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8点 聲の形

[ネタバレあり]

友情、愛情、信頼、敬意。“絆”という言葉にはこれらの美しいイメージが付与されている。人と人のつながりこそが世の中を動かす以上、それらの絆が美しければそれに越したことはないし、実際にあの震災において未曾有の大災害を前に被災者の方々が見せた絆のあり方は、恐るべき悲劇の中においても確かな希望を感じさせるものがあった。以来メディアなどでを通して絆という言葉は盛んに耳にするようになった。
だが、人と人の関係の有り様は複雑なものであり、絆もまた決して美しいだけのものではない。憎悪、不信、蔑視。そんな醜い感情に基づくいじめや差別…。それらもまた絆というものの一つの形には違いない。

身体障害者やいじめなどのデリケートな話題を扱い、その描写の生々しさで読み切り掲載時から話題になった本作『聲の形』は、そんな絆というもののあり方について考えさせてくれる作品である。
退屈な日常を持て余していた悪ガキ石田将也のもとに、ある日とびっきりの非日常がやってきた。転校生の西宮硝子、見た目はごく普通の可愛らしい女の子だが、先天性の聴覚障害により耳が殆ど聞こえず言葉の発音もままならないため、もっぱら筆談と手話で周囲との意思疎通をはかろうとする少女。
「変な奴!!」
最初こそ障害者差別は良くないとか手話をみんなで覚えようとか言っていた周囲も、意思疎通の煩わしさから次第に彼女を内心疎ましくおぼえ始め、そして遂に将也がリーダーとなって硝子へのいじめが始まった。次第にエスカレートするいじめ、先生は見て見ぬふり、同調するクラスメイト達。しかし将也の度が過ぎた行動が原因でいじめの事実が外部に露見し問題化しそうになった途端、今度は先生も含めた周囲が示し合わせたように将也一人に責任を押し付け、因果応報とは言え更に過酷ないじめの標的となってしまった将也。かつての友人たちが掌を返す中、硝子は……?

読切版では短いページ数にこれら生々しく濃厚なドラマが盛り込まれ、終盤では小学生時代の凄絶な痛みを経て高校生となった将也と硝子が再会し、かつてひどく傷つけ合った二人がそれでも和解の端緒を探るように向き合う所で物語は閉幕、これはこれで未来へのほのかな希望を予感させる美しい幕引きだった。

そして大いに話題となった読切版の反響を受けて始まった連載版では、上述の読切版のプロットは単行本1巻でほぼ終了し、2巻の冒頭では再会した将也と硝子は手話を通じて和解する。胸糞悪いいじめ描写が延々続くのを見せられるのも嫌だったが、それにしても展開が早くないかと自分は当初思っていた。
少年時代のいじめをめぐるトラウマがきっかけでひどい人間不信に陥り自殺まで考えていた将也が、硝子と和解することで人間不信からも次第に脱却、周囲との関係性も取り戻し、硝子との絆も深めるリア充ライフを今後延々見せられる……、それはそれで悪い気はしないが、しかし、なんか違わないか?そう思っていたのである。えぇ、まぁ確かに3巻終盤の強烈なニヤニヤ展開とかを見せつけられるとすごく幸せな気分になったりはしたのだけれど。
したのだけれど、やはりそう甘くは無かった。基本静かな雰囲気の中においてもジェットコースターのように物語が上げて落としてまた上げ更に落とし…と展開の起伏の激しい本作は、和解後も決して読者を飽きさせない(≒安心させない)つくりになっていたのだ。
確かに将也と硝子は友人となり、両家の家族間のわだかまりもそれなりに解消され始めた。しかし、かつてのいじめは将也と硝子だけでなく周囲のクラスメイトも巻き込んだ広範なものだった。いくら将也と硝子が二人だけでわかりあおうと、いじめという周囲の共犯の記憶が解消された事にはならない。
過去は二人を拘束しつづける。かつてのクラスメイト達との再会という目に見える形で過去の痛みが将也とそして硝子を襲う。いじめという共通体験を通じて紡がれた絆、容易にはほどけない、かくも胃が痛くなるほどに煩わしい絆。

本作が出色なのは、そんな人間関係の美しさや煩わしさを、漫画というメディアの力を大いに活かすよう執拗なまでに視覚的に訴える形で表現している点である。だからこそ読者の多くは感情を大いに揺さぶられ、将也と一緒に胃が痛くなりもするのだ。
たとえば将也が人間不信に陥った事を表現するために将也の視界に入る人間の多くは顔に大きくバツ印が付けられる。いかにも記号的な漫画表現だが、将也と友人になったクラスメイトからバツが消えたり、バツ印の間から表情を覗かせるかつてのいじめ仲間とか、単なる記号表現を超えた面白い演出の妙にもなっている。
他の漫画と比べても人物の表情描写にねっとりとした生々しさがあり、上述のバツ印演出も相まって非常に“目の離せない”作品に仕上がっているのだ。
ヒロイン西宮硝子はそんな本作の魅力をまさしく体現している。聴覚障害持ちのため、感情表現にせよ意思疎通にせよセリフにはほとんど頼れない彼女の示す様々な表情、所作、視線、そして手話。(障害者設定を安易に記号表現的に使用して良いのかという是非論はあるにせよ)硝子の存在がこの作品を視覚メディアたる漫画としての魅力に大いに貢献していることは疑いない。
タイトルが「こえのかたち」であり、「こえ」という言葉に、声ではなくわざわざ旧字体の聲を使用しているのも、視覚に訴える効果を狙ってのことだろう。(“聲”という字には“耳”と“手”の意が含まれている。)

硝子と和解するも紆余曲折を経て再び硝子以外との周囲の絆を自ら閉ざそうとする将也。夏の日、そんな辛い現実から逃れるように共に二人は夜空に上がった打ち上げ花火に見入る。一方その頃、絶交した友人達や、かつてのいじめの共犯者たちもまた同じ夜空の下、同じ花火を見ていた…。

時に騙し合い時に傷つけ合い、絆とはかくも煩わしい有り様を見せる。それでも、共に生きていかざるを得ぬ以上、いつまでも見ぬふりをして済ませることはできない周囲との関係。果たして彼らの想いの聲は、今後どのような形を結ぶことになるか。今非常に先が気になる作品だ。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-07-06 03:05:06] [修正:2014-07-13 00:10:35] [このレビューのURL]

7点 寄生獣

いろいろと命について考えさせられる漫画です。
人間も自然っていう大きい括りで考えたらちっぽけな存在なんだなーって。
とにかく読みやすい、グロいところもあるけどストーリーがどう進むかの方がずっと気になります。
あとミギーがかわいい、ミギーとのおかしな友情も涙を誘います。
全10巻っていう巻数もちょうどいいんではないかと。
終わり方もきっちり手を抜かずに終わってくれた感じでよかったです!

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-05-30 19:59:50] [修正:2014-05-30 19:59:50] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

今まで読んだ漫画の中でダントツで一位です
特に8.9巻あたりなどはとても心に残っています
読み終えた後などはなにも言えないぐらいの満足感に包まれるはずです(私はそうでした)
是非一読を

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-04-06 16:11:31] [修正:2014-04-06 16:12:18] [このレビューのURL]

「影の努力」という美しい言葉。
「努力」の大切さを教えてくれたマンガ。
もう随分と古いマンガだけに、キャプテン以降、野球マンガとして面白いマンガはいくつも出て来たと思います。
ただ、「努力」の大切さを教えてくれるマンガでキャプテンを超えるものは出て来てないのではないでしょうか?

墨谷二中野球部のキャプテンの交代とともに、谷口→丸井→イガラシ→近藤と主人公が変わって行きます。
マンガとして主人公が変わるスタイルは冒険的なスタイルであり、いずれの主人公も魅力的でなければ成り立たないのですが、各キャプテンに個性があり、良いキャプテンになるべく成長していく姿が素敵です。
(主人公が何人も変わって行きながら成功したマンガは他にはジョジョの奇妙な冒険くらいではなかろうか。)

子供に読ませたいマンガの一つです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-03-26 23:19:32] [修正:2014-03-26 23:19:32] [このレビューのURL]

フランス革命を扱った現在でも唯一の長編名作漫画
少女漫画らしく恋愛の分量は多いながら(ちょく
ちょく恋愛パートに行く)、この作品の凄さは
歴史漫画としての要素が傑出して、この時代を扱う漫画
として唯一のものと言えるからではないか。
読み易さ、わかり易さ、詳しさ、史実としての公平さ(マリー・
アントワネットが主人公格だから美化要素はあるにしても、
彼女の非難されるべき部分もちゃんと描いている等)がありつつ、主人公のオスカルら架空人物を絡めながらの娯楽性も
しっかりしていて、悪い歴史漫画にありがちな事実並べてる
だけには決してなっていないのが大したものかと。
フランス革命を学ぶだけではなく、イメージ
し肉付け出来る漫画ならではの素晴らしさは普遍
だと思います。

絵柄も少女漫画的なものながら画力は高く、個人的には癖が少なかったですね。オスカル、マリー・アントワネットらは普通に美しく思えますし。フランス革命時代と思えばイメージにも
一致するのも有利な点でしょう。欠点を感じたのはアクションシーン、合戦の迫力が足りずにそこが盛り上がらない点でしょうか。そこは時代を感じた部分です(当時の画力水準はあるでしょうが)。あとは恋愛パートで詩のようにしつこく耽美部分があり、そこは食傷してしまいました。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-03-16 05:39:40] [修正:2014-03-16 05:39:40] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

クセが強く読む人によって好みが別れる漫画で、ダメな人は本当にダメだと思います。

正直ストーリーといえるものはありません。ひたすら能力バトルをしていますが、そのバトルが面白いです。
この漫画に影響されのちに少年漫画で能力バトル漫画が爆発的に増えました。
能力の可視化という今では当たり前の事も、この漫画の影響無しには語れないと思います。
賛否はあるけれど(たとえ当時だとしても)革新的な事は評価されるべきだと思います。

個人的にはコマ割りが素晴らしいと思います。映画を見ているような臨場感を味わいました。
このコマ割りに慣れてしまうと他の漫画のコマ割りが物足りなく感じてきます。

系統としてはキン肉マンや男塾のようなノリと勢いで進む漫画です。
色々細かい矛盾はありますが気になりません。
理屈っぽくて矛盾が許せない人は読まないほうがいいと思います。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-02-25 22:42:33] [修正:2014-02-26 20:39:19] [このレビューのURL]

作者のやり方が上手と思った作品。

日常ギャグと鬱の要素が混在しており、
それらがほぼ交互に展開される。

マズい料理を食べた後に美味しい料理を食べると
より一層おいしく感じられるように、
明るい話を読んだ後に暗い話を続けて読むと
精神的負荷も倍増する。

その後明るい話を読んでテンションが上がり・・・・・・・の繰り返しで
心が揺さぶられるという謳い文句も納得できる。

最終回はバッドエンド。
読後は暗い気持ちになる。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-02-15 22:31:46] [修正:2014-02-15 22:31:46] [このレビューのURL]

9点 寄生獣

1巻から10巻まで一気読みしましたがとても面白かったです。
僕はあまりネタバレをしたくない人間だからあまり詳しくは言いませんが
物事を合理的にしか考えることの出来なかったミギーが9巻で言った台詞と最後の新一と後藤の戦いはとても感動しました。
少し哲学的な所もあり難しいと思われてる方もいらっしゃるとは思いますが大変読みやすい内容ですので是非読んでいただきたいです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2014-02-14 23:28:23] [修正:2014-02-14 23:28:23] [このレビューのURL]

10点 寄生獣

[ネタバレあり]

絵があまりうまくない、って書き込みありましたが
自分にとってはこの作者さんは絵が相当うまいなぁと思います。
手の巧妙な描写、体の構造の描写、体の動き、角度感のある
飽きないアングルのつけ方などなど素晴らしいです。
グロテスクな絵も激しい戦闘描写も人体構造をよく把握してないと
なかなか描けないし、作者さんは絵の才能も十分相当あると思います。
でもキャラの表情は固いとは思いますが‥

この漫画を読んで、つくづく生きるということは他の命を
犠牲にしてしまっているんだなぁと感じます。
哲学的な漫画でもあるし、戦闘シーンもハラハラしますし、
こんなに斬新的で心に強く残る漫画はないですね。
岩明均さんは天才だと思います。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2013-12-02 01:19:27] [修正:2013-12-02 01:19:27] [このレビューのURL]

8点 幽麗塔

 江戸川乱歩の大人向け猟奇倒錯小説が好きな人にはストライクだと思います。さらに罠いっぱいの塔の中に財宝が、なんて設定も付いてくるのでなおさら。時代も昭和二十年代後半と微妙に近代化が進んでいない時期を設定していますので、隔離された島、村の忌むべき因習とかそういったものも織り込んできたりします。
 しかしなんといってもこの作品の中では性的倒錯が異彩を放ってると思います。男装の麗人だけど実は当時では社会的認知が進んでなかったであろう性同一障害に悩まされるテツオ、敏腕検事として圧倒的権力を持つ丸部の一言では言えない特に妹への嗜好。ついでに流されて女装した結果やや覚醒しつつある天野、ガチショタ刑事山科など、主なところだけピックアップしてもお腹いっぱいです。
 また、晩年の江戸川乱歩を彷彿とさせる土蔵で執筆する小説家が出てきたり、妹を深窓の令嬢に育て上げて、普通の生活には耐えきれなくして見えない鎖でさらに縛り付ける丸部の闇の深さの演出など、小技があちこちで効いているところもこの作品を重層的に面白いものにしていると思います。
 今後が楽しみです。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2013-11-04 01:23:22] [修正:2013-11-04 01:23:22] [このレビューのURL]

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