「チーズカバオ」さんのページ
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10点 ドラえもん
漫画というメディアを超えたという概念が最もしっくりくる漫画である。
藤子・F・不二雄が語ったSFの意味合いは最近になって広く知れ渡り、多くの人が「なるほど」と思っただろう。
しかし、「なるほど」という感想が軽く出てくるのは、ドラえもんという作品に対する感覚が日本人の心に深く根を張っている現代だからである。
少なくとも、ドラえもんが発表された当初では、ドラえもんの作風は明らかに異質であったと思われる。
ドラえもんが発表されたのは1969年だが、実際に国民的作品として定着し出したのは1979年のアニメ版がヒットしてからである。
そして、ドラえもんが国民に定着する以前のSFの意味は当然「サイエンスフィクション」であり、日本でも漫画やアニメにおいて数多の歴史的な名作が生み出されている。
そういった名作は、手塚治虫を筆頭に松本零士や石ノ森章太郎、永井豪や石川賢など数多の偉人によって生み出され、日本におけるSF漫画の型を創り上げた。
しかし、それらの作品にはある意味で共通した性質があると思う。
それは「作者の(オタク的な意味での)学や教養の高さにより描かれた、ケレン味重視の高度な妄想である。」ということだ。
当然、サイエンスフィクションの概念としてはそれが正解であるし、そこを高めることがSFの本懐と言える。
たがしかし、多くの漫画家がその方向性の中で、より高みを目指す時代の中で、藤子・F・不二雄は敢えてその流れから外れ、自分だけのSF=「少し不思議」の道を行った。
無論、藤子・F・不二雄も他の漫画家のような王道SFも描けるのだが、敢えてサイエンスフィクションの概念に捕われず、
誰しもに通ずる普遍的な感覚を作品の核として、独自のSFに落とし込んでいったのである。
そしてその代表作がドラえもんだ。
今でこそ国民の精神に浸透しきっている本作であるが、先述の通り、ドラえもんが今のポジションを確立するまでには10年以上の時間を要した。発表当初は、あくまでサイエンスフィクション全盛の時代であり、ドラえもんは数ある児童漫画の1つとしての扱いだった。
だが、「少し不思議」なSFの概念は、見る者の心に確実に根付いていき、長い時間をかけて国民の感覚の中に当然のように居着いていったのである。
そして一度根ざした普遍的な「藤子・F・不二雄のSF」は、時代が変わっても、ドラえもんを通して新たな世代にも受け継がれていく。
漫画やアニメにおける和製サイエンスフィクションの存在感が弱くなってしまった現在でも、それは変わらない。
決して変わることのない普遍の「少し不思議」な感覚そのものがドラえもんであり、漫画というメディアを超えて概念そのものとなった本作には、10点以外の点数など有り得ない。
ナイスレビュー: 3 票
[投稿:2020-05-13 17:38:52] [修正:2020-05-13 18:02:11] [このレビューのURL]
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