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総レビュー数: 52レビュー(全て表示) 最終投稿: 2008年10月09日

7点 MONSTER


MONSTERという題名を初めて見た時は、怪物が出てきてそれを撃破していく戦闘漫画かと思った。

読み進めていくうちに、異形の怪物や超能力を持った敵は出てこないが、この漫画は主人公が目に見えない怪物と戦っている漫画だということに気がついた。

各話がそれぞれまとまりのある内容となっており、その都度出てくる登場人物と主人公のやり取りで完結するが、そのピースを集めるとモザイク画のように一枚の絵画として見事に浮き上がってくる。

そのような浦沢直樹の得意とする手法によって、主人公の医者としての葛藤や、周りの登場人物との日常、冷戦という社会情勢のもたらした闇までが繊細に、かつ緻密に描かれている。

しかし、話が壮大なわりに、ラストが淡白になりすぎている印象を受けた。冷戦という状況が生み出した闇の部分を、急がずじっくりと、最後まで描いてほしかった。

ヨハンという魅力的な敵キャラクターのもつ雰囲気を途中まで見事に描けていたので残念である。ラストが性急になったせいか、多少難解な要素が残ったことも惜しいことであった。(作者としては同種の漫画に起こりがちなマンネリ化を懸念したのであろう。)

絵は丁寧であるが、好き嫌いは分かれそうである。慣れれば気にならない程度ではあるが。

難解な要素は残ったが、緻密な登場人物描写や、浦沢直樹の得意な数話完結型のモザイク画的な構成は見事であった。以上より、良質で夢中になってしまう漫画という、7点の評価とした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-10 23:02:04] [修正:2008-10-10 23:02:04] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]


基本的には、オタク文化を消費する人々の日常をコミカルに描いた青春群像漫画である。また、登場人物に一般人的な視点を持った人物がいるので、オタクでない人にも楽しめるように配慮されている。むしろ、一般人にこそ楽しんでほしい。

この漫画を読んで思ったことは、オタクといっても普通に青春に恋い焦がれ、また仲間と一緒に何かに熱中したがっているということ。

しかし、何より感じたことは、彼らに対する羨望だった。私自身、大学で生活を送っている身であるわけだが、彼らの一見淡々とした日常生活でありながら、密度の濃い人間関係を読んで、正直今の自分の現状が虚しくなった。淡々としつつ、何かをやるときはみんなでブータレながらも、一生懸命やる。どこか懐かしい自分の高校時代のノリ。うらやましい。大学という人間関係が希薄となりがちな領域で、うまくやっている人間は少数派だろう。彼らはそのマイノリティーに属しているのだ。

もちろん、この漫画にオタクな人々のすべてが描かれているわけではないだろうが、エッセンスは詰まっているであろう。上記のオタクの姿勢には、オタクは特別じゃない、他の人たちが野球やサッカーなどに打ち込む対象が、たまたまオタク文化だっただけなのだ、という事実が描かれている。そこには、オタク自身の自慰的な欲望に終始する、いわゆるオタク漫画にはない魅力がある。その点こそが、一般人が楽しめるエンターテイメント性をこの漫画が備えている理由であろう。

後半になるにつれて、ドラマチック性は薄れていくが、哀愁漂う大学生活をリアルに描けていて、とてもよかった。斑目は最後まで報われないキャラだったが、彼がいたおかげでどれだけ私の心が救われたことか。

私の中ではむしろ、後半にいくにつれてこの漫画がよくなっていった。初期メンバーの卒業によって、様変わりするげんしけんの内実。移ろいゆく季節とともに、哀愁が感じられた。その点が、読後に何ともいえぬ哀しさが感じられた理由だと思う。会員同士の恋愛模様も含めて、しめくくりがうまかった。

1巻から9巻まで一気に読むと、いっそういい漫画だと実感できた。私の中では、物事の考え方が変わったりするほどの力をもった作品。オタクの認識だけではなく、自身の今後の大学生活をどうするのかということも考えさせられた。何度も読み返そうと思ったし、大学生にはうってつけの漫画。9点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-10 22:25:44] [修正:2008-10-10 22:25:44] [このレビューのURL]


最初のほうは独特な雰囲気を醸し出す絵と、不良であると同時に個性ある設定の登場人物が、今までのギャグ漫画にはない、渋い味わいを出していた。初めのほうはかなり笑わせてもらったし(4巻の樹海編はかなり面白かった。)、暇をつぶすには最適の作品であった。

しかし、途中からマンネリ化がひどくなり、次のページの展開が予測できる漫画となってしまった。もちろん、ギャグ漫画はマンネリ化を防ぐことが難しいジャンルだ。なぜ、5巻程度でまとめた作品としなかったのだろうか。

原因は編集部の延命措置にあるとしか考えられないが、適当な作者を演じている野中英次(彼は自らも戯画化したものとして演出している。)が、例えば「昼寝をたっぷりしたくなったから連載はやめにします。」とかなんなり理由をつけて、もう少しコンパクトに自らの作品に幕を閉じていたとしたら、そのこと自体彼の漫画を特徴づける結果となったはずである。

それゆえ、惜しい漫画ではあるのだ。前半部だけならギャグ漫画としては異例の高得点がつくだろう。後半部のだらだらさえなければ・・・以上より良質の漫画、6点という評価とした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-10 19:26:31] [修正:2008-10-10 19:26:31] [このレビューのURL]


中には面白いギャグもあり、はじめのほうはさらっと読む分には問題なかったように思う。入部テストでいきなり能力のゲージが飛んでしまい、こりゃ先が思いやられるなと嫌な予感がしたが、その通りの残念な結果となってしまった。

中盤からは、たまにヒットするギャグ以外にいいところが書けないぐらいに、特筆すべきことのない、漫画となってしまった。

主人公とヒロインとの関係も深みがなく、またここでギャグを入れるか・・・と思うような場面でギャグが多い。おきまりのパターンをおきまりの様に書いていれば、まだ普通の漫画として評価することもできるが、見ていて疑問に思う場面も多々あったように思われる。(このような書き方になったのは、途中から本当にパラパラとしか読んでいないため、記憶が定かではないからである。)

真面目に恋愛なり、野球に打ち込む姿なりを、正面から描いてこそ少年漫画だと思うし、そうあってほしいものである。この漫画は、ギャグ漫画か野球漫画かがはっきりとしていないところが、長所であり、同時に最大の欠点となってしまっている。また、真面目にとりくむ姿を、茶化してしか描くことのできない作者に疑問を感じた。

少々感情的にいらついた漫画なこともあって、つまらない漫画、2点の評価とした。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-10 19:08:15] [修正:2008-10-10 19:08:15] [このレビューのURL]

4点 BLEACH


話が学園ものの体裁をしていた頃は面白かった。
この手の漫画にはよくある性格の登場人物が多いことに加えて、ありきたりの容姿や設定ではあるが、軽く読み流して楽しむには最適の漫画であった。適度なギャグや、戦闘漫画としては比較的さくっとした長さの戦闘のために、話がテンポよく進んでいたからだ。

しかし、ソウルソサエティ編から、話が壮大になり始めた。以前のようにストーリー自体に深みがないままに、である。

そのため、このような展開になる漫画の必然的帰着とも言えるであろうが、能力の爆発的上昇や、敵の登場人物の安直ともいえるであろう、過去の説明的な延々とした羅列に終始してしまっている。また、お決まりのように容姿や、着ている衣裳がどんどん派手になり、読者にこびへつらうかのようなサービスが始まった。

さらに、他のレビュアーも述べているが、この作品の各話の題名や扉絵に象徴されるように、作者による、自身のセンスを誇示するかのような雰囲気がとても鼻につくのである。

この雰囲気が好きで読んでいる人がいるのかもしれないが、私から見ると、「俺ってさぁ、英語もわかるしぃ、洋楽も結構詳しいんだよね、どうよ、すごいっしょ?」と暗にナルシズムに浸っている感じがするのである。このことは最近の漫画家によく見られる現象ではあるが、根底にある「漫画=オタク的」という社会に見られる偏見(江戸時代には浮世絵として社会的に広く読まれ、認知されていた。)に対する、引け目が背景にあるのではないだろうか。

多少話が脱線してしまったが、総じてみると読めない漫画では決してない。しかし、熱中して読める漫画でもない。週刊少年ジャンプを読むときにさらっと読む。それが、この漫画を読むスタイルではないだろうか。まさに4点の評価の基準である、ちょっと微妙だけど時間つぶしぐらいにはなる漫画、という評価を体現するかのような漫画である。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-10 17:22:54] [修正:2008-10-10 17:22:54] [このレビューのURL]


囲碁という既存の漫画が扱ってこなかった題材をテーマに、少年誌という媒体に掲載された意欲作。

一時期(今はもう下火となってしまったかもしれないが)、小中学生の間で空前の囲碁ブームを引きおこすこととなり、社会的にも大きな影響を与えた漫画である。

原作者のほったゆみと、作画は卓越した画力で名高い小畑健のコラボレーションという時点で、面白い漫画の確変到来といった感じである。その期待を裏切らない秀作だ。

主人公とそのライバルの対決、葛藤を中心に、魅力的な性格の佐為や他の登場人物との友情や、ユーモラスな日常も見事に描かれている。主人公と同年代の頃この漫画を読んでいたこともあって、素直すぎない、年頃の子どもである主人公が好感の持てる主人公像であった。また、ライバルも家柄による苦労が描かれており、環境の中で悩む姿は共感が持てた。何よりの魅力は、囲碁のことを知らなくても楽しく読めるということであろう。囲碁をとりまく、上記のような登場人物の繰り広げる人間模様を見事に描けていたからだ。

だが、院生となったあたりから面白さに陰りが見えるようになった。話が大きくなりすぎたことに加えて、囲碁の対局シーンがメインとなり、囲碁のことに詳しくない読者は取り残されてしまったからだ。佐為編までで終わっていれば、もっと評価が高くてもおかしくないだろう。

上記のような欠点もあるが、全体として少年誌にふさわしい、さわやかな良い漫画であることは間違いない。周囲に親しい小中学生がいればおすすめしたい漫画である。(もちろん大人でも楽しめるが。)人によっては生活に影響が出るほど、夢中になって読むことのできる漫画。8点。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2008-10-10 10:25:19] [修正:2008-10-10 10:25:19] [このレビューのURL]

7点 屍鬼


原作の小説は読んでいない。

スリリングな内容を、見事な画力が拍車をかけて面白い内容となっている。むしろ、原作を読んでいないほうが楽しめる漫画なのかもしれない。村の奇妙な事態が、徐々に明らかになっていき、先の読めない展開となっているからだ。

話は、それぞれの登場人物の行動にスポットを当てる形で、色々な角度から描写されている。過疎の村での生活に登場人物がどのように感じているのか、村の事態にたいして、それぞれの人物がどう対応し、何を感じたのかが淡々と、かつ繊細に描かれている。

話の展開は3巻から急展開を見せるが、先の展開が読めず楽しみである。

絵は、キャラクター描写は、藤崎竜という作者自体、好き嫌いの分かれる絵だと思うが、慣れてしまえば問題ない。少年誌という媒体を考慮しても、ややデフォルメされた絵のほうが人気が出ると考えたのかもしれない。背景のきれいさは見事。過疎の村の描写が、哀愁漂う形で描かれている。

全体的に、安定した原作を背景として、それをアレンジしつつ消化する藤崎竜の魅力が発揮された良作と言うことができる。これから、さらに注目して読んでいきたい漫画である。夢中になって読むことのできる漫画。7点。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2008-10-10 10:03:27] [修正:2008-10-10 10:03:27] [このレビューのURL]

6点 ONE OUTS

[ネタバレあり]


このサイトでの、空前の高評価野球漫画であったため、手に取ってみた。

なるほど、既存の野球漫画へのアンチテーゼとして描いたと帯コメントで作者が述べるように、他の根性もの野球漫画への違和感を集積したような漫画であった。

まず、第一に他のレビュアーの書くように、絶対的強者である主人公がいる。主人公は言葉や独特の理論で打者を翻弄する。これを面白いと思うかどうかは、この作者の持つクセのあるセリフ回しや、構図をどう受け止めるかであろう。

たしかに主人公が小賢しいという意見があり、最もな意見であると思う。しかし、それではこの漫画の表層を読んだにすぎない。作者は意図的にそう描いたのではないだろうか。小賢しい主人公をあえて描くことで、既存の野球漫画が備えている、努力と根性だけで何とか勝利を重ねていくという姿を「分かりやすく」批判しようとしたのではないだろうか。

ではなぜ6点としたか。

それは後半に進むにつれて、序盤の勢いがなくなっていったように思われたからだ。上記のように小賢しい主人公は問題ではないと私は考えるが、後半からあまりに話がぶっ飛びはじめる。特に主人公がボコボコに打たれた後の展開は強引さを感じた。作品自体強引と言われればそれまでだが・・・個人的に彩川オーナーとやりあうところまでが一番面白かった。

また、セリフ回しや構図がパターンの似ているものが多く、それに対して単調さを感じた。

以上より、たしかに斬新な漫画であることは認めるが、佳作にとどまる漫画ではないだろうか。もちろん、この漫画は好みの分かれる漫画であることは間違いない。嫌いな人も多そうだ。だが、エンターテイメントとしてさくっと楽しむ。それがこの漫画を楽しく読むスタイルではないだろうか。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 23:43:40] [修正:2008-10-09 23:43:40] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]


少し前に、図書館から母が借りて放置されていたこの漫画を発見し、読み始めた。はじめはコマ割りが昔風で読みづらそうだなと思ったが、一気に読破してしまった。

この作品の何が一番良いのかといえば、巻末にある対談にも書いてあったと記憶するが、本来悲壮感たっぷり、涙なくしては語り得ないような、波乱万丈の実話を、笑いありでギャグ風にさらっと書いてしまっていることである。

たしかに、コマ割りは昔風に正方形に区切られ小さく、吹き出しも多くテンポが悪いことは否めない。

だが、ネタが面白すぎる。最近のギャグ漫画は主人公がめちゃくちゃなことをするばかりで、ついていけない漫画が多い。しかし、この人はのっけから山の斜面で首つりをしようとして、そのまま寝てしまい、死ぬのをためらいホームレスになるという、トンデモ話をクールに、かつ事実報告的に描くので面白い。本当に面白い話というのは、筆者が笑いながら描いてはいけないのだ。(この話も、本来涙ながらには語りえないであろう・・・)

欠点はあるものの、今のギャグ漫画が忘れてしまった精神が、この漫画にはある。一巻完結で図書館にあることも多いこの漫画、お手頃な本であると思うのでぜひ一度手に取ってほしい。

続刊もあるようなのだが、残念ながらまだ手に取っていない。あくまで、「失踪日記」だけの評価として読んでいただきたい。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 23:10:39] [修正:2008-10-09 23:10:39] [このレビューのURL]

7点 ONE PIECE

[ネタバレあり]


この漫画はまさに王道漫画そのものである。

常に前だけを見つめて苦しみながらも敵と戦い、勝利して、仲間と共に成長していく。逆境の中でも決してあきらめない。掲載されている週刊少年ジャンプの「勝利、友情、努力」の三大テーマを盛り込んだ秀作である。いや、だったと言うべきか。

なぜ過去形か。

もちろんその三大テーマはブレていない。特に、前半部(偉大なる航路に出るところ辺り)までであれば、歴代の週刊少年ジャンプの作品群の中でも1,2を争うほど、ジャンプの求める理想像を追求し、かつ面白さを兼ね備えた漫画であったであろう。私自身とても熱く読むことができ、毎週欠かさず楽しみに読んでいた。登場人物の背景描写が丁寧で、戦闘での能力の応用もなかなかに秀逸であったからだ。特にサンジの話は魅力的だった。

だが、途中からテンポが著しく悪くなりはじめた。ひとつの節というか章というか、の戦闘が長くなる余り、登場人物の描写や主人公たちの住む世界の奇妙で興味深い世界観の描写がいい加減になった。そのため、冒険をしているという感覚がなくなってきたのである。偉大なる航路を旅する主人公たちの面白い冒険が読みたかった。

また、戦闘も能力の二段化(このあたりから読まなくなったので詳しくはないが。)や、七武海がゴロゴロ出てくるようになってから、巻数が増えていくにつれて不可避的に生じてくる問題ではあるが、能力のインフレ化、それに伴う戦闘の大味化で、戦闘の持つ緊張感が薄れてきた。

ゆえに、序盤の爆発的エネルギーは最近では鳴りをひそめ、看板漫画として、編集部の給油抜きには走れないような漫画となってしまった。よって前半は9点、後半は4点で、全体的に見て7点、という評価とした。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2008-10-09 22:33:05] [修正:2008-10-09 22:33:05] [このレビューのURL]