「クランベリー」さんのページ

総レビュー数: 37レビュー(全て表示) 最終投稿: 2010年09月12日

竜を追い求めてきた作者が、竜ネタをスパッと切り捨てて送り出した珠玉のショートショート。
なんと全33篇とな。

メッセージ性の強かった作者の前2作品とは違い、皮肉や毒は詰まっているけど基本的に無害で、良く言えばサクサク読みやすい、悪く言えば軽くて後に残らない印象。
でも全体の透明感と読後の爽快感が秀逸で、とにかくバランスのとれた良作短編集。
星新一が好きだった人ならものすごくノスタルジーを感じてしまうかも。
それぞれのお話で絵柄が全く違うもんだから、知らずに読むとアンソロジー集にしか見えなくて。そういうところでも読者を楽しませてくれているのかな。
私が特に好きなのは一人裁判の話とグルメvs食生活に乏しい人の話。あと記号を食べる話も。

「ひきだしにテラリウム」というタイトルは収録されているうちの1篇から取られたもの。
このタイトルがすごく素敵だと思う。
ご存知の方も多いかもしれないけどテラリウムっていうのは要するにミニチュア箱庭のこと。言葉から世界の広がりとか連想できそうな気がしません? それがひきだしに詰まっているんですよ。
だから「ひきだしにテラリウム」っていうフレーズは「ポケットの中に夢がいっぱい」とかと同義の響きがして、とても好き。
この本のカバーイラストも、そんなひきだしから楽しいことがたくさん溢れ出てきたみたいで、夢があって良いですよね。

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[投稿:2013-08-08 00:29:22] [修正:2013-08-08 00:29:22] [このレビューのURL]

6点 煩悩寺

煩悩っていうよりはカオスですよね。あ、本能寺と掛けてるのかな。いま気付いた。

他の方のレビューを拝見してなるほどなーと思ったんだけど、前半は主人公の小山田くんが没個性すぎますよね。
結局のところ煩悩寺を形成しているのはお兄さんのチョイスであって、そんなお兄さんのカオスさと小沢さんの天真爛漫な無鉄砲さとでお話がほぼ構成されている気がする。

じゃあ小山田くんは一体何なのさと思ってたら、実は彼もかなり個性溢れるキャラで、途中から小沢さんに対しても読者に対してもグイグイ来始めた。
で、小山田くん要素が強くなってくると他の要素が薄れてくるのは必然なわけで、こともあろうに煩悩寺が少しずつ目立たなくなってきて、何と途中で一旦消滅! それでいいの!?

読んでてビックリしたけど、よーく考えてみると、煩悩寺ってのは単なる舞台で、この作品は要するに二人のイチャイチャっぷりとか初々しいところとかをニヤニヤしながら読むことがメインなのね。
私は煩悩寺のカオスさが好きだったから少し寂しかったけど、後半のニヤニヤまっしぐらも面白かった。
ただラブコメとして考えてみると、後半はあまりにも平穏で盤石な関係すぎて物足りなさがあったかも。本来はそういうまったりした世界観に刺激を与えるスパイスとしての存在が煩悩寺なのにね。

どうでもいいけどお兄さん煩悩寺グッズのためにお金使い過ぎ。少なく見積もっても数百万円、もしかするともう一桁多いかも…。お金持ちなのかな。

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[投稿:2013-08-08 00:09:43] [修正:2013-08-08 00:11:11] [このレビューのURL]