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10点 寄生獣

全十巻が足りないともだれるとも感じない、数少ない完全な作品だと思う。

環境問題や生命といったことに、作品内では登場人物が
それぞれの思想を持ち、そのどれもが否定しがたい。
ミギーの「地球は始めから泣きも笑いもしない」という台詞は読者に柔軟な思考を与えてくれる。

登場人物の心理描写も丁寧だが、わずらわしくはなく、母親のエピソードなどでは新一の悲痛な思いが良く伝わってくる。そのほかのキャラクターも個性的でそれぞれの性格が良く描かれている。

この漫画は作品のテーマ以外にもアクションシーンが見ものだ。
寄生獣同士の戦いはシンプルだがスピード感があり、迫力が感じられる。
300m離れた場所から石を投げて、体をぶち抜くという単純な攻撃が、ダイナミックで残酷かつ効果的だと感じさせる。

作品内では所々にクスッと笑える程度のユーモアもあり硬さを感じさせず、非常に読みやすい、非の打ち所の無い漫画だと思う。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-06-23 04:11:55] [修正:2010-06-23 04:17:52] [このレビューのURL]

10点 ヒミズ

魂を揺るがし、人生に影響は与えないが、
人間の負の部分、本質そのものを描いた作品。
救いのない内容で最終的にも救いがない。
だが、こんな話は現実でも数多く存在する。
そういうリアリティを追求した意味では並ぶ物がない無双な作品。
茶沢さんにはあの現実を受け入れた上で強く生きていって欲しいと思ったが、現実はなかなかそうもいかないだろう。
傑作でいて、無常としか言いようがない。
反面、エンターテインメントとは、ジャンルを問わず予定調和的で、そもそもファンタジーなのだと気付かせてくれる作品。

極論を言えば、さっきまでは希望を感じていて、愛する者と一緒に夢を語っていたりしていたのに、次の瞬間には車に轢かれて肉塊になっているようなのが現実。

これほど極端に賛否両論が別れ、読み手を選ぶ作品はない気がする。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-22 07:15:36] [修正:2010-06-22 07:15:36] [このレビューのURL]

既にこの漫画と付き合って13年ほどになりますが、
正直言って、ここまで大風呂敷にしてしまうと終わりが見えないです。

ただ、三浦先生の場合は物語の伏線をいままでしっかりと回収してきているので、単純に主人公の能力のインフレ化で収束するとは思えません。
逆に主人公の命の収束が始まってきており、
父と母をこれまで導き、守ってきた”人間と闇の子”の新しい幽界の命が成長していっています。
いわゆる王道ファンタジーに近い展開に持って行きながら、この描写には因果律に打ち勝てない、人間の限界を感じさせるリアリティを強く感じます。
とはいっても、既に主人公は人間レベルの強さではありませんが。

点数は上記の伏線を巧く回収し、多くの方々の期待を良い意味で裏切る結末になると予想した上での10点ですが、悪い意味で裏切られた場合は0点です。ただのロールプレイングゲームにならない事を祈りつつ。

魔法に関しては、登場した時点でかなりの失望を感じた方が多いと思いますが、それも、最初のエルフの登場時点で示唆されていたと考えれば充分な伏線といえます。ただ、あの”違和感”で離れていった読者は多い事でしょう。

いずれにせよ、完結まであと数年は要するでしょう。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-22 05:26:17] [修正:2010-06-22 05:26:17] [このレビューのURL]

こんなにも「完璧」な主人公が他にいたでしょうか?

普通、漫画の主人公はダメダメだったり一般人だったり、優れていても欠点をもつものです(例えば井上雄彦先生も、主人公には必ず一つ欠点をもたせて描くそうです)。そしてそうした主人公が、努力や修行をして強くなるのが、漫画のセオリーでありヒットの方程式なのだと思います。

ナウシカは、苦悩も葛藤もしますし、絶対的な強さをもっているわけではありませんが、間違いなく「完璧」という形容がふさわしいキャラクターです。1巻の果たしあいでは憎しみに支配されますが、それ以降は深い慈愛の精神・様々な道具を使いこなす知性・力・圧倒的なカリスマ性を備えた、モーセやジャンヌのような預言者的な才覚を発揮します。

この物語を読んで、もっと努力や修行のシーンが欲しいと思う読者はいないでしょう。それは、この物語が主人公の成長譚ではなく世界を知る冒険譚であるからであり、また、主人公の成長を楽しむものではなく主人公の完璧さを楽しむ漫画だからです。ナウシカの強さ・優しさ・思考は、僕らが一度は夢見る「完璧な人間」の理想像だと思います。特にその優しさには、癒され、心温まります。敵も蟲も動物も、腐海さえも愛するその包容力は、母性からくるのでしょう。青年誌には珍しい女性主人公なのもそのためで、全ての生物に対する母親としての優しさが、心地よい温かさを読者にくれるのです。
そもそも武力解決をしようとしないナウシカが、戦う力を求めて修行や努力をする必要がないですしね。

ナウシカの魅力を最大限に引き出している、緻密で完成された世界観も魅力です。国家関係、歴史、メーベを始めとした飛行機械、人間にとって毒ながら実は人類を救うための腐海、腐海を守る蟲…複雑ながら矛盾のない、リアリティとメルヘンとSFを含んだ世界。最近は作品の世界観を作中で全ては教えてくれない漫画が多いですが、この作品ではほぼ100%見せてくれているのも嬉しいところです。

ナウシカの最後の選択は、様々な経験に裏付けられたとはいえ独断であり、人間にとって正しいことだったのかわかりません。ハッピーエンドのように見えて、その後が描かれていないのが怖いです。ナウシカの選択が間違ったものであれば、人類は滅び、ナウシカの力は魔女のそれと変わらなくなります。圧倒的なカリスマ性が、人々を盲信的にさせたかのごとく。逆に正しければ、ナウシカは英雄として扱われます。独裁者と英雄は紙一重なんですね。
ただ、ナウシカの選択が善でも悪でも、ナウシカの人間性は紛れもなく善である。この作品の重要なところはそこなので、その後を描かないあのENDは秀逸だったと思います。

この作品を知らない人は、まず映画版を見ることを勧めます。漫画からだと、映画を楽しめなくなるかと。
映画を見た方は、原作であるこれをぜひ読んでみてください。画が苦手でも、紙質が嫌でも、内容についていけなくとも、シリアスさに耐えられなくとも、ただナウシカの優しさに触れるだけで、この作品を読む価値があると思います。

ナイスレビュー: 10

[投稿:2010-02-20 12:19:42] [修正:2010-06-20 13:50:46] [このレビューのURL]

現時点では浦沢作品で最高傑作だと思います。唯一無二の考古学アクションとしても最高の評価を付けたい。

どんな時にも諦めず、勇気を持って行動するキートンの姿から、人を守るのに必要なのは決して「お金」や「権力」ではないのだと知る。原作者が別にいらっしゃるようだが、浦沢先生の画があってこそだろう。読んで、歴史・地理・政治・文化・経済に至るまで学べてしまう、こんな贅沢な漫画を私は他に知らない。
「MASTER」とは「達人」という意味と捉えているが、キートンこそ人の世の楽しみ方を知っている「人生の達人」ではないだろうか。
ひとつ疑問。チャーリーだが・・・初登場の時と再登場の時とキートンに対する態度が違いすぎないか?
何かあったのだろうか?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-20 11:08:09] [修正:2010-06-20 11:08:09] [このレビューのURL]

「映画版」が触り程度でしかなかったということを教えてくれる、映画よりも遥かに重いテーマを孕んだ「ナウシカの漫画版」。
恐るべきまでの「世界観」の構築に驚嘆の声が止まる事を知らぬだろう。
「ユーラシア大陸」で全ての事件が展開されていたことを初めて知った!

「ナウシカ」を知る人間は大きく分けて3タイプに分かれると思う。

すなわち、
・「映画版」しか観ていない。
・「漫画」しか観ていない。
・「映画」も「漫画」も観ている。

最も多いのが「映画のみ」で、最も少ないのが「漫画のみ」であろうことは容易に想像が付く。
アニメ映画の世界観が「やや分かりにくい」なとど思っていたが、漫画の複雑さと比較すれば映画は「全くもって一般向き」「間口の広い」作品であることが理解できた。

アニメと漫画の大きな違いは、
ナウシカとクシャナ・クロトアとの関係だろう。

アニメではトルメキア軍がナウシカの父を殺害してしまったことになっている(漫画では「病死」)ので、ナウシカが彼らに憎しみにも似た感情を抱いてしまい、本心からの相互理解が不可能な状況に追い込まれてしまったが、漫画では物語の大半で行動を共にするため特にクシャナ・クロトア側からの「ナウシカへの歩み寄り」が顕著。
両者共にナウシカから受ける影響で当初の「侵略者的な行動」は薄まり、苦難を共に乗り切る過程で「戦友」にも似た感情が生まれていくこととなる。

「腐海」「瘴気」「蟲」「王蟲(オーム)」「巨神兵」はナウシカの世界観を象徴する5大キーワードだと思う。

「滅亡」と「再生」。
「生」と「死」。
「光」と「闇」。
「進化」と「退廃」。

繰り返して示される背反する「2つの言葉の数々」が、浮かび挙げる「人間の業」。
そしてそれら全てを飲み込む形で存在する世界「地球」が、下す「審判の行方」。
「神によって与えられる未来」ではなく、「自らの手によって選び取る未来」を選んだナウシカたちの行く手に広がるのは「殺戮の荒野」か?それとも「豊穣なる恵の大地」か?
「審判」は未だ下されぬのだ。

とにかく1巻・1巻のボリュームが有り過ぎ。
並みの単行本の倍の時間が読み終えるのに掛かる。
不満は「恋愛的な要素」は全くというほど無かったことか。
アスベルともほとんど「別行動」となるのと、事態が急展開するため「それどころではなく」、ロミオとジュリエットにすらならない。
ま、作品の「本来のテーマ」とは外れた部分なので、枝葉のことではあるが。
最強剣士「ユパ」の死も意外だった。しかも部族同士の諍いの巻き沿いだしなあ・・・惜しい人物を失ってしまった・・・。

「漫画版」を読んだ後では「アニメ版」は「ナウシカアイドル化」のための「プロモーション作品」か?という邪推さえ浮かんでしまう問題作。

衝撃に全身を貫かれた証拠として「10点」評を献上させていただきます。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-06-20 11:05:16] [修正:2010-06-20 11:05:16] [このレビューのURL]

●人は誰でも人生に深く影響を与えてくれた作品を持ってると思います。

それはきっと奇跡のような出合いであって、たとえどんなにいい話だとしても出合うタイミングが悪ければそうはならないだろうし、逆にどんなにくだらない話でも、その人にとっては宝物になることだってありえるのです。

この『ジパング少年』は、僕にとって奇跡のようなタイミングで出合った宝物のようなマンガです。

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この物語は4人の少年少女によって紡がれていきます。
皆がそれぞれ抱えているのは漠然とした違和感です。

徹底的に管理された学校。当たり前のように竹刀で殴られ、それが教育なのだと信じて疑わない教師たち。陰湿ないじめをしていたくせに停学になることだけは避けようと被害者ぶる同級生。そしてそれが認められてしまう不条理な世界。

そうした、本当は誰しも多少なりとも感じている違和感を、目一杯エネルギーに換えてひた走る、まるで暴走列車のようなお話のマンガです。


まるでそれが唯一の武器であるかのように、目に見える不条理すべてに噛み付く主人公柴田ハル。ある意味痛快ではありますが、とても危なっかしくも見えます。そんな柴田ハルにあるおじいさんは言うのです。

「世の中には2つの自由がある。“与えられた自由”の『フリー』と“掴み取る自由”の『リバティー』だよ。」

それを言われた柴田ハルはよく意味を理解出来ません。当時読んでいた僕も理解出来ませんでしたし、多分今も理解出来ていません(笑)。


ただ彼はその言葉を携えてペルーに飛んでいくのです。

ペルーは当時も今も貧しい国です。ほとんどの人が生きていくことだけで精一杯で、その国の人にとってみたら『学校の校則が厳しいから退学してこの国へ来た』なんて言ってみても誰一人理解してはくれません。彼らにとっては学校へ行くこと自体が憧れでもあるわけですから。

そんな現実に圧倒されながら彼らは想像を絶する体験をします。
学校を作るため資金集めに来た金堀り(ガリンペイロ)では、同業者に狙われたりしますし、反政府ゲリラに捕まったり、ポロロッカ(河の逆流)に攫われたり、何度も生命の危機に遭遇することになります。

しかし、それでも彼らは噛み付くのです。「それはおかしい」と。

ある時は日本の最新情報の事にしか興味のない、ペルーの日本人学校の生徒へ。ある時は視聴率以外には興味の無いジャーナリストへ。そしてある時は日本へ出稼ぎへ行って、妻を日本に殺されたと日本人を恨んでいる男に対して。

「それはおかしい」と。


主人公柴田ハルは、まるで運命に導かれるようにしてペルーのビトコス(黄金卿)を目指します。しかし多大な犠牲を払った末にたどり着いたそこには、彼が求めているような答えはありませんでした。

そこではたと気づくのです。『では一体何を求めていたのか?』と。


彼らにとってガマンならなかった『与えられた自由』とはなんだったのか。
そして長い旅を経て得た『掴み取った自由』とはなんだったのか。

それは漫画の中では明確には語られていません。

でもだからこそ魅力的だと思えるのです。


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僕にとってこの物語が特別なのは、柴田ハルが抱えていた怒りに賛同したからでも、社会に対して少なからず不満があったからでも、こんな風に生きたいと思ったからではありません(もちろんどれも共感は出来ましたが)。

ではなぜ特別なのかといえば『読者に対しての語りかけ』が切実に感じられたからに他なりません。

彼(作者いわしげ孝)は真剣に語りかけていたのです。日本人であることの違和感、矛盾だらけの社会、人としてどう生きるべきなのか。

そして掴み取る自由とは何を指すのか。


だからこそ、どんなに青臭いことを話していても、時代環境に合わなくなってきていても、その内容を読み返すたびに瑞々しい気持ちになるんだと思います。


ちなみに僕にとってあまりにも大事な作品であるために、読みなれることで感動が薄れてしまわないようにあんまり簡単に読まなかったりしています。

本末転倒とはこのことですね(笑)。



最後に。

このジパング少年(ボーイ)というタイトル、とても興味深いです。

直訳すると『日本の少年』。まさに日本人の今(当時)抱えている問題(イジメ、管理教育など)を提起している訳です。
そして発音は『ジパングボーイ』。これは外からみた日本人をあらわしています。この物語のほとんどが『日本人であることについて』語られているのです。

ではなぜ『ジャパン』ではなく『ジパング』だったのか。
これはマルコ・ポーロ『東方見聞録』からの引用で、日本は黄金卿だと言われていたところから来ています。つまり主人公は『日本の黄金卿』からペルーの『黄金卿』へ行った訳です。

もっともっと言えば、日本が黄金卿なのは事実なのです。少なくてもペルーの人にとっては。

日本の黄金卿からペルーの黄金卿へ。それはまるで先ほどの自由の話とも被ったりするのです。

与えられた山ほどある自由から、掴み取る数少ない本物の自由を得るというお話。


今回読み返してみて、なんとなくそんな感じがしました。




もし誰かがこれを機会に読んでみて、それで好きになってもらえたら光栄です。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-06-19 22:57:01] [修正:2010-06-19 22:59:03] [このレビューのURL]

10点 っポイ!

「LaLa」の看板作品のひとつ・・・だったのだが、なんか作者が編集部と喧嘩して雑誌を飛び出してしまい、同じ白泉社発行の姉妹雑誌「メロディ」に移った。メロディのほうは棚から牡丹餅(笑)

それにしても息の長い作品。作中では中学3年生の後半部分しか描かれていないのに、巻数では軽く20巻を超えるほどの長期連載に。初期の頃は男の子2人の青春漫画といった感じだったのだが、「神様ヘルプ」辺りから現代社会に生きる子供たちの抱える(大人たちもか)様々な問題をもテーマに盛り込むようになった。
巻を重ねるごとに登場人物も増え、ちょっと描き分けができなくなっているような感じもしないでもない。人気も初期の頃はドラマ化なんかもされていたはずだが、最近は連載も中断していたりで停滞ぎみ。
ただ最終到達地点は「中学卒業」と判っているので、ようやくゴールが見えてきた。

コミックスの巻末オマケ漫画「主役っポイ!」も毎回面白いのだが、ひとつだけ疑問。
9巻に登場して平に告白した下級生・来須だけ「主役っポイ!」に全く出てきてない。
作者も存在を忘れているのでは?

ナイスレビュー: 0

[投稿:2010-06-19 00:12:45] [修正:2010-06-19 00:12:45] [このレビューのURL]

10点 ONE PIECE


自分の中で絶対に揺るがないであろう一番好きな作品です。
作者の子供達を楽しませようとする気持ちにすごく好感が持てる。

画も上手くて、しっかり描き込んであるし、登場人物もそれぞれ個性があって魅力的。ちょったした遊び心にも癒されます。

漫画家の鏡だと僕はおもいます。

毎週ドキドキさせられて、月曜が待ち遠しくてしかたないです。

総合点はあまり高くはないですが、実際、色んな記録を塗り替えてますし、まさに歴史に残る名作と言えるでしょう。
連載12?年以上経っても人気は加速し続ける一方で、この先この作品を越える作品ってあるのかな…っておもいます。

無いでしょうね。

悪いとこなしだと思います。
だから10点つけました。

自信を持って万人に勧められる作品です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-19 00:04:11] [修正:2010-06-19 00:04:11] [このレビューのURL]

10点 BASARA

「悪いことを悪くとるのは当たり前です。良い方にとってこそ勝負師ではないですか」(第8巻)
「あなたは賢く時代を見つめなければ。なぜならあなたは母親だから。わかりますか。国の未来を築くのは救世主でも王でも英雄でもない。母親という人たちです」(第9巻)
「憎しみはね続かないんですよ。生きて歩いて人に会い、誰かを愛せば消えてしまうんですよ」(同上)
「こんなことは大した事じゃないんだよ。OK?」(第11巻)
「たとえそれぞれ違う場所で朽ちて死んでも、あなたや彼らが必ず全力で道を行く時、心と心は同じ場所にいます。同じ時代に同じ夢を追ったそれはまた運命です」(第20巻)
「支配されるな!簡単に乗せられるな!だまされるな!己の望むことを!己の望むように!己で考え!己で選び!己で決めろ!己を信じ、己を頼め!己の意思で、判断で、誇りを持って己の為に生きよ!」(第23巻)
「“心を受け取る"と書いて“愛"と読むのだす」(同上)
「オレは多分、今ここでこうする為に生きてきたんだよ」(第24巻)
「オレもお前もタタラに会えて良かったな。同じ時代に生きて良かった」(同上)
「あなたも女ならわかって下さい。女の幸せは愛する人と一緒になって子供を産むことでしょう。あなたもその様に生きて」「わからない。それは動物にでも出来るよ。あたしはあたしにしか出来ないことをやる」(第26巻)
「オラは魚を釣って食べるだす。それはフツーだべ。魚もオラを食べていいのだす。それもフツーだべ。けんど戦とかそういうのは、フツーじゃなくて気持ち悪いのだす。しなかったらしなくていいのだす。宝とは命だべ。魚を釣って食べることのできる命だべ」(第27巻)

私はこんなに次々と名セリフが挙がる漫画を他に「うしおととら」くらいしか知らない。
文明が滅びた未来の(驚き)日本を舞台によくもまあここまで胸踊り、感動の嵐を巻き起こす物語を紡ぐことができたなと感心することしきりである。登場人物はちゃんと名前が付いていて、セリフのある人だけでも100人以上(!)。主役は一応タタラであるところの更紗なのだが、私はこの漫画の主人公は他に朱里・揚羽・浅葱の3人がいて合計4人が「主人公」だと思っている。
中でも個人的に注目は「揚羽」の生き方。昔予言された「命を賭けられる運命の女」を捜し求め、それを更紗だと信じて守り続け、土壇場の王城地下では城の崩壊を遅らせるために誰にも知られることなくたった一人で戦い続けた姿は強烈な印象を残す。城が崩壊した後、揚羽を捜して泣きじゃくりながら必死に瓦礫を掘り起こそうとする更紗の姿が痛々しい。番外編を読んで最後まで迷い無く生きられたのだと知って少しだけ救われた。
その番外編も珠玉の名作ばかり。特に「KATANA」のラスト、100年以上前の戦いを「銀杏の木が実をつけるのには時間がかかること」とに喩えて
「いつか熱い想いを胸に 4本の宝刀を持って 弱き者たちが立ち上がるだろう」と結んだシーンで・・・・・・泣いた。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-06-18 23:59:34] [修正:2010-06-18 23:59:34] [このレビューのURL]

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