?
私はまだ19歳なので自分が他人に影響を与えた事など、ない(少なくとも自覚の範囲内では)。
しかしよく考えてみれば自分が他人に影響するなんて当たり前のことだ。
今、この瞬間にもどこかで他人に影響を与えているかもしれない。
そういうことに気付かせてくれた漫画。

ひょっとすると山本直樹の作品で一番好きかもしれない。
本当に上手い作家は技巧に頼らなくても良い作品が書けるのだ。
改めて山本直樹は凄いと感じた。名作だと思う。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-04-06 15:32:32] [修正:2008-04-06 15:32:32] [このレビューのURL]

タンタンの冒険旅行が登録されてるんだから別にこれがあってもおかしくはないでしょ。

さて、掲載された雑誌は2000誌を越え、コミックの総発行部数は3億部を越えるこの漫画、
多分この地球上で知らない人はいないんじゃないかという作品である。
基本は4〜5コマのギャグ漫画だがとても奥が深い。
どのくらい奥が深いかというと、「ライナスの毛布」が心理用語になってたり、
新興宗教の隠喩が出てきたり、学校が自分で考えるようになって
最後には自殺w(「2001年宇宙の旅」のHALみたいだ)したり・・・
可愛らしい外見とは裏腹にかなりシュールなギャグ漫画である。
それだけでなくアメリカの社会問題や政治に関して非常に鋭い風刺が
幾度となく出てきて、作者の慧眼を感じさせる。

また、上記のような深読みをしなくてもスヌーピーを筆頭に
可愛くて憎めないキャラばかりなので
子供から大人まで楽しめること請け合いの名作。
本来は8点が妥当だが、50年続けたというその功績も称え+1点。
面白いっすよ。お薦め。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-02-17 21:32:57] [修正:2008-02-17 21:32:57] [このレビューのURL]

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