「やじウマ」さんのページ

総レビュー数: 63レビュー(全て表示) 最終投稿: 2007年01月20日

 大きな世界を書ききろうとしてるんだろうけど悪となる権力者、政府が作者の被害妄想の域から出てない気がする。社会への批評性は作者が期待してる程にはないと思う。
 パジャマの柄や地面の石ころまで丹念にハッキリと書き込むその偏執的な作画と、どんな人間も根っこには性があるという信条が染みこんでいる世界観は読者に強烈な印象を残す。昔ジャンプで連載持ってたなんて到底信じることができないくらいアブノーマル(のくせしてしっかりメジャーな感じもある)。
 狂四郎やユリカは満面な笑みを浮かべるけど空はまったく青くない、色がない。ストーリーは人の善意を最終的には信じているように見えるけど、そういうところが逆に気になって心の底からは信じることができない。

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[投稿:2012-10-21 19:29:36] [修正:2012-10-21 19:29:36] [このレビューのURL]

9点 SUGAR

 「昴」読んでいてすっごい物足りなかったんだけどおそらく先にこの「シュガー」、続編の「リン」を読んでたためだと思う。
 曽田正人は根が少年漫画にあるから主人公は「天才」でも周りには理解者や師匠がちゃんといるんだけどこのシリーズの主人公石川リンには全くない。歪んだ形ながら「友達」はいるのだけど「理解者」はいない。
 見えてる視点が違うので。
 だから理解されること自体拒否して周囲に悪態をつきまくる。自分は予定調和な漫画が嫌いだからこういう「天才」の方が好きだ。

 「シュガー」も素晴らしいですけど続編の「RIN」はもっとすばらしいです。

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[投稿:2007-03-19 19:26:53] [修正:2012-08-23 17:37:45] [このレビューのURL]

 フランク・ミラーがシナリオを担当しておきながら1994年という和訳Xメンが出始めたあたりにひっそりと出したせいであまり有名じゃない(おそらく)作品。マーヴルズとかアストロシティに並ぶ、アメコミにはまり始めた人がいつかその存在に気づくけどもその微妙なお値段のせいでなかなか手をだせないめんどくさいやつ。

 内容は、後に出す「ストライクスアゲイン」にも観られた現代社会への嫌悪感や人間嫌いが行きついた末のエロとグロで築かれた被害妄想炸裂ディストピア系SF、という感じ?それをジェフ・ダロウの病的なまでの書き込みが強めていて、はっきり言って非常に気持ち悪い。
 
 よんだ感じ何かに似ているなあ、と思ったら徳弘正也だった。あの地面の石、草、液体、さらには機械の部品、果ては臓物でもはっきり描いてしまう絵の人。あの絵のくどさを3倍にしたような。人間嫌いで偉い人嫌い、未来に何の希望ももってないとこも似てる。
 とても読む人を選ぶと思う。自分はついていけず、正直ミラーはもういいやと思った。徳弘正也苦手だし。
 
 再販の確立は限りなく低いが、高い金出してまで買うのはオススメできない。

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[投稿:2012-08-20 19:02:57] [修正:2012-08-20 19:02:57] [このレビューのURL]

たしかにイヤーワンはすごくよく出来ているのに対してイヤーツーとフルサークルは色々と粗が目立つ。
 話がご都合主義だし、マクファーレンの絵(最後の方はジジイと女の描き方がスポーンと同じである)もあってなんだかマーヴルクロスに入ってたスパイダーマンでも読んでいる気分になる(リーパーのデザインがすでにマーベルくさい)。

 だがしかし、この後にミラーが発表する人間嫌い、既存のメディア社会大嫌いなのがよく想像できる「ハードボイルド(バットマン関係ないけど)」「ストライクスアゲイン」や、他の作家の発表する「アーカムアサイラム」や「ロングハロウィーン」などの殺伐としたバットマンを読んだ後だとこのバットマンを単純に「駄作だ」と否定するのは少し気が引けてしまう。

 あの辺りを読んだ後にこの「イヤーツー」「フルサークル」の牧歌的な要素-アルフレッドが落ち込んでるロビンに一喜一憂するとかブルースウェインが素直に恋に落ちるとか-、を観ると「イメージが崩れてしらけるなあ」と思うと同時にどっかしらホッとしてしまうのも確かなのだ。

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[投稿:2012-08-20 18:06:46] [修正:2012-08-20 18:06:46] [このレビューのURL]

 話がよくわからないし登場人物が何を考えてるかの心の動きもよくわからないのにおもしろいというのはとてもすばらしいことだと思います。
 次にお話がどうなるか、というところじゃなくて次に何が出てくるのか、で読者を楽しませる漫画。

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[投稿:2012-08-15 14:07:46] [修正:2012-08-15 14:07:46] [このレビューのURL]

 光と闇との戦いとかのいま読むと少し引いてしまうようなスピリチュアルな内容に加え「データ睡眠」だのというSFを普段読まない人間には難しかった用語がとびかう内容だったが、主人公ジョンの見事な小物っぷりと相棒ディーポの可愛らしさによって大変読みやすくなっていた。
 アレハンドロ・ホドロフスキー×メビウス!というところからとんでもないカルトな内容を期待していたが下手したらこれは少年漫画とかに載ってても意外と受けるんじゃないだろうか。そんな機会絶対ないけど。

 メビウスの絵は昔マーブルクロスで読んだシルバーサーファー以来で、その時はあまりよくわからなかったのだが、こうやって1冊の本でまとめて読むとたしかにすごい人だったんだということが微妙にわかる(言い切ってしまうほどにはわからん)。
 神経質なまでの書き込みも衝撃的だったが(闇の卵の手の付け根とか、そんなとこ書き込んでどうするんだという。しかしそれもくどくなくサラッと読めてしまう)、それ以上によかったのが色で、特に人の顔の色を簡単にピンクや紫にしたり緑にしてしまうところ。普通やろうとは思いつかないよな。

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[投稿:2012-08-15 13:14:02] [修正:2012-08-15 13:14:02] [このレビューのURL]

疑問なのだが、なぜ誰もエディ・キャンベルのアートのすばらしさについて語らないのか。

 登場人物の顔ははっきりと見えない。目や口や鼻といったパーツは描かれたり描かれなかったり、しかも時々変わっていることもある。
 だから読んでいる人間には登場人物の名前と顔を結びつけることが困難になっている。主役のウィリアムやアバーラインでさえそうだ。娼婦達に至ってはほぼ同じでセリフによってやっと判別がつく。
 終始こんな感じだから登場人物達に感情移入することも相当難しい。こんな絵日本の少年漫画誌に載せたらそっこくたたき出されるはずだ。

 だがそれのなにが問題なのか。登場人物の顔が落書きのようになりころころと変わることは問題ではない。
 読めばわかるだろう、ここで描かれる世界は貧困によって正常な判断を失い日々を暇つぶしの酒と性でつぶし、さらには陰惨な殺人事件でさえ話の種、飯の種にしてしまう人々が住まう、つまりは地獄なのだ。
 そして住まう人々はそこになんの疑問ももたず自分達が地獄に暮らしていることも気づきはしない。それは100年たっても変わらないことも作中では明言される。
 そして唯一その事実に気づき抜け出そうと試みたのは幼い頃より残虐性を兼ね備えた人間であり、とった手法は連続殺人であるという皮肉。
 
 そんな地獄に顔が必要だろうか?だいたい闇の中から観たらどれが誰の顔かなんて見分けがつくわけがないのだ。
 色彩だって必要はない。血の色。流血シーンが多いこの世界では血をよく観るがすべての色はこの血の色で大丈夫だ。服の色も血の色で大丈夫だ、煉瓦の色も血の色で大丈夫だ、木々も血の色で大丈夫だ、海も血の色で大丈夫だ、空の色でさえ血の色で大丈夫だ。ここではトップ10で描かれたような見事な夕焼けなんてものは存在しない。そこには叙情という逃げ場はないのだ。エディ・キャンベルのアートは間違いなくそれを理解したうえで描かれている。素晴らしいとしか言いようがない。そして同時にとてもアブナイことでもある。
 
 例えば下巻で長々と書かれる殺人シーン。
 これを書いたのがデイブギボンズのようなアーティストや新井英樹のような漫画家だったらどうなのか。被害者の顔も取り出される臓物ももっとはっきり書かれるだろうし、なによりもっと感情的になっていたはず。そしてそれへの嫌悪感はもっと大きなものとなっただろう。
 だがしかし、それでは「嫌悪感」だけが付随されただけで終わってしまうはずだ。そこで終わってしまう。
 対してエディ・キャンベルによって描かれる世界でははっきり描かないことによって多重の意味の解釈が可能になってしまう。もちろん嫌悪感をもったまま読むということも可能だ。
 しかし本を2度3度読み、物語が最初から最後まで見事に繋がったそれこそ本文でも言及されたような関係のないと思われた様々な出来事が組み合わさってできた建造物のようなものになっていると気づいたときどうなるだろうか。
 博士が自分の連続殺人を正当化させるための理論が完璧であるかのように、まるで本当に神の意志が関係しているかのように思え始めた時エディ・キャンベルのアートはどういう効果を及ぼすのだろうか。
 「嫌悪感」や「否定」以外の感情を導き出すことも可能なのではないだろうか。自分は幸いにしてそういった感情を覚えていないがそのような感情を憶えてしまう人も少なからずいるのではないだろうか。考えすぎではない。だってムーアは本書で明らかにこの殺人者を肯定しているのだから。

 そういった点も踏まえてもう一度言うがエディ・キャンベルの絵はすばらしい。物語ありきで絵はあくまでオマケという意見は本書に対してとても多いが(ムーアに対しての比重が置かれた後書きからもしかして訳者ですらそう思ってるのではないか、という節はある)そんなことは決してないはずだ。
 今回はアラン・ムーアの物語、コマ割り、時代考証が素晴らしいなんて当たり前のことだから言及しなかった。(あとめんどくせえしな!)

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[投稿:2012-08-14 18:16:10] [修正:2012-08-15 12:36:13] [このレビューのURL]

 wikiによるとムーア先生はイメージコミックの作品を「残忍で暴力的」と批判していたらしいけど自身が原作したこれを読むと「なにいってんのこのオヤジ・・・」って思いますよね。
 数ある和訳アメコミの中でもトップレベルの趣味の悪さで、ある意味いちばんおもしろい。ブックオフで100円で買えます。
 バイオレーターが雑魚のマフィアの生首を自分の腕に刺してカウンセリング始める場面は何回読み返しても名シーン。

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[投稿:2012-08-14 19:06:22] [修正:2012-08-14 19:06:22] [このレビューのURL]

 「暴力的で行き当たりばったりの90年代アメコミの負の象徴、オモチャが有名、映画はこけた、原作者は銭ゲバ」みたいなレッテルはられてるせいでみんな無視してるけど(被害妄想です)、ジムリーのエックスメン共々アメコミ和訳の普及に大きく貢献した存在。自分なんてアランムーアの名前をこれで知ったたちです。
 正直映画公開にあわせて出版される、2000?3000くらいの微妙なバットマンの和訳とかマーベルの和訳本買うかどうかで迷ってるなら1冊100円でブックオフに大量に置いてあるスポーンの1?10巻まで(これより後は珍しい)買う方が絶対にコストパフォーマンスはいいと思う。

 っていうかこれ本当に面白いからね!?

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[投稿:2012-08-14 18:39:51] [修正:2012-08-14 18:39:51] [このレビューのURL]

8点 寄生獣

面白い漫画、なのかな?うん、たぶんそうなんだろう。なんか頭いいこと言ってるし・・・とりあえず8点以下はつけちゃダメ、な雰囲気だなぁ。なんかたいした根拠もなく批判したら恥ずかしいしなぁ。て感じで点数をつけてしまうのは昔も今も変わらない。とりあえず漫画好きの踏み絵、みたいなこと言うのはちょっと勘弁してほしい。
中学生の時周りの評判に洗脳されて本当は「面白かったなぁ。お母ちゃんがあんな殺され方するのは嫌だなぁ」くらいの感想しかなかったのに頭いいふりしたいから「これは傑作だ!人類必読書の1冊である!」みたいなテンションで古くからの友達に貸したら「面白かったけど最後、環境問題と結びつけたのちょっと強引かなあ」っていう感想。ああなんて素直なんだろう、こういうことがさらっと言えちゃうヤツになりたいなあ、って思ったことは自分の人格形成にちょっと影響を与えた。そういう意味では重要かも。

っていうか皆さん本当に「俺の好きな漫画永遠の1位!いや、全ての漫画の頂点に立つ!」「人類がどんなに愚かしいか、そしてどんなに偉大かを教えてくれました」なんてこと考えました?いやもちろん本当に心からそういう感想を抱いた人もいるでしょう。でも絶対に読む前にこのサイトの評判とか読んで「これは偉大な漫画なんだ、これを読んで僕は人類について考えなければならない」みたいに身構えて読んだ人とか紛れてるはずだよ。「人類云々」ってのは結果的に出ただけであって作者は最初からそんなこと狙って書いてないと思うんだけどな。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2006-11-13 18:58:12] [修正:2010-10-03 21:45:13] [このレビューのURL]