「為亀」さんのページ

総レビュー数: 26レビュー(全て表示) 最終投稿: 2006年10月26日

16巻まででの感想です。

人間がいかに自分の見たい世界ばかりを見ていて、それ故にいかにわかりあえないか。ということを描いた作品なのではないかと邪推しています。

天満、播磨、沢近の三人がそれぞれの行動をそれぞれの願望にそぐわせるように解釈してすれ違っていく様をみて感じました。
この見方を崩すキャラクターに烏丸と八雲がいると思います。
天満の望んだことを取捨選別せず、そのままこなしていく烏丸は極端に世界にたいして主観や願望を交えずに接しているようにみえます。
また、唯一主観と客観を適切なバランスに保って世界と接している八雲はその適切さによって相手を理解しすぎて、悩んでしまいます。

この解釈が合っているとしたら、この二人をどう位置づけて、どう落とすのかが楽しみです。

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[投稿:2008-08-13 12:02:14] [修正:2008-08-13 12:02:14] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

 自分でも曲解のような気はしますが、一視点として書かせていただきます。

 普通に読んでも楽しめる作品な事は間違いないんですが、作品全体の中心となるテーマに「ニヒリズムからの脱却と存在意義の確立」を据えて読んでみると違った深みがあると思います。

 木の葉崩し編での大蛇丸、ガアラの台詞はそれぞれでみるとキャラクターの心理を表しているだけであるかのように見えます。しかし、二人の台詞を関連させてみると二人で「存在意義の確立とニヒリズムの思想」について語っているように見えてきませんか。
 それに対して、ナルトと火影さまの提示する答えが他者の存在です。他者の存在によって人は存在意義を得、またニヒリズムから抜け出すことができるのだ。と反論するわけです。
 その一方で、他者に自分の存在意義を丸々預けきってしまう存在として白を描くことで、その危うさも提示しているのだろうと思います。

 そう考えると、サスケがさらわれた時の話がまた違って見えてきます。サスケをつながりの中に引き戻そうと追いすがるナルトたちと自らつながりを断ち切ろうとするサスケ。
 これはつながりを絶対視するナルトたちに対して例え一人であっても存在意義は打ち立てられる、強い強い感情は自らの存在意義となり、ニヒリズムをも突き破るんだ。というアンチテーゼとして描かれているのでしょう。その結果サスケは完璧に一人になり、全てのつながりを断ち切ることを選び、今に至るわけです。

 最終的にナルトとサスケとの戦いに決着がつくとき、作者のもっと突き詰められた作中テーマへ回答が提示されるであろうことを願っております。

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[投稿:2007-06-09 02:03:41] [修正:2007-06-09 02:03:41] [このレビューのURL]

個人的には出来にバラつきがある作品だと思います。
1,2ぺージで終わらせてある短編は退廃的で、その中に一筋だけ光が見えて、心地よい余韻と、ちょっとだけ物事について考えさせられる雰囲気。どこか詩的で、とても素敵だと思います。
ただ、ページを重ねていくにつれて、いろんなことを描きすぎるからなのか、想像の幅が狭まるからなのか、どこか説教くささというか、陳腐さのようなものがにじみでているように感じました。
その感じがどうしても気になって、短編集全体でみると僕の中ではあんまりいい評価ができないものになってしまいました。
ちなみに、裏表紙にも載っている「くらげ」が一番スキです。

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[投稿:2007-05-18 09:33:08] [修正:2007-05-18 09:33:08] [このレビューのURL]

欲望を肯定し、機会均等を達成する政治体制。という形を突き詰めた作品。
着眼の面白い作品だと思う。社会として欲望を肯定する。というのは確かに必要だけれど、、、
国民クイズ体制は否定するけれど資本主義を肯定する。としたとき一体どこで線を引いたらいいのか。機会の均等と言う意味で本当は国民クイズ体制のほうが優れているのではないのか。
国民クイズ体制が誤った体制で、議会制民主主義がより正しい体制だ。とは簡単にはいえないのではないでしょうか。もちろんそれは専制王政だったり、直接民主主義だったり、社会主義だったりにも言えることです。
国民クイズの中の日本は少なくとも現実の10年後の日本よりも機会均等がなされた日本かもしれません。
是非、国民クイズ体制を誤。間接民主制を正とせずに観てみてください。

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[投稿:2007-05-17 12:10:06] [修正:2007-05-17 12:10:06] [このレビューのURL]

木崎ひろすけは、台詞の無いコマをとても大切にする作者で、心情や動き、雰囲気などを言葉の無いコマで上品に表してくれます。
僕はこの静かさ、日常感なんかにどこかフランス映画に通じるところを感じます。そのシーンそのシーンをとても大切に描く方で、静かなコマの使い方は、少女ネムを連載していっている間にもどんどん成長していっているようでした。
亡くなったのが非常に惜しいです。。。
フランス映画好きは是非読んでみてください。

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[投稿:2007-04-23 23:37:07] [修正:2007-04-23 23:37:07] [このレビューのURL]

[ネタバレあり]

 私の個人的なこの物語の展開を書きます、どうしても先入観を与えてしまうと思うので一度自分の考えを整理してからみることをオススメします。
 尚、漫画版の事を書きますが、漫画の解釈を展開する際に映画版の演出もヒントとして使っています。悪しからず。

 最初にこの漫画を読んだ段階ではただ単純に現実世界とは関係なく善悪のバランスのとれた世界を描きたかったのかと思いました。いつだったか松本大洋がインタヴューのときに必要悪の話をしていたのを少し覚えていたので、「松本大洋の中では現実世界も善と悪のバランスが取れていなければならないのかもしれない。でも私としてはこの作品を読んだだけでは、クロたちの生きる世界がバランスのとれていなくてはならない世界であることは納得できても、現実をそういう風に考えることはできないな。」という風に考えていました。(その解釈では闇の力、イタチの存在、イタチの台詞の意味、などは上手く解釈できなかったのですが特別考えていませんでした。)
 しかし、映画を観て、クロとシロの象徴するものはそれぞれ悪と善ではないような印象を受けました。それぞれ現実と理想を象徴しているのではないかと思い直しました。そうすれば、現実(街)が理想とはかけ離れた方向に進んでいくのに比例してシロが夢見がちになったことも、現実からシロを守ってやれなくなってきているというクロの不安も納得がいきます。それだけでなく物語の様々な符号が一致するのです。シロ(理想)を失って現実だけを求め、視るようになったクロの暴走も納得いきますし、イタチの真実は闇の中にある。闇こそが力だ。といった発言も上手く解釈できます。
 そして最後の最後にクロが現実に捕らわれたイタチと決別したときの言葉は「俺はシロを信じる」だったことにも納得がいきます。つまり、この物語は現実を見据えながらも理想を信じる事の必要さを物語っているのではないかと思います。
 私個人の認識ですが、最近では理想を諦めて現実的なものだけを求めることがかっこいいというか、大人というか、そういうイメージがあるように思います。もちろん、現実をみなくていいというのではありません。理想だけをみて、一面的に「なんで理想どおりにしないんだ!」とだけ言っていても、上手くいかないと思います。
 だからこそ、「理想を信じながらも、現実を見据える姿勢が必要なのだ。」というメッセージを、この作品は持っているように思いました。
最後に、二人一組で街全体の象徴として物語の前半で描かれていたクロとシロの中で、最後クロだけ理想と現実のバランスとれちゃっていいのかな。。。とも思ってます、この解釈の仕方も松本大洋の思ったものとは違うのかもしれませんね。しかしまぁ個人的に満足しているからこれでいいかとも思います。

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[投稿:2007-02-03 13:03:44] [修正:2007-02-19 00:29:22] [このレビューのURL]

普通に読むだけではなんだか府に落ちない不思議な感じのする作品。
作品の要所要所に仕込まれている抽象表現の意味するものを読み解いてやっと物語としてまとまっていることがわかります。
実はものすごく深みのある作品です。抽象表現の意味がわかったときの驚きというか感動は相当なものです。
かく言う私もどうしてもわからない抽象表現がいくつか。。。いつか閃く日を夢見ております。
モノローグはもちろんのこと出来事やキャラクターにまで象徴があります。いろいろ考えてみてください。
蛇足ですが作中で蓮見の嫌っている音楽は実在します。その音楽の題も「乾からびた胎児」。

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[投稿:2007-01-13 20:08:27] [修正:2007-01-13 20:08:27] [このレビューのURL]

とても前衛的で気に入る人と気に入らない人が分かれる作品だと思います。
圧倒的な色彩感覚、漫画という媒体でこういう方法で色を活かしきった作品が他にあるでしょうか。
時に不自然で時に毒々しい様々な色たちが物語の中へ中へと引き込んでくれます。
また、抽象表現の多い作者なのでそれらの表現を演出として流すだけでなく、何を抽象しているのか考えてみると違った深みがでると思います。
私の場合は二回目以降読み返すときにやっている作業です、興味がある人は是非やってみてください。

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[投稿:2007-01-13 19:46:49] [修正:2007-01-13 19:46:49] [このレビューのURL]

7点 α

[ネタバレあり]

作品中の「αシリーズ」の発想がどれもすばらしい。
どこか不器用な人の感情の表し方の上手さに思わず惚れ惚れしてしまいます。
キャラクターや感情表現で引き込まれて、設定で綺麗におとされて、漫画全体のレベルの高さがどこか心地いいです。

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[投稿:2006-12-05 22:06:12] [修正:2006-12-05 22:06:12] [このレビューのURL]

雰囲気のいい作品かな〜と思います。
さまざまな突っ込みどころはあるものの囚人の心の変化やほのぼのとするシーンなどが作品全体を優しくしているように感じました。
途中少しテーマが顔をのぞかせたりもしますが、全体としてはそこに重きを置いてないように思えます。

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[投稿:2006-11-17 21:25:35] [修正:2006-11-17 21:25:35] [このレビューのURL]