「columbo87」さんのページ

総レビュー数: 284レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月28日

最近の邦訳X-MENならこれが一押し。過去の小学館X-MENもいいけど入手しやすさならこっちかしら。アートもステキ。
ヴィレッジ価格なので薄くてめちゃくちゃ高いが、印刷はその分とても綺麗。まぁ正直そこのコストは控えていいんだろとか思うが。
サイクロプスとエマ・フロスト、コロッサスとキティグレイド。このカップルの来歴を調べておけば、あとは映画とかみてればいい程度のわかりやすさ。
なにが良いってストーリー構成がしっかりしていて良い。ミュータント遺伝子を取り除く「キュア」に纏わる話と、謎の異世界人テロリスト「オルド」の存在がいい具合に映画チックに絡まって進行して行く。
学園を復興すべく集まったX?MENチームの面々の関係性も丁寧に描いてくれているのも良い。
他の邦訳マーベル系は始まりと終わりがよーわからん感じだし、キャラも何を考えて動いているのかよーわからんから、こういうのは新鮮に感じるところ。

全体的に暗い展開ではあるのだが、面白いのはヴィラン「オルド」が、すごい極悪なことをやってるんだけど、どこかマヌケで可愛いところ。
学園の生活やキュアを巡るそれぞれの立ち居地、オルドとのバトルとか色々やっているんだけど、ゴチャゴチャせずにキチンと纏まっている。笑えるところから、クライマックスのド派手なアクションまで、なんつーか数話完結のドラマ脚本、って感じで楽しめる良作。

実際脚本はその畑の人らしい。恋する吸血鬼バフィー、ってやつ。見たこと無いけど。

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[投稿:2012-02-14 14:36:06] [修正:2012-02-14 14:43:42] [このレビューのURL]

7点 ボーン

アメコミってムキムキマッチョのヒーローが戦うだけでしょう?
んなこたーありません!「ボーン」は可愛らしいキャラクターが大冒険を繰り広げるファンタジーですよ!

邦訳では珍しいオルタナ系(主流のヒーローモノとかじゃない方のこと)なワケですが、これが本当に傑作。アメコミは綺麗に彩色されたアートが魅力なので、白黒作品のこれはスルーしていましたが、大間違い、大ポカ。
とにかくアートが素晴らしい!曲線が本当に綺麗で、ボーンという非常にシンプルな造型のキャラクターが躍動感を持っていきいきと動き出す。無駄な要素が一切無く、ふきだしまでもが美しいのだ。ジェフ・スミスは元アニメーターということで、動きの見せ方、間の取り方がとても秀逸。ブルース・ティムもそうだったが、動きが無いとしばしば揶揄されるアメコミに対する偏見を払拭してくれるアーティストだ。

 町から追放されたボーンたち、強欲なフォニー・ボーン、能天気なスマイリー・ボーン、純粋で勇敢なフォン・ボーン。それぞれ個性的で魅力的なキャラクターが、人間の町で巻き起こすドタバタコメディ。次第に物語は奇妙な怪物ラットモンスターと人間との戦いを予感させていく。
 ほのぼのとしたファンタジー世界の風景から、少女ソーンとドラゴンの謎を巡る壮大なストーリーへと展開して行く過程が心地よく、ぐいぐいとボーン達の世界に没入してしまう。
 フォン・ボーンのほほえましい恋愛からド派手なカウ・レース、「イナゴの王」とソーンたちを巡る大いなる謎。実に多彩で飽きさせない物語は、老若男女問わず受け入れられること間違いなし!
僕のお気に入りのキャラはソーンの謎多きおばあちゃん。ポパイみたいなアゴで、ポパイみたいにパワフル!カウ・レースでの勇姿には思わず爆笑w

ホント、なんでこんなに知名度が無いんだろうか。
3冊500円で買って申し訳ありませんでしたという気持ちです。

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[投稿:2012-01-15 23:06:38] [修正:2012-01-15 23:09:30] [このレビューのURL]

ヒーロー登録制度を巡ってヒーロー同士が殺し合いを始めるお話。
マーベル系の邦訳、特にクロスオーバーやニューアベンジャーズシリーズは単体で楽しめるものはあまりなく、シリーズを通して読まないと面白さが伝わってこないように思います。ただでさえそれぞれのシリーズ、キャラクターの素性やら人物関係を知っていないと読むのが厳しいアメコミなので、マーベル邦訳は新規読者にも財布にも優しくないなぁと思ったりします。
しかし、このシビル・ウォーは例外です。とにかくド派手にヒーロー同士が戦うのでそれだけで見ていて楽しい。結構原作ファンからはキャラ崩壊だのと批判されるようですが、僕は特にキャラクターに思い入れのない初心者なもので、「おう、やったれやったれ」という感じで、泥沼化していく無茶な展開も楽しむことができました。
個人的に面白かったのはパニッシャーの嫌われっぷり。これだけ見ると苛められっ子だぞw


主題としてヒーロー登録制なんてのがあるわけなんですが、両陣営とも急にヒートアップしちゃって内ゲバをおっぱじめてしまう無理な展開なので、特に考察しなくてもいいんじゃないかなーとか思う。まぁどちらの言い分もわかるんですがね、もうちょっと話し合えよお前ら・・・という、これがアメリカ流なのか?

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[投稿:2011-12-10 10:54:51] [修正:2011-12-10 10:58:37] [このレビューのURL]

メタもメタ、二次創作的(アメコミはまあそういう性質なんだが)に、これだけメタにバットマンという作品、キャラクターを捉えたものを生み出すのには、かなり勇気がいったことだろう。
表題からして完全にムーアのを意識して...というかそもそもそういう趣旨で依頼された作品なのだが、かなり切り口は変えてあるので、比較して評価というよりもこれはこれ単体で見ていくべきだと思う。

「何がケープド・クルセイダーに起こったか?」8点
舞台はバットマンの葬儀から始まる。参列するのは、キャットウーマン、アルフレッド、ジョーカー...様々な作品の、時代のキャラクターたちが、彼らのバットマンの最後を語る。その様子を超越視点から眺めるバットマン。彼自身が彼を見つめる...様々な世界で生き、死んでいった自分を。そして彼はその意味を徐々に理解し始める。バットマンという存在を、己に定められた運命を。
それでもきっと彼は諦めない。力尽き倒れようと、何度生み出されようと、これからも我々とともに、きっと、在り続ける。今はただ戦士にしばしの休みを...
バットマン作品を知れば知るほど、読む度に深みが増す。私自身、近頃読み返してこうまでも感じ方が変わるものかと驚いたほどだ。
アンディ・キューバートのアートも見事で、様々なアーティストのタッチを見事に再現している。幻想的で象徴的な世界の構成も素晴らしい。
ファン必見のエピソード。


他収録作品
「黒と白の世界」6点
いわゆる楽屋オチ。うってかわって明るく笑えるメタバットマン。ジョーカーとの掛け合いだけだがなんとも愉快。

「パヴェーヌ」4点
ポイズン・アイビーのエピソード。怖いが地味。

「原罪」「いつドアは・・・」5点
リドラーが動き回る様子がなかなか楽しい作品。リドラーが活躍するのってHUSHくらいしか見たことないからなんとなく印象深い。え?バットマンフォーエバー?あれは怪人ジムキャリーマンです。

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[投稿:2011-11-11 11:47:36] [修正:2011-12-09 10:16:26] [このレビューのURL]

ロングハロウィーンの続編、こちらでもまだまだ前作を引きずって、トゥーフェイスはじめフリークス、ファルコーネファミリーが暴れまわる。
今回の敵は「ハングマン」。警官ばかりを狙う連続殺人犯です。

ミステリーとしては前作よりも薄い感じ。じっくり謎解きをしながら読んだわけでは有りませんが、ロンハロのオチが衝撃的で読み返してしまったのに比べると、まぁ予想通りの内容。

今作ではボーイワンダーことロビンが登場します。シリアスなバットマンと、ロビンみたいな色の濃い(二つの意味で)キャラを組ませると、どうしても雰囲気が崩れてしまうのではないか、ティム・セイル自信にそういった危惧があったそうですが、さすがジェフ・ローブといった感じで説得力のある落ち着いた内容になっています。
というかロビンの登場から一連の流れはダーク・ビクトリー一番の見せ場だと思います。ブルースとディックの対比シーンがかなりグッと来る、アルフレッドがいい味を出していて、これだけでも買う価値あり。

ティム・セイルのアートもかなり上達しています。クセのある絵ではあるが個性として万人受けする感じになっていて読みやすい。

個人的にはロンハロよりも好きですが、やはり前作を読まないとイマイチ掴めないかなと思う。殆どのキャラがロンハロから引き摺って登場しますし、ディックに正体を明かす動機付けも前作読んでないと唐突に感じるかも。

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[投稿:2011-10-03 03:44:58] [修正:2011-10-03 13:49:34] [このレビューのURL]

7点 JOKER

タイトルの通り、全編通してジョーカーだらけ。チンピラのジョニーの目を通して、ゴッサムの狂気ジョーカーを描いた作品。


このジョーカーは、口が裂けていたりあんまりジョークを飛ばさなかったり、いつにも増して完全に狂ってたりする。そんなあたりヒース・レジャー版のジョーカーと似ているので、映画「ダークナイト」が好きなら読んでみるといいかも、なんとなくその後の話としても考えられる。
 一方バットマンは殆ど出てきません、あくまでJOKERの物語なので。買ってみて騙された!などと思わないように。

面白いのはジョニーの役回りが、ヒーローに憧れるオタクではなくヴィランに憧れるチンピラというところ。ジョーカーの相棒になったと調子に乗ってクロックに吊るされちゃうところとか、俺は頭脳派の出世タイプだから・・・とか思っちゃうのが小市民的で笑える。

ベルメホのアートも結構見もの、スタイルを使い分けて視線誘導や時間演出を効果的に行っている。漫画的になったり、映画的になったり・・・アートだけでも見ていて飽きない。ジョーカー好きなら買って損は無い一作だと思います。

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[投稿:2011-10-02 23:04:47] [修正:2011-10-02 23:07:59] [このレビューのURL]

 バットマンシリーズ最大のヴィランであるジョーカー。彼のオリジンを明かしたともいえる作品であり、バックボーン、苦悩の一端を掬い上げたものである。
 混沌と狂気の象徴として描かれるジョーカーだけに、こういった一種同情的な目線を与えられた作品というのはキャラクターを殺してしまいかねない危うさがある。非常にバランスが難しいところだが、そのあたりうまいこと小奇麗にまとめているのは流石ムーアといったところか。
 
 かくして再び脱獄を果たしたジョーカーによって、いつものように怖気の走る凶行が繰り広げられる。バーバラは凶弾に倒れ、ゴードンは監禁され発狂寸前に追い込まれる。
 いつもならバットマンがジョーカーを追い詰め正義の名の下に勝利を収める。構図的には今回もそうだが、もはや2人のいたちごっこは限界に来ている、このままではどちらかの破滅があるのみだ。
 焦点が結ばれるのはここにおいてである、ジョーカーを生んだ原因であるバットマンに、「私がいれば力になれた」と言わせる。決して交わらない世界が存在感を帯びる。自らを正義と信じるバットマンの姿がより滑稽なものとして現れ、我々の価値観は揺らぎ始める。正気と狂気は誰が決めたもう物か、また正義は・・・

流石ヒーロー像の解体はお手の物のようで、バットマンとジョーカーの関係性を狂気という強烈な光で浮かび上がらせたのは見事である。それに留まらず作品そのものへの挑戦的視点も感じられる。
例えば「最近よく考えるんだ、お前と・・・私の事を。我々が最後にどうなるのかを」というバットマンの台詞は非常にメタな要素を孕んでいるように思える、連綿と続くシリーズを扱う作家達の言葉の代弁ともとらえることができるのではないか。
 そして読者に「君はどうしたい」と投げかけるラスト・・・このあたりの構成の緻密さ、さりげなさと大胆さは特筆に価するところである。それでいて伏線の過剰使用もせず、というか分量的にできなかったんだろうが、シンプルですっきりとしているのも好印象であった。

ジョーカーの魅力に迫った一本でもあるので、バットマンとの関係性がだいたいわかっていれば楽しんで読むことができるだろう。
 ブライアン・ボランドのアートも緊迫感と不気味さを引き立てる極上のものとなっており必見である。彩色の大幅な改定によって今見ても古臭さを感じさせない立体感が演出されている。

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[投稿:2011-09-26 04:49:11] [修正:2011-09-30 15:17:45] [このレビューのURL]

諸星大二郎版本当は怖いグリム童話・・・みごとにモチーフから奪胎させた各エピソードには、子供が読んでも面白い(そうか?)、恐ろしさよりも絵巻物的軽快さがある。
表題トゥルーデおばさんは傑作。
ラプンツェル、鉄のハインリヒなどもお気に入り。
個人的に微妙だったのは夏の庭と冬の庭。といった風にそれぞれに自分にあった物語を見つけられる、昨今の諸星作品から失われつつあった(ように思える)自由な想像力が存分に感じられる。

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[投稿:2011-09-20 22:08:18] [修正:2011-09-20 22:08:18] [このレビューのURL]

諸星大二郎の傑作。伝奇モノであり、現実的でありながら濃密に非日常である世界観を確立させている。

ちっぽけな存在である少年武がアートマンに至る物語、どこまでも彼は自己から脱却することはなく、超自然的な存在になった部分は描かれることはない。
しかしてミステリーのごとくつづられるこの旅行記には、大いなる意思によって運命付けられた壮大なる秘密が隠されており、暗黒星雲から石造にいたるまでにちりばめられた痕跡には、諸星大二郎の想像力の奔流が感じられる。

どこまでも不気味で、しかしどこかノスタルジックで胸にくる、人間の原初的な部分を揺さぶる作品である。

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[投稿:2011-09-20 21:54:39] [修正:2011-09-20 21:54:39] [このレビューのURL]

これを漫画といっていいのかどうか悩むが、その辺はまあどこも懐が深いので大丈夫でしょう。画集といってもいい様な美麗な油絵、狂気の世界を見事に表現しており、絵だけを目的に購入してもいいと感じた。
実際私が購入したときは本屋の画集コーナーにおいてあった。ページ数自体は少なく、後半にはグラントモリソンのプロットを訳したものが掲載されている(おそらく完全版のみ?)。

アーカムアサイラムといえばジョーカー、といった感じだが、登場は最初と最後くらいで、基本的には病院内をバットマンが巡り狂気の世界に足を踏み入れていくというもの。
あらゆる物が象徴的に描かれ、大胆に解釈されたキャラクター描写も見ものだが、なんといっても狂気の世界がすごすぎる。仔細に書かれた脚本(これだけみてもモリソンの楽しそうなコメントや冷静な一人突っ込みが笑える)を見事に表現しているのは、アメリカンコミックがどのように作られるかを感じることもできて興味深いところである。

狂気の世界をバットマンとして読者が巡り、アーカムアサイラムの創設者であるアマデウス・アーカムのエピソードと、館にかけられた呪いとを手繰ってゆく。そしてその中で自分に存ずる狂気とも対面を果たすのである、はたしてバットマンは、そして我々は狂気の外にあるのかはたまた中にあるのか・・・

バットマンという作品の一つとしてもラストに集約される決着の方法が「らしい」格好よさと想像の余地を残す切なさとを与えている怪作。

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[投稿:2011-09-09 13:39:40] [修正:2011-09-20 21:40:28] [このレビューのURL]