「チーズカバオ」さんのページ

総レビュー数: 75レビュー(全て表示) 最終投稿: 2017年07月23日

内藤泰弘という漫画家は、他の漫画家へのアシスタント経験が無く、脱サラ後に我流で実力を身につけていった人物である。

トライガンマキシマムの中盤以降から覚醒したかのように技術が洗練されていったが、それ以前はセンスと勢い任せの荒削りな作風であったと思う。
特にこの短編集に関してはプロデビュー以前の初期同人作品が中心となるため、技術面や話運びに拙さがあることは否めない。

だが、技術こそ今と比べると歴然の差があるものの、作品の本質的な根っこはこの頃から驚くほどに変わっていない。
同人誌時代を含めると30年近く漫画を描き続けているのに、この作者の創作に対するスタンスや精神は全くブレていないのだ。
本作を読み、サムスピを読み、トライガンを読み、ガングレイヴをプレイし、アッセンブルボーグで遊び、血界戦線を読み、再び本作を読むことで、その事実をしみじみ実感できる。

自分の好きなことを貫き通し、それで飯を食い、業界も力を貸してくれるという、漫画家の中でも稀有な強運の持ち主である内藤泰弘がいかに幸せな存在であるか。
そしてこの人が創る作品が、どれほど多くの人間に幸せを与えてくれているかを改めて認識する上で、この短編集は非常に重要な役割を果たしていると思う。

しかし、こんなディープな作品集を一般的な書店にも流通するように出版してくれたハルタコミックは最高である。

ナイスレビュー: 2

[投稿:2020-04-15 21:29:05] [修正:2020-04-17 06:23:32] [このレビューのURL]