「左手」さんのページ

総レビュー数: 23レビュー(全て表示) 最終投稿: 2011年04月07日

 「天才の苦悩と成長(前作の昴以上に)」

 前作の昴もレビューしました。さらなる主人公の宮本すばるの成長ストーリーが展開されていて、前作では独りよがりな孤高の天才が周囲の人を引っ張り成長する物語でしたが、今回では少し異なり、それまで引っ張ることしかなかった周りの人、特にパートナーと共にぶつかり合いながらさらなる高みへ向かう成長物語となり、天才が独りでなくなり、また、同等のライバルの出現など、この作者は天才すばるをどこまでもっていくつもりなのか、まさに天才を描く天才、曽田正人のやることには畏怖します。

 絵の描き方についてなのですが、思ったよりもバレエのコマが少ないと思いました。
 これは私自身が思っただけですが、例えば普通のスポーツ漫画ではメインのそのスポーツをより長くかくことが多々ありますが、この昴・MOONでは思ったよりも少ないコマでバレエシーンが描かれており、作者自身がバレエの芸術的な感じやバレエの刹那な時間がより際立つ勢いのあるタッチで描かれていて、読んでいてもその短さを感じさせない、むしろ読者自身がその間のコマや時間を補完して読んでいるような気がします。

 他の漫画に比べ、ハチミツとクローバーの羽海野チカやNANAの矢沢あいのような少女漫画のようなラフな線で常に躍動感のある絵になっていてバレエシーンでもすんなりと読め、読んでいる勢いをそのままに保ってくれている。それもまたこの漫画を褒めちぎってしまうところです。

 これは私事なのですが、すばるの炎のような激しい生き方にボレロの観客の一言「こんなテンションで生きてえな」に共感せずにいられないッッッ!!!!!ので超オススメです。

 (投稿現在、昴全11巻、MOON6巻まで所持)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-12 23:57:00] [修正:2011-05-12 23:58:41] [このレビューのURL]

 「アンチジャンプのクーデター」

 私自身、めだかボックスは必ずジャンプで最初に読むぐらいファンで愛読しています。まず自分のめだかボックスに対する立ち位置を最初に示します。

 ジャンプで連載している作品は、漫画である前に「ジャンプである」という特殊な雑誌だと思います。
 実際に今ヒットしている進撃の巨人を作者がジャンプに持ち込んだところ、「これはジャンプでやる漫画ではない、"ジャンプの"漫画を持って来い。」と言われたそうです。バクマンを読んでいても分かるようにジャンプはジャンプ色のある漫画でなければならない前提が必要なのです。

 しかしながら、賛否両論が叫ばれるめだかボックスにはジャンプのテーマの友情・努力・勝利がこれでもかといわんばかりに入っています。それでいてなぜ、ここまで叩かれるのか?

 まず、設定や展開を一つ一つ見ていきます。

 話の内容自体は学園もの。これはジャンプでよくある設定です。
 そして、主人公の黒神めだかは超天才です。ここまでするのは少し露骨ですが、ギャグ漫画以外のほとんどのジャンプ漫画でよくある主人公が天才設定。
 序盤は日常で、途中からバトルに突入。これもジャンプでよくある幽々白書やキン肉マンなどでよく見る展開です。
 バトルシーンの進め方や能力、勝敗の決め方は完全にジョジョです。また、キャラのポーズもまるでジョジョ立ちです。
 また、死闘を繰り広げた敵が仲間になるのも、ダイの大冒険でいうクロコダインやヒュンケル、ジョジョの花京院やブチャラティ、ドラゴンボールのべジータ、などよくあることです。
 めだかボックスとは今までのジャンプらしい良い要素をふんだんに盛り込んだ、悪く言えばトレースしているジャンプらしい漫画なのです。

 しかしどうしてそれでも純粋なジャンプファンには受け入れられないのでしょうか?

 それはアンチジャンプのスタンスを崩さないからです。めだかボックスによく使われるメタ発言で「もしジャンプだったら?」や「?はまるでジャンプじゃないか」と今までのジャンプを暗に批判しています。
 例えば、死んで生き返ったらまるでジャンプの漫画、敵が絶対に勝てない理由はジャンプの主人公だから、など。
 今までのジャンプを作り上げた巨大な漫画たちを尊重しながらもそれを踏み潰す様な発言に、純粋な"ジャンプ"読者は嫌悪さえも抱くのでしょう。

 設定や展開などの外見はジャンプでありながら、その内に秘めているものはジャンプを否定するアンチに満たされている。

 結論は、めだかボックスはジャンプでやるべきではない漫画です。が、外面はジャンプの装いをしたゲリラでジャンプのうちから破壊し、クーデターを起こそうとする危険分子なのです。

 そう結論をつけた私ですが、そのクーデターを作者の楽しいユニークや遊び心としてめだかボックスを楽しめるか否かが読者の分かれ目ではないか、と思っています。

 球磨川禊の括弧つけないあの演説には最大の感動を受けました。オススメです!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-18 12:47:16] [修正:2011-04-18 12:47:16] [このレビューのURL]

 「日本人のアイデンティティー」
 他の人のレビューでもあるように現代版三国志です。登場人物の名前を見れば、簡単に分かることですけどね。

 大地震で日本が東と西に分かれ、中国とアメリカが日本を占領し、日本人が自分の祖国を失い、しかし日本人である誇りを持ち続けている人々の姿が主に描かれています。

 先日の東日本大震災が起きた時、私が真っ先に思い浮かんだのがこの漫画です。同じ大震災で大打撃を受けた今の日本に海外から手厚い支援が多く送られてきています。これが太陽の黙示録の冒頭部分と私の中で被って、まるで現実で、これからの日本の未来を予言しているかのように思えます。

 漫画では事実上日本がなくなります。しかし、多くの元日本人は日本の精神を忘れず、むしろより強く持ち続けている。国とは国土でありその上に人が立つものである。昨今の日本の国を想う力が弱まっているこの世の中に物申すように、もし日本がなくなってしまったら、その時日本人は日本人でいられるのだろうか、日本の心、日本人としてのアイデンティティーを忘れないでいるだろうか。

 今の日本の状況と重なってみえるが、漫画はフィクションなので、現実にはあってほしくないと願うばかりです。

 今、読むべき漫画はこの太陽の黙示録です。オススメです!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-15 15:43:33] [修正:2011-04-15 15:43:33] [このレビューのURL]

 「斜陽世界と穏やかな人々」
 雰囲気が超いい!
 登場するキャラたちはみんな明るく楽しく穏やかに暮らしている。しかし、夕凪の時代と呼ばれる年々海面が上昇し、人類の滅亡がゆっくりと進んでいる。この明るさと反面する背景の斜陽が対照的にし、主人公のアルファを始め様々なキャラの些細な行動や小さな幸せがとても大事な宝物のように思えます。
 ユートピア(理想郷)と反するディストピア(暗い未来)が大好きな人にはオススメです!

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-04-15 12:34:00] [修正:2011-04-15 12:34:00] [このレビューのURL]

10点

 「天才の苦悩」
 お前は今まで食べたパンの枚数を覚えているのか?とディオが言うが、昴に関しては、お前は今まで昴を読んだページ数を覚えているのか?、という程引き込まれすぎてどの位読んだのかが分からなくなる感覚に落ち、気が付いたら1巻分まるまる読み切っちゃうほどです

 主人公のすばるはバレエの天才ですが、命を燃やし死んでもいいと言う程踊り続ける態度には一線を越えて狂気に感じます。しかし、天才であるが故の他者との交わりが下手だったすばるが徐々に他者を理解し、成長していく過程に天才の苦悩が見られます。作者は天才の描き方の天才です。

 文句なしの10点です。オススメ!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-11 12:37:40] [修正:2011-04-11 12:37:40] [このレビューのURL]

10点 リアル

 「スタート位置」
 なぜ主人公が3人いるのか。人生を前向きにする(スタートする)ことを軸にして、それぞれの主人公を並列して考えると以下になる。

  野宮…高校を中退、その後いろいろするが失敗ばかり。そしてバスケ選手になるためスタートする。
  戸川…脚が不自由ながら車椅子バスケとしてスタートを切っている状態。  高橋…事故で下半身不全でまだなにもスタートを切っていない。

 それぞれ健常者や障碍者と立場は違うが、スタート位置を考えると、スタートをすでに切っている者、今まさにスタートを切った者、まだスタートを切っていない者。この3人がそれぞれのゴールに向かう姿勢がこの漫画の真髄であり、そこを描く井上雄彦はすごいの一言です。
 まだ漫画は途中ですが欠点が見つからないので10点で、オススメです!

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-10 23:31:33] [修正:2011-04-10 23:31:33] [このレビューのURL]

 「まさに漫画の四次元ポケットや!(彦麻呂風)」

 なぜ映画監督のスタンリー・キューブリックが評価されているのか?漫画とは関係ないが映画の説明から始めます。それは作品ごとに全く違ったそれも新しい手法やコンセプト(基本的な概念)を用いて、その上悔しいほど良くできていて、正直に面白い映画だから評価に値するのです。ジャンルもかなりバラバラで、不謹慎コメディ、軍隊もの、サイコホラー、超SF作品などその懐と技術力、挑戦心に畏怖をするほどであります。

 ここで、特に手塚治虫を始め、なぜ、超が付く大物がすごいというと、そのジャンルやコンセプトが全く異なった漫画を描いてきて、その上面白いということです。ここでは漫画自体をほめているのではなく、"漫画家"をほめていると理解して下さい。
 藤子不二雄も同様に手塚治虫と並べられる超大物です。ドラえもんみたいな子供騙しの漫画を描いている人としか認識していない人は人生を損しています。この方は子供騙ししか描けないそこらの三流漫画家ではなく、"子供騙しも描ける"漫画家だということをこのSF短編集を読んでわかるでしょう。
 そんな藤子不二雄、特に子供向けのF先生の大人なS(すこし)F(ふしぎ)ストーリーを読んでみる価値は十分にあります。

 以下は漫画について書きます。

 あのドラえもん絵柄であれらの話を綴る怖さ。楳図かずおのようなリアルな絵で怖さを感じさせず、藤子漫画の絵だからこそ垣間見える人間のもともと備えている人間性の怖さが、むしろ爽やかに描かれてるところや、また、コンセプトつまり話の作り方の目の付け所が語彙力が少ないと思われますが、凄いの一言で、誰かこの話をパクって漫画描けよ、と言いたくなる程の出来です。

 何度も読める漫画はオチを知っていてもやはり面白い。これは話の内容もですが、私自身よく使う表現なのですが、面白い漫画は漫画としての喜びに満ちている。それは表現やお話作りなど全てを含めた要素が良い方向に向いている。それがこの漫画にはセクシーコマンドー外伝すごいよマサルさんのヒゲ部のシンボルマーク並みに盛られています。

 漫画に一過性の楽しみを求めている人にとっては、なんだこりゃつまんね、と言ってしまう作品ですが、漫画としての喜びが満載なこの漫画、そんなに甘くはないですゼ。

 藤子不二雄原理主義者ですが、布教ついでにオススメです!

 (全巻所持)

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-05-13 00:47:34] [修正:2011-05-13 00:47:34] [このレビューのURL]

「年齢に合わせた優しい漫画」
 ドラえもんについて勘違いをしている方が多いです。絵が話ごとにコロコロ変わるやひみつ道具の効果が被っているなど、作品全体を通してみると不完全な部分が多いと思っているでしょうが、違います。

 ドラえもんをwikipediaで調べてください。掲載誌はコロコロコミックだけではないのです。小学館の児童向け雑誌にそれぞれ載っているのです。小学○年生、てれびくん、よいこ、幼稚園、サンデー、そしてコロコロコミックに載っていました。
 それゆえに、似た道具や絵も違うのです。
 考えてみてください。月刊のコロコロコミックだけで45巻もの作品量を出せません。

 以前、レビューを書いた大人なSFがある「藤子F不二雄SF短編集」でF氏は漫画のアイディアがバーゲンセールするほどある、ようなことを私は言いました。

 ここでドラえもんを良く見て下さい。絵と文字の対象年齢が話ごとに少しづつ異なります。

 ・コマ割り…コマが縦に入る数が違う。
 ・背景、構図…対象年齢が高いほど書き込んでいる(全体的に暗い絵)
 ・のび太の性格…これも対象年齢が高いほどかっこいい、男らしい。

 以上の違いについて方法論的(構成や台詞などの作品の作り方から評価すること)に読むと、流石F氏!すごい!とうならざるを得なません。


 一番好きな回は「オーバーオーバー」と「ボールにのって」です。オチが素晴らしい。

 もし、ドラえもんを子供だましの読み物だと思っている人は、もう一度作品の巧みさを楽しんでみてはいかがでしょうか。
 <全巻所持>

ナイスレビュー: 1

[投稿:2011-06-23 09:24:37] [修正:2011-06-23 09:24:37] [このレビューのURL]

 「夢に憧れ諦めた人たちへ」

 読んでほしい対象は、これから夢を追おうとする若者、夢を叶えた人、夢を諦めた大人、夢を叶えたが訳あってその夢を捨ててしまった大人。要するにこれは夢に憧れる、また憧れたすべての人に当てはまります。

 しかし、この中に登場するキャラたちのほとんどは私たちの現実世界にいるような夢を諦め、普通に仕事をし、生活を営む人ばかりです。特に1巻のなんともない日常がしっかりとその風景をまざまざと見せ付けています。
 その中で唯一夢を叶えるために頑張っているのが種田であり、結果は悲惨なことになりました。
 現実とはなかなか上手くいくものではありません。
 夢を見ることの憧れは花屋のアルバイトの井上、夢ではなかったのに叶ってしまったのが鮎川、夢を叶えたが現実を直視しプロデュース業をする冴木、それらのキャラが夢の象徴として配置されているのが、浅野いにおが仕掛けた表現といえます。

 物語としては1巻は極普通の日常、2巻は芽衣子が種田の夢の向こう側を探求する話。
 2巻だけでスッキリした内容で、言いたいこともいろいろな角度から言えているので、何度も読める作品に仕上がってます。

 サブカル厨(ヴィレッジバンガードによくいる奴等)大絶賛の浅野いにおが若者の鬱憤を吐き出した漫画、と高をくくっていた私ですが、ソラニンが映画化することになり、もう一度よく読んでみると、なんて完成度の高い漫画なんだ、と驚きました。
 その漫画を読まずにイメージだけでどうこう言うのはダメだね、と思わされました。オススメです!

   全2巻所持

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-24 11:05:32] [修正:2011-04-24 11:05:32] [このレビューのURL]

 「食うこと」に共感しない人はいない。描かれている状況はリアルであり、また日常であり、そのシーンをそのまま切り取りコマにした漫画です。
 漫画を読むというよりも、知り合いのおじさんのちょっとしたエピソードを聞いているような感覚に陥ります。その程度の話でも、現実は小説より奇なり、を体言している作品です。
 何が面白いと聞かれれば私はこう例えます。無数にある非現実世界の漫画から現実的な孤独のグルメにまるで世間話を聞きにいくように読んでしまう漫画界の公園のベンチ、と。
 読み終えたあとにしばらくしてまた井之頭さんに会いたくなるような漫画です。オススメです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2011-04-08 19:26:01] [修正:2011-04-08 19:26:01] [このレビューのURL]

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