「為亀」さんのページ

総レビュー数: 26レビュー(全て表示) 最終投稿: 2006年10月26日

木崎ひろすけは、台詞の無いコマをとても大切にする作者で、心情や動き、雰囲気などを言葉の無いコマで上品に表してくれます。
僕はこの静かさ、日常感なんかにどこかフランス映画に通じるところを感じます。そのシーンそのシーンをとても大切に描く方で、静かなコマの使い方は、少女ネムを連載していっている間にもどんどん成長していっているようでした。
亡くなったのが非常に惜しいです。。。
フランス映画好きは是非読んでみてください。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-04-23 23:37:07] [修正:2007-04-23 23:37:07] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

超編の終わる一歩手前まで読んでの感想です。
ものすごく惜しい作品ですね。エンターテイメント、少年誌という土台を崩さずにできるうちではかなり高いレベルの作品だと思います。
惜しいというのは超やねぎの行動や思想にあと一歩つめの甘いところがあって、その欠陥がその思想をひっくり返してしまいかねないくらい致命的だということです。
しかし、それらのつめの甘さを含めた話をしだすと、「ネギま」自体が少年誌だったりエンターテイメントだったりの枠からはずれてしまうでしょうから、善や悪について扱ったエンターテイメント作品の中ではこれで限界ギリギリというレベルまで高められた作品だとは思います。
エンターテイメントの枠から外れるというのは具体的にいうと、政治の話になったり経済の話になったり、懐疑的な善悪論になってしまったりするということです(ネギまの中で行われている懐疑は、僕らは本当に正しいか。であって正しいとはどういうことか。ではないから)。
「ネギま」で出された答えにはまだ反論の余地があります。しかし「ネギま」はその反論の余地を作り出した高いエンターテイメント性が故に、話の糸口や、哲学や社会矛盾に対して今まで興味の無かった人々の第一歩になる可能性を秘めていると思います。
そういう意味で、高い価値のある作品だと思います。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2007-04-19 23:20:21] [修正:2007-04-19 23:20:21] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

 私の個人的なこの物語の展開を書きます、どうしても先入観を与えてしまうと思うので一度自分の考えを整理してからみることをオススメします。
 尚、漫画版の事を書きますが、漫画の解釈を展開する際に映画版の演出もヒントとして使っています。悪しからず。

 最初にこの漫画を読んだ段階ではただ単純に現実世界とは関係なく善悪のバランスのとれた世界を描きたかったのかと思いました。いつだったか松本大洋がインタヴューのときに必要悪の話をしていたのを少し覚えていたので、「松本大洋の中では現実世界も善と悪のバランスが取れていなければならないのかもしれない。でも私としてはこの作品を読んだだけでは、クロたちの生きる世界がバランスのとれていなくてはならない世界であることは納得できても、現実をそういう風に考えることはできないな。」という風に考えていました。(その解釈では闇の力、イタチの存在、イタチの台詞の意味、などは上手く解釈できなかったのですが特別考えていませんでした。)
 しかし、映画を観て、クロとシロの象徴するものはそれぞれ悪と善ではないような印象を受けました。それぞれ現実と理想を象徴しているのではないかと思い直しました。そうすれば、現実(街)が理想とはかけ離れた方向に進んでいくのに比例してシロが夢見がちになったことも、現実からシロを守ってやれなくなってきているというクロの不安も納得がいきます。それだけでなく物語の様々な符号が一致するのです。シロ(理想)を失って現実だけを求め、視るようになったクロの暴走も納得いきますし、イタチの真実は闇の中にある。闇こそが力だ。といった発言も上手く解釈できます。
 そして最後の最後にクロが現実に捕らわれたイタチと決別したときの言葉は「俺はシロを信じる」だったことにも納得がいきます。つまり、この物語は現実を見据えながらも理想を信じる事の必要さを物語っているのではないかと思います。
 私個人の認識ですが、最近では理想を諦めて現実的なものだけを求めることがかっこいいというか、大人というか、そういうイメージがあるように思います。もちろん、現実をみなくていいというのではありません。理想だけをみて、一面的に「なんで理想どおりにしないんだ!」とだけ言っていても、上手くいかないと思います。
 だからこそ、「理想を信じながらも、現実を見据える姿勢が必要なのだ。」というメッセージを、この作品は持っているように思いました。
最後に、二人一組で街全体の象徴として物語の前半で描かれていたクロとシロの中で、最後クロだけ理想と現実のバランスとれちゃっていいのかな。。。とも思ってます、この解釈の仕方も松本大洋の思ったものとは違うのかもしれませんね。しかしまぁ個人的に満足しているからこれでいいかとも思います。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-02-03 13:03:44] [修正:2007-02-19 00:29:22] [このレビューのURL]

普通に読むだけではなんだか府に落ちない不思議な感じのする作品。
作品の要所要所に仕込まれている抽象表現の意味するものを読み解いてやっと物語としてまとまっていることがわかります。
実はものすごく深みのある作品です。抽象表現の意味がわかったときの驚きというか感動は相当なものです。
かく言う私もどうしてもわからない抽象表現がいくつか。。。いつか閃く日を夢見ております。
モノローグはもちろんのこと出来事やキャラクターにまで象徴があります。いろいろ考えてみてください。
蛇足ですが作中で蓮見の嫌っている音楽は実在します。その音楽の題も「乾からびた胎児」。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-01-13 20:08:27] [修正:2007-01-13 20:08:27] [このレビューのURL]

とても前衛的で気に入る人と気に入らない人が分かれる作品だと思います。
圧倒的な色彩感覚、漫画という媒体でこういう方法で色を活かしきった作品が他にあるでしょうか。
時に不自然で時に毒々しい様々な色たちが物語の中へ中へと引き込んでくれます。
また、抽象表現の多い作者なのでそれらの表現を演出として流すだけでなく、何を抽象しているのか考えてみると違った深みがでると思います。
私の場合は二回目以降読み返すときにやっている作業です、興味がある人は是非やってみてください。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2007-01-13 19:46:49] [修正:2007-01-13 19:46:49] [このレビューのURL]

7点 α

[ネタバレあり]

作品中の「αシリーズ」の発想がどれもすばらしい。
どこか不器用な人の感情の表し方の上手さに思わず惚れ惚れしてしまいます。
キャラクターや感情表現で引き込まれて、設定で綺麗におとされて、漫画全体のレベルの高さがどこか心地いいです。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-12-05 22:06:12] [修正:2006-12-05 22:06:12] [このレビューのURL]

雰囲気のいい作品かな〜と思います。
さまざまな突っ込みどころはあるものの囚人の心の変化やほのぼのとするシーンなどが作品全体を優しくしているように感じました。
途中少しテーマが顔をのぞかせたりもしますが、全体としてはそこに重きを置いてないように思えます。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-17 21:25:35] [修正:2006-11-17 21:25:35] [このレビューのURL]

後書で作者もいってるんですが、本当に登場人物が作者と離れて動いてるんじゃないかと思わせてくれるような作品。
普通の作品っていうのは登場人物全体に同じ作者が作ったからこそ存在する共通点がどことなくあると思うのです。それが人物像じゃなくてもふとした時の台詞とかに。
それが感じられない。根っこから異なった変人たちがそれぞれ言いたいこと言ってやりたいことやって。それが噛み合ったり噛み合わなかったりして物語になっていく。そんな作品だと思います。
だからたまに面白いな〜っと思う発言とかがでてきてもそれはその登場人物の発言で、作者の発言じゃないんだな〜っと思うと、これは一種すごい才能だな〜と思うわけです。
実はこの登場人物の発言と作者の発言との違いのギャップにずっと疑問をもっていてレビュー文は書かなかったんですが、この度はひとまず私の中で答えを見たのでレビューしました。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-10-26 17:19:42] [修正:2006-11-14 09:48:36] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

地球人と火星人の確執や歴史などはまるで一つの紛争の歴史をみているかのように感じました。
前半部分はその確執を主題に展開していき。後半部分では火星自体の運命すらもまきこんだ大きな展開になっていきます。
どちらも面白いですが、やはり前半部分が好きですね。登場人物の台詞の中にも興味深いものがあって、特にエルグの「どちらが先かってのは重要じゃない、どちらに必要かだ」という台詞などには納得させられました。
そういう意味で、私の価値観を形作る一つの要因になりました。

後半部分は、「高次元の存在」というものをうまくイメージできるか。ということがネックになってくると思います。
単なるおせっかいかも知れませんが。
もし、後半ついていけないな〜と思われる方がいらっしゃいましたら、是非「時間軸の加わった世界」について考えてみてください。
少し、ついていけるようになるかもしれません。

ナイスレビュー: 0

[投稿:2006-11-05 23:29:51] [修正:2006-11-05 23:29:51] [このレビューのURL]

良質な漫画だと思います。
欲を言えばもっと世界観を書き込まないと不自然な感じがする設定があると思います。私の場合は特に気になりませんでした。
作者がどういう意図をもって書いたかは判断つきませんが、人間や生命自体の定義に対する問いかけが多々なされていると思います。
人間と動物を区別するもの、生命と無機物を区別するものは本当にあるのでしょうか。
答えは千差万別だと思います。ところで、人類の機械技術は日々進化しています。脳にチップを埋め込む治療法も実用化され、考えただけで動く義足、義手などもつくられている中で、「人間とはどうして人間で、どこまで人間なのか。」そういう視点からも人間の機械化について考えなければならない時がすぐ近くまで来ているのかもしれません。
蛇足ですが、私の中で五巻までなら8点の評価です。

ナイスレビュー: 1

[投稿:2006-11-03 11:43:32] [修正:2006-11-03 11:43:32] [このレビューのURL]