「チーズカバオ」さんのページ

総レビュー数: 75レビュー(全て表示) 最終投稿: 2017年07月23日

キャラ萌えの到達点と呼べる傑作。
登場キャラクターの造形や設定の魅力が、漫画創りにおいてどれほど高いアドバンテージを持つかということを実感させられる。
長編バトル回のストーリー構成や迫力はイマイチだったが、それでも良牙やムース等が活躍してるというシチュエーションだけでそれなりに成り立っているのも、キャラの魅力の高さ故だろう。


それと、作品の評価とは直接は関係無いが、高橋留美子作品の議論でたまに見られる、「特定のヒロインを執拗にディスる読者」はどうなんだろうか。

「○○が嫌いだから楽しめない」とか、「○○が出たら△△だから面白くなくなる」とかならレビューとしてありなのだろうが、
「○○が嫌いだから、メインヒロインを代えればもっと面白くなる」的な素っ頓狂な意見を述べたり、グッズの話を持ち出してまで必死に特定のキャラを下げる人が、作品を真っ当に評価できるとは思えない。

ましてやラブコメなど主人公とヒロインの関係性が作品の魅力の礎であり、人気を博している作品はこの要素がしっかりしていて、多数の読者はその部分も楽しめているという証明でもあるのだ。
この礎の部分が合わないのであれば、それは作品の本質を楽しめていないとも言えるだろう。(逆に言えば、本質を楽しめていなくても、一部のキャラの魅力でファンを獲得できる作品であるとも言えるが。)

ここで触れているメインヒロインはあかねのことだが、あかねが好きだから読み続けて、あかねのメイン回ばかり何度も読み直す人もたくさんいる。
少なくとも自分は、仮に許嫁がシャンプーとかだったとして、これ以上面白くなったとは思わん。
らんまとあかねの物語だから、これほどまでに愛しいのだと思う。

あかねをディスるレビューを見かけたからムキになって長々述べたが、これも本作のキャラの魅力の高さを物語っているということだろう。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2020-09-23 07:53:13] [修正:2020-09-23 16:04:19] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

漫画史に残るような爆発的ヒットとなった本作だが、それも納得してしまう程に、近年のジャンプ作品には無い魅力がこの作品には凝縮されている。


評価点としてよく挙がるのは、殆ど引き伸ばさずに面白さを維持したまま完結した圧倒的勢いだ。これは確かに、近年のジャンプ漫画のヒット作としては異例である。

恐らくこの作者は、物語のプロットは早い段階で決めていて、概ねそれに沿って最後まで駆け抜けることが出来たのだろう。
だからこそ、味方の実力者や敵の幹部を出し惜しみなく登場・退場させることで、クライマックスを連続させるという、物語作りにおいて究極の手法を実行できた。
これは作者が自らの力量を把握した上で、作者や編集等が欲をかかずに着地点を見極めることが絶対条件であり、これを満たせる漫画はごく稀だと言える。
特に本作のようなメガヒット作品でこれを成せたのだから、作者もジャンプ編集部も見事だとしか言いようがない。


だが、これほど幅広い層が本作にハマっている理由は、もっと根源的なところにあると思う。
それは、読者が本能的にアクション漫画に求める「バイオレンス表現」の要素と、それと相反する「愛」の要素が、極めて効果的に描かれているという点である。

まず「バイオレンス表現」についてだが、
近年の少年漫画においての暴力表現はマイルドだったり、スタイリッシュだったりすることが多く、いまいち緊張感を引き出せていない作品が多いように感じる。
もちろん、それが必ずしも悪いとは思わないが、少なくとも昔の名作アクション漫画にはそれなりの暴力表現は切り離せないものであり、それにより生まれるゾクゾク感というのは結構大事なものだったと思う。
かと言って、進撃の巨人みたいにバイオレンス描写に振り切った作品造りは、読者にとってのハードルを上げかねない。
その点で言えば、鬼滅の刃のバイオレンス描写は、古き良き名作群に近いバランスを持っているように思える。
重症を負った者は戦力が低下し、四肢を欠損したものは戦線を離脱し、致命傷を負った者は死ぬ。
こういった当たり前のバイオレンス要素が作品に程よい緊張感やゾクゾク感を与え、直感的に読者の心を掴んでいるように思える。

次に「愛」の要素である。
はっきり言って、これこそが鬼滅の刃最大の魅力ではないだろうか。
読めば誰しも分かることだが、本作の物語は人間愛に基づいている。
そして更に言うならば、「家族愛」を偏執的に、これでもかというほど描きまくっている。その執拗さは常軌を逸していると言っても過言ではないが、だらこそ他の追随を許さない唯一無二の魅力となっている。
それにより、人間であれば誰しもが持つ感覚や感情をダイレクトに刺激してくるため、子どもから大人まで多くの読者が魅せられてしまう。
ジョジョが人間讃歌を謳ったように人間愛をテーマにしている名作少年漫画は過去にも多々あるが、本作ほどド直球で終始それに徹した作品は過去に類を見ないだろう。

総括すると、暴力と愛という、一見では二律背反の要素を物語にガンガンぶち込んで本能を揺さぶってくるのが、鬼滅の刃の魅力であると考える。


長々とレビューを書いたが、社会現象を起こした事もうなずけてしまう、とても良い作品だと思う。

ナイスレビュー: 4

[投稿:2020-09-01 14:04:50] [修正:2020-09-10 11:45:46] [このレビューのURL]