「クランベリー」さんのページ

総レビュー数: 37レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年09月12日

作者のデビュー作となる短編集。2012年かなり話題になった短編集だそうですね。
全6編+おまけで、うち半分以上が冠婚葬祭な感じ。
このレビューはなるべくネタバレを避けているつもりですが、鋭い人なら何か察してしまうかもしれません。ご容赦ください。あと偉そうな文章でごめんなさい。


1編目は、結婚式を翌日に控えたとある女性と男性の平凡で平穏なエピソードを描いた表題作。
式を目前にして焦り出す女性と、どっしり悠然と構えている男性。その対比が面白くて読みやすく、「やっぱり前日だとこんな感じなのかな」なんて思いながら読み進めていくものの、話自体は実に平凡。
でも突如として話の全体像がガラッと一変し、「あれれれれ?」と慌ててもう一度頭から読み返してしまう、そんなお話。
実は初めて読んでいる時に妙な違和感をほんのりと感じていたんだけど、それが作者の仕掛けだったのね。で、その違和感の正体が判明してすぐに読み返し、巧妙な仕掛けだったことに気付く。しかも「さーて、どんでん返ししますよー」って話でもなくて、自然な感じでコロッと小気味良く引っ掛かる。
それがまた素敵。そうだよね、よく考えたら式の前日だもんね。タイトルも含めてよく出来ているなあ。
引っ掛かってなお暖かい気持ちになれる良作。

2編目は、夏の暑い昼間のとある幼い少女と父親の平凡で平穏なエピソードを描いたお話。
これもまた話自体は実に平凡。でも読みやすくて普通に読んでいるうちに、また「あれれれれ?」ってなっちゃう。
今度のお話は1編目とは違って特に違和感も無く(一応あることはあるけど)、不意打ちな感じでどんでん返しがやって来る。
斬新な視点が印象的だった1編目とは対照的にこちらは古典的な仕掛けでタイトルも微妙だけど、やっぱり暖かくて心地良くなれる。


ここまで読んで、話の構成の上手さと巧みさ、そして平凡な導入部から突如訪れる鋭いどんでん返しの存在に、この短編集はそういうものだと読者は想定してしまうかもしれない。
でもこの後の収録作は平凡な話が平凡なまま終わる、普通の平凡な短編集。
どんでん返しも盛り込まれてはいるんだけど、あまり効果的に機能しなくて。悪い話ではないのに、最初の2編で読者の中のハードルが上がってしまっているので、特に平凡に感じる。それが残念。

これ個人的には掲載順が失敗したのかなーなんて思ってしまう。
もちろん短編集なので最初の話が面白くなければその後のお話を読んでもらえない危険があるわけで、最初に面白い話を持ってくるのは当然かもしれないんだけど。
でも最初の2編を後ろの方に持ってくれば、全体的にバランス良くもっと面白く読めたかな、と。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2013-01-05 23:36:16] [修正:2013-01-05 23:37:45] [このレビューのURL]

王道の青春漫画にクイズというニッチなテーマを掛け合わせたような作品。
絵は綺麗で、内容も読みやすくそれなりに熱血もしていて面白いし、クイズに関する雑学知識も楽しい。

ただ、登場人物は主人公もヒロインもよくある感じというか、ベタベタでコテコテな学園漫画。
そう考えるとこの作品の面白さって何なのかなってちょっと感じてしまう。

例えば、比較対象として他の方も挙げている、同じく王道+ニッチなテーマの作品「ちはやふる」。
ちはやふるも凄く面白い作品なのだけど、ちはやふるはテーマがカルタでなくてもきっと面白い。あの迸るような熱さはテーマが例えバスケだろうが吹奏楽だろうがきっと変わらない気がする。
でも、この作品はクイズを扱っているから物珍しさもあって面白いように思えてしまう。それは突き詰めればマイナー競技であるクイズというものに対する興味。だからもしこの作品のテーマがよくある将棋とか料理とかだとしたらどうだったかなって。

もちろんそのクイズというテーマを上手く描き出しているのは確かだし、クイズの魅力を際立たせるために敢えてストーリーをベタにしているのかもしれない。
でも私なんかはもっとキャラに他に無いような個性とか魅力が欲しかったなあなんて思ってしまう。
ということで、クイズ漫画としては楽しいけど、青春漫画としては別に普通かなーなんて思ってしまうのでありました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2013-01-05 23:15:18] [修正:2013-01-05 23:28:59] [このレビューのURL]