「ガクちゃん」さんのページ

総レビュー数: 47レビュー(全て表示) 最終投稿: 2009年01月24日

[ネタバレあり]

アニメージュ連載時に読んでいた時はどうにものめり込めなかった。
当時から大の宮崎ファンだったのだけど、ストーリーぶつ切りでナウシカのキャラクターが自分にとっては魅力がなかった。

とは言え、まとめて読むと、一コマ一コマの絵画的な美しさと、映画的な叙情性に感嘆し、ラストのハイテンション、世界観の奥深さにわけが分からず魂が震わされる。

???という疑問から再読すると、1994年に長かった連載がようやく終わったこの物語の先見性に驚く。
「私達は血を吐きつつくり返しくり返しその朝をこえてとぶ鳥だ!!」
と言ったナウシカの言葉は、当時著者が真正面からこの難問ともいうべき課題を前にのたうちながら出したメッセージなのだろう。
地球温暖化や環境破戒が日常的に語られる現代にこそ光放つ珠玉の名作。

作者には既成漫画の影響皆無であり、異色な肌触りであること。とっつきにくさと難解さででかなりの人がそこから読み手として脱落するのが予想される。
何度読んでも読みずらさを感じるが、それは作品の濃度の問題であり、評価をさげるものではない。

他の漫画と完璧に一線を画しており、作品そのものが採点など拒否している。

漫画の一つの到達点にして、ある意味王道。

ナイスレビュー: 3

[投稿:2009-01-23 20:57:15] [修正:2009-01-26 23:24:19] [このレビューのURL]

7点 ブッダ

巨匠は先駆的にさまざまにチャレンジしている。
まずこの事実に驚嘆する。
この時代に宗教を題材にエンターティンメント作品を漫画で描ききる!
エンターティンメントながら、宗教の崇高な精神からその本質という部分で外していない。
差別社会をシニカルな視点から批判している社会性が痛烈である。
ブッダは作品の出来の割に語られることが少ないが、もったいない。ブッダが一人の人間として悩み抜く姿を描いている部分が素晴らしい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2010-01-15 22:38:02] [修正:2010-01-15 22:38:02] [このレビューのURL]

町道場の師範を道場破りの流れ者があっけなく破る。
「しょせん道場剣法……実戦の役にたちもうさぬわ」
流れ者もその後、鎖鎌の尾行者にこれまたあっけなく敗れる。
とかげを山鳥が喰らい、山鳥をいたちが狩り、
しかし獲物はテンに横取りされる自然の摂理になぞらえる
こういった丁寧な映画的描写は最近の漫画ではほとんど見られなくなってしまった。
作者は壮大なテーマのまだ一断片しか描いていないという。
ならばそのテーマとは何か?
差別の本質とか、生きる厳しさという事ならすでに描ききっている。
それでは???
自分が思うに人が生きていくうえでの営みそれぞれの曼荼羅図を描ききろうとしているように思える。
すごい作品というのは認めるが、それを読むほうはつらい。カムイ伝と言いながら、内容は正助伝だったり、他の人物だったり。
曼荼羅故に飛躍がなく、息苦しい。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-03-22 10:46:24] [修正:2009-03-22 10:46:24] [このレビューのURL]

酒が好きである。しかしその世界の奥深さには無知な酒のみである。
本作を読んでますます酒が好きになったが、安酒でなく吟醸を味わってみたいと思うようになった。
吟醸とは何々とかうんちくを語るだけでは興味は惹かれない。
酒造りに賭けた人々の思い、有機農業に賭けた人々の思いなど、魅力的な導入があってこそだ。

作者はよくもまあ、このような地味な素材で長編を書きあげたと驚く。
人によってはこの内容であれば、漫画でなくてもいいのではという意見が必ずあると思う。
夏子にとって超えるべき酒を造るライバルなど普通の青年である。ある意味この辺、妙にリアルである。
漫画だからといって強烈なキャラがライバルである必要はない。
蔵元を描いているだけあって、礼儀がとても大切なものとして扱われている。夏子の義姉が里帰りする際、酒販店が月の露を飲んで、杜氏のじっちゃんを迎えにきたおばあちゃんが社長に対して、みながみな、深々と頭を下げる。
こういった小津安二郎的な味付けが、作品の世界観を表現すると同時に、背骨を強固にしている。。

音楽マンガの音楽、料理マンガの料理にあたるのが、本作では酒である。
絵では伝えにくい魅力に作者と読み手のイマジネーションが、色を付け、味を深くし、香りを立ち上らせる。
人の思いの強さが人間の弱さを超えていく。素直に感動できる。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2009-02-08 21:36:03] [修正:2009-02-08 21:36:03] [このレビューのURL]

6点 童夢

著者は映画監督志望で、撮りたかった映画を漫画に置き換えたのだろう。だから題材は実写向きである。大友克洋以前、以降とも表現され、また海外での評価も非常に高いグローバルな大家でありながら、彼の本質は非常にアンダーグラウンド的である。世間が求めるメジャー性を裏切り続け、彼の映画は興行的に成功しているとは言い難い。

本作はそういう世間とのずれがなかった頃の作品。絵のち密さは言うまでもない。この頃の漫画家、アニメーターは中毒になったようにみんな影響を受けた。だから氏のキャラクターから徹底的に距離を置く作風までが奔流になってしまって漫画自体の面白さが半減してしまった罪もある。
あんまりかわいくない少女と中途半端に不気味な老人。リアルに走るとこうなってしまう。白け世代の到達点。絵の凄さで圧倒させるしか表現手法が残されていないのか。読んだ時分、そういう虚しさがあった。
異様な完成度。アニメ映画の「AKIRA」の冒頭シーンを思い出す。完成度を求めて間延びしてしまった。

一度、読み直して再評価したいが、今私の手元にはない。昔友達だった男に貸したままである。その男はアニメ界でカルトな一部ファンに知られる男となった。ますなりこうじという。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2010-01-17 15:15:42] [修正:2010-01-17 15:15:42] [このレビューのURL]

著者は漫画界では先駆的すぎて、むしろ現代でこそ評価を高めるべき一人だと思う。
本作にしろ、秘密探偵JAにしろ、夜明けのマッキーにしろ、今読んでも全然あせないどころか、これら作品に匹敵するアクション漫画はなかなか見当たらないのではないか。
グローバル化するジャパンコミック業界だが、奇をてらわない本当のナショナリティーを感じさせる。
007シリーズのエッセンスがぷんぷんするが、漫画でなかなかこうアクション映画のスケールを巧くは取り込めない。
ただ、作者に限って言えば駄作も相当数ある事も個人的には否めず、だからこそ、良作と思われる本作をもっと多くの人に読んでもらいたいと思う。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-04-14 22:38:54] [修正:2009-04-14 22:38:54] [このレビューのURL]

サルマタ、ラーメンライス、四畳半…。1時期を表現するアイテムって実はとても少ない。なぜだか、それらがとてつもなく懐かしく思い出される日が来る。若いと苦いって字が似ているよなぁなんてそういう味わいの作品。
作者は、おとぎ話の語り部のように戦争を語り、宇宙を語り、そして男を語る。
当時としては、ブ男が主人公の作品はとても珍しく新鮮だった。いや、かっこいいんだけど。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-04-02 22:56:14] [修正:2009-04-02 22:56:14] [このレビューのURL]

読み始めて、こりゃしんどい展開になるわと思った。
なぜなら、主人公の棋士としての力量が最初から図抜けており、壁をかんじさせるものがなかったからだ。
案の定、突如のスランプなんかで無理やりの壁越えみたいなところはあるけど、いやいやどうしてどうして。
絵の質も好みにより食わず嫌いの人がかなりいるのではないかと思うが一読の価値あり。。
独特のテンポ、小気味よさ。ひきずりこまれる。
こんな世界があったのか、という題材は新鮮で力を持つ。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-03-20 20:27:32] [修正:2009-03-20 20:27:32] [このレビューのURL]

ノスタルジーやミステリの味付け、「ともだちの正体」への興味をミスリードしながら、非常にうまくまとめている傑作。
評価が割れているのはミスリードだけでも引っ張っていけるからで、それにより本質を見失っている読者が多いからではないか。
少年時代の悔恨へのけりをつける。あるいは音楽で変わると思っていたのに変わらなかった世界を変えるには。というような登場人物それぞれの“こだわり”というキーワードを切り口にすると、この作品の本質が見えてくる。「20th Century Boy」や「ボブ・レノン」の曲だけは抑えておきたいが、映画などの情報は不要。
ラストに向け、次々とキャラクター達がフツーに返っていくプロットもいい。
21世紀少年ラストに対する批判も大きいが、あれはあれで洒落たラストであり、作者の強烈なメッセージである。
分かれば泣けるし、深い。
そうでなくとも十分面白い。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-02-14 23:38:21] [修正:2009-02-14 23:38:21] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

料理漫画の古典。
ガキの頃、出てくる料理を見ては唾を飲み込んでいた。
その後(と言ってもかなり後)乱立した料理漫画を読んで、ものたりなかったのは、この食欲を直撃する熱さではなかったか。
現ジャンプの画一化してしまった"バトル"とは違い、血沸き肉踊る包丁勝負にくわえ、当時の少年誌でデパート商戦まで取り上げたのは、非常に先鋭的だった。
包丁貴族団英彦との戦いと、カレー編が面白いのは、味平が目指した大衆料理のコックへの道に沿った流れであり必然。
荒磯勝負は派手だが、今だにゆでた魚と焼いた魚が同一と主張する味平の論理に不条理を感じるし、ラーメン勝負も安易に過ぎた。
しかし、本作には、後年の作者が失ってしまったものがすべて詰め込まれている。すなわち、若さと汗が生み出すど迫力。
味平の単純で太いキャラクターには非常に魅力があり、かつてのよき少年漫画主人公の典型である。
「ガーン」の擬音はいまやギャグ漫画でさえ見られないが、真っ向から使っており、それがど真ん中のストレートのようで心地よい。

ジャンプコミックスに載っていた味平ライスのつくり方を文庫版にも収録してほしかった。
しかしジャンプコミックス版の表紙に使われていた味平ライスには目玉焼きがのっていていかにもうまそうだったが、本編にはのっておらず、なぜだろうと今でも不思議である。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2009-01-31 20:59:54] [修正:2009-01-31 20:59:54] [このレビューのURL]

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